2015年7月15日水曜日

スタチンのコスト効果検討:現行のACC/AHAガイドラインのASCVDリスク閾値は妥当


ACC/AHAガイドライン2013




一次予防としては、ガイドラインの項目の一つ、「 40~75歳の人で肝疾患、糖尿病をもたず、LDL-Cが70-189mg/dLであるが、 10年-ASCVDリスクが7.5%以上の人」が重要な項目。


日本の動脈硬化学会の見解などをみると・・・人種による相違だけを強調し、根幹部分への批評になってない。
http://www.j-athero.org/outline/guideline_comment.html



ASCVDリスク評価
http://tools.cardiosource.org/ASCVD-Risk-Estimator/

atherosclerotic cardiovascular disease (ASCVD) 予防のためのスタチン使用、そのコスト効果解析

45−70歳の米国のmicrosituation modelで、ACC/AHAコレステロール治療ガイドラインを用いた10年ASCVDリスク閾値 7.5%以上リスク閾値とすると認容性の高いコスト効果特性(ICER $37,000/QALY)を得ることができる。大甘な閾値として、4%以上とすると、$100,000/QALYとなり、3%以上とすると、$150,000/QALYとなる。



Cost-effectiveness of 10-Year Risk Thresholds for Initiation of Statin Therapy for Primary Prevention of Cardiovascular Disease
Ankur Pandya, et. al.
JAMA. 2015;314(2):142-150. doi:10.1001/jama.2015.6822.
現時点でASCVD閾値 7.5%以上なら、成人スタチン治療比率は48%で、10%以上閾値と比較し、incremental cost-effectiveness ratio (ICER) of $37 000/QALY  である。

閾値をより甘くして、4.0%以上とすると、成人治療比率は61%で、3.0%以上なら67%で、ICERはそれぞれ、 $81 000/QALY 、 $140 000/QALY

ASCVDリスク閾値を7.5%から3.0%へシフトすると、イベント161,560例の回避

コスト効果結果は、連日服用・スタチン価格・スタチンによる糖尿病発症リスクにおいて、非効用性においてその変化にsensitiveである。

probabilistic sensitivity analysisにて、至適ASCVD閾値は5.0%で、チャンス 93%となり、コスト効果閾値$100 000/QALY使用逓減となる。




Medscape解説:http://www.medscape.com/viewarticle/848013




もう一つのJAMA論文
ATPIIIガイドラインとCVD発症・CACスコアをアウトカムとして比較

Guideline-Based Statin Eligibility, Coronary Artery Calcification, and Cardiovascular Events
Amit Pursnani, et. al.
JAMA. 2015;314(2):134-141. doi:10.1001/jama.2015.7515.

プライマリアウトカムはCVD発症、セカンダリアウトカムは、CHDとCAC(Agatstonスコア

2435名のスタチン-naive被験者(男性 51.3歳 [SD, 8.6]歳、 女性 56%)のうち、ACC/AHAによるスタチン適応は 39%(941/2435)、ATP IIIは14%(348/2435) (P < 0.001)
CVDイベント74発症 (非致死性心筋梗塞 40、 非致死性虚血性卒中 31、 致死性CHDイベント 3)
ACC/AHAスタチン適応被験者はCVD発症ハザード比、ATPIIIより増加: それぞれ、6.8 (95% CI, 3.8-11.9) vs 3.1 (95% CI, 1.9-5.0)(P<0 .001="" br="">
同様の結果が、intermediate Framingham Risk Scoreの被験者でのCVD、CHDで見られる。

新規スタチン適応となった被験者は、CVD発症率としては5.7%、 NNTは39-58

CAC被験者は、ATP IIIよりACC/AHAによるスタチン適応が多くなった : CAC score >0 (n = 1015): 63% vs 23%; CAC score >100 (n = 376): 80% vs 32%; and CAC score >300 (n = 186): 85% vs 34% (all P < 0.001).

