2012年7月20日金曜日

スピロノラクトン: 心不全患者長期使用で 乳がんリスク増加せず

心血管疾患や肝疾患を含む状態にスピロノラクトンは広く用いられる。RALES(左心不全)では生存率延長効果を示し、各ガイドラインで薬剤抵抗性高血圧への処方を推奨されている。

一方で、動物モデルでの悪性疾患の関心のため英国からライセンス撤退。齧歯類での発がん性を危惧されている。スピロノラクトンを患者にインフォームドコンセント必要とNICEガイドラインでは記載されている。

・・・ということで、 コホート後顧的検討で、乳がんリスク増加を否定した報告。


疾患既往のない55歳以上の女性にスピロノラクトンを心血管疾患条件長期使用で乳がんリスク増加せず

Spironolactone and risk of incident breast cancer in women older than 55 years: retrospective, matched cohort study
BMJ 2012; 345 doi: 10.1136/bmj.e4447 (Published 13 July 2012)
Cite this as: BMJ 2012;345:e4447







心不全や肝不全時スピロノラクトンに発がんに関するインフォームドコンセント必要というのは・・・

NICE:
http://publications.nice.org.uk/hypertension-cg127/guidance#choosing-antihypertensive-drug-treatment-2
 At the time of publication (August 2011), spironolactone did not have UK marketing authorisation for this indication. Informed consent should be obtained and documented.

結果そのものより、スピロノラクトンのインフォームドコンセント義務があることに驚いた。


添付文書には
ラットに24ヵ月経口投与した癌原性試験において内分泌臓器の腫瘍及び肝臓の増殖性変化がみられたとの報告がある。
また,長期間服用した患者(男女とも)に乳癌が発生したとする症例報告がある。
と書かれており、製薬会社や厚労省は逃げ口上を作っている。後発推進のこの国において、この主の安全性情報は無きに等しい。

ヨーロッパ:腸管出血性大腸菌感染HUS治療戦略評価

日本では、 腸管出血性大腸菌 治療指針を見直しへ (2012年4月6日) 【北陸中日新聞】とのことらしいが・・・



ヨーロッパで問題になった腸管出血性大腸菌の分析にて
・ 血漿交換ベネフィット明確でなく、補体カスケードモノクローナル抗体治療は有効。
・ Meropenem 、 Ciprofloxacin、 Rifaximinなどの抗生剤組み合わせ積極治療群は、有害性エビデンスなく、むしろ有益な可能性

・・・という結論。


日本の治療指針にも、影響をあたえるのかもしれない

Validation of treatment strategies for enterohaemorrhagic Escherichia coli O104:H4 induced haemolytic uraemic syndrome: case-control study
BMJ 2012; 345 doi: 10.1136/bmj.e4565 (Published 19 July 2012)

一時的透析必要 160/298(54%)、長期間必要 3名
37(12%)で痙攣、54(18%)で人工呼吸、12(4%)死亡

血漿交換、グルココルチコイドと血漿交換は、ベネフィット明確でない

eculizumab(補体カスケードに対するモノクローナル抗体)治療67名で、短期ベネフィットがこの治療に関して認められた。

抗生剤組み合わせ積極治療群の一つのセンターは痙攣が少ない (2% v 15%, P=0.03)、死亡少なく(0% v 5%, p=0.029)、腹部手術必要性少なく、大腸菌検出短期化の効果有り






関連:

ドイツ腸管出血性大腸菌感染症:"Shiga tox 2"をエンコードするプロファージが侵襲性・薬剤抵抗性の主因  2011年 07月 28日


ヨーロッパ腸管出血性大腸菌流行 ・・・ やはり原因は、汚染新芽野菜?  2011年 06月 06日

Egg Oral Immunotherapy (OIT) :卵アレルギーに対する経口減感作

Egg Oral Immunotherapy (OIT)


一般メディアでは、自宅では絶対にしないように・・・と付記されて報道されている。

米国では食物アレルギーをもつ子供は約4%で、3Tほどが卵アレルギーを有するとのこと
抗原回避しか対処法がなかった卵アレルギー治療に大きなてんかんをもたらすことになる

Oral Immunotherapy for Treatment of Egg Allergy in Children
A. Wesley Burks, et. al.
for the Consortium of Food Allergy Research (CoFAR)
N Engl J Med 2012; 367:233-243July 19, 2012

