2012年6月28日木曜日

齧歯類:ニコチンワクチンで脳内受容体到達減少

高濃度の抗ニコチンモノクローナル抗体発現遺伝子トランスファーベクターの単回投与で、18週間効果発現し、ニコチンの生理学的影響を 除去できることが齧歯類で示された。

  adeno-associated virus (AAV) gene transfer vectorを使い、抗ニコチン抗体高値状態を作り上げ、脳の受容体到達を防止する方法。

  Fab fragment of the anti-nicotine monoclonal antibody NIC9D9 (AAVantiNic)由来

 脳のnaiveマウスの15%濃度に脳ニコチン濃度を減少し、83%ほどIgGに結合。血圧や心拍、活動性に影響与えず。

AAV-Directed Persistent Expression of a Gene Encoding Anti-Nicotine Antibody for Smoking Cessation
Martin J. Hicks, et. al.
Sci Transl Med 27 June 2012: Vol. 4, Issue 140, p. 140ra87 Sci. Transl. Med. DOI: 10.1126/scitranslmed.3003611 




喫煙習慣者に投与すると、喫煙量が増えそうな・・・喫煙習慣を獲得する前の予防のような気がする。


低炭水化物・高蛋白食は心血管疾患リスク増加をもたらす

低GI食は、低脂肪食、低炭水化物食(Atkins食)より負の影響が少なく体重維持効果的 2012年6月27日

上記解説がなされたばかりだが、同様に、いわゆるAtkinsダイエットは、リスクの疑念から、リスク明確化の時代へ変遷していると思う。


今回の報告で、炭水化物制限・高タンパク食は、臨床的アウトカム上のリスクが認められた。

"Low carbohydrate-high protein diet and incidence of cardiovascular diseases in Swedish women: prospective cohort study"  
Lagiou P, et al 
BMJ 2012; DOI:10.1136/bmj.e4026.


ランダム住民サンプルとして43396名のスウェーデン女性(30-49歳)を食事アンケートをとり、15.7年間フォローアップ

炭水化物摂取10分の1減少、蛋白摂取増加、低炭水化物・高蛋白スコア2ユニット増加により統計学的に心血管疾患全体頻度増加と有意に相関 ; 頻度比率推定はそれぞれ  1.04 (95% 信頼区間 1.00 ~ 1.08), 1.04 (1.02 ~ 1.06),  1.05 (1.02 ~ 1.08)

5つの心血管アウトカム研究に関するこれらのスコアとの相関に関し、heterogeneityは存在せず: 虚血性心疾患 (n=703), 虚血性卒中 (n=294), 出血性卒中 (n=70), くも膜下出血 (n=121), 末梢血管疾患(n=82)




 蛋白、炭水化物摂取エネルギー比較は残差法(residual method)を用い行われている。
(Willett W, Stampfer M. Implications of total energy intake for epidemiological analyses. In: Willett W, ed. Nutritional epidemiology. 2nd ed. Oxford University Press, 1998:273-301.)


食事内容はアンケート法なのが限界・・・食事に関する報告はこれがいつも問題になる。





さて、 日本では、極端な糖質制限食がなにかと話題になっているが、果たして、問題はないのだろうか? 変形版low-carb.ダイエットという見方も出来る。

極端な糖質制限で血糖が下がったとしても、心血管疾患リスク増加している可能性がある。

医療関係者なら、臨床実地上助言をするなら、十分確立した事象と、脳内思考とを区別すべきだと思う。軽挙な主張だけを繰り返し、目先の血糖値だけを根拠にしている人たちに遭遇するにつけ情けなくなる。

 極端な糖質あるいは炭水化物制限食は、心血管疾患に関してリスクを有する可能性があることを説明した上で行われるべきである。
血糖や体重の短期的効果だけのメリットだけで 、極端な栄養指導がなされることに、警告が発せられるべきであろう。

コロイド・クリスタル論争:重度敗血症 HES製剤はリンゲルに比べ死亡・腎置換療法リスク増加

コロイド(HES) かクリスタル(リンゲル・アセテート) か?

この議論も長い・・・昨年こんな話題があった。
Boldtスキャンダル:コロイド・”コロイド v クリスタロイド論 2011年 03月 05日


重症敗血症患者において、コロイド(スターチ群)では、クリスタル(リンゲル・アセテート)90日死亡リスク増加、腎置換治療使用増加となった。


Hydroxyethyl Starch 130/0.4 versus Ringer's Acetate in Severe Sepsis

Anders Perner, et.al.
for the 6S Trial Group and the Scandinavian Critical Care Trials Group
June 27, 2012 (10.1056/NEJMoa1204242)
http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa1204242?query=featured_home


Hydroxyethyl starch (HES) 130/0.4 はICUの輸液蘇生剤として広く使用されている。しかし、その安全性・有効性は重度敗血症患者では確立していない。
多施設平行群盲検化トライアルにおいて、重度敗血症患者をランダムに、 6% HES 130/0.4 or Ringer's acetateで、33mL/kg/理想体重で投与

プライマリアウトカム測定は、ランダム化後90日目の死亡/終末期腎不全(透析依存)

ランダム化された804名の内、798名で修正ITT。2つの介入群は同等のベースライン特性。

ランダム化後90日死亡
HES 130/0.4群: 201/398(51%)
Ringer's acetate群:172/400(43%)
(相対リスク, 1.17; 95% 信頼区間l [CI], 1.01 to 1.36; P=0.03); 終末期腎不全は各群1名)

90日間で腎置換療法
HES 130/0.4群: 87 名(22%)
Ringer's acetate群:65 名 (16%)
(相対リスク, 1.35; 95% CI, 1.01 to 1.80; P=0.04)

重度出血
HES 130/0.4群: 38 名(10%)
Ringer's acetate群:25 名 (6%)
(相対リスク, 1.52; 95% CI, 0.94 to 2.48; P=0.09)

この結果は、ベースライン死亡・急性腎障害既知リスク要素補正後、多変量解析でサポートされている。







HES代用血漿剤は、高度に分祀したとうもろこしデンプン成分のアミロペクチンから、加水分解とそれに続くヒドロキシエチル化によって得られる高重合体の糖化合物。グルコース単位(glucose ring)のC4とC1でグリコシド結合(α-1,4グリコシド結合)、主鎖を形成する一方、C6とC1でもグリコシド結合し(α-1,6グリコシド結合)、枝分かれする。
代用血漿剤は、晶質液と異なり、HESに代表されるコロイド成分を含む。このコロイド成分による膠質浸透圧効果によって血管内に水分を引き寄せ、循環血漿量を維持する。
・・・・
分子量が大きいほど毛細血管から漏出しにくいため、循環血液量を長時間維持できる。一方、分子量が小さいと、血管外への漏出や腎臓からの排泄により、投与しても短時間で効果を失う。そのため、分子量は重量平均分子量(Mw)で表す方がより臨床的である。・・・日本では70kDの低分子量のHES製剤が市販されている
(引用:http://www.maruishi-pharm.co.jp/med/libraries_ane/anesthesia/pdf/33/33feature12.pdf)

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