2019年5月31日金曜日

好酸球由来IL-13は気腫促進的に働く

GOLD2019からさらに好酸球比率の臨床的重要性が強調されることがある。

GOLD science committee report 2019
https://kaigyoi.blogspot.com/2019/05/gold-science-committee-report-2019.html

COPDに於る好酸球増加が喘息COPDオーバーラップと関連して説明されるのはしかたないのかもしれないが、COPDにおける好酸球比率・数に関する評価はあくまでもCOPDの話ということは前提!これを混同して解説される場合があるので困る。



Eosinophil-derived IL-13 promotes emphysema.
Doyle AD, Mukherjee M, LeSuer WE, et al.
Eur Respir J 2019; 53: 1801291.

気腫を引き起こす慢性気道疾患における炎症反応は完全には同定されてない。肺好酸球増加症がマウスモデルでの気腔拡大、およびCOPD患者における気腫の一因となると仮説。 
慢性type 2 肺炎症(I5 / hE2)のトランスジェニックマウスモデルを使用して、気腔拡大をもたらす好酸球依存性機序を調べた。
慢性気道疾患患者における好酸球増加症およびMMP-12レベルtranslational研究用にヒト痰サンプルを採取 
 
気腔拡大はI5 / hE2マウスで同定し好酸球依存性あり
 I 5 / h E 2気管支肺胞洗浄の検査では、気腫のメディエータであるMMP-12の上昇確認。
 in vitroで、好酸球由来のIL-13が肺胞マクロファージMMP-12産生を促進することを示した
  I5 / hE2マウスにおける気腔拡大は、MMP-12および好酸球由来のIL-4/ 13に依存していた。
  この実験結果と一致し、MMP - 12は、痰好酸球増加症およびCT上気腫エビデンスある患者で増加し、FEV1と負に相関
 
Type 2慢性肺炎症のマウスモデルは、MMP-12および好酸球由来のIL-4/13に依存する気道拡大を示した
慢性気道疾患患者では、肺好酸球増加症は気腫の予測因子であるMMP-12レベルの上昇と関連していた 
これらの知見は、これまで過小評価されていたメカニズム、好酸球が喘息とCOPDの病態共に関与していることを示唆している

喘息もCOPDも気道の慢性炎症性疾患で、肺機能経時的減少の炎症と好酸球の役割が、喀痰好酸球数 ( Broekema M, Volbeda F, Timens W, et al. Airway eosinophilia in remission and progression of asthma: accumulation with a fast decline of FEV1. Respir Med 2010; 104: 1254–1262. )、喀痰好酸球のhigh variablity ( Newby C, Agbetile J, Hargadon B, et al. Lung function decline and variable airway inflammatory pattern: longitudinal analysis of severe asthma. J Allergy Clin Immunol 2014; 134: 287–294. )、血中好酸球数増加 (Ulrik CS, Backer V, Dirksen A. A 10 year follow up of 180 adults with bronchial asthma: factors important for the decline in lung function. Thorax 1992; 47: 14–18.) が注目されつつある。

さらに、喘息では気道と血中好酸球の関連性(Schleich FN, Chevremont A, Paulus V, et al. Importance of concomitant local and systemic eosinophilia in uncontrolled asthma. Eur Respir J 2014; 44: 97–108.)知られているが、COPDでも重要な要素(Silva GE, Sherrill DL, Guerra S, et al. Asthma as a risk factor for COPD in a longitudinal study. Chest 2004; 126: 59–65.)である。

肺機能減衰もまた好酸球性炎症増加を示すCOPD患者において比較上多く観察(Hastie AT, Martinez FJ, Curtis JL, et al. Association of sputum and blood eosinophil concentrations with clinical measures of COPD severity: an analysis of the SPIROMICS cohort. Lancet Respir Med 2017; 5: 956–967.)され、COPDの3分の1が気道好酸球性炎症を示し(Bafadhel M, Pavord ID, Russell REK. Eosinophils in COPD: just another biomarker? Lancet Respir Med 2017; 5: 747–759. Schleich F, Corhay JL, Louis R. Blood eosinophil count to predict bronchial eosinophilic inflammation in COPD. Eur Respir J 2016; 47: 1562–1564.)、加速的肺機能減少はCOPDのみの特徴ではない。

