2013年5月2日木曜日

若年・中年:アジスロマイシンは心血管死亡リスク増加関連せず

米国FDA警告:ジスロマック・致死的不整脈リスク 2013/03/13

これ以来、少々使用を差し控えている・・・


今回、若年・中年者においては、心血管死亡リスク増加否定的報告がなされた。
この報告を全面的に信頼するにしても、高齢者や背景疾患患者ある場合、真に安全なのか、まだ不安は払拭されない。


"Use of azithromycin and death from cardiovascular causes"
Svanström H, et al
New Engl J Med 2013; 368: 1704-1712.
18-64歳のデンマーク国内ヒストリカル・コホート (1997−2010)
アジスロマイシン使用 1,102,050 エピソード比較
propensity scoreによるマッチ化 1:1 比率
総計 2,204,110エピソード
アジスロマイシン 1,102,41 エピソード
PCV 7,364,292 エピソード(同じ適応による抗生剤投与で、propensity score補正) 
 
心血管疾患原因死亡率は、アジスロマイシン現行使用で有意増加(5日間治療エピソード定義)、抗生剤無治療比較 発生率 2.85; 95% 信頼区間 [CI], 1.13-7.24)
現行抗生剤使用中の心血管原因死亡 アジスロマイシン使用 17 (1000人年あたり粗死亡率 1.1)、PCV使用 146 (粗死亡率 1.5)

propensity score補正後、アジスロマイシン現行使用は、PCV比較で心血管疾患死のリスク増加と関連せず(rate ratio, 0.93; 95% CI, 0.56 − 1.55)。

アジスロマイシンのPCV比較での現行使用の補正絶対的リスク差は、100万治療エピソードあたり −1 (95% CI, -9 〜 11)


抗生剤無使用 vs 抗生剤使用比較をどのように説明しているか・・・discussionの冒頭付近に、抗生剤無使用に関する背景が異なる旨の説明がなされている。propensity score補正が十分でなかったことを告白してるようなものなのだが・・・

「リラクセーション反応」のトランスクリプトームへの影響:ミトコンドリアATPase、インスリン、NF-κBのfocus hub判明

ストレス、すなわち、fight-or-flight responseの反対の心理学的・心理状態は、リラクセーション反応(弛緩反応):relaxation response (RR)である。心身相関に関連する様々な介入にて慢性のストレス減少介入や、リラクセーション反応を誘発するwellnessの促進介入などがなされている。結果、ストレスによる臨床的悪影響に対する効果が、高血圧、不安、不眠、糖尿病、リウマチ、加齢などで示されている。

リラクセーション反応は、言語、音、フレーズ、繰り返しの祈り、動作、悟りなど含まれる。瞑想、ヨガ、念仏、祈りなども含まれる。これらは、生物化学的同調的な変化、すなわち、酸素消費量を減らし、炭酸ガス排泄を減らし、心拍・呼吸数を減少させ、ノルエピネフリン反応を減少させ、心拍変動を減少させ、脳の皮質・皮質下領域の変化をもたらす。

リラクセーション反応により生じる、エネルギーメカニズム、インスリン、炎症性経路へのトランスクリプトーム変化の研究


Relaxation Response Induces Temporal Transcriptome Changes in Energy Metabolism, Insulin Secretion and Inflammatory Pathways
Bhasin MK, et. al.,
PLoS ONE 8(5): e62817. doi:10.1371/journal.pone.0062817


リラクセーション反応(RR)は、ストレス反応の逆。数千年も前から、リラクセーション反応は実践されていた。瞑想、ヨガ、祈祷の繰り返し。
高血圧、不安、不眠、加齢などの病的状態でのストレスの臨床的悪影響に対抗して、RRを治療介入として行おうとする動きはあるが、基礎となる分子メカニズムは未だ不明。

数年ものリラクセーション反応実践健康被験者と、RRトレーニング8週間前後初心者の、1セッションのRR実践中のrapid time-dependent (temporal) genomic changeの評価のため、RR-誘発、健康教育CD視聴の前、直後、15分後の末梢血transcriptome測定

