2018年1月26日金曜日

AHRR低メチル化は、肺機能低値、肺機能減衰、呼吸器症状と関連

AHRR(cg05575921)の低メチル化と肺機能とその推移、呼吸器症状の検討


エピジェネティックは、DNAシークエンスの変化を伴わないmeiotical、mitoticalな遺伝性変化で、DNAメチル化やヒストン修飾などの変化で、monogenicもしくはmulti-factorialな疾患と関与する。アルコール、喫煙などの生活習慣、大気汚染などがこれに関与。AHRR遺伝子のhypomethylationは、喫煙暴露にて、epigenome wide association研究での確たる知見で、"hypomethylation at cg05575921"が受動喫煙、母胎からの喫煙影響を含め知見が蓄積している。一方、肺機能、肺機能低下、呼吸器症状へ影響を与えるもっとも重篤なライフスタイル要素は喫煙である。
AHRR hypmethylationはCOPD、重度COPD増悪リスクと相関、しかし、肺機能、肺機能減衰への影響は不明であった



AHRR hypomethylationを喫煙のバイオマーカーとして肺機能、呼吸器症状と関連するという仮説検証

結論は、AHRR低メチル化は、肺機能低値、肺機能減衰、呼吸器症状と関連とのこと

AHRR hypomethylation, lung function, lung function decline, and respiratory symptoms
Jakob B. Kodal, et al.
European Respiratory Journal 2018; DOI: 10.1183/13993003.01512-2017



Copenhagen City Heart Study、1991-1994、9113名
バイサルファイト処理白血球DNA、採血時スパイロメトリ
さらに、肺機能を 2001-2003年再測定 4532名


横断的に、methylation extent 10%減少は、喫煙を含む多変量補正後FEV1 z-score 0.2低下と関連 (95% 信頼区間:0.1–0.2)


Hypomethylation は、FVC、FEV1/FVCに関してもz-score低下と相関

最小vs最大3分位比較前向き解析では、FEV1/身長3の急速な低下を示す  interaction=0.003、同様、FVC/身長3(p=0.01)。しかし、FEV1/FVCでは示さない(p=0.08)
methylation extent10%低下あたりの多変量補正オッズ比は、慢性気管支炎で1.31(1.18–1.45)、呼吸器症状全般で 1.21(1.13–1.30)







Aryl-hydrocarbon receptor repressor:AHRR
この受容体結合パートナーであるaryl hydrocarbon receptor nuclear translocator (ARNT)の結合で aryl hydrocarbon receptor (AhR)を介して、ダイオキシンやダイオキシン様複合体がteratogen : 催奇性物質 として作用発現する。この遺伝子によりencodeされた蛋白は、ARNT結合arylhydrocaron recepterと競合作用を示しAhrによる信号transductionを抑止する。受容体の発現は、受容体/translocator heterodimerにより刺激、ネガティブフィードバックメカニズムにより受容体機能を調整する。さらに、encodeされた蛋白は、NF-κBに結合。AhRR遺伝子は腫瘍抑制作用を示す
https://en.wikipedia.org/wiki/Aryl_hydrocarbon_receptor_repressor


日本語訳しても、この方面特に基礎知識が無いので分からん

 ↓
 http://www.biology.tohoku.ac.jp/lab-www/molbiol/dioxin/dioxin.html


ダイオキシンで誘導される一群の解毒酵素があって、メチルコランスレン誘導型酵素といわれています。なかでも、シトクロームP-450という解毒酵素の仲間のうちで、シトクロームP-450 1A1とシトクロームP-450 1A2という酵素が強く誘導されます。最近では、この二つの酵素は、それぞれCYP1A1とCYP1A2と簡単に呼ばれています。
 CYPというとなじみだが、このCYP1A1、CYPA2というかろうじて、"ニューキノロン系抗菌薬(エノキサシン,ノルフロキサシン,シプロフロキサシン),フルボキサミン,メキシレチン,プロパフェノン,フラフィリン,α-ナフトフラボン"関連で・・


