2012年3月9日金曜日

ヨーロッパ男性:Y染色体と冠動脈疾患の関係

ヒトY染色体は、ヨーロッパ人種男性の冠動脈疾患リスクと関連

免疫、炎症の相互作用による可能性がある

Inheritance of coronary artery disease in men: an analysis of the role of the Y chromosome
The Lancet, Volume 379, Issue 9819, Pages 915 - 922, 10 March 2012 


9つのハプロタイプのうち、2つ(R1b1b2 と  I)はブリテイン男性の90%のY染色体に見られる。

ハプロタイプ Iキャリアは、他のY染色体lineageに比べ、冠動脈疾患年齢補正リスク50%増加
BHF-FHS (odds ratio 1·75, 95% CI 1·20—2·54, p=0·004)
WOSCOPS (1·45, 1·08—1·95, p=0·012
joint analysis of both populations (1·56, 1·24—1·97, p=0·0002).

ハプログループ Iと冠動脈疾患リスク増加の相関は、従来の心血管・社会経済リスク要素と独立したものである

 Cardiogenics Studyのmacropahge transriptome解析では、ハプログループ Iと他のY染色体 lineage  の 様々な発現を示す 19の分子経路が、炎症・免疫と関連するコモンな遺伝子と相互関連し、その一部は動脈硬化頻度高い。


ハプロイドY染色体は遺伝子数が最も少ない。Y染色体の主要部分、MSY:male specific regionは、父親から息子に遺伝され、約27の蛋白をエンコードする単独のmulticopy geneを有する。
そんなY染色体だが、心血管疾患には存在感を示す。XYYというポリソミ-では心血管死亡率が高く、MSYの多型性が血圧増加、コレステロール関係の異常と関連する。

the Lancet: 現地からのレポート ;放射線被爆と周辺事象・問題点

外国からみた、東北の現状

放射線量被爆はその道のリーダーたちの調査では少なく、放射線の害は今のところ明らかでない。様々な放射線に関する情報が混乱をもたらし、現時点では放射線そのものの害より精神衛生上の問題が大きい。一方で、比較的小放射線量・長期有害性の研究のための科学的視点の情報不足を述べている。

Japan's Tohoku earthquake: 1 year on
The Lancet, Volume 379, Issue 9819, Pages 880 - 881, 10 March 2012 

 Justin McCurry



 昨年3月11日の日本の壊滅的地震、津波、放射線災害の訪問記事

崩壊したコミュニティー、食料・水・薬物、寒さ、住宅不足など

放射線に関し、予備調査によると、14mもの津波後、バックアップ冷却システムを破壊

包括的国連事故調査は2013年3月まで公表されない

測定値が比較的少なく、Fukushima effectを測定には長期かかるだろうと専門家。
疫学的研究の機会が無い、線量があまりに少なく、科学的観点を提示できないと 癌専門家 John Boice,が National Press Club in Washington, DC.)のパネルディスカッションで述べている。
.”
 Kathryn Higley (a professor in the department of nuclear engineering at Oregon State University)は、予測したよりかなりマイナーと延べ、USAをベースとするHealth Physics Societyは、Fukushimaの癌発症リスクは、約0.002%で、病死リスクは、0.001%で上昇と推定。

楽観的予測は、日本政府や原発オーソリティーたちを満足させている。


しかし、尋常でない被爆を受けた住民もいる。最初の4ヶ月に23mSV被爆した2名の女性は原発プラントから近くに住む住民で、日本政府の提示許容限界量は年間1mSvにくらべ、USAの原発労働者は最大20mSvであり、それらを上回って、短期間に被爆している。

福島県立医科大学副学長 山下俊一氏の名前が書かれており、カットオフ値 100mSvに設定した報告書のリーダーで、影響受けた住民たちが彼を批判していると記載。

専門家たちの相反するメッセージにより避難民は混乱を来しており、彼らは、甲状腺や関連がんリスクを恐れている。
the Lancetは、36万人の福島の子供への2年毎20歳までの超音波検診プログラム参加の住民にインタビュー 。この検査は、今後30年間の200万人健康モニタリング予定の一部。
エリアの医師たちは、whole body counterにて、セシウム-137などの放射性物質異常吸収を示してないと言うが、住民たちは懐疑的。

放射線量がそれほど多くない場所でも、子供たちは遊ばない、体力低下悪化のリスクにさらされている。多くの親が、外で遊ぶことを禁止するか、長袖、ズボン・防止、マスクをせず登校することを拒否している。