短期間・長期間実践者ともに、有意名遺伝子発現変化が見られ、初心者に比べ後ほど明確になる。

RR実践は、エネルギー代謝、ミトコンドリア機能、インスリン分泌、テロメア維持と相関し、炎症性反応やストレス関連経路に関わる遺伝子発現を減少させる。

RR-関連経路のinteractive network analysisにて
ミトコンドリアATP synthaseとインスリンが、トップのupregulateされた分子(focus hubs)
NF-κB経路遺伝子が、トップのdownregulateされたfucus hubsとして同定された

結果、リラクセーション反応参加すること、特に、長期間継続後、特に、そのdownstream的健康ベネフィットをもたらす。それは、ミトコンドリア・エネルギー産生、しそて、ATPaseとインスリン機能のupregulationを通して、ミトコンドリアのresirency(弾性)促進的に働くためである。
ミトコンドリア弾性は、また、リラクセーション反応による促進を、ストレスを緩和するNF-κB関連upstream及びdownstreamターゲットによりもたらす。

高血圧への瞑想法の有効性 ・・・ 薬剤服用遵守性改善だけの効果? H24/11/05

well-being、共感、患者中心ケアへの態度の改善が見られた、念的瞑想を含む医師生涯学習 2009年 09月 24日

心血管疾患既往患者: 瞑想法により心血管アウトカム改善 H24/11/15 

マインドフルネスベースストレス軽減トレーニング:老人の孤独さ改善し、炎症惹起軽減効果も?H24/12/07


プライマリケア急性咳嗽:肺炎可能性判断にCRPは付加的価値あり、プロカルシトニンは価値認めず

私は困ったとき、「CRPの神様」に聞いてみようということで、レントゲン撮影や重症度の一指標にするのだが・・・昨今

・CRP不要と声だかに騒ぐ人たちが居る
・ここに来て、今年の日本呼吸器学会総会に、プロカルシトニン濃度の演題がやたらと多かった


・・・ということで、CRPは時代おくれ?

少なくとも、プライマリケアにおける急性咳嗽患者を対象にした場合の肺炎の可能性指標には役立つことが判明。ちょっと安心。


Use of serum C reactive protein and procalcitonin concentrations in addition to symptoms and signs to predict pneumonia in patients presenting to primary care with acute cough: diagnostic study
BMJ 2013; 346 doi: http://dx.doi.org/10.1136/bmj.f2450 (Published 30 April 2013) Cite this as: BMJ 2013;346:f2450

【目的】肺炎予測のための症状・サインに加え行ったとき、そして、診断ツールとして使用したときの、選択的炎症性マーカーの診断正確性定量化

【デザイン】2007年から2010年間に行われた診断研究。被験者を病歴聴取、初診時から連日、身体所見、血中CRP、procalcitonin測定し、7日以内に胸部レントゲンを行う

【セッティング】 欧州12ヶ国のプライマリケアセンター

【被験者】急性咳嗽成人

【主要アウトカム】 放射線科医師による肺炎、胸部レントゲン判断時他の情報を盲目化

【結果】 研究登録3106名のうち、286名を胸部レントゲン撮影無し、あるいは、不適切として除外、残り2820名(平均年齢 50, 男性比率 40%)のうち、140(5%)で肺炎。

1675回の胸部レントゲン写真サブセットの再評価にて一致率 94%(κ 0.45, 95% 信頼区間[CI], 0.36 - 0.55)

6つの公表"症状・徴候モデル"で、その判別性にばらつき有り (area under receiver operating characteristics curve (ROC) は 0.55 (95% CI 0.50 to 0.61) 〜 0.71 (0.66 - 0.76))。

検討患者からの臨床的予測アイテム組み合わせ上最適なのは、鼻汁が無いこと、息切れの存在、聴診上のcrackles、呼吸音減弱、頻拍、熱で、ROC areaは  0.70 (0.65 - 0.75)

