2018年9月11日火曜日

運動と降圧剤ARBの効果は相加的

メタボリックシンドローム・高血圧患者では、一定の運動により数時間血圧低下をもたらす。このメカニズムは不明だが、運動後筋肉交感神経系活動低下・局所的血管拡張(ヒスタミン受容体活性化など)、骨格筋内血管拡張など関連など考察。
降圧剤ARBはAngiotensin IIによる血管収縮への拮抗、アルドステロン、カテコラミン、アルギニンvasopressin遊離など。AT1受容体拮抗は骨格筋血管構造だけで無く神経末端、腎臓、心臓、脳、副腎、血小板、脂肪細胞へ局在。
次に、ARBはアンギオテンシンII誘発血管収縮を拮抗させ、アルドステロン、カテコールアミン、およびアルギニンバソプレシン放出を減少させることによって血圧を低下させる。

運動が骨格筋血流数倍増加し、骨格筋内血管床のAT1受容体と相互作用し、相加効果あるいは相乗効果をもたらさないか? 逆に運動後の血圧低下はARBの降圧効果とそう反する可能性はないか?

運動と薬物療法の併用が推奨されている現状、その効果を確認する必要性があると・・・

結論から言えば、ARBと強度運動は、各々独立した効果で、相加的であると


研究対象15名のメタボリック疾患を有するARB通常服薬・高血圧患者

盲検順番

  • ARB通常用量服用後:ARB MEDトライアル
  • プラシーボ服用後: PLACトライアル



Intense aerobic exercise lowers blood pressure in individuals with metabolic syndrome taking antihypertensive medicine
Blood Pressure Monitoring: October 2018 - Volume 23 - Issue 5 - p 230–236
doi: 10.1097/MBP.0000000000000328

プラシーボ投与後、上腕血圧 収縮期 5.5 mmHg増加、拡張期 2.5 mmHg増加

運動にて収縮期、拡張期血圧同様低下(ARB MED、PALCトライアルとも)( 収縮期血圧 7、 9 mmHg、拡張期血圧 5、4 mmHg)

パルス波測定arterial stiffnessは運動・薬物間に相互効果無し

血管閉塞後reactive hyperemiaは運動後、ARB MEDトライアルのみ増加( 361± 169 → 449 ± 240% ベースラインからの変化量; p=0.033; ES = 0.429)


 



運動:
エルゴメータ ウォームアップ5分間 (女性 30 W、男性 50 W)→毎分漸増9分間(女性 15 W/分、 男性 20 W/分)→ウォームダウン 5分間:計 19分間




【都市部】空気清浄フィルターにてPM2.5暴露低下→血圧低下効果有り

PM2.51大気汚染は心血管併存症・死亡率の重大な全般リスク要素であるが、都市部でその対策としてのportable air filtration systemの有効性検証


ランダム化二重盲検交叉介入
3つの3-dayシナリオを1週間のwash-out期間を設けて交叉比較

寝室・リビングに設置

  • フィルターなし空気:unfiltered air(sham filtration)
  • 低効率(LE) 高効率分子状粒子捕獲装置、いわゆるHEPA(high-efficacy particular arrestance)フィルター空気
  • 高効率(HE)真のHEPAフィルター


主要アウトカム:上腕血圧
セカンダリアウトカム:大動脈血行動態、PWV、心拍変動


米国都市部では、携帯型換気フィルターシステムでさえ、PM2.5暴露低下させ、収縮期・拡張期血圧低下作用示す。
故に、さほど高価でないこの装置は、PM2.5暴露心血管疾患防御対策として有効?

Effect of Portable Air Filtration Systems on Personal Exposure to Fine Particulate Matter and Blood Pressure Among Residents in a Low-Income Senior Facility
A Randomized Clinical Trial
JAMA Intern Med. Published online September 10, 2018. doi:10.1001/jamainternmed.2018.3308


被検者40名、平均(SD)年齢 67(8)歳、男性 62%

個別PM2.5暴露は、空気フィルターにて有意減少 平均(SD)

  • sham フィルター  15.5 (10.9) μg/m3 
  • LEフィルター 10.9 (7.4) μg/m3
  • HEフィルター  7.4 (3.3) μg/m3 


shamフィルターに比べ、どちらの空気フィルターも上腕収縮期血圧、上腕拡張期血圧減少
各々、 3.2 mm Hg (95% CI, −6.1 to −0.2 mm Hg、 1.5 mm Hg (95% CI, −3.3 to 0.2 mm Hg)

3-day期間中

  • LEフィルターでも持続的低下 平均   3.4 mm Hg (95% CI, −6.8 to −0.1 mm Hg)、 2.2 mm Hg (95% CI, −4.2 to −0.3 mm Hg)

  • HEフィルターでの低下  2.9 mm Hg (95% CI, −6.2 to 0.5 mm Hg) 、 0.8 mm Hg (95% CI, −2.8 to 1.2 mm Hg)


セカンダリアウトカムはどれも有意改善に至らず



PM2.5捕獲効果が前提なはず、安価な・・・と書かれているが・・・


それと、オゾンなど産生してくれる喘息増悪装置を変なネーミングで売ってる大企業もあるし・・・油断ならねぇ



消臭は今回のテーマとズレるが、この動画ほんとだろうか?
一流メーカーでも、危険なオゾン濃度となる製品がある
 ↓

転倒高リスク高齢者に太極拳は通常運動より有効



高齢者転倒予防に対する、太極拳 vs ストレッチ運動対照比較

単盲検3群平行群ランダム臨床トライアル

  • TJQMMB(Tai Ji Quan: Moving for Better Balance) :修正法 太極(tai ji, taichi) 週2回、60分クラス、24週間
  • MME(multimodal exercise)プログラム:integrating balance、エアロビクス、strength、柔軟運動
  • ストレッチ運動

主要アウトカム:6ヶ月後の転倒頻度

Effectiveness of a Therapeutic Tai Ji Quan Intervention vs a Multimodal Exercise Intervention to Prevent Falls Among Older Adults at High Risk of Falling A Randomized Clinical Trial
Fuzhong Li, et al.
JAMA Intern Med. Published online September 10, 2018. doi:10.1001/jamainternmed.2018.3915


ランダム化 670名、年齢平均(SD) 77.7(5.6)歳、 女性 436(63.5%)、白人 617 (92.1%)、アフリカ系 31(4.6%)

転倒 TJQMBB群 152(85名)、 MME群 218 (112名)

6ヶ月時点での進展運動比較の罹患率比(incidence rate ratio)はTJQMBB群で低値 (IRR, 0.42; 95% CI, 0.31-0.56; P < .001) 、 MME 群も低値 (IRR, 0.60; 95% CI, 0.45-0.80; P = .001)

転倒は、TJQMBB群ではMME群比較で31%減少 p (IRR, 0.69; 95% CI, 0.52-0.94; P = .01)


結論・知見:転倒高リスク地域在住高齢者において治療的にテイラー化した太極拳バランストレーニング介入は通常の運動アプローチに比べ転倒頻度減少へより有効なアプローチ



単盲検試験ということだが、こういう種の研究デザインというのは難しそう

evidence map報告されているが、一般健康状態、心理状態、高齢者、バランス、高血圧、転倒予防、認知機能など全般的にpromisingなmapとなっている

An evidence map of the effect of Tai Chi on health outcomes
https://doi.org/10.1186/s13643-016-0300-y





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