2013年5月30日木曜日

PATHOS:COPD治療におけるICS/LABA合剤クラス比較 シムビコートがアドエアより肺炎・肺炎関連イベント少ない

propensity scoreを用いた観察後顧的pairwise cohort study
スウェーデンのプライマリケア医学記録データ、1999-2009死亡統計

Budesonide/formeterol vs fluticasonze/salmeterol 比較

Pneumonia and pneumonia related mortality in patients with COPD treated with fixed combinations of inhaled corticosteroid and long acting β2 agonist: observational matched cohort study (PATHOS)
BMJ 2013; 346 doi: http://dx.doi.org/10.1136/bmj.f3306 (Published 29 May 2013)
Cite this as: BMJ 2013;346:f3306
主要アウトカム:年次肺炎発生率、肺炎関連入院、死亡率
9893名の患者をマッチ化登録 
fluticasone/salmeterol 2738 vs budesonide/formeterol 7155
それぞれ2734名でマッチ化 
研究期間中肺炎1回以上は2115(39%)、フォローアップ19170人年中 2746エピソード 
budesonide/formeterolに比較して、fluticasone/salmeterolでは、肺炎・入院率高いrate ratio 1.73 (95% 信頼区間 1.57 〜 1.90; P<0 .001="" 1.74="" 1.94="" blockquote="" nbsp="" p="">
100人年あたり肺炎イベント率は、fluticason/salmeterol vs budesonide/formeterol は11.0 (10.4-11.8) vs 6.4 (6.0-6.9)、入院率 7.4 ( 6.9-8.0) vs 4.3 (3.9-4.6) 
肺年関連入院期間平均は両群同様だが、肺炎関連死亡率はfluticasone/salmeterol群が高い( 97 vs 52) (ハザード比 1.76, 1.22 - 2.53; p = 0.003) 
全原因死亡率は両治療群差を認めず (1.08, 0.93 - 1.14; P=0.59)



重症喘息では保険の縛りで適応できないなど様々ないんちきSMART療法の宣伝 以降、シムビコートは嫌いで、相対的にGSKの薬剤に肩入れしたいのだが・・・

この報告では、COPDへのICS/LABA固定合剤ではシムビコートが安全ということになる。

この報告の問題点は、治療効果に関する記載が無く、元々、有害事象のみの検討ということ。

NSAIDS 血管・上部消化管悪影響 :従来型NSAIDsもコキシブ系も悪影響

連日 ジクロフェナック 150mg、 イブプロフェン 2400mg投与にて、喫煙・肥満と同様の影響をあたえるという話

ジクロフェナク、イブプロフェンなど、従来のNSAIDsに関しても、新規NSAIDsに負けず、重篤な副事象が警戒される。


2004年コキシブ系選択性COX-2阻害剤であるVioxx(rofecoxib)は心発作リスクを高めるということで自主回収したが、その後、FDAは販売許可のスタンスをとっている。セレコキシブ(セレコックス)が日本では発売されている。

心血管への悪影響は、コキシブ系だけの問題なのだろうか?

従来のNSAIDSでも、実は、重大血管イベント、冠動脈疾患イベントに悪影響を与えていたという報告。


NSAIDsの血管・胃腸への影響は、COX-2阻害剤や従来のNSAIDSを含め、詳細不明
ランダム化トライアルのメタアナリシスからの検討

Vascular and upper gastrointestinal effects of non-steroidal anti-inflammatory drugs: meta-analyses of individual participant data from randomised trials
Coxib and traditional NSAID Trialists' (CNT) Collaboration
The Lancet, Early Online Publication, 30 May 2013
doi:10.1016/S0140-6736(13)60900-9

