2012年5月10日木曜日

ARISTOTLEトライアル:心房細動・粗動患者 アピキサバン vs ワーファリン

卒中・TIA既往有無に関わらず、心房細動患者の経口投与可能で、高い選択性を持つ第Xa因子阻害剤であるアピキサバン vs ワーファリン

両薬剤の効果は一致

ただ、卒中・TIA既往患者のアウトカムに関わるリスク状況の場合、絶対的ベネフィットはアピキサバンにある。


Apixaban compared with warfarin in patients with atrial fibrillation and previous stroke or transient ischaemic attack: a subgroup analysis of the ARISTOTLE trial
The Lancet Neurology, Early Online Publication, 8 May 2012

39ヶ国1034医療機関に於ける、18201の心房細動・粗動患者割り付け

アピキサバン 5mg×2/日
vs
ワーファリン(ターゲット:INR 2.0-3.0)

フォローアップ中央値1.8年(IQR 1.4-2.3)

プライマリ有効性アウトカムは、卒中・全身性塞栓(ITT解析)
プライマリ安全性アウトカウは、重大出血(on-treatment population)

3436(19%)で卒中・TIA既往
既往サブグループにおいて、卒中・全身性塞栓率は、フォローアップ 100人年比較で、アピキサバン群 2.46、ワーファリン群 3.24  (hazard ratio [HR] 0.76, 95% CI 0.56 to 1.03)
既往無しサブグループ群で、アピキサバン群 1.01、ワーファリン群 1.23 (HR 0.82, 95% CI 0.65 to 1.03; p for interaction=0.71)

アピキサバンvsワーファリンの卒中・全身性血栓絶対的減少率は、フォローアップ100人年あたり 既往有りで 0.77(95% CI −0.08 to 1.63)、既往無しで 0.22 (−0.03 to 0.47)
重大出血比較で、既往有り 1.07  (95% CI 0.09—2.04) 既往無し  0.93 (0.54—1.32)

成人原発性中枢神経系血管炎

成人 Primary CNS vasculitis、PCNSVのセミナー記事

原因不明の稀な疾患で、脳・脊髄に限局した疾患。
発症年齢中央値は50歳 。
神経学的所見は様々だが、頭痛、認知機能変容、 局所的筋力低下、卒中。
(頭痛 63%、認知機能変容 50%、片麻痺 44%、持続性の神経所見・あるいは卒中 40%、失語 28%、TIA 28%、失調 19%、けいれん 16%、視覚異常 42%、視野欠損 21%、複視 16%、吐気・嘔吐 25%)
炎症性血清学的マーカーは通常正常。
脳脊髄液は成人80-90%で異常。
MRI正常なら否定的(FLAIRで両側天幕上高密度、T2強調白質病変などの存在あるも、疾患特異的ではない)。
CNS組織の生検が唯一の確定法。
血管造影が行われるが、感度・特異度も今一つ。 血管病変のサイズばらつきあり、予後や治療反応の参考となる。 (狭窄変化、末梢の拡張性変化など)
コルチコステロイド治療±細胞障害性薬剤使用のため、早期に疾患認識することは、 重篤なアウトカム予防のため、重要。
鑑別診断は、 reversible cerebral vasoconstriction syndromeや二次性脳血管炎 




Adult primary central nervous system vasculitis
The Lancet, Early Online Publication, 9 May 2012doi:10.1016/S0140-6736(12)60069-5



関連: Primary central nervous system vasculitis (PCNSV) 良性亜型:より小血管の血管炎 2008年 09月 30日

慢性炎症性脱髄性多発神経炎 :免疫グロブリン静注 vs メチルプレドニゾロン注

2ヶ月以上にわたって進行性または再燃性の左右対称性の四肢の運動・感覚性障害を示す末梢神経の疾患(神経炎)である、慢性炎症性脱髄性多発神経炎(chronic inflammatory demyelinating polyneuropathy: CIDP)


この疾患への多施設ランダム化二重盲検プラシーボ対照化平行群研究


結論は、IVIg6ヶ月治療は、メチルプレドニゾロン治療に比べ、無効故中断、副作用中断、耐容できず中断が少ない。ただ、長期効果・影響の検討が必要



Intravenous immunoglobulin versus intravenous methylprednisolone for chronic inflammatory demyelinating polyradiculoneuropathy: a randomised controlled trial
The Lancet Neurology, Early Online Publication, 10 May 2012




1:1センター割り付け
・ IVIg (0.5g/日 4連続日投与)
・ 静注メチルプレドニゾロン(0.5g /生理食塩水250mL/日 4連続日)
6ヶ月間月毎に投与