1. CYP1A1とCYP1A2の酵素量の増加は、mRNA量の増加によってもたらされる
2. 遺伝子の活性化は、受容体型転写因子Ahリセプター(AhR)が中心となって行われます
3. AhRは受容体としての活性もあり、多くの低分子有機化合物をリガンドとして結合します。ダイオキシンもその中の一つです。とびぬけて低い濃度で、AhRと結合
4. リガンドを結合したAhRはコンフォメーション変化を起こし、DNAに結合できるようになり、種々の遺伝子の転写調節領域に結合して転写量を増加
5. 転写量の増えた遺伝子として、非常に多彩な遺伝子が活性化されますが、その中にCYP1A1, CYP1A2があり、リガンドとして細胞に入った低分子有機化合物を酸化的に修飾し、その他の誘導される解毒酵素とともに働いて、いわゆる解毒反応がおき排出されます。
6. ダイオキシンは、誘導されるP450を始めとする解毒酵素では代謝することができないので、強い毒性が起きる原因と考えられています。

天然のリガンドとしては、キャベツやブロッコリーなどのアブラナ科の野菜には、比較的大量にインドール-3-カルビノール前躯体が含まれており、容易にインドール-3-カルビノールに変化し、さらに胃酸によってインドール-3-カルビノールは縮合しAhRの強いリガンドに変化することが知られています。
 動物内内在性リガンドはまだわかってない・・・とのこと


Ahリセプターの構造
805個のアミノ酸からなり、転写因子によく見られるベーシック、ヘリックスーループーヘリックス(bHLH)ドメインのほかに特徴的なPASドメインをもち、ステロイドホルモンリセプターとは全く起源を異にする新しいタイプの受容体型転写因子である
260~300個のアミノ酸からなるPASドメインには、約50アミノ酸からなる繰り返し構造(PAS AとPAS B)が存在します。バクテリアにもPASドメインをもつタンパク質が存在し、ヘムなどの低分子化合物をリガンドにもつものがあり、センサータンパク質として機能しています。

AhRは非常に多く組織で発現していることが分かっています。特に肺、肝臓でAhR mRNAの発現は比較的強く、その他、腎臓、脾臓、心臓、脳、骨格筋などの組織でも弱い発現が認められます。 メチルコランスレン投与によってAhR mRNA量は変化せず、構成的にAhR mRNAは発現しているようです。


メトホルミン: geroprotective作用、寿命延長

なんどもブログで取り上げてきたが、メトホルミン軽視の日本の糖尿病関連団体のスタンスは日本の医療の縮図だと思う





Metformin reduces all-cause mortality and diseases of ageing independent of its effect on diabetes control: A systematic review and meta-analysis
Jared M.Campbell, et al.
Ageing Research Reviews Vol. 40 , Nov. 2017, 31-44
Article in Ageing research reviews 40 · August 2017
DOI: 10.1016/j.arr.2017.08.003
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1568163717301472

 システマティックレビューにて、インスリン感受性増強作用を有するメトホルミンが、ヒトへ geroprotective(老化防止)作用を有するか、検討



Pubmed と Embaseで、未出版研究も検討
検討クライテリアは、メトホルミンにて、非糖尿病住民もしくは他薬剤による疾患コントロール補正達成糖尿病者と比較した全原因死亡率、加齢疾患の影響を検討


全体で260のフルテキストレビューし、53がこのクライテリア合致


 メトホルミン服用糖尿病では、非糖尿病に比べ全原因死亡率有意減少 (ハザード比 (HR)= 0.93, 95%CI 0.88-0.99)
メトホルミン治療糖尿病患者では、 非メトホルミン薬剤治療糖尿病患者比較 (HR= 0.72, 95%CI 0.65-0.80)、インスリン比較 (HR=0.68, 95%CI 0.63-0.75)、SU剤比較 (HR= 0.80, 95%CI 0.66-0.97)



メトホルミン使用者は、非糖尿病に比べ、がん減少 (rate ratio= 0.94, 95%CI 0.92-0.97)
メトホルミン使用者は、心血管疾患において、非メトホルミン薬剤治療比較 (HR= 0.76, 95%CI 0.66-0.87)、インスリン比較で減少 (HR= 0.78, 95%CI 0.73-0.83)

ベースライン特性はバイアス知見に寄与していることが見られたが、統計学的補正なされた

 メトホルミンによる、全原因死亡率、加齢疾患の明確な減少作用は、メトホルミンが余命及び健康寿命延長効果がありgeroprotective agentとして作用を示唆。

Keywords: metformin; aging; insulin sensitizer; lifespan; longevity; geroprotection









メトホルミンのような古い薬剤だが、エッセンシャルな薬剤が日本の医療ではなぜ軽視されるか?