状況証拠からみると、汚染そのものより放射線への恐れが、ストレス関連の問題を引き起こしている。皮膚症状ないのに、鼻出血を生じるなど子供たち。高齢女性に多く見られ、頻回受診は、胸痛・背部痛で、phantom earthquake (地震幻覚)で、地震が無いのに揺れている感じが続いている。

高齢者は特に孤独、不眠、将来不安に脆弱で、過去への回帰困難の中、沈黙の中に苦しんででいる。

放射線による死亡はないものの、約600名もの原子力災害関連死が、地方自治で医療関連記録として記載されている。読売新聞によれば心理的トラウマ、肺炎、心臓病などの慢性疾患増悪など。

共同通信調査では、自殺を含む死亡数1300名を越えており、初期救急対応後として、精神衛生上の問題が最も注意すべき点として注意がなされている。

避難地域の端である南相馬の病院スタッフは、地域住民への内部被曝検査装置の不足を訴え、さらに3つのwhole body counterが必要と主張している。今のところは健康への影響レベルを示す結果は出ていないが、心の平和を提供するために必要と。

7万1千名の人口の町で3万名ほどが放射線レベルの低い地域でも、帰宅を拒否している。安全性に関し相反する情報があり、人々は混乱している。町自体が生き残るには若い人が戻ることが前提と病院の副院長。

COPD:サポート下自己管理 おおむね効果無し ただ、好条件では再入院・死亡率減少効果



他の慢性疾患と同様、自己管理について検討されることが多い。COPDでも試みられているが、この報告だと、全体的に見れば効果なし。ただ、一部に、自己管理好条件の人が見られ、この人たちには非常に効果がある。 非独居で家庭内に協力者がいることと、若年であること



Glasgow supported self-management trial (GSuST) for patients with moderate to severe COPD: randomised controlled trial
BMJ 2012; 344 doi: 10.1136/bmj.e1060 (Published 6 March 2012)



Objective COPDにおけるサポート下自己管理がUKに於ける入院率を減少させるか?

Design Randomised controlled trial. 

Setting 地域ベース介入(スコットランド西部)
Participants COPD急性増悪による入院患者

Intervention 介入グループ参加者は、急性増悪の適切な発見・治療訓練を受け、12ヶ月間サポートを続けられている

Main outcome measures プライマリアウトカムはCOPDによる再入院・死亡で、Scottish Morbidity Recordsと連携記録評価 ; HR・QOLをセカンダリアウトカムとする

Results 464 名をランダム化、年齢、性別、予測1秒率、最近の呼吸リハビリテーション受療状況、喫煙状態 、居住地域貧困カテゴリー、以前のCOPD入院により層別化。

COPD入院、死亡に差を認めず   (111/232 (48%) v 108/232 (47%); ハザード比 1.05, 95% 信頼区間 0.80 to 1.38)

HRQOLの回答率は低く  (n=265; 57%)、結論づけ困難。

事前計画サブグループ解析では、疾患重症度rating や人口住民統計指標に関連する、プライマリアウトカムのベネフィット差認めず

予備的解析では、自己管理の適切な使用観点からは、介入群の42%(75/150)の患者が研究終了時自己管理成功と判断された。

ステップワイズ回帰分析による、自己管理成功の予測要素は、若年群、非独居である  (P=0.012、P=0.010).

COPD再入院/死亡は自己管理成功により減少  成功 (20/75 (27%) v  失敗 51/105 (49%); hazard ratio 0.44, 0.25 to 0.76; P=0.003)

Conclusion サポート下自己管理は、COPDによる初回再入院・死亡に関して効果を認めず
予備解析サブグループで、自己管理マネージメント学習患者は少ないが、このグループでは有意にCOPD再入院リスク減少有意。この人たちは若年で、非独居世帯住民である。

豪州・老人入所施設:ビタミンD不足と死亡率の関連性あきらか

ビタミンD欠乏は骨格筋疾患だけでなく、感染症と関わる免疫系、心血管系、呼吸器系疾患などに影響を与えることが注目されている。
何れも、施設入所高齢者に関してクリティカルな疾患との関連性のある病態である。


 25(OH)D濃度低値がこれらの患者に関してリスク要素となるかどうか?