治療終了後6ヶ月間フォローし再発チェック

プライマリアウトカム:  無効・耐容不能による中断数差
セカンダリエンドポイント: 終了後副事象イベント・増悪比率


 45名(IVIg群 24、 メチルプレドニゾロン静注群 21名)完遂

IVIgよりメチルプレドニゾロンで中断数多い  (11 [52%] of 21) than IVIg (three [13%] of 24; relative risk 0·54, 95% CI 0·34—0·87; p=0·0085)

性、年齢、疾患期間、合併症、 modified Rankin scale 、 ONLS score、事前治療要素補正後も、2群差あり (odds ratio 7·7, 95% CI 1·7—33·9; p=0·0070)

中止理由は有効性なし (メチルプレドニゾロン群 8 vs IVIg群 3)、副作用  (メチルプレドニゾロン群 1)、 自発的中断  (メチルプレドニゾロン群 2)

IVIg 群2例は6ヶ月後フォロー期間中死亡

副作用イベント比率は差認めず(メチルプレドニゾロン群  (14 [67%] / 21) 、 IVIg 群 (11 [46%] / 24; p=0·1606)

治療中断後、IVIg患者ではメチルプレドニゾロン群より悪化し、さらに治療が必要となった  (8 [38%] / 21) メチルプレドニゾロン群  (0 / 10; p=0.0317)






骨粗鬆症治療:ビスフォスフォネート治療継続期間に関する意見

骨粗鬆症:ビスフォスフォネート製剤は5年程度で打ち止めにすべきだ ;"drug holiday"方針  2011年 09月 10日
 
と書いたが、このような一律中止は、必ずしも正しくはない という話。

中止は、 アレンドロネート(商品名:フォサマック、ボナロン)とゾレドロネートに限定すべきで・・・


NEJMのperspectiveの要約分
ビスフォスフォネートの継続雄使用期間と椎体骨骨折リスクに関するデータは限られているが、対照化トライアルとしては3-5年間で骨折リスク減少と考えるのが一般的。一方、非椎体骨骨折に関してはエビデンスとして一致したものはないといって良い。
 
治療3-5年後のTスコア -2.5未満の骨塩低下患者が最も椎体骨骨折リスクが高く、ビスフォスフォネート継続のベネフィット大きい。椎体骨骨折患者(-2.0以上でなくても)では継続するベネフィットが大きい。
大腿骨頚部-2.0以上では椎体骨折リスクは低く、継続加療のベネフィットは少ない。



Continuing Bisphosphonate Treatment for Osteoporosis — For Whom and for How Long?
Dennis M. Black, Ph.D., Douglas C. Bauer, M.D., Ann V. Schwartz, Ph.D., M.P.H., Steven R. Cummings, M.D., and Clifford J. Rosen, M.D.
May 9, 2012 (10.1056/NEJMp1202623) 


 大規模ランダム化対照化トライアルにて、ビスフォスフォネート3-4年間使用は、閉経後女性での非椎体骨・椎体骨骨折予防に有効と言うことが判明した。米国閉経後女性の7名に1人がビスフォスフォネート製剤使用されていた時期がある。
しかし、現在、骨塩吸収抑制療法の理想的治療期間に関して議論が生じ、特に、atypical subtrochanteric fracture( 不定型大腿骨転子下骨折)と下顎骨骨壊死の問題が注目されている。

この問題から、FDAに3-5年間を越えてのビスフォスフォネート製剤継続に関する再評価の方向となり、

Food and Drug Administration. Background document for meeting of Advisory Committee for Reproductive Health Drugs and Drug Safety and Risk Management Advisory Committee. September 9, 2011 (http://www.fda.gov/downloads/AdvisoryCommittees/CommitteesMeetingMaterials/Drugs/DrugSafetyandRiskManagementAdvisoryCommittee/UCM270958.pdf)


 
 
FLEXトライアル、HORIZONトライアルにて、中止後骨塩減少は継続に比べて軽度に過ぎず、アレンドロネート(5年)とゾレドロネート(3年)で持続的効果が示唆された。
 
・ Fracture Intervention Trial Long-Term Extension (FLEX)トライアル(Black DM, Schwartz AV, Ensrud KE, et al. Effects of continuing or stopping alendronate after 5 years of treatment: the Fracture Intervention Trial Long-Term Extension (FLEX): a randomized trial. JAMA 2006;296:2927-2938
 
・  Health Outcomes and Reduced Incidence with Zoledronic Acid Once Yearly (HORIZON) Extension trial(Black DM, Reid IR, Boonen S, et al. The effect of 3 versus 6 years of zoledronic acid treatment in osteoporosis: a randomized extension to the HORIZON-Pivotal Fracture Trial (PFT). J Bone Miner Res 2012;27:243-254)
 
しかしながら、観察研究では、リセドロネート中止後骨塩の減少が示されている。
 
中止は、アレンドロネート(商品名:フォサマック、ボナロン)とゾレドロネートに限定すべきだという主張

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