5-11歳の卵アレルギーの子供を二重盲検ランダム化プラシーボ研究で、経口免疫療法とプラシーボ比較

治療10ヶ月後、経口食品チャレンジ合格・脱感作成功は
プラシーボでは0、経口免疫減感作では55%

22ヶ月後、経口免疫療法群の75%脱感作

経口免疫療法群で、24ヶ月めで経口減感作合格は28%(11/40)で、過敏反応消失は継続していると考える。

24ヶ月め経口暴露試験合格の子供は、30ヶ月、36ヶ月には全員卵を食べていた。


免疫マーカー測定の内、皮膚プリック試験の膨疹径縮小、卵特異的IgG4抗体値増加が、24ヶ月目経口食物暴露合格と相関。




スポーツドリンク:商用主義により作られた幻想 ・・・ 熱中症予防の嘘、スポーツ・パフォーマンスへの効果など

 スポーツドリンクは運動をするものにとって大事な補助となるものだが、著しく、その科学的エビデンス欠如している。 エビデンスらしきものの中には重層的に商業主義に影響された恣意的実験結果や思い込みを多く含むというお話。


Sports Drinks
BMJ 2012; 345 doi: 10.1136/bmj.e4737 (Published 19 July 2012)



“One drink in particular”として、Robert Cade(フロリダ大学)の1960年代に製造 → Gatorade(アメリカフットボールチーム由来) → ペプシコ、GSK、コカコーラなどの商用


その後これらメーカーとスポーツ関連事業と、スポンサーに支えられた科学的報告・・・具体的にはGSKの科学研究所設立と講演シンポジウムなどの利用。他企業も同様なスポンサー活動を行っている。


・ “乾き”・“脱水”プロモーションへの学術が荷担している現状
 ・商用主義先行の“脱水の科学”

・・・に始まり


・  “乾き”との関係
・ 尿の色や尿検査をガイドにする方法
・ 低ナトリウム血症、学校スポーツへの商用関与

「bottled water」会社と「スポーツドリンク」会社との“水戦争” の結果、スポーツドリンクメーカーは、水と比較して、 多く量を摂取できること、水蓄積、炭水化物摂取可能、一番は味ということを主張。


だが、「スポーツドリンク」会社側のEuropean Food Safety Authority (EFSA) 提出データでは、持久運動のパフォーマンス改善効果に関しては主張ほどの、はっきりしたエビデンスは存在しない


 アスリートから一般の人へのマーケッティングを行っており、肥満への影響も懸念される。

脱水の極度の状況、熱疲労・熱射病・筋痙攣・横紋筋融解症を極度に強調し、極端な人工環境による知見に基づくデマ(Scaremongering)。入院する程度の熱中症で脱水は17%程度と、American College of Sports Medicine (ACSM)の報告で、同様のUS軍隊での報告もある。HEAT Institute のNFLプレイヤーの研究で脱水だけで核温度への影響を与えないという報告である。

“脱水により熱中症を引き起こす”ことを示した報告は熱中症と脱水を起こすべく設定されているものばかりであると指摘。

 British Journal of Sports Medicineもこのことを認め、“現実のフィールド条件に一致した熱中症と運動の関係に関して対照化実験はまず存在しないとしている。



上記解説記事全般、学術的権威のある団体や文献の数々であり、情緒的批判から構成されている内容ではない。

Disease mongering”(病気を利用して製薬会社が金儲けすること)はよく知られているが、「脱水」や「運動」において、世間一般を恐怖に陥れるScaremongeringをネタに金儲けするインチキ商売がこの分野で行われ続けてきた。

インチキは市井の常識として固定し、いつの間にか、医学的な専門家達もそれを常識と思い込み、そういうインチキの普及に我々自身が荷担 してる。

熱中症予防に関して、患者からアドバイスを求められたとき、「OS-1のような・・・」とかそのエビデンスを検討もせず、助言してないだろうか?

最近みた、あるテレビ局の報道番組の“熱中症” ニュース、「OS-1」を背景に、“水分をとること”と解説、指導していた。その指導は科学的根拠に乏しいことを知って知らずか・・・ステルスマーケッティングとなっている。






Exercise-associated hyponatremia (EAH)
CJASN January 2007 vol. 2 no. 1 151-161




低ナトリウム血症は、過剰な水分摂取、塩分喪失だけの問題では無く、塩分蓄積量及び浸透圧相互作用、代謝水、そして、尿希釈能障害(濾過量低下・腎血流低下・遠位尿細管到達血流低下)や、AVPの増加(非特異的ストレス、運動、熱、IL-6、水分容積減少による)などによると考えられている。

純に、塩分摂取不足や水分過剰摂取だけが問題ではないことを医療者はよく理解する必要があるだろう。


単純に、塩分摂取不足や水分過剰とだけ説明している医療関係者が多すぎることに問題がある。

今後、この"desalination"という現象と、向き合う必要がある。

Postoperative Hyponatremia despite Near-Isotonic Saline Infusion: A Phenomenon of Desalination
Andrew Steele, et. al
Ann Intern Med. 1 January 1997;126(1):20-25

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