重大血管イベント増加
コキシブ系 (rate ratio [RR] 1.37, 95% CI 1.14—1.66; p = 0.0009)
ジクロフェナク  (1.41, 1.12—1.78; p = 0.0036) 
主に、重大冠動脈イベントによるもの(coxibs 1.76, 1.31—2.37; p=0.0001; ジクロフェナク 1.70, 1.19—2.41; p = 0.0032). 
イブプロフェンも、重大冠動脈イベントを有意増加  (2.22, 1.10—4.48; p=0.0253)するが、重大血管イベントは増加示さず (1.44, 0.89—2.33) 
プラシーボ比較で、1000名あたり1年間割り付け毎、コキシブ系とジクロフェナクによる超過事例は、重大血管イベント 3症例以上、致死例は1例 
ナプロキセンは、重大血管イベント有意には増加せず  (0.93, 0.69—1.27) 
血管疾患死は、Coxibsx(1.58, 99% CI 1.00—2.49; p = 0.0103) 、ジクロフェナク (1.65, 0.95—2.85, p=0.0187)有意増加。イブプロフェンは有意性は示さず  (1.90, 0.56—6.41; p=0.17)、ナプロフェンでは増加せず (1.08, 0.48—2.47, p = 0.80) 
重大血管イベント比例効果は、血管リスクを含むベースライン特性に非依存。
心不全リスクは、雑に言えば、NSAIDS全部からみると、2倍 
全てのNSAIDsレジメンは上部胃腸合併症増加  (coxibs 1.81, 1.17—2.81, p = 0.0070; ジクロフェナク 1.89, 1.16—3.09, p = 0.0106; イブプロフェン 3.97, 2.22—7.10, p < 0.0001; ナプロキセン 4.22, 2.71—6.56, p < 0.0001)




商用飛行機フライト中緊急医療事態のアウトカム

世界でみると、年間 27億5千万名の商用飛行機利用者があり、フライト中の緊急医療事態が起きたときのケアは限定的。飛行中の緊急医療事態とこれらのイベントのアウトカム記載

フライト中の緊急医療事態として多いのは、失神、呼吸器症状、消化器症状で、医師が多くの場合ボランティアとして対応してくれている。
航路変更となる場合や死亡齢は少ない
1/4が病院での追加検査が行われている。

失神・全身失神の中身は「blacking out」(意識消失)や「lightheadedness」(たちくらみ)などを含み、これが一番多い。

Outcomes of Medical Emergencies on Commercial Airline Flights
Drew C. Peterson,  et. al.
N Engl J Med 2013; 368:2075-2083May 30, 2013DOI: 10.1056/NEJMoa1212052

11,920回のフライト中、センターへのコール必要な緊急医療事態が生じている (604フライトあたり1回の緊急医療事態) 
最も多い問題は、失神、前失神状態(37.4%)、呼吸器症状(12.1%)、吐気・嘔吐(9.5%) 
医師乗客がmedical assistantしてくれてるのは、緊急医療事態の48.1%、飛行ルート計画変更は7.3% 
飛行後フォローアップデータ利用可能な10,914名のうち、EMS人員にて病院搬送25.8%、 入院 8.6%、 死亡 0.3% 
入院頻度トリガーは、卒中(オッズ比, 3.36; 95% 信頼区間 [CI], 1.88 - 6.03)、呼吸器症状 (オッズ比, 2.13; 95% CI, 1.48 - 3.06)、 心症状 (オッズ比, 1.95; 95% CI, 1.37 - 2.77)

http://www.nejm.org/action/showMediaPlayer?doi=10.1056/NEJMoa1212052&aid=NEJMoa1212052_attach_1


ディスカッションの中に、以下の部分が存在する。

The risk of medical liability may be a concern for volunteer health care providers. The 1998 Aviation Medical Assistance Act includes a Good Samaritan provision, protecting passengers who offer medical assistance from liability, other than liability for gross negligence or willful misconduct.  Although there is no legal obligation to intervene, we believe that physicians and other health care providers have a moral and professional obligation to act as Good Samaritans.

Aviation Medical Assistance Actは米国内法であり、ドクターコールに応じた医師たちに故意・重過失がなければ責任を負わさないというのは、「よきサマリア人の法」がない我が国内では法的整備不十分なのは意見が一致してるのではないか・・・



テレビや映画では、よく産科的イベントがあるが、やはり、発生数そのものは少ないが、様々に重篤な影響を与えているようだ。特に死亡例比率が多く、妊娠24週未満での流産関連徴候は啓発的な事態と思う。

フライト中医療緊急事態 10,914名フォローアップデータ
乗客3402名(31.2%)は、到着前に症状改善、EMS必要とせず。
EMS人員立ち会いの7508名乗客では、そのうち2804名(37.3%)が病院EDへの搬送
901名(8.6%)は、助言と異なる病院入院、もしくは、ED受診拒否。
心停止に加え、医療問題としては入院だが、卒中症状(23.5%)、産科的症状(23.4%)、心症状(21.0%)
死亡36名中、30名がフライト中発生。平均年齢は59±21歳(range 1ヶ月齢から92歳)
24週未満の妊娠女性が最も多く、60.7%で、流産徴候関連(膣出血など)が多い。
産科的問題の11名中7名が航路変更。11名(18.0%)は妊娠24週を超え、うち3名は航路変更。

ICU感染対策:ターゲット化デコロナイゼーション より、ユニバーサル・デコロナイゼーションが有効

ターゲット化コロナイゼーション対策か?
ユニバーサル・コロナイゼーション対策か?


