2013年1月16日水曜日

慢性運動コンパートメント症候群

誤診されやすい疾患

Practice; Easily Missed?
Chronic exertional compartment syndrome
BMJ 2013; 346  (Published 15 January 2013)
Cite this as: BMJ 2013;346:f33

http://www.bmj.com/content/346/bmj.f33


Stryker Intracompartmental Pressure Monitor.
http://www.stryker.com/en-us/products/OREquipmentConnectivity/GeneralMultiSpecialtyEquipment/PressureMonitors/IntraCompartmentalPressureMonitor/index.htm

 リクレーションでも、競技アスリートでも生じる下肢痛

"shin splints"(疲労性脛部痛) or "overuse"(使いすぎ)と医療機関で判断され、安静を支持される、安静しても症状は重症化、慢性化し、ランニング不可能となることさえある。


chronic exertional compartment syndrome (CECS)の診断は、

痛みが運動で生じ、8-12分後発症するが、時間は様々、運動をやめない限り痛みは運動で増強する。脛の愛息で発症し、足のしびれやチクチク感を足先端から付け根まで生じ、病変部分を堅く感じ、圧痛を生じる。安静で改善し、通常30分かかる。

疲労性脛部痛と腓骨部ストレス骨折が鑑別疾患として重要。
安静にしても改善しないのが特徴。

コンパートメント部の圧力増加が診断の根拠


局所麻酔にて 筋膜部に挿入し、トレッドミルで症状出現再現をみる
正常では10-12 mmHgの範囲内だが、CECSでは30-40mmHgを上まわり増加する

手術療法が行われ、いわゆる、 "Fasciotomy" (筋膜切開)


急性咳嗽疾患:咳持続 ・・・ 患者は5-7日間と思い込むが、実際は18日間 ・・・しかも抗生剤に過剰期待

 患者の中には薬を飲めばぴたりと咳がとまるとおもってる人もいる。 咳が止まらなければ、医者の抗生剤選択が失敗したものと思ってる・・・そういう患者やその家族が存在する。ひどい場合は、薬代返せとのたまう妙齢の女性も・・・説明しても、そこまで説明しない医者がすべて悪いと・・・ 
 咳嗽に関する患者教育パンフを作成する必要があるのかも・・・
 ついでに、抗生剤なんて咳嗽期間短縮に役立たない、百日咳なんて病初期しか抗生剤意味ないとか・・・知らない医者が多すぎるのも問題。

 開業医にとっての冬場の憂鬱のひとつ・・・咳嗽に関わる患者の誤解と医者の不勉強・・・


患者予測の咳嗽期間と、実際の咳嗽期間に、ミスマッチがあり、さらに、抗生剤が咳嗽期間や症状軽減に役立つという誤解に基づくミスマッチも存在する。

不適切な抗生剤使用はこれらの乖離が要因の一つかもしれない。

How Long Does a Cough Last? Comparing Patients’ Expectations With Data From a Systematic Review of the Literature
Ann Fam Med January/February 2013 11:5-13; doi:10.1370/afm.1430

急性咳嗽性疾患(ACI)に対する抗生剤過剰投与は、患者の予測と、ACIの自然史のギャップ(mismatch)による部分が大きい。

ジョージア州の493名の成人を住民ベースランダムデジタルにてランダムな数値で電話し、ACIに関する予測を測定。文献上の観察研究・ランダム化対照トライアルの未治療対照群のシステマティック・レビューでACIの期間を調査。

咳嗽期間中央値は文献上は17.8日間

調査回答者の予測期間は、5-7日間、さらに、特異的なシナリオでの回答では7.2-9.3日間が平均。

咳嗽期間がより長いと考える回答者群は、白人、女性に多く、喘息・慢性肺疾患を自認する場合である。

抗生剤が常に役立つと信じている場合の独立した予測要素は、非白人 (OR = 1.82, 95% CI, 1.14–2.92)、短大教育以下 (OR = 2.08, 95% CI, 1.26–3.45)、以前の抗生剤使用歴の有る場合 (OR = 2.20, 95% CI, 1.34–3.55)




この雑誌おもしろい

前の報告だが、インフルエンザ診断ルールなんて存在しないという報告、さらに、COPD診断の矛盾なども・・・

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インフルエンザ診断に関わる信頼できる多変量モデル・臨床的意思決定ルールは存在するか・・・否!

A Systematic Review of Clinical Decision Rules for the Diagnosis of Influenza
Ann Fam Med January 1, 2011 vol. 9 no. 1 69-77

12研究を登録するも、前向き評価多変量モデル・臨床的意思決定に関わる信頼に足りうる研究存在せず

熱、咳嗽といったルール、熱、咳嗽、急性発症ルールといった単純な経験則をいくつかの論文で検討。
AUROCは、0.70、0.79、サマリー診断閾値計算不能。

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次の論文は、慢性咳嗽の時プレドニゾロン内服にて可逆性判断を利用してCOPD/喘息の診断使用とすると・・・喘息では可逆性証明できず、COPDでは可逆性を示す例が多いと・・・

ベースラインの処方の影響も考えられると思うけど・・・


Diagnostic Value of Oral Prednisolone Test for Chronic Obstructive Pulmonary Disorders
Ann Fam Med March/April 2011 vol. 9 no. 2 104-109


233名の14日以上の咳嗽例で、COPD・喘息診断されたことのない症例で、プレドニゾロン 30 mg/日、気管支拡張剤前後でFEV1測定

プレドニゾロン反応を
FEV1>200mL もしくは
ベースラインから12%増加
とする

COPD患者では 23%(14/61)
喘息では 4%(1/25)
喘息・COPD無しの患者では 11%(14/133)