 オーストラリアの70歳超の女性ナーシングホーム住居者 前向きコホート研究


Low 25-Hydroxyvitamin D Is Associated with Increased Mortality in Female Nursing Home Residents
The Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism February 8, 2012 jc.2011-3043 
 主要アウトカム測定は、全原因死亡率Cox比例ハザードモデルハザード比(HR)

961名の研究登録(年齢 83.7±6.1歳)、25(OH)D濃度中央値は17.5(中間4分位 13.7-25.5) nmol/L、 

このコホートの93%が、25(OH)D 50 nmol/L未満

平均フォローアップ期間  27±8ヶ月で、 284名が死亡

第4・四分位(>25.5 nmol/L)と比較して、年齢補正HR(95%信頼区間)は、第1・四分位 (25[OH]D <14.0 nmol/liter)では1.49 (1.07–2.10)
この相関は、多変量要素補正後も持続 (HR = 1.56; 95% confidence interval = 1.01–2.40)



 結論から言えば、オーストラリアのナーシングホーム住居者研究からは施設入所女性は、ビタミンD欠乏状態と死亡率は有意な相関があり、今後、予防的意味・治療的意味合いをさらに検討する必要があるということ。






ENDOで発表 : ビタミンD欠乏に関する評価・治療・予防ガイドライン 2011年 06月 14日
http://intmed.exblog.jp/12882556/


血中ビタミンD、25(OH)D3濃度と死亡率の関連 2011年 12月 22日
http://intmed.exblog.jp/14221824/

老人へのビタミンDの骨格筋外効果のレビュー 2010年 03月 19日
http://intmed.exblog.jp/10221666

ビタミンDサプリメントは心血管・メタボリックアウトカムへ効果認めず 2010年 03月 03日
http://intmed.exblog.jp/10097931/

カルシウム・サプリメント(ビタミンD投与併用なし)で、心筋梗塞や心血管イベントのリスク増加 2010年 07月 30日
http://intmed.exblog.jp/11054730/

小児心血管系高リスク:ビタミンD不足と機能的障害・血管伸展性 2011年 11月 18日
http://intmed.exblog.jp/14025288/

VITAL研究:ビタミンDサプリメント大規模研究 2010年 12月 28日
http://intmed.exblog.jp/11796996/

メタアナリシス: ビタミンD±カルシウムサプリメント:癌・骨折予防 2011年 12月 26日
http://intmed.exblog.jp/14254158/

ビタミンDサプリメントにて転倒リスク低下 2009年 10月 06日
http://intmed.exblog.jp/9065427/

老人施設での研究、ビタミンD高用量投与にて、たった5ヶ月で転倒リスク減少 2007年 02月 26日
http://intmed.exblog.jp/5170404/

老人のビタミンD不足と筋力低下の関係 2005年 03月 05日
http://intmed.exblog.jp/1717113/

ビタミンDの免疫系作用: 歯肉上皮細胞において、内因性抗菌作用増強 2011年 06月 18日
http://intmed.exblog.jp/12909711/

ビタミンD補充による肺結核治療促進効果;ビタミンD受容体多型のかかわり 2011年 01月 08日
http://intmed.exblog.jp/11867982/

COPD患者一律へのビタミンDサプリメント効果認めず、ビタミンD不足では効果あるかも・・・ 2012年 01月 17日
http://intmed.exblog.jp/14443796/

治療抵抗性ぜん息児:低ビタミンD血症との関係 2011年 12月 15日
http://intmed.exblog.jp/14176362/

臍帯血ビタミンD濃度と5歳時点喘息リスクは関連認めず、下気道感染・喘鳴には関連あり 2010年 12月 28日
http://intmed.exblog.jp/11796820/

老人:ビタミンDと認知機能減少 2010年 07月 13日
http://intmed.exblog.jp/10967311/


こんなに知見があるのに、日本では25(OH)D濃度保険未収載なんですぜ
その上に、活性化ビタミンD製剤認可してるんでぜ
厚労省のやることなすこと支離滅裂

子宮がん検診:至適戦略は? シナリオ状況でHPVと細胞診を使い分け/併用に

現時点の与野党を問わず政治家やマスコミは、HPV関連の話題をすべて、子宮頚癌ウィルスと読み替えていることに違和感を感じ続けている。
HPV予防がそのまま子宮頚癌予防につながるから良いじゃないかという安直な発想なら、予防医学・診断・治療に悪影響を与える可能性がある。HPV感染=子宮頚癌ではないのだから、そこに齟齬をきたす 。

子宮頚癌細胞診とHPV検査、どちらが、子宮頚部病変に関して、最終的ベネフィットをもたらすか?
“HPV=子宮頚癌”という読み替えが続くなら、医療施策上も大きな誤りをきたすだろう。
Primary screening for human papillomavirus compared with cytology screening for cervical cancer in European settings: cost effectiveness analysis based on a Dutch microsimulation model
BMJ 2012; 344 doi: 10.1136/bmj.e670 (Published 5 March 2012)
主アウトカム測定をコスト増加効果比として、最適な検診戦略を検討
HPV検診優先戦略は、30歳超では、好ましい検診として行われている
細胞診優先戦略は、細胞診のコストが低い場合のシナリオの場合と、HPV検診コスト高額+HPV高頻度シナリオの場合において好ましい 




日本の検診は、シナリオ戦略比較という視点が欠けている。



“子宮頚がんをゼロにする”にするという発想は、予防医学や検診の基本的概念とは全く異なる宗教的なものであることに気付かないのだろうか?

