2013年8月5日月曜日

食品嗜好と関連する嗅覚受容体領域同定

最近、ロックフォール、ゴルゴンゾーラ、スティルトンなどのにおいのきついブルー・チーズにはまってる。配偶者はそれを激しく嫌う。遺伝的個別差なのか、学習あるいは環境獲得の差なのか・・・結婚して30年間ほどなるのに・・・嗜好には差がある。まぁ、嗅覚以外の別の嗜好も同様だが・・・

食品に関しては、味覚は、甘み、塩味、酸味、苦み、うまみ(savory)の5種を感じることができるが、嗅覚に関してはかなりの種類の臭いをかぎ分けることができる。となると、嗅覚が食品嗜好に大きく影響をあたえるのではないか?

以下の種類の嗅覚受容体の遺伝子局在が判明した。

2−ヘプタノン:石けん臭い:ブルーチーズのような・・・
イソブチルアルデヒド:甘酸っぱい焦げたにおい
βダマセノン:バラの香り
βイオノン:スミレの花のにおい

妻は、未来永劫、ブルーチーズを嫌うのだろうか?



ワシントンポスト誌では、ワインのにおいで解説している。ひとつのワインで数百もの異なるアロマを有する。人ごとに心地よい臭いの記録に変化をもたらす。バイオレット成分の芳香的、フローラルとする香りに感度が高く、一方、感度の低い人は、深いな酸っぱいとか、アシディックと表現する。
コリアンダーに対しても同様の好き嫌いがある。フローラルと表現する人もいれば、石けんみたいと表現する人もいる。


Identification of Regions Associated with Variation in Sensitivity to Food- Related Odors in the Human Genome 
Jeremy F. McRae ,et. al.
Current Biology, 01 August 2013

ヒトは、食品を含む、無数のにおいをかぐ能力がある
におい感度は遺伝性であり、嗅覚受容体遺伝子近傍に位置する特異的嗅覚への感受性の遺伝子変異にリンクする事例が存在する。しかし、数千のaromaやいくつか判明した嗅覚受容体で、嗅覚受容体locusと嗅覚感受性のlinking variationに関して少々進歩が見られた。


仮説として、味覚遺伝子とともに、嗅覚感受性の差が食物の好みに影響するとして、2-ヘプタノン(p = 5.1 × 10−8)、イソブチルアルデヒドp = 6.4 × 10−10、βダマセノンp = 1.6 × 10−7、βイオノンp = 1.4 × 10−31


どのlocusも嗅覚受容体のin/nearクラスターに存在


9つの嗅覚感受性に関する知見が加わった。


食物関連のにおいの感覚的鋭さに関して嗅覚受容体に関わる変異の重要性が示された。


一般住民の遺伝子頻度研究にて、嗅覚感受性のばらつきが大きいことが示唆される。

さらに、これらのにおいに対する複合的ななものを有することなど、各人の経験がよりユニークな嗅覚世界を会得することも考えられるだろう。



薩摩半島出身の私は、ヘチマの味噌炒めが大好き。配偶者(嫌いな人は鹿児島でも多い)は、ヘチマを食べるのをいやがる。なら、自分で料理ということで最近やたらとこり始めてる。だがさらに、配偶者は、私が台所に入るのをいやがる。若い頃からと聞いてるが、配偶者の男親は自分で料理し続けてるから、男が料理するのをいやがるのは遺伝ではなさそうだが(n=1で、検出パワーなし)

心血管イベント予防のためのアスピリン:リスク・ベネフィット・適正使用

Aspirin: Its risks, benefits, and optimal use in preventing cardiovascular events
Cleaveland Clinic Journal of Medicine May 2013 vol. 8015;318-326
http://www.ccjm.org/content/80/5/318.full


アスピリンは、心血管疾患存在既知患者での副事象イベント防止に関する役割は確立しているが、心血管既往明確でない患者でのベネフィット、特に、糖尿病、女性、高齢者では不明。細菌の研究から出血リスクも懸念されて、これらのサブグループでのアスピリンの役割検討。