新薬に関して見聞きする機会が多く、医療・医薬品情報さえ上げ膳据え膳の医師のスタンスが一番の問題だと思うが・・・

”新薬開発→治験に関わる利権→新薬→(講演会・出版)利権”が問題と思うが、臨床ガイドラインを製薬メーカーに一括購入させ出版利益させるシステム

国(厚労省・文科など)は金を出さず 、口先だけで、費用がかさむところは、医薬・医療器具メーカーに金を出させる→情報バイアスの必然性が生じる


この国の医療行政・制度、医師たちの医療情報へのスタンスどうにかならないのだろうか?

1日1本の喫煙でも重大な健康リスク

 喫煙量少なければ問題ないと、特にニコチン含量/暴露量少なければ問題ないという主張もあったが、喫煙本数と線形な関係ではないことが明らかで、”非喫煙→軽度喫煙”で急峻な健康被害リスクを生じる。このことは受動喫煙の健康への影響の重篤さを想起させるに十分。
 


Low cigarette consumption and risk of coronary heart disease and stroke: meta-analysis of 141 cohort studies in 55 study reports
Allan Hackshaw et. al.
BMJ 2018; 360 doi: https://doi.org/10.1136/bmj.j5855 (Published 24 January 2018) Cite this as: BMJ 2018;360:j5855

目的
軽度喫煙(1日1-5本)対する、シガレット使用と心血管疾患の相関性を冠動脈疾患・卒中リスクの定量化にて評価

デザイン Systematic review and meta-analysis.

データソース Medline 1946 to May 2015, with manual searches of references.


登録クライテリア:50イベント以上を有し、非喫煙者比較、年齢特異的冠動脈性心疾患或いは卒中の発生頻度ハザードリスク・相対リスク報告を含む前向きコホート研究


データ抽出/作成
MOOSE guideline遵守
リスクとシガレット摂取量間の回帰モデルを用いてシガレット1本、5本、20本に対して相対リスク
相対リスクは年齢補正を最低でも行い、付加的に共役要素補正も行う場合も
主要測定は、(肺癌で観察される)リスクと摂取量に5%の線形関連あると仮定した場合の、1日20本例に対する(PR_20_per_day-1)超過リスク
 シガレット1本、5本、20本/日に於ける相対リスクも、random effects meta-analysisにて全研究横断的にpool化
独立解析を性別疾患の組み合わせで実施


結果
141のコホートを含む55の報告のmeta-analysis

男性では
心疾患pooled相対リスクは、
pooled相対リスク各々1.48、2.04
多共役要素補正相対リスクを用いると、1.74、2.27
 
同様、女性では
pooled相対リスクは、1日当たりシガレット1本、20本で、 1.57、2.84
多共役要素補正相対リスク 2.19、3.95


1日1本の男性摂取は、1日20本摂取比較の超過相対リスクは、46%(多因子補正後相対リスクを用いると 53%)
女性では、31%(多因子補正後相対リスクを用いると 38%)



卒中に対しては、pooled相対リスク
男性 pooled相対リスク 1日当たりシガレット1本、20本で、 1.25、 1.64
(多共役要素補正相対リスク 1.30、1.56 )
女性 pooled相対リスク 1日当たりシガレット1本、20本で、 1.31、 2.16
(多共役要素補正相対リスク 1.46、 2.42 )


1日1本での卒中超過リスク(1日20本との比較)は男性 41%、女性 34%(多因子補正相対リスク  64% 、36%)

相対リスクは男性より女性が高い

結論 1日1本のシガレット使用でさえ、冠動脈性心疾患、卒中発症のリスクは予想以上にかなり大きくなり、1日20本の喫煙のほぼ半分のリスク。
心血管疾患にとって喫煙の安全域はない。
喫煙は完全に止めることが2つの主要疾患リスク減少には有意義











1日当たり20本に比べたときの、1本、5本の超過相対リスク分布(水平dashはメディアン)

noteへ実験的移行

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