2012年12月3日月曜日

クラスターランダム化研究:ベッドアラームは転倒防止に役たたない

わたしのところもそうだが、転倒防止のため、ベッドアラームを用いている。
しかしながら、その効果は懐疑的にならざる得ない。


Effects of an Intervention to Increase Bed Alarm Use to Prevent Falls in Hospitalized Patients: A Cluster Randomized Trial
Ann Intern Med. 20 November 2012;157(10):692-699
http://annals.org/article.aspx?articleID=1392191
27672名の入院患者での検討

アラームユニット使用頻度
介入ユニット 1000人日あたり 64.41
対照群 1000人日あたり 1.7日(P=.004)

1000人日あたりの転倒率に差を認めず  (リスク比, 1.09 [95% CI, 0.85 to 1.53]; 差, 0.41 [CI, −1.05 to 2.47])
転倒人数、転倒外傷、身体拘束数に差を認めず



ちょっと脱線するが、日本では、机上の空論を展開するときに、「アメリカでは(北欧では)、こんなことは無いのだ」と妄想して、勝手に、決めつけることがある。


米国急性期病院では、1000人にちあたり50の身体拘束が行われている。

Prevalence and variation of physical restraint use in acute care settings in the US.
J Nurs Scholarsh. 2007;39(1):30-7.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/17393963


にもかかわらず、たとえば、以下のような文言をさらっと記載する場合がある。

「アメリカの抑制に対する考え方はやはり日本とは違うようだ.本来,抑制してはいけないことが前提である」(http://mihara-ibbv.jp/arbos/yokusei/kaihou/yokuseikaihou2.pdf)


日本でも、抑制・身体拘束などしてはいけないのだが、実態として行われているのは事実。 身体拘束は元来あってはならないが、患者の身を守るために不可避なのかどうか、真の検討がなされているのだろうか?



“身体拘束ゼロ”作戦に関する指針というのに、科学的エビデンスは存在するのだろうか・・・
http://www.wao.or.jp/yamanoi/siryou/1/010327.htm

妄想の上の作文の集大成という気がしてならない・・・ 

もし、エビデンスに基づくなら、今頃、"physical restraint" AND "randomized"というキーワードでpubmed検索すれば、日本の研究がいっぱい検索されるはずだが・・・・ ほぼ皆無

男性ホルモン補充:バイアグラの効果改善せず

男性性腺機能低下を拡大解釈し、加齢に伴うテストステロン減少や後期発症臨床的低ゴナドトロピン症を“男性更年期”と称し、補充療法を正当化する動きがある。これは諸外国の一般的な統一見解ではなく、議論段階の概念である。

Male menopause: is it a real clinical syndrome?
Climacteric. 2011 Feb;14(1):15-7.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20670200



男性更年期診断の厳格化によりその疾病はわずか2%(NEJM) ・・・ 疾患存在への疑問2010年 06月 17日
http://intmed.exblog.jp/10823817/


にもかかわらず、日本医師会は、勇み足を行っている。

男性更年期障害:バランスを失った日本医師会雑誌の記載・・・生涯教育素材の価値無し2011年 02月 05日
http://intmed.exblog.jp/12055983/



話は、かわり・・・

男性ホルモン補充が バイアグラの勃起機能改善効果に影響をあたえるか? ・・・ 答えはNo!

Effect of Testosterone Replacement on Response to Sildenafil Citrate in Men With Erectile Dysfunction: A Parallel, Randomized Trial
Matthew Spitzer, et. al.
Ann Intern Med. 20 November 2012;157(10):681-691
http://annals.org/article.aspx?articleID=1391696

 International Index of Erectile Functionの勃起機能属性(erectile function domain (EFD))25点以下の、40-70歳

総テストステロン < 11.45 nmol/L (<330 ng/dL)、遊離テストステロン濃度< 73.35 pmol/L(<50 pg/mL)
シルデナフィル投与量を最適化し、140名の被験者のうち、70名ずつに
・経皮的ジェル(テストステロン 10g)連日投与
・プラシーボ投与

ベースラインにおいて、2群は同様のEFDスコア

シルデナフィル投与は、有意にEFDスコア増加と関連  (平均, 7.7 [95% CI, 6.5 to 8.8])
しかし、ランダム後化2群にEFDスコア差認めず(差 , 2.2 [CI, −0.8 to 5.1]; P = 0.150)

