2012年1月18日水曜日

非合併症ST上昇型心筋梗塞:酸素投与法 ;現時点で投与法エビデンス認めず

ST上昇型心筋梗塞への酸素治療のotimal approachを探る報告

High-concentration versus titrated oxygen therapy in ST-elevation myocardial infarction: A pilot randomized controlled trial
American Heart Journal, 01/17/2012 


心原性ショック・極端な低酸素血症を伴わないST上昇型心筋梗塞かなj136名

・ 高濃度固定法: 6 L/min 中等濃度酸素マスク
・ 補正法:6時間93%-96%への酸素飽和度補正

主要アウトカムは、30日死亡率と72時間後のトロポニンT評価による梗塞巣サイズ
セカンダリアウトカムは、この研究を含めた死亡率データのメタアナリシス。

室内空気と補正法に比べ、高濃度酸素固定では、死亡率オッズ比 2.2 (95% CI 0.8-6.0)

トロポニンT (ratio of mean levels 0.74, 95% CI 0.50-1.1, P = .14)、梗塞量(mean difference −0.8 g, 95% CI −7.6 to 6.1, P = .82)、梗塞量比率 (mean difference −0.6%, 95% CI −5.6 to 4.5, P = .83)

結論としては、非合併症(ショック無し、極端な低酸素なし)ST上昇型心筋梗塞では、補正酸素療法にくらべ、高濃度酸素療法のベネフィット・エビデンス認めない。
しかし、信頼区間が大きすぎるので、臨床的には意義不明の状況であり、大規模ランダム化トライアルが必要。



ディーゼル排気のアレルギー・アジュバント作用のヒトでの証明

平均100μg/m3以下という比較低濃度でも、ディーゼル排気は、ヒトにおいて、好酸球活性化を生じ、ウィルス繁殖を促進する・・・

ディーゼル規制は、京都・千葉県・埼玉県・神奈川県など限られたところだけが行われているが・・・果たして、それでいいのか!

いま、東京都などで排ガス規制で使えなくなったバス・トラックなどが地方でばんばん走っている。 地域間格差・差別ともいうべき事態が生じている。

そういうことも考えさせる重要な報告だと思う。




ディーゼル排気はアレルギー性炎症を促進し、汚染はウィルス性呼吸器感染の感受性を高めることと関連する。この2つの影響に関して、ヒトで確認した報告。

Diesel Exhaust Exposure and Nasal Response to Attenuated Influenza in Normal and Allergic Volunteers
Am. J. Respir. Crit. Care Med. January 15, 2012 vol. 185 no. 2 179-185 

2重盲検ランダム化プラシーボ対照化研究で、弱毒化インフルエンザの鼻の反応性、アレルギー性鼻炎のディーゼル暴露(100 μ/m3)とクリーンエアの対比
エンドポイントはELISAによる炎症性メディエータとウィルス量。

ベースラインのメディエータ値は両群差無し。

ウィルス後の鼻サイトカイン反応に対してディーゼルの影響は有意ではない。

しかし、ディーゼルはIFN-γの反応性と有意に関連(P=0.02)、回帰モデルではアレルギーとの相互関連認めず。

Eotaxin-1(P=0.001)、ECP(P<0.001)、インフルエンザRNAシークエンスは有意にディーゼル暴露で増加し、アレルギーと関連。

短期的ディーゼル暴露試験で、好酸球活性化を引き起こし、アレルギー性鼻炎患者では、ウィルス培養後のウィルス量を増加させる 。
ディーゼルのアジュバント作用、則ち、アレルギー性炎症を促進するという影響を支持する報告となっている。ウィルスクリアランスとの関連が今後の課題。



呼吸器:肺胞は思春期でも増加し続ける・・・

肺胞というのは思春期までその数が増加することを証明。


この時期の大気汚染とか、喫煙とか・・・行政や家族・周囲の配慮も必要だし、なにより教育も必要。


Alveolarization Continues during Childhood and Adolescence
New Evidence from Helium-3 Magnetic Resonance
Am. J. Respir. Crit. Care Med. January 15, 2012 vol. 185 no. 2 186-191
helium-3 (3He) magnetic resonance (MR) により非侵襲的に7歳から21歳の肺胞サイズを測定
3HeMRを用いた場合2つの独立した末梢気道dimensionを測定できる
・ apparent diffusion coefficient (ADC) of 3He at FRC
・ average diffusion distance of helium Formula by q-space analysis
ADCはFRC1%増加毎に0.19%増加。neoalveloarizationの内場合は 0.41と想定。
 FRCに対するヘリウムのaverage diffusion distance増加は、neoalveolarizationのない場合、予測増加より少ない。