CACスコア 0では、ACC/AHAスタチン適応のうち低リスク群と同定され、CVD率 1.6%、306/941 1.6%

皮質部位微小脳出血病変(CMB)は、小血管からの赤血球が漏れ出した残渣であり、血流減少の証

微小脳出血という画像上の所見の意味合いについてつっこんだ報告がなされた。


日本のガイドラインによると・・・

微小脳出血(microbleeds)、無症候性脳出血
http://www.jsts.gr.jp/guideline/223_224.pdf
 微小脳出血の出現頻度は、高齢(Ⅱb)、高血圧(Ⅱb)、大脳白質病変の程度が進行していること(Ⅱb)、脳卒中の既往があること(Ⅱb-Ⅲ)によって高まる。
 アテローム血栓性脳梗塞では微小脳出血の頻度は正常対照と差がなく、心原性脳塞栓症、脳出血、ラクナ梗塞で高い。特に脳出血とラクナ梗塞で頻度が高い(Ⅱb)。
 微小脳出血は、新たな脳出血またはラクナ梗塞の発症リスクとなるという報告と、ならないという報告があり、一致した結論が得られていない。
 微小脳出血は前頭葉認知機能低下と関連している(Ⅱb)。
 脳梗塞急性期における血栓溶解療法では、微小脳出血の存在によって急性期脳出血リスクが高まるという証拠はない(Ⅱb-Ⅲ)。
 微小脳出血例に抗血小板薬や抗凝固薬を投与することによって新たな出血のリスクを高めるとした報告はない。



皮質部位微小脳出血病変は、小血管からの赤血球が漏れ出した残渣であり、血流減少の証という報告。脳の低潅流は神経変性やニューロン障害をもたらし、認知機能など脳の機能低下をもたらす元になるのかもしれない。


Incidental Cerebral Microbleeds and Cerebral Blood Flow in Elderly Individuals
Nicholas M. Gregg, et. al.
JAMA Neurol. Published online July 13, 2015.

微小脳出血(CMBs)は高齢者のMRI画像で偶発的に認められる比較的高頻度の所見で、blood breakdown productの集合体であり、微小脳出血は認知機能障害と関連するも、メカニズムは不明。CMBが脳アミロイドアンギオパチー症状と関連し、血管反応性の異常・脳血流(CBF)の異常を来すことが想定される。偶発発見CMBs健常者のCBFの異常を検討。具体的には、resting-state CBF、脳メタボリズム、脳血管疾患、βーアミロイド、認知機能を評価。


横断研究;55名の認知機能正常、平均年齢 86.8(SD 2.7)歳

脳皮質CMBの存在は、有意に、「multiple regions on voxelwise and region-of-interest analyses」におけるCBF減少と相関  (global CBFの%差, −25.3%; P = 0.0003)、 頭頂部皮質の最大減少 (−37.6%; P < 0.0001) and precuneus (−31.8%; P = 0.0006)

CMB病変のある被験者では、CBF減少傾向にあるも有意差認めず

皮質CMB被験者では、有意に梗塞存在可能性と相関 (24% vs 6%; P = 0.047) し、Clinical Dementia Rating scaleにおける異常の存在確率と相関するd  (45% vs 19%; P = 0.12)

皮質アミロイドに関しては、CMB存在・非存在で差を認めず (measured by Pittsburgh compound B positron emission tomography)  (P = 0.60)

結論: 微小脳出血(CMB)の存在は、認知機能正常者において、resting-stateの脳血流減少と相関し、慢性の脳の低潅流がニューロンの障害・脳神経変性をもたらす可能性がある。
resting-stateの脳血流は小血管病変であるCBMのマーカーでもある。




2型糖尿病・高血圧安定患者:強化降圧治療で脳容積減少 2014/03/04

【またしてもインチキガイドライン】JSH2014:高齢者高血圧・・・日本独特の前期・後期高齢者年齢区分を無理矢理導入し、エビデンスを欠くガイドライン 2014/04




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