2012年4月19日木曜日

減塩必ずしも善ではない: 減塩の効果影響 血圧減少するが ・・・ 交感神経系・RAS活性化、脂質特性悪化

減塩により、正常血圧では1%、高血圧では3.5%減少
有意に血中レニン、アルドステロン、アドレナリン増加し、
血中コレステロール2.5%増加、TG7%増加


脂質やレニン・交感神経系への影響というのは?


Effects of Low-Sodium Diet vs. High-Sodium Diet on Blood Pressure, Renin, Aldosterone, Catecholamines, Cholesterol, and Triglyceride (Cochrane Review)
American Journal of Hypertension (2012); 25 1, 1–15. doi:10.1038/ajh.2011.210

167研究

減塩の影響は
1)正常血圧
白人:収縮期血圧(SBP)−1.27mmHg(95%信頼区間(CI):−1.88、−0.66;p=0.0001)、拡張期血圧(DBP) −0.05mmHg(95%CI:ー0.51、0.42;P=0.85)
黒人:SBP ー4.02mmHg(95%CI:ー7.37、0.68;P=0.002 )、DBP ー2.01mmHg(95%CI:ー4.37、0.35;p=0.09)
アジア人種:SBP ー1.27mmHg(95%CI :ー3.07、ー0.58;P= 0.17) 、DBP ー1.68mmHg(95%CI:ー3.29、0ー0.06;P=0.09 )
2)高血圧症
白人:SBP ー5.48mmHg(95%CI:ー6.53、ー4.43;P<0.0001) 、DBP ー2.75mmHg(95%CI :ー3.34、ー2.17;P<0.0001)
黒人:SBP ー6.44mmHg(95%CI:ー8.85、ー4.03;P=0.0001)、DBP ー2.40mmHg(95%CI :ー4.68、ー0.12;P=0.04) 
アジア人:SBP ー 10.21mmHg(95%CI :ー16.98、ー3.44;P=0.003)、DBP ー2.60mmHg(95%CI :ー4.03、ー1.16;P=0.0004) 
減塩により、レニン増加(P<0.00001)、アルドステロン(P<0.00001)、ノルアドレナリン(P< 0.00001)、アドレナリン(P<0.0002) 、コレステロール(P<0.001) 、TG(P<0.0008) 増加





慢性腎臓病(CKD) 検診・治療は エビデンスに乏しい メタボ+CKD検診なんて詐欺に詐欺を重ねてるようなモノ

そういえば、“慢性腎臓病”(CKD)という概念に関して、無防備だった! ・・・ 批評的スタンスを持つことをわすれていた。

“慢性腎臓病” という概念は、臨床の場に混乱をもたらしている。たとえば、構成要素の一つの“年齢、性別とクレアチニンだけで求められる・・・推定糸球体濾過率”は、薬剤投与量を決める場合のクレアチニン・クレアランス推定式と紛らわしい。



ここで、CKD検診や治療という面で、エビデンス確立しているような代物ではないという報告が、米国の内科学会を代表する団体のシステマティック・レビューから上がってきた。




Screening for, Monitoring, and Treatment of Chronic Kidney Disease Stages 1 to 3: A Systematic Review for the U.S. Preventive Services Task Force and for an American College of Physicians Clinical Practice Guideline
Ann Int Med. April 17, 2012, 156 (8)


メタボ検診にCKD検診を加えることって、詐欺に詐欺を重ねてるようなモノ ・・・ かもしれない


20歳以上の11%がCKDで、その95%が早期(stage 1-3)で、CKD病期は加齢そして、医学的状態、すなわち、糖尿病、高血圧、心血管疾患に依存するのである。


すなわち、あえて、CKDという病態を創造し、検診を行い、治療を行う意味合いなんてないってこと


システマティックレビューによると、CKD検診・モニタリングの価値は今のところ不明。

ACI阻害剤・ARBによるCKD治療に特定のベネフィットは認めるが、その多くは、アルブミン尿と、糖尿病・心血管疾患患者である。

CKDなるものの合理性は、早期介入による臨床的アウトカム改善だし、評価すべきは、検診のベネフィットと有害性。

reviewerたちは1985-2011年までの文献レビュー

CKD治療のベネフィット

プラシーボに比較して、ACE阻害剤・ARBはESRD(終末期腎疾患)への相対リスク減少と相関し、ESRDのプラシーボ比較のリスク比は、ACE阻害剤で0.65(95%信頼区間 [CI], 0.49-0.88)、ARBでは0.77(95%CI, 0.6-0.90)。糖尿病・顕性アルブミン尿症患者が最もリスク低下に寄与。