結局、これらより、研究年齢(7歳から21歳まで)横断的に、1.94 倍(95% CI, 1.64-2.30)肺胞数は増加するものと思われる。


高齢者:地域内移動困難発症は、年齢・身体パフォーマンスが要素 ;入院・敗血症などへ影響

前向きコホート研究(1998年3月から2009年12月):コネチカット州、Greter New Haven

70歳以上の641名の高齢者(active driver もしくは1/4マイル歩行に障害のない対象者)

加齢に於ける「不都合な真実」(An Incovenient Truth)とGillらが称する、短距離歩行不能・運転不能は、終末期への加速点であり、これらは、加齢状態と強い関連をもつアウトカムをもたらし、入院必要性と関連するという・・・


Risk Factors and Precipitants of Long-Term Disability in Community Mobility A Cohort Study of Older Persons
Ann Int Med. January 17, 2012 vol. 156 no. 2 131-140 

被験者 318 (56.0%) 、 269 (53.1%) がウォーキングもしくは運転に、長期障害発生。
7つのリスク要素が歩行障害と関連し、8つが運転障害に関連。

それぞれのアウトカムに最も関連したものは、年齢、 Short Physical Performance Batteryの低スコア

長期障害への影響として、それぞれのアウトカムに対し、多変量ハザード比で、それぞれ、入院が6.2、活動制限が2.4を越えた。

絶対的リスクで最も大きな差は、入院に関連する敗血症リスクを有した被験者が一般的であった。


睡眠・性差医療: 閉塞型無呼吸は女性でも心血管死亡リスク要素、CPAP治療でリスク軽減効果あり

睡眠時無呼吸と心血管合併症の関連が数多く報告され、ガイドラインでも認められている。
J Insur Med. 2005;37(4):272-82. 
Canadian Journal of Cardiology Volume 27, Issue 3, May–June 2011, Pages 319–338


だが、閉塞型無呼吸の男女比かなり偏りがあるので、性別の検討は必要。


Cardiovascular Mortality in Women With Obstructive Sleep Apnea With or Without Continuous Positive Airway Pressure Treatment A Cohort Study Ann Int Med. Jan. 17, 2012 vol. 156 no. 2 115-122 



背景: Obstructive sleep apnea (OSA)は、男性では心血管死亡のリスク要素だが、女性でリスク要素であるかは不明

目的: 女性で、OSAは、心血管死亡のリスク要素となるか、また、CPAP治療がリスクを変化させうるか?

デザイン: Prospective, observational cohort study.

セッティング: 2 sleep clinics in Spain.

患者: All women consecutively referred for suspected OSA between 1998 and 2007.

介入:全員診断的sleep study。対照群はAHI 10未満。閉塞型無呼吸はAHI 10以上で診断(分類:軽症から中等症 AHI 10-29, 重症 AHI 30以上)
OSA患者はCPAT治療(adhrence 4時間以上/日) or 未治療(adherence <4時間/日 or CPAP指示無し)。2009年12月までフォロー。

測定: The end point was cardiovascular death.

結果: 1116 名の女性を研究(フォローアップ中央値 72 ヶ月[中間4分位 52 ~ 88 ヶ月])

治療群は、未治療群より、心血管合併症低率 (0.28 per 100 person-years [95% CI, 0.10 to 0.91]) : 軽症・中等症OSA  (0.94 / 100 人年 [CI, 0.10 to 2.40]; P = 0.034) or 重症 OSA (3.71 / 100 人年 [CI, 0.09 to 7.50]; P < 0.001)

対照群に比較して、心血管死亡率完全補正ハザード比 は、未治療群・重症OSAで 3.50 (CI, 1.23 to 9.98); CPAP治療・重症OSA群 0.55 (CI, 0.17 to 1.74); 未治療・軽症中等症OSA群 1.60 (CI, 0.52 to 4.90) ; CPAP治療・軽症・中等症OSA群