ルーチンのICU処置において、ユニバーサル・デコロナイゼーションが、MRSA臨床的分離、他の病原菌全体の血流感染率減少に対して有効。

すなわち、”MRSAに関して入室時スクリーニングせず、接触予防策を施し、全員に、1日2回のムピロシン鼻腔投与と、クロルヘキシジン布を用い連日入浴を行う”


比較は・・・
・Group 1 MRSAスクリーニングと分離施行
・Group 2 ターゲット化でコロナイゼーション ( i.e. MRSAキャリアのスクリーニング、分離、デコロナイゼーション)
・Group 3 ユニバーサル・デコロナイゼーション (i.e. 全員にスクリーニング、デコロナイゼーションせず)

比例ハザードモデルで、病院毎のクラスタリングで各研究群感染率減少差評価


Targeted versus Universal Decolonization to Prevent ICU Infection
Susan S. Huang,  et. al.
for the CDC Prevention Epicenters Programthe AHRQ DECIDE Network and Healthcare-Associated Infections Program
N Engl J Med. May 29, 2013DOI: 10.1056/NEJMoa1207290

全43病院( ICU 74、 74,256名)をランダム化
介入期間 vs ベースライン期間での、MRSA臨床的分離モデル化ハザード比は、
・スクリーニング・分離 0.92 (分離粗発生率 3.2 vs 4.3 /1000日間)
・ターゲット化デコロナイゼーション 0.75 (粗発生率 3.2 vs 4.3 )
・ユニバーサル・デコロナイゼーション 0.63 (粗発生率 2.1 vs3.4 )
 (P=0.01 for test of all groups being equal).

介入期間 vs ベースライン期間において、全病原菌血流感染ハザード比は、
・0.99 (感染粗発生率 4.1 vs 4.2 /1000日間)
・0.78 ( 3.7 vs 4.8 )
・0.56 ( 3.6 vs 6.1 )

ユニバーサル・デコロナイゼーションは、ターゲット化デコロナイゼーション、スクリーニング・分離法に比べ、全原因血流感染率を有意に減少。

デコロナイゼーション54名あたり1名の血流感染予防効果
MRSA血流感染率減少は、全原因血流感染の減少と同様だが、有意ではなかった。

副作用は7名で、軽度で、クロルヘキシジン関連



【超未熟児】酸素飽和度目標 85-89% vs 91-95% 死亡率・障害有意差無し ・・・ できるだけ飽和度低い方が良いので・・・

早産超未熟児では、酸素飽和度ターゲット 91%-95%と 85-89%で、18ヶ月目の死亡率・障害は有意影響なし。

できるだけ組織酸素は保ちながら酸素中毒・酸化ストレス最小化が必要。

超未熟児での至適酸素飽和度目標への判断材料となるだろう報告

Effects of Targeting Higher vs Lower Arterial Oxygen Saturations on Death or Disability in Extremely Preterm Infants
A Randomized Clinical Trial
Barbara Schmidt, et. al.
for the Canadian Oxygen Trial (COT) Group
JAMA. 2013;309(20):2111-2120. doi:10.1001/jama.2013.5555.


さすがに、NICUでは、"酸素飽和度96%教"はいないと思うが・・・低レベルの医療関係者に普及している、この宗教困ったもんだ。


target oxygen saturation
(e.g. http://www.brit-thoracic.org.uk/Portals/0/Guidelines/Emergency%20oxygen%20guideline/THX-63-Suppl_6.pdf)
・ COPD急性増悪時 : 88-92% 【Grade C】
・ 重症外傷・敗血症・妊娠中急性疾患(e.g. 羊水塞栓、eclampsia、出産前後出血など)・心不全などの低酸素血症状態女性 : 94−98% 【Grade D】
・ 出産時酸素投与は普及しているが、胎児への有害性の可能性あり。低酸素血症が無い限り、現行では推奨されない【Grade A】

noteへ実験的移行

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