多くのCOPD患者は気腫所見だけで無く、肺組織破壊をも含む。COPDにおいて、大気汚染物暴露後マクロファージと好中球が気道リモデリングを仲介するだけでなく、破壊ももたらす(Hautamaki RD, Kobayashi DK, Senior RM, et al. Requirement for macrophage elastase for cigarette smoke-induced emphysema in mice. Science 1997; 277: 2002–2004. Sharafkhaneh A, Hanania NA, Kim V. Pathogenesis of emphysema: from the bench to the bedside. Proc Am Thorac Soc 2008; 5: 475–477.)。


DOYLEらの発見は、in vitroにおいて好酸球由来IL-13が肺胞マクロファージ由来MMP-12産生促進し、肺胞破壊への役割を果たすことを示した。
これは気腔拡大はMMP-12と独立し、MMP-12は気腫を示す好酸球性COPD患者において増加し、喘息併存では好酸球性と非好酸球性の間に差が無いという知見であった。

 CHAUDHURI ら(Chaudhuri R, McSharry C, Brady J, et al. Sputum matrix metalloproteinase-12 in patients with chronic obstructive pulmonary disease and asthma: relationship to disease severity. J Allergy Clin Immunol 2012; 129: 655–663.)は、喘息疾患重症度と喀痰MMP-12濃度に有意相関無いが、 COPD患者の喀痰MMP-12はCT測定気腫広がりと直接相関していた。


汚染物質吸入患者での気腫発症に好酸球が重要な役割を果たすことは確実

喘息において好酸球性炎症がかなりの頻度で観られるわけだが、非喫煙者喘息では拡散能が温存される (Schleich F, Brusselle G, Louis R, et al. Heterogeneity of phenotypes in severe asthmatics. The Belgian Severe Asthma Registry (BSAR). Respir Med 2014; 108: 1723–1732. Schleich FN, Manise M, Sele J, et al. Distribution of sputum cellular phenotype in a large asthma cohort: predicting factors for eosinophilic vs neutrophilic inflammation. BMC Pulm Med 2013; 13: 11.)

喘息において、気腔拡大は気腫や肺胞の破壊そのものというより気道リモデリングへとつながるair trappingの徴候で(Gelb AF, Yamamoto A, Verbeken EK, et al. Further studies of unsuspected emphysema in nonsmoking patients with asthma with persistent expiratory airflow obstruction. Chest 2018; 153: 618–629.


これらは気道壁破壊には好酸球性炎症に追加されるメカニズムが必要と考えられる。

大気汚染物質やタバコの煙の吸入後酸化ストレスを惹起し、MMP-12がたばこの煙により上皮から産生される(Lavigne MC, Eppihimer MJ. Cigarette smoke condensate induces MMP-12 gene expression in airway-like epithelia. Biochem Biophys Res Commun 2005; 330: 194–203.

WOODRUFら(Woodruff PG, Koth LL, Yang YH, et al. A distinctive alveolar macrophage activation state induced by cigarette smoking. Am J Respir Crit Care Med 2005; 172: 1383–1392.)も、MMP-12が喫煙者で増加するも、喘息患者では増加せず、抗proteinase活性レベル低い状態で気腫を生じるものとした。
抗IL-5はCOPD患者では急性増悪減少という意味では比較的ベネフィット乏しい( Brightling CE, Bleecker ER, Panettieri RA, Jr. et al. Benralizumab for chronic obstructive pulmonary disease and sputum eosinophilia: a randomised, double-blind, placebo-controlled, phase 2a study. Lancet Respir Med 2014; 2: 891–901. Pavord ID, Chanez P, Criner GJ, et al. Mepolizumab for eosinophilic chronic obstructive pulmonary disease. N Engl J Med 2017; 377: 1613–1629.)