これらの所見は、若年男性の性機能の他の属性でも同様、肥満でも、低テストステロン濃度、シルデナフィル反応不良でも同様。

テストステロン群でも、プラシーボ群でも、副作用は同様。

短期間投与の研究という反論は当然出てくるだろう。

だが、リビドーの改善効果が果たしてあるのかという疑問が沸いてくる。

一酸化炭素中毒管理・予防・初回コンセンサス・ガイドライン

Practice Recommendations in the Diagnosis, Management, and Prevention of Carbon Monoxide Poisoning
Am. J. Respir. Crit. Care Med. December 1, 2012 vol. 186 no. 11 1095-1101
http://ajrccm.atsjournals.org/content/186/11/1095.abstract.html?etoc

Medscape
http://www.medscape.com/viewarticle/774465?src=mp


一酸化炭素中毒管理・予防の初回のコンセンサス・ガイドライン

ヘモグロビン結合によるヘモグロビンの酸素運搬能低下だけでなく、免疫学的、炎症性損傷に関して細胞性に影響を与える。
CO中毒は長時間持続し、低酸素と独立し、回復期の患者の合併症に関係する。
ガイドラインは、救急部門とクリニックともに診断見逃しがなされてるとする。
頭痛、吐気、疲労感などの非特異的症状は既定のものであり、医療関係者はその疑いを持たないといけない。

 "cherry-red" 皮膚所見は古典的だが、致命的なCO中毒所見でのみに見られる。動脈血のCO-oximetryがより信頼できる検査である。

100%酸素吸入でCOHbの半減期は74分。
神経学的アウトカム改善から言えば、高圧酸素療法投与が良いはずだが、概念の臨床的信頼性がいまだ不充分。
後期認知機能後遺症防止のため、24時間内の高圧酸素を推奨するが、至適投与量・治療期間については不明。

後期神経学的障がいが注目され、軽度CO中毒でさえ生じる可能性があり、成人・小児ともに生じる。リスクは、高濃度炭酸ガス吸入環境下でのみ客観的検討がなされ、低下画見られている。多くの施設では高圧酸素室なんてないので、他の施設への移動リスクについても考慮しなければならない(低圧・高所移動のリスクなど)。熱傷・妊娠などの合併要素についても考慮されるべき。自殺企図なら、ドラッグ・薬物乱用なども考える。
代謝性アシドーシスとシアン中毒が熱傷後合併し、 hydroxocobalamin 治療が考慮されることもある(シアン・シアン化物:http://www.j-poison-ic.or.jp/sanjyo/O22700_20081027.pdf)。

フォローアップは、月・年余の後遺症に考慮すべき。記憶障害、気分障害、前庭神経、運動神経問題。
生存者でも、転倒、自動車事故、死亡率増加が報告されている。

RSNA年次集会報告: CT施行例増加に伴う乳がんリスク増加を懸念

Merry G, et al. "Breast cancer risks from medical imaging computed tomography and nuclear medicine among females enrolled in a large integrated health care system" RSNA 2012; Abstract LL-HPS-TU3A.
http://www2.rsna.org/timssnet/media/pressreleases/pr_target.cfm?ID=639


 集約化医療提供システム登録者約25万名の記録レビューにて、CT利用と特定の女性達への乳がんリスク増加判明した。

 Radiological Society of North America (RSNA)年次集会報告

 胸部・腹部・脊椎・乳部組織へのCTや核医学画像施行で放射線吸収があるわけだが、乳部組織は放射線被曝発がん性に敏感な組織である。


 CTスキャン 1000名あたり 2000年 99.8 → 2010年 192.4と増加(年次  +6.8%の増加)
 
 CTの46%が、乳腺部への被爆となる
 
 核医学的検査は、 39.3% → 27.5%と減少(年次 -3.5%の減少)するものの、84%がやはり乳腺部被爆に相当する。


若年女性では、繰り返しの胸部・心臓CTにより、20%の乳がん発生リスク増加考えられる。
具体的には、特定リスクのない15歳女性で、25歳で乳がん発症リスク 2倍になるというもの。

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