微小アルブミン尿・心血管疾患・高リスク糖尿病患者では、死亡リスクがプラシーボ比較でACE阻害剤で減少 (RR, 0.79; 95% CI, 0.66 - 0.96)

eGFR異常患者/高脂血症・うっ血性心不全患者のうち、スタチンとβ遮断剤治療は、対症薬やプラシーボに比較して、有意に死亡率・心血管イベント低下と関連。

通常血圧コントロールと比較して、厳格な血圧コントロールは死亡率、ESRD、他の臨床的アウトカム減少に寄与しない。

ARBとスタチン治療は、高strength-of-evidence ratingであるが、ACE阻害剤・β遮断剤はmoderate、厳格な血圧コントロールのevidence ratingが低い。



レビューの限界と意味合い

“CKD検診・モニタリングの役割として、臨床的アウトカムへの影響は不明”

CKD治療・ベネフィットのエビデンスは主にACE阻害剤・ARBが最強であり、糖尿病もしくは心血管疾患患者のアルブミン尿症患者である。

レビューの限界は、アウトカムに関するエビデンスの不足、post hoc解析をサブグループ検討で用いたこと、報告選択・出版バイアスが見られたこと。さらに、副事象イベントのシステマティックなデータ収集が少ないことが問題。

CORONARY研究: 冠動脈バイパス手術 off pumpの窮地を救う報告?

CABGにおける off-pump(心拍動下バイパス手術) vs on-pump(人工心肺使用手術)に関する議論

CABGは、冠動脈疾患の重度な場合に死亡率減少をもたらすが、人工心肺を用いた方法が一般的、周術死亡率は2%で、合併症(心筋梗塞、卒中、要透析腎不全)が5-7%生じる。
off-pumpが開発され、周術合併症減少に寄与し、これは主に大動脈cross-clampingなどに起因する部分があり、それを回避出来る可能性から期待されている手技である。
 Randomized On/Off Bypass (ROOBY) trialでは、むしろon-pumpの方が1年後の合併症・死亡率・血管開存性など優越的な状況であった(ROOBY研究:on pump vs off pump 冠動脈バイパス手術(CABG) 2009年 11月 05日)。
しかも、以前の報告では、clinically important differenceを死亡率、心筋梗塞、卒中、腎不全で満たしていないことも指摘されていた。


off-pumpは窮地に至っていた。そんな中・・・日本では・・・

一発逆転のように、以下のoff-pump有意な報告・・・

Off-Pump or On-Pump Coronary-Artery Bypass Grafting at 30 Days
André Lamy, et. al.
for the CORONARY Investigators
N Engl J Med 2012; 366:1489-1497 April 19, 2012
第30日死亡率、心筋梗塞、卒中、要透析腎不全に関してはCABGのoff-pump vs on-pumpの差は認めない。
具体的には、プライマリ複合アウトカム(30日目の死亡率、心筋梗塞、卒中、要透析腎不全) off-pump vs CABG (9.8% vs. 10.3%; ハザード比(off-pumpからみた), 0.95; 95% 信頼区間 [CI], 0.79 - 1.14; P=0.59)
どの個別要素も減少。

off-pumpは輸血減少 (50.7% vs. 63.3%; 相対リスク, 0.80; 95% CI, 0.75 - 0.85; P<0.001)、周術出血のための再手術率(1.4% vs. 2.4%; 相対リスク, 0.61; 95% CI, 0.40 - 0.93; P=0.02)減少、急性腎障害減少 (28.0% vs. 32.1%; 相対リスク, 0.87; 95% CI, 0.80 - 0.96; P=0.01)、呼吸器系合併症(相対リスク, , 0.79; 95% CI, 0.63 - 0.98; P=0.03) 減少をもたらす。
しかし、早期血管再建術必要リスク増加させる (0.7% vs. 0.2%; ハザード比, 4.01; 95% CI, 1.34 - 12.0; P=0.01)