Limitation: 観察研究で、非ランダム化、2つのメソッド以上で診断されたOSA

結論: 重症OSAは女性でも心血管疾患死亡と関連し、適切なCPAP治療でリスク軽減の可能性


関連:
・ ”首回り”は独立した心血管疾患リスク要素 2010年 05月 22日
・ 高血圧&閉塞型無呼吸患者に対するCPAP治療では血圧臨床的意義ほど下げない 2010年 11月 26日

急性冠症候群・ EBMベース4薬剤処方が生存率改善と関連

Effect of Use of Combination Evidence-Based Medical Therapy After Acute Coronary Syndromes on Long-Term Outcomes
American Journal of Cardiology Volume 109, Issue 2 , Pages 159-164, 15 January 2012


ACS患者の死亡率減少効果を示すいくつかの薬剤があるが、長期アウトカムに関してはデータが十分でない。
1999年1月から2007年1月2684名のACS入院連続患者で、組み合わせスコアはEBMベース医薬品 (EBMs)と相関性計算。
EBMベース医薬品:aspirin, β blockers, angiotensin-converting enzyme inhibitors or angiotensin receptor blockers, lipid-lowering agents.
Global Registry of Acute Coronary Events (GRACE) risk score補正による2年次イベントに於けるEBMsスコアのインパクト調査のための多変量解析で、 thienopyridine useと退院年の相関
女性はより高齢で、より合併症が多く、4 EBMs処方されてない場合が男性より多い (53% vs 64%, p < 0.0001)
EBMs全部服用患者は1以下に比べ2年次生存ベネフィット有意に有り (odds ratio 0.25, 95% 信頼区間 0.15 to 0.41)、 それは、男女とも独立して認める(for men, odds ratio 0.22, 95% 信頼区間 0.11 to 0.44; for women, odds ratio 0.3, 95% 信頼区間 0.15 to 0.63)
心血管疾患イベント(心筋梗塞、再入院、卒中、死亡)に関しては、男性・全4EBMs服用時のみ軽度ベネフィットが観察された。
結論としては、ACS退院時の心臓薬剤組み合わせは、男女とも、2年次生存率改善と強く関連し、二次予防医薬品の重要性が判明した。

インフルエンザ:タミフルなどNI予防治療効果 ・・・ Rocheからのデータの不備が問題に!

Rocheが真の分析に足るデータ提供を約束し、Jeffersonらが、会社から送られた10治療トライアル、3195ページのデータを加え検討。しかし、データ提供に関し疑念があるようで、いきさつが書かれている。
ソース:http://www.medpagetoday.com/InfectiousDisease/URItheFlu/30727


Jefferson T, et al "Neuraminidase inhibitors for preventing and treating influenza in healthy adults and children" Cochrane Database of Systematic Reviews 2011; 12. Art. No.: CD008965.



14の公表研究と、離床研究3万ページもの報告。

・ インフルエンザ症状の改善までの時間中央値は、プラシーボ 160時間、oseltamivirは21時間ほど短い P < 0.001
・  入院患者での効果エビデンス無し、 7つの研究でオッズ比 0.95(95% 信頼区間 0.57-1.61) P=0.86
・  8つのpost-protocol analysisで、oseltamivirはインフルエンザ診断の可能性少ない
・ 合併症・ウィルス伝播に関するデータに関して信頼性評価に足る詳細さにかけている


データの解離
DoshiらのBMJに書かれた、信頼性欠如の問題、公表データと臨床データの解離の問題
薬物重大副作用イベントはないと述べていたが、臨床データには関連可能性3つがリスト化されている。臨床データがジャーナルレポートから落ちていること、それらの指摘に対して、データ不備という説明する会社側

薬物作用程度が分からなければ治療選択上良好な判断が出来ないと・・・

産科:第1トリメスター後半の時期の飲酒と子供の形態的変化

1stトリメスター後半の飲酒、高prenatal alcohol exposure (PAE)が、子供へ形態的変化をもたらすことがあきらかになった。


April 2012 issue of Alcoholism: Clinical and Experimental Research and are currently available at Early Viewに掲載とのこと

ソース:
http://timesofindia.indiatimes.com/life-style/health-fitness/health/Avoid-alcohol-intake-during-pregnancy/articleshow/11522437.cms