現行ガイドライン


胃腸出血リスク要素
・年齢
・潰瘍既往
・NSAIDs同時使用
・H.ピロリ感染
・アルコール使用
・他凝固薬同時使用


一次予防トライアル



一次予防・二次予防アスピリン使用アルゴリズム


<女性>
男女とも同様適応と考えられ、女性の関心が相対的に低く、ある調査では一次予防では適応の41%、二次予防では48%しか服用されてないという報告。


<糖尿病>
明らかな心血管系疾患を有さない糖尿病患者でも、年齢・性補正対照に比べ、心血管リスク高い。一方、糖尿病患者はアスピリン抵抗性傾向に有り、アスピリンベネフィットとして高くない。早期一次予防研究では糖尿病患者は少なく、メタアナリシスでは9%程度の相対リスク減少のみで統計学的有意差無し。
2010 年American College of Cardiology/American Diabetes Association guidelineでは、10年リスク10%超、出血リスク増加しない対象者である既知心血管疾患無し糖尿病患者に対し、低用量アスピリンを推奨している。しかい、2つのトライアル、Prevention and Progression of Arterial Disease and Diabetes Trial (POPADAD) とJapanese Primary Prevention of Atherosclerosis With Aspirin for Diabetes (JPAD) studyで、統計学的に有意ベネフィット示せなかった。

<高齢者>
年齢と共に心血管リスクは増加するが、同時に、消化管出血頻度も増加する。
USPSTFは、80歳を超える場合の一次予防としての定期アスピリン使用に対して、賛成の立場・反対の立場のアドボケートせず。臨床的トライアルからこの高齢者でのデータは不足。
70歳以上の既知心血管疾患無き高齢者での100mg連日投与ASPREEトライアル、さらに高血圧・高脂血症・糖尿病診断の60-85歳を加え検討中

心血管自律神経障害:抗酸化三剤治療効果認めず

1型糖尿病患者での心血管性自律神経障害(CAN: cardiovascular autonomic neuropathy)と心筋血流量測定値への3種抗酸化治療の効果についての検討


Effects of triple antioxidant therapy on measures of cardiovascular autonomic neuropathy and on myocardial blood flow in type 1 diabetes: a randomised controlled trial
R. Pop-Busui, et. al.
Diabetologia 

ランダム化平行プラシーボ対照化トライアル、全ての被験者・調査者は目隠し
心血管自律神経反射試験、PET[11C] meta-hydroxyephedrine([11C]HED)、[13N]アンモニア検査、アデノシン負荷試験
酸化ストレスマーカーとして24時間尿中F2- isoprostane測定

糖尿病性末梢性神経障害は症状、徴候、電気生理、上皮内神経細胞密度で評価。
1型糖尿病・軽症・中等症CANを有する登録成人 44名(平均 46±11歳、HbA1c 58 ± 5 mmol/mol (7.5 ± 1.0%))、虚血性心疾患エビデンス無し

介入: 抗酸化治療(アロプリノール、αリポ酸、nicotinamide)  or プラシーボ 24ヶ月

主要アウトカム:24ヶ月時点での全般的[11C] HED retention index(RI)


44名の被験者(各グループ 22名)、年齢、性、トライアル内HbA1c補正後、抗酸化レジメンでは、対プラシーボ比較で、主要アウトカムである、24ヶ月時点での全般的[11C]HED左室RIの軽度だが、有意悪化あり (−0.010 [95% CI −0.020, −0.001] p = 0.045)

全般MBF、冠動脈流量reserve、DPN、酸化ストレスのマーカーに関して、 フォローアップ時点での有意差認めず

副作用大部分は、軽症・中等症だが、群間差認めず


酸化ストレスってのは、様々な病態の説明に使われているが、臨床的効果は今ひとつどころか、副作用の方が問題になることも。従来の抗酸化治療薬とされる薬剤のターゲットがおおざっぱすぎるのでは・・・


noteへ実験的移行

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