論文の序文に書かれていた今までの on-pump vs off-pumpに関する論文
Sellke FW, DiMaio JM, Caplan LR, et al. Comparing on-pump and off-pump coronary artery bypass grafting: numerous studies but few conclusions: a scientific statement from the American Heart Association Council on Cardiovascular Surgery and Anesthesia in collaboration with the Interdisciplinary Working Group on Quality of Care and Outcomes Research. Circulation 2005;111:2858-2864


Puskas JD, Williams WH, Mahoney EM, et al. Off-pump vs conventional coronary artery bypass grafting: early and 1-year graft patency, cost, and quality-of-life outcomes: a randomized trial. JAMA 2004;291:1841-1849


Nathoe HM, van Dijk D, Jansen EW, et al. A comparison of on-pump and off-pump coronary bypass surgery in low-risk patients. N Engl J Med 2003;348:394-402


Legare JF, Buth KJ, King S, et al. Coronary bypass surgery performed off pump does not result in lower in-hospital morbidity than coronary artery bypass grafting performed on pump. Circulation 2004;109:887-892


Straka Z, Widimsky P, Jirasek K, et al. Off-pump versus on-pump coronary surgery: final results from a prospective randomized study PRAGUE-4. Ann Thorac Surg 2004;77:789-793

Novitzky D, Shroyer AL, Collins JF, et al. A study design to assess the safety and efficacy of on-pump versus off-pump coronary bypass grafting: the ROOBY trial. Clin Trials 2007;4:81-91


Shroyer AL, Grover FL, Hattler B, et al. On-pump versus off-pump coronary-artery bypass surgery. N Engl J Med 2009;361:1827-1837

ACCF・STS共同研究:2・3枝病変におけるPCI vs CABG 長期予後CABG勝る

ACCF(American College of Cardiology Foundation )とSTS( Society of Thoracic Surgeons )の共同研究


傾向スコア補正データにて、PCI(経皮的冠動脈インターベンション)群とCABG(冠動脈バイパス術
)群で、臨床的アウトカム比較。

CABG選択患者はPCI選択群に比べ長期生存良好。


Comparative Effectiveness of Revascularization Strategies
William S. Weintraub,et. al.
N Engl J Med 2012; 366:1467-1476 April 19, 2012




2004-2008年のメディケア・メディケイドサービスセンターからのデータで ACCF National Cardiovascular Data Registry and the STS Adult Cardiac Surgery Databaseをリンクしたもの


65歳以上の冠動脈2枝・3枝病変で、急性心筋梗塞でない症例のうち
CABG 86244、 PCI 103549

フォローアップ中央値 2.67年間

1年時点、補正死亡率有意差認めず
CABG 6.24%、 PCI 6.55% リスク比 0.95;95%信頼区間 0.90-1.00

4年時点、CABG死亡率の方がPCIより低い
CABG 16.4%、 PCI 20.8% リスク比 0.79;95%信頼区間 0.76-0.82

同様な結果が他の多くのsubgroup、異なる分析方法でも認められた。残存寄与因子は感度分析で評価した。





後付け解析でも、propensityスコア解析、さらに、他の分析方法を加え、感度分析など行えば随分信頼性が増す。ただし、一致した結果が出た場合だけだろうが・・・






天上の方の手術に関して、ごちゃごちゃ言ってる人がいるらしいというか、見たが、我々には、多枝病変なのか、主幹部病変もしくはそれに近いところなのか、病変がエキセントリックなのか、コンセントリックなのかすら分からない。故に、批判なんて出来ないはず・・・

侵襲型カンジダ症:βグルカン値は治療成否の指標


Correlation of Clinical Outcomes with β-glucan Levels in Patients with Invasive Candidiasis
Journal of Clinical Microbiology First published March 2012, doi: 10.1128/​JCM.00773-12JCM.00773-12

侵襲型カンジダ症(IC)におけるβグルカンと臨床的アウトカムの関連は不明であった。
血中βグルカン週2回とアウトカム診断の前向きコホート
βグルカンと臨床的アウトカムの相関を患者ごとに評価
βグルカン値は減少ほど治療成功、増加ほど治療失敗を意味する
βグルカンは侵襲型カンジダ症のアウトカム評価の候補

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