COPDにおける抗IL5や抗IL-13による長期治療が気腫発症予防という効果を有するかもしれないということを否定仕切れない。

DOYLEらの報告からの臨床的メッセージは好酸球性炎症を有するひとでの禁煙の重要性ということに今のところはなろうか!


COPDリハビリテーション:運動誘発酸素飽和度低下に酸素付加必要なし

COPDリハビリテーション時、酸素飽和度の低い患者では高強度の運動に耐用できない場合があり、医療者は運動誘発による低酸素飽和度を最小化に執着し、結果、トレーニング強度 and/or強制休息を挟むことを強要する傾向にある(実際、私が見聞きしている九州の某県の医療施設や介護施設などでは、介護職だけでなく、看護師や医師たちまでも ナゾの呪文である 「サーチ サーチ」と騒ぎながら 酸素を強要し、トレーニングを中断を強要させる行事が毎日のようにおこなわれる)

運動による酸素飽和度低下はCOPD患者ではほぼ半数の47%とこの論文の序文には記載あり、半数がfield walking testなどで90%未満の飽和度となる。

生理学的研究の運動急性暴露で等価運動負荷量での分時換気量減少と動的過膨脹の発生遅延化、関連する呼吸困難の遅延化などが運動能力増加をするということから酸素負荷にこだわる向きがあるのだろう。しかし現実の臨床診療上では酸素投与のprovisionを支持するエビデンスは限定的。今までの運動中の酸素投与と空気比較のランダム化研究ではサンプル数が少なく、長期酸素療法や酸素飽和度否定加群も含まれていて不均一なサンプルでの検討であった。

今回の研究は運動による酸素低下確認群での検討で、安静時酸素飽和度正常だが、運動による酸素飽和度低下症例で、リハビリテーション中の酸素付加の意義検討するには強いエビデンスが期待された研究



運動能力やHRQoLに関しては、酸素投与群と医療用空気投与群でその効果に関して差は無く、ともに改善し、酸素投与群でより大きなベネフィットを示すことはなかった


Oxygen compared to air during exercise training in COPD with exercise-induced desaturation
Jennifer A. Alison, et al.
European Respiratory Journal 2019 53: 1802429; 
DOI: 10.1183/13993003.02429-2018

COPDの呼吸リハビリテーションを受けている患者の約半数が運動中酸素飽和度低下。酸素投与にて酸素飽和度は緩和するが、運動トレーニングのアウトカムへの影響については積極的には評価されてない。この研究は運動トレーニング中の酸素付加が運動耐容能改善、HRQoL改善の点でmedical aireよりCOPD患者にとって有効かを決定する目的の研究

6分間歩行試験中酸素飽和度90%未満COPD患者をランダム化多施設トライアルへ登録(独立した目隠し割り付け)で、Oxygen group と Air groupへ割り付け、盲目的(登録者、運動トレーナー、European Respiratory Journal assessors)、ITT解析

各々の吸入群とも濃縮器より経鼻prongから 5L/分を運動トレーニング(トレッドミル、サイクル運動)週3回8週間施行中使用

プライマリアウトカム:ESWT(運動耐用シャトル歩行試験)時間とChronic Respiratory Disease Questionnaire (CRQ)-Total score

被験者 111名(男性 60名)、平均±SD 年齢 69± 7歳、中等度〜重症 COPD登録、97名完遂 (Oxygen group n=52; Air group n=45)

8週間トレーニングプログラム終了時点で、ESWT (平均差 15 s (95% CI −106–136 s) と CRQ-Total の変化(0.0 points (95% CI −0.3–0.3 points))に群間差無し

トレーニング終了時点でのグループ内の差はESWTとCRQ-Total)で有意に(all p<0.01)

運動能およびHRQoLは両群改善、medical air投与より酸素投与でトレーニングによるベネフィットが多いということはない

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