2013年4月8日月曜日

COPD有無での市中肺炎の急性炎症反応パターンの違い

 全身性炎症反応(SIR: systemic inflammatory response)のパラメータは、市中肺炎において、有益。PCT、CRP、IL-6、IL-8、は治療効果・臨床経過を評価するのに有益。IL-6、IL-10は病因同定のため、IL-6、IL-8、PCT、CRPは治療失敗リスクや臨床経過評価のため、死亡率推測のため役立つ。CAPNETZ study(BMC Pulm Med. 2012; 12: 6.)では、IL-6、IL-10、LBP(lipopolysaccharide-binding protein)が、CRB-65スコアと関連し、CAPの細菌学的要素であることを示唆することが示された。



COPDにおける市中肺炎において、COPD無しの場合の市中肺炎と、炎症性パターンが異なるか、検討。

・入院日において、COPD基礎疾患あると、TNF-α、IL-1、IL-6は有意に低値
・IL-6低濃度は吸入ステロイド患者のみ
・入院時TNF-αは、COLD基礎疾患患者で低値
「これらの炎症反応の違いは、臨床経過に決定的役割を果たしていそうも無いが、早期炎症反応の違いが示された。その意義に関して相関性を前向きに考慮する必要がある」と筆者等の考察。



Systemic Inflammatory Pattern of Patients With Community-Acquired Pneumonia With and Without COPD
Ernesto Crisafulli, et. al.    
Chest. 2013; 143(4):1009-1017. doi:10.1378/chest.12-1684
背景: 市中肺炎(CAP)を有するCOPDの役割を臨床研究で評価。全身性炎症反応を、CAP+COPDと、COPDなし(CAP only)で比較


方法:  367名の臨床的、微生物学的、免疫学的データを367名の入院から前向き3年間集積。比較分析を行った(CAP+COPD n=117, CAP only n= 250)、吸入ステロイド使用、経口ステロイド治療有無で解析

結果:  臨床的重症度・予後(入院時、30日、90日時点での死亡率)の詳細特性は、両群同様。
再入院・肺炎既往頻度は、CAP+COPD群で、高い。

入院日(day 1)において、CAP+COPD患者は、CAP-onlyに比べ、血中TNF-α、IL-1、IL-6濃度は有意に低く、 残りの臨床マーカー(CRP、 IL-8、 IL-10)はday 1 、day 3で同様。

ICSと経口ステロイドの在宅使用患者除外後、CAP+COPD患者で、day 1のTNF-α低値。
IL-6の低濃度は、ICS使用COPD患者でのみ見られた。




結論: 後顧的研究で、CAP患者において、COPD有無患者間で、疾患特異的早期炎症マーカーパターンの差が示された。これらの所見は、勧善にステロイド介入によるもののみとも言いがたい。


COPD:吸入ステロイドは結核発症リスク増加をもたらす

経口ステロイドと抗TNF-αは結核リスク増加するが、吸入ステロイドのリスクに関しては知識に乏しい、後顧的コホート研究(2000年1月1日から2005年12月31日)





Inhaled Corticosteroid Is Associated With an Increased Risk of TB in Patients With COPD
Jung-Hyun Kim, et. al.
Chest. 2013; 143(4):1018-1024. doi:10.1378/chest.12-1225


結核発症20名
Kaplan-Meier推定にて、結核のレントゲン的後遺症所見を有する場合の、ICSユーザー間の結核発症リスク増加 (p < 0.001)
多変量Cox回帰にて、ICS使用は、胸部レントゲン正常患者でも、独立した肺結核発症のリスク要素 ( ハザード比, 9.079; 95% CI, 1.012-81.431; P = .049)
結核既往レントゲン後遺症を有する場合も同様  (は, 24.946; 95% CI, 3.090-201.365; P = .003).