Fetal Alcohol Syndrome (FAS) smooth philtrum(スムーズな人中:鼻の下のくぼみ), thin vermillion border(薄い朱色のボーダー), short palpebral fissures(短眼裂狭小), microcephaly(小頭症), 体重/身長低下



dysmorphologistによる顔面などの構造評価により、再評価し、飲酒パターン(一日あたりの飲酒量、大量飲酒エピソード、飲酒最大量)を評価

アルコール平均数増加毎に、smooth philtrum 25%、thin vermillion border 22%、小頭症 12%、生下時体重低下リスク 16%、生下時体長減少リスク18%増加で第1トリメスター後半の影響が特に大きい。



妊娠時のアルコール禁止を徹底すべき!

・ アルコール最低価格10%上げれば、16.1%アルコール消費量を減らせる・・・ 2012年 01月 05日

・ 酒税2倍で、アルコール関連死亡35%減少、交通事故、性病、暴力、犯罪それぞれ減少 2010年 10月 29日


日本はアルコールに対して甘すぎる!

小児:低出生体重児に対するカフェイン投与は5歳時点で効果認めず

低出生体重児いうより、極早産だとおもう very preterm infant

18ヶ月齢では、脳性麻痺や認知機能の遅れを減らす効果があることはしられているが、その後の年齢を重ねたときの影響の報告は少ない。

未熟児無呼吸発作に対するカフェイン治療が、学童初期(5歳)に影響をあたえるか?


Survival Without Disability to Age 5 Years After Neonatal Caffeine Therapy for Apnea of Prematurity JAMA. 2012;307(3):275-282. doi: 10.1001/jama.2011.2024

5年間フォローアップで、1540、500-1250gの生下時体重

複合アウトカム:5歳時の生死、1つ以上の運動機能障害( Gross Motor Function Classification System level of 3 から 5) 、認知機能障害(IA<70)、行動異常、健康一般状態、視力障害

死亡・機能障害結合アウトカムは、カフェイン割り付け 833名とプラシーボ割り付け 807名で有意な差は認めない(21.1% vs 24.8%; odds ratio adjusted for center, 0.82; 95% CI, 0.65-1.03; P = .09)。

死亡率、運動障害、行動異常、一般健康状態、聴覚障害、視力障害に2群に差認めず。
認知機能障害頻度は18ヶ月齢より5歳児の方が少なく、2群間同様 (4.9% vs 5.1%; odds ratio adjusted for center, 0.97; 95% CI, 0.61-1.55; P = .89)

米国小児・青年期肥満:16.9%で変化無し

Prevalence of Obesity and Trends in Body Mass Index Among US Children and Adolescents, 1999-2010 JAMA. Published online January 17, 2012.

米国人成人肥満:男性 35.5%、 女性 35.8% 10年程度変化無し

Prevalence of Obesity and Trends in the Distribution of Body Mass Index Among US Adults, 1999-2010 JAMA. Published online January 17, 2012.

非チエノピリジン系cangrelorのCABG術、bridging使用トライアル

非チエノピリジン系のADP受容体P2Y12阻害薬cangrelorは注射製剤で、血小板の凝集を促進する作用P2Y12の抑制により血小板機能をreverseする。そして、迅速性、予測可能性、可逆性という点での優越性がしめされている(http://www.carenet.com/news/det.php?nws_c=11453)。そのため、thienopyridine(チエノピリジン)誘導体治療患者のbridgingのために用いることが考慮された。 clopidogrelのような抗血小板薬が出血リスクを最小化するため術前では4-7日中止が推奨されている。 しかし、このストラテジーでは、血栓症リスク増大と関連する。 210名のthienopyridine服用中CABG手術待機的患者のランダム化プラシーボ対照化治験 血小板機能を連日評価により、cangrelorで血小板抑制高度維持に関連することが、プラシーボ比較で示された。 Bridging Antiplatelet Therapy With Cangrelor in Patients Undergoing Cardiac Surgery A Randomized Controlled Trial JAMA. 2012;307(3):265-274. doi: 10.1001/jama.2011.2002

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禁煙はお早めに! 米国における人種・民族・性別による喫煙・禁煙での死亡率相違|Makisey|note 日常生活内の小さな身体活動の積み重ねが健康ベネフィットをもたらす:VILPA|Makisey|note