予想外なことに、レスポンダーではCOPDと関連(OR、2.4; 95%信頼区間 1.1~5.2)

多変量解析にて、年齢・性別・喫煙状態補正後、OR 2.0(95%CI, 0.8-5.0)で、ROC areaは増加せず (0.78; 95% CI, 0.72–0.85 vs 0.79; 95% CI, 0.72–0.85)

人工呼吸下経腸栄養:胃内残量モニタリング ・・・ 目標カロリー摂取可能比率高い

人工呼吸中、モニタリング下経腸栄養により、目標通りのカロリー投与可能となり、非劣性評価となった。


"Effect of not monitoring residual gastric volume on risk of ventilator-associated pneumonia in adults receiving mechanical ventilation and early enteral feeding: A randomized controlled trial"
Reignier J, et al
JAMA 2013; 309: 249-256.

胃内残量モニタリング(RGV:residual gastric volume、GRVって表現もあるようだ)を用いた場合と未使用とのVAP(人工呼吸器関連肺炎)リスクの比較

ランダム化、非劣性、オープンラベル、多施設トライアル

・胃内残量モニタリング無し、対照群は逆流と嘔吐のみモニタリング
・腸管栄養不耐性は逆流及び嘔吐、胃内残量(<250mL)に応じて投与


2日超の侵襲的人工呼吸必要成人で、9FrICU挿管下、36時間以内の腸管栄養投与
452名をランダム化し、ITT解析449名


ITT解析において、VAP 介入群 38/227(16.7%、対照群 35/222(15.8%)(差、 0.9%; 90% CI, -4.8% ~ 6.7%)

他のICU肺炎、同様、器械式人工呼吸期間、ICU滞在期間、死亡率に有意差認めず。
100%カロリー目標患者比率は、介入群で多い(オッズ比、 1.77; 90% CI, 1.25-2.51; p=0.008)
同様に、per-protocol対象でも同じ結果。

12歳以降発症小児喘息:ADMA/Lアルギニン非対称性発現・NOSアンカップリング機序が重要

12歳以降の喘息において、ADMA/Lアルギニン非対称性発現・NOSアンカップリング機序が重要な病態生理上の役割を果たす

12歳前後で比較の後年発症喘息発現型は、それより若年発現型に比べ、血中L-アルギニン/ADMA比率によりBMIとFENOの逆相関性が明らか。しかも、この血中L-アルギニン/ADMA比は、この発現型において、肺機能、呼吸器症状頻度などと相関性をもち、12歳以降の喘息発症児の病態生理と大きく関連性をもつと考えられる。


An Association between l-Arginine/Asymmetric Dimethyl Arginine Balance, Obesity, and the Age of Asthma Onset Phenotype
Am">http://ajrccm.atsjournals.org/content/187/2/153.abstract.html?etoc">Am. J. Respir. Crit. Care Med. January 15, 2013 vol. 187 no. 2 153-159

BMI高値は、呼気区画FENOの減少と相関する。これは、ADMA/ Lアルギニン濃度非対称性増加のためであり、NO合成酵素(NOS)のuncouplingの増大をもたらす。

喘息発症年齢横断的にこのメカニズムを比較し、喘息合併症・肺機能の関連性を検討

Severe Asthma Research Program:早期発症(12歳未満)、後期発症(12歳以降)の後年発症喘息発現型比較

L-アルギニンADMA中央値濃度高値(後期発症 0.48μM、[中間4分位:IQR, 0.35-0.7 、早期発症 0.37 μM[IQR, 0.29-0.59]
血中Lアルギニン中央値濃度低値(後期発症 52.3[IQR, 43-61]、 早期発症 51μM[IQR, 39-66])
log(血中L-アルギニン/ADMA)は、後期発症発現型において、BMIと相関(r = −0.4, P = 0.0006)
一方、早期発症発現型では相関有意差認めず (r = −0.2, P = 0.07)
後期発症発現型において、FENOはBMIと逆相関するが、L-アルギニン/ADMA補正後その相関性は消失する。
また、この発現型では、L-アルギニン/ADMA比低下は、IgE低値、呼吸器症状増加、肺容量低下、喘息QOL悪化と相関する。

NOはL-arginineを基質として、NOSより産生される。NO産生不全や生物学的活性低下の原因として、1)NOの基質であるL-アルギニンの欠乏、2)NO合成酵素(NOS)の発現低下、3)NOSの二量体の保持に必須である補酵素tetrahydrobioptein(BH4)のケト右房(この補酵素の欠乏によりNOSアンカップリングが生じ、NOSよりNOではなく、活性酵素種(reactive oxygen species:ROS)が産生される。4)ROSによるNOの不活性化、強力なラジカルであるバーオキシナイトライト(ONOOの生成、BH4の酸化、5)ADMAなどのメチル化アルギニンによる競合阻害(ADMAはNOの基質であるL-アルギニンのメチル化異性体)などが挙げられる。なかでもADMAは、CVD、糖尿病、メタボリック症候群、CKD患者血中で増加し、その上昇が、内皮障害や動脈硬化の程度のみならず、CVD発症、CKD進展や生命予後の重要な規定因子であることが相次いで報告されてきており、内皮障害の主要な原因物質かつCVD、CKDの有用なバイオマーカーとして着目されている。
http://www.book-stack.com/browsing/msd201006t.pdf

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