COPD急性増悪時抗生剤使用 前向き検討:クラリスロマイシンの心血管イベント・全死亡率への影響

真向きデータベース集積解析;英国の2009−2011年英国12病院いづれか受診したCOPD患者での、1343名の検討
それに市中肺炎1631名患者での検討を加えたもの

COPD急性増悪は、ABC療法  (antibiotics, bronchodilators and corticosteroids)


クラリスをマクロライド系の代表と考えると、その第一である抗生剤(antibiotics)の選択として影響を与える。ただし、フルオロキノロン系もQT延長などに影響を与えるわけで・・・薬剤選択隘路に・・・


Cardiovascular events after clarithromycin use in lower respiratory tract infections: analysis of two prospective cohort studies
Stuart Schembri, et. al.
BMJ : British Medical Journal, Vol. 346 (21 March 2013)
doi:10.1136/bmj.f1235 Key: citeulike:12211912

心血管イベント発生 1年間で、COPD急性増悪 268、 CAPコホート 171


COPD急性増悪では、多変量補正後、クラリスロマイシンは、COPD急性増悪にて、心血管イベント、急性冠症候群で、それぞれハザード比 1.50(95% 信頼区間, 1.13 - 1.97)、 1.67 (1.04 - 2.68)

COPD急性増悪コホートの心血管疾患イベント Cox補正生存率カーブ


市中肺炎では、それぞれ、 1.68 (1.18 - 2.38)、しかし、急性冠症候群では有意でなかった ( 1.65, 0.97 - 2.80)

一般住民肺炎コホートでのCox補正生存率カーブ

クラリスロマイシンと心血管イベントの相関は、 propensityマッチ化後も維持。

COPD急性増悪における、クラリスロマイシンと心血管死亡率の有意相関がみられる(補正ハザード比 1.52, 1.02 - 2.26)が、全原因死亡率では見られない( 1.16, 0.90 - 1.51)。


市中肺炎と全原因死亡率も相関認めず。

クラリスロマイシンのより長期使用は、より心血管イベント増加と関連する。

βラクタム及びドキシサイクリン使用は、心血管イベント増加と関連せず、クラリスロマイシン特有の副作用と思われる。



アジスロマイシンと心血管死亡リスク:絶対的影響は少ないが、心血管疾患患者では考慮必要? 2012/05/17

米国FDA警告:ジスロマック・致死的不整脈リスク 2013/03/13

急性肺障害:マクロライド抗生剤使用によりアウトカム改善 2012/05/02 

COPD急性増悪予防:アジスロマイシン持続療法 2011年 08月 25日

カルニチン:腸内微生物で代謝され、動脈硬化促進的に働く

カルニチンというのは、サプリメントにも含まれるが、red meatに存在する。これが、腸内細菌により、trimethylamine-N-oxide (TMAO)という物質に代謝され、動脈硬化促進的に働くという報告。

いままでは、肉類、red meatに含まれる、脂肪が動脈硬化促進の主役ということで説明されていたが、肉類の悪役要素が又一つ増えたことになる。
しかも、サプリメントとしてありがたがられ、販売されているカルニチンが関与しているという報告。
Intestinal microbiota metabolism of L-carnitine, a nutrient in red meat, promotes atherosclerosis
Robert A Koeth, et. al.
Nature Medicine (2013) doi:10.1038/nm.3145
Received 07 December 2012 Accepted 27 February 2013 Published online 07 April 2013
cholineと phosphatidylcholineの腸内細菌による代謝産物は、 trimethylamine (TMA)を産生する。これは、proathrogenic特性をもつ代謝産物  trimethylamine-N-oxide (TMAO)にさらに代謝される。
食事性L-カルニチンである、trimethylaminは、red meatに豊富
TMAOはマウスで動脈硬化促進的

ベジタリンや野菜食より、肉食主体のヒトでは、より微生物によるメカニズムを通してL-carnitine吸収盛んで、ヒトの便中微生物の存在でその関連性が示された。


炭水化物抜きとかがもてはやされているが、重篤な心血管疾患アウトカムに関する有益性臨床的エビデンスとして乏しい・・・にもかかわらず、目先の体重の変動だけを是とする主張にマスコミは一方的に肩入れしているようだ。

結果、red meatの摂取増加を促進し、動脈硬化促進的に・・・ 世間を誘導する。

昨日も、森田なんたらという医師資格をもつらしい医療ジャーナリストが "empty calory"の誤用をやらかしていた。テレビや印刷物、ネット情報を見るにつけ、なんだか悲しくなる。



L−カルニチンについて
http://www0.nih.go.jp/eiken/chosa/karuni.html

L-カルニチン、コエンザイムQ10およびα-リポ酸は、ダイエット効果を標榜する「いわゆる健康食品」に含まれている話題の食品素材です。生化学の教科書では、これらの素材はいずれもエネルギー消費やエネルギー産生に重要な役割を果たすことが示されています


厚労省さん、はやく書き換えてくださいね!!!

noteへ実験的移行

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