CRP(至適カットオフ値  30 mg/L)を加えることで、ROC area  0.77 (0.73 - 0.81)、診断分類の改善(net再分類改善度 28%)


“症状、徴候、CRP > 30 mg/L"による1556名の患者分類で、肺炎”低リスク”(<2 .5="" blockquote="">
"high risk"とされた20%超の場合の132名では、肺炎頻度 31%。

陽性尤度比は、肺炎低、中間、高リスクで、それぞれ、0.4、1.2、8.6

プロカルシトニンを加えても診断情報付加なし

症状、所見、CRP > 30mg/Lに基づく単純な診断スコア、低度、中等度、高度、肺炎の比率は、0.7%、3.8%、18.2%。

【結論】プライマリケアでの急性咳嗽を呈する患者での、症状・所見に基づく臨床ルールは、軽症・重症臨床所見患者でベストなパフォーマンスを示す。

至適CRP濃度 < 30mg/L濃度という情報を加えることで、この群の臨床的に明らかな情報提供改善をもたらすが、プロカルシトニン濃度は明らかな価値認めない。





肺炎線形推定値:
・symptoms and signs=1/(1+exp−(−3.984+0.446×breathlessness+0.698×absence of runny nose+0.596×diminished vesicular breathing+1.404×crackles+0.961×tachycardia+0.980×temperature >37.8°C))

・symptoms signs and CRP=1/(1+exp−(−4.270+0.446×breathlessness+0.698×absence of runny nose+0.596×diminished vesicular breathing+1.404×crackles+0.961×tachycardia+0.980×temperature >37.8°C+0.130×(CRP/10)))

・symptoms signs and PCT=1/(1+exp−(−4.023+0.446×breathlessness+0.698×absence of runny nose+0.596×diminished vesicular breathing+1.404×crackles+0.961×tachycardia+0.980×temperature >37.8+0.160×(PCT×10)))

美容豊胸術既往者では、乳がん発見後の生存率悪化

美容的豊胸術で、早期診断及び診断の困難さを生じ、乳がん死亡率悪化という結論になりそうだが、筆者等の結論は慎重。

乳がん診断女性の病期分布で、美容目的の豊胸手術既往とそうでないものの差がある。乳がん診断後予後に関し、システマティック・レビューとメタアナリシス

Breast cancer detection and survival among women with cosmetic breast implants: systematic review and meta-analysis of observational studies
BMJ 2013; 346 doi: http://dx.doi.org/10.1136/bmj.f2399 (Published 30 April 2013)

【結果】12研究での初回メタアナリシスの包括的オッズ比は、
乳がん診断時非限局性病期発見 豊胸術有り vs 無し 1.26(95% 信頼区間[CI], 0.99-1.60; p=0.058; I2=35.6%)
5つの研究に基づく2つめのメタアナリシスにて、美容目的豊胸術と生存率に相関関連評価。このメタアナリシスにて、豊胸術後の乳がん生存率の減少認めた  (乳がん特異的死亡率包括的ハザード比1.38, 95% CI 1.08 to 1.75)

【結論】研究出版データにより、美容的豊胸術は、その後の乳がん診断後の生存率に関し悪影響を与えている。この所見の解釈は注意が必要で、生存率メタアナリシスでは、必ずしも寄与要素補正されてないためである。さらなる検討が必要かも

経関節鏡的膝関節半月板部分切除術:半月板損傷・変形性膝関節症:機能アウトカム改善せず




半月板損傷及び膝関節症有症状患者への経関節鏡的膝関節半月板部分切除術が、必ずしも非手術的治療より機能的アウトカムに関して優越性あるか不明。

45歳以上の半月板損傷及び軽症・中等症変形性関節症の画像所見有りの症例351名を多施設ランダム化割り付け

・手術及び・術後理学療法
・標準化理学療法レジメン

ランダム化後6ヶ月のITT解析にて、機能的改善に関して有意差無し





Surgery versus Physical Therapy for a Meniscal Tear and Osteoarthritis
Jeffrey N. Katz, et. al.
N Engl J Med 2013; 368:1675-1684May 2, 2013


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