検診や予防医学を完全に勘違いしている政党の主張
事例:子宮頸がんをゼロに

ゼロにするための膨大なコストは無視するというのは、検診の考えとは全く異なる。




Principles of cancer screening.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/8569290
Screening for cancer is an important aspect of cancer prevention and treatment. The science of screening is based on epidemiologic principles that are central to understanding the potential risks and benefits of a screening program. Screening is best applied to those conditions that are relatively common and have an important impact on quality of life and for which acceptable tests and treatments are available and affordable.

コストや検診に関わる副作用すなわち、ベネフィット・リスクを無視して、“がんをゼロに”というおめでたい発想を掲げる議員たち、これは党をこえて存在する。この人たちが、この国を駄目にしてきたんだなぁと・・・

彼ら・彼女らには全くその自覚がないのだろう・・・ 

関節リウマチ:心房細動リスク増加し、卒中リスク増加する

関節リウマチは、心房細動・卒中発生リスク増加する

関節リウマチに於ける心房細動リスク増加という新しい知見、これが、関節リウマチ患者の卒中増加リスクと関連しているかもしれないという報告


Risk of atrial fibrillation and stroke in rheumatoid arthritis: Danish nationwide cohort study
BMJ 2012; 344 doi: 10.1136/bmj.e1257 (Published 8 March 2012) 


長軸的国内登録ベースコホート研究
1997-2009のデンマークの入院・外来患者
15歳超のデンマーク住民で、1997年以前にリウマチ無し、心房細動無し、卒中無し

4182335名コホート、フォローアップ中、関節リウマチ 18247(平均発症年齢59.2歳)、フォローアップ中央値 4.8年間

関節リウマチ774名を含む156484名で、心房細動(年齢・性別マッチ化イベント発症率 1千名あたり 関節リウマチ 8.2 、 一般住民 6.0)は、補正発生頻度rate ratio    (95% 信頼区間 1.31 to 1.51)

加え、165343名(関節リウマチ 718名)で卒中(関節リウマチ 1千名あたり 7.6、 一般住民 5.7)は、補正発生rate ratio   1.32 (1.22 to 1.42)

心房細動・卒中では、性別・年齢・若年高相対リスクの3層別すべてで、相対リスク増加するが、高齢者では絶対リスクの差は認めない








糖尿病:網膜症検診 妥当間隔は?

糖尿病と診断された場合、眼科にて網膜症チェックを受けることになると思うのだが、網膜症無しと判断された場合の、その後のフォローについて、日本ではあいまいなところがある。

4年という一つの目安があるのだが、果たしてそれは正しいか?

Incidence of diabetic retinopathy in people with type 2 diabetes mellitus attending the Diabetic Retinopathy Screening Service for Wales: retrospective analysis
BMJ 2012; 344 doi: 10.1136/bmj.e874 (Published 22 February 2012) 

2型糖尿病患者年次検診サービスによる改善可能糖尿病性網膜症の頻度検討

4年間の後顧的解析

57199名の2型糖尿病患者で、30歳以上、初回検診(2005-2009年)に網膜症エビデンスのない患者

治療改善可能糖尿病性網膜症年次・累積頻度

治療改善可能網膜症4年間累積 35027名で、1千名あたり 11.64

1年から4年次まで、網膜症年間頻度1千名あたり 124.94から66.59へ低下
治療改善可能網膜症は、2.02から3.54と増加

治療回復可能網膜症頻度は、糖尿病罹病既知期間、糖尿病発症年齢、インスリン治療有無と独立して相関。

10年以上の糖尿病歴のインスリン治療必要患者では、累積頻度は 1千名あたり1年次、4年時で9.61、30.99

現行推奨間隔は12ヶ月だが、2型糖尿病患者への検診間隔を広げることは可能だが、糖尿病歴10年及びインスリン治療は例外




noteへ実験的移行

禁煙はお早めに! 米国における人種・民族・性別による喫煙・禁煙での死亡率相違|Makisey|note 日常生活内の小さな身体活動の積み重ねが健康ベネフィットをもたらす:VILPA|Makisey|note