2015年10月28日水曜日

BELT研究:黒人成人喘息 ICS+LABA vs ICS+チオトロピウム 効果・安全性差を認めず

黒人喘息に関して、ICS/LABAが必ずしもLABA/チオトロピウムよりすぐれているというわけではないということが示された。


黒人は喘息有病率2倍、ER受診・入院発生率も2倍、死亡率も2−3倍という不均衡な高リスク群。喘息に抗コリン作動性薬剤が有効という報告も増加し、特に気道閉塞、脈拍低い症例などでは有効ではないかという示唆もある。また、黒人ではβ受容体の遺伝子多様性により副事象との関連性も報告されていた。

だが、今回の報告で、吸入ステロイド(ICS)治療中の黒人成人では、LABA追加と、チオトロピウム追加では、喘息急性増悪までの期間は変わらない。ADRB2のArg16gly locusの遺伝子多様性に影響されない。





Anticholinergic vs Long-Acting β-Agonist in Combination With Inhaled Corticosteroids in Black Adults With Asthma
The BELT Randomized Clinical Trial
Michael E. Wechsler, et. al.  ; for the BELT Investigators
JAMA. 2015;314(16):1720-1730. doi:10.1001/jama.2015.13277.



【必要性】  LABAの有効性と安全性に疑念あり、黒人に対する不均等なLABAリスク存在する

【目的】  喘息黒人成人ICS使用者へのチオトロピウム vs LABAsの有効性・安全性比較
β2アドレナリン作動受容体(ADRB2)遺伝子のArg16Glyのアリル変異が治療反応性に影響を与えるかの検討


【デザイン・セッティング・被験者】 多施設(n = 20)、オープンラベル、並行群、プラグマティックランダム化臨床トライアル (2011年3月から2013年7月まで)、米国内中等度・重度喘息黒人被験者


【介入】 National Heart, Lung, and Blood Institute guidelineにおける step 3 もしくは 4で、治験登録可能、受け入れ可能な対象者
吸入ステロイド+
・チオトロピウム 1日1回 (n = 532)
・LABA 1日2回 (n = 538)
18ヶ月フォローアップ

genotypingを受けた患者では、ベースライン、1、6、12、18か月受診、月毎アンケート

【主要アウトカムと測定】
プライマリアウトカムは、急性増悪までの期間
悪化定義は、経口・非経口外ステロイド投与必要イベント

セカンダリアウトカムは、患者報告アウトカム:Asthma Quality of Life Questionnaire,
Asthma Control Questionnaire [ACQ]、 Asthma Symptom Utility Index, and Asthma Symptom-Free Days questionnaire)
+ スパイロメトリ (FEV1)、 rescue medication use、喘息悪化、副事象イベント


【結果】 LABA + ICS vs tiotropium + ICS において、初回急性増悪までの期間差、認めず

急性増悪/人年は、 0.42 vs 0.37 (発生率比 , 0.90 [95% CI, 0.73 to 1.11], log-rank P = 0.31)


FEV1 12か月で差認めず(0.003 L for LABA + ICS vs −0.018 L for tiotropium + ICS; 群間差, 0.020 [95% CI, −0.021 to 0.061], P = 0.33) 、18ヶ月時点でも同様 (−0.053 L vs −0.078 L; between-group difference, 0.025 [95% CI, −0.045 to 0.095], P = 0.49)


ACQスコアでは、18ヶ月時点で群間差認めず (ベースラインからの変化量 −0.68 for LABA + ICS vs −0.72 for tiotropium + ICS; between-group difference, 0.04 [95% CI, −0.18 to 0.27], P = 0.70)


他の患者報告アウトカムも群間差認めず





Arg16Gly ADRB2 alleleは、効果群間差に影響与えず (初回急性増悪までのハザード比 , 0.84 [95% CI, 0.47 to 1.51] for Arg/Arg vs 0.85 [95% CI, 0.63 to 1.15] for Arg/Gly or Gly/Gly, P = 0.97)




以上のトライアルの結果を日常臨床にどう結びつけるか・・・特に、日本人としては解釈困難だなぁ


必ずしも、スピリーバ・レスピマットの安全性は完全払拭されてない。
”スピリーバ=絶対的安全”ということではなく、悪vs悪の比較・・・と言わざるえないのでは・・・


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