2012年4月18日水曜日

老人:新規フィブラートでクレアチニン増加

老人では、新規フィブラート使用はクレアチニン増加リスクもたらす。
ただ、死亡率・重症腎障害によるリスクの差は無い。


New Fibrate Use and Acute Renal Outcomes in Elderly Adults
A Population-Based Study
April 17, 2012
Ann Int Med. vol. 156 no. 8 560-569

エゼチミベ(ゼチーア)(n=61832)と比べ、フィブラート(n=19072)はクレアチニン値増加による入院増加 (補正オッズ比, 2.4 [95% CI, 1.7 to 3.3]) 、腎臓専門医コンサルト増加(絶対的リスク比, 0.15% [CI, 0.01% to 0.29%]; 補正オッズ比, 1.3 [CI, 1.0 to 1.6])

全原因死亡率、重症腎障害によるリスクに差は認めない。

1110名のsubpopulation(フィブラート n=220; エゼチミベ n=890)において、フィブラート 9.1%、 エゼチミベ 0.3%で、50%以上の血中クレアチニン増加(絶対的差, 8.8% [CI, 4.5% to 13.1%]; オッズ比, 29.6 [CI, 8.7 to 100.5])

リスクはCKDフィブラートで特に大きい。

ドライアイ:カフェインが治療一助になる可能性 ・・・

東京大学眼科の先生の報告

カフェイン摂取は、涙液産生増加につながるという報告で、ドライアイ治療改善につながるかもしれないという報告。



Caffeine Increases Tear Volume Depending on Polymorphisms within the Adenosine A2a Receptor Gene and Cytochrome P450 1A2
Ophthalmology. 2012 Feb 14. 

カフェイン摂取後、涙液量増加

カフェイン摂取後とプラシーボ後の、.涙液メニスカスの高さ:tear meniscus height(TMH)の増加は0.08 mm (95% 信頼区間(CI), 0.05-0.10) (P<0.0001)


アデノシンA2a受容体 - ADORA2Aにおいて、TMHの増加の差
rs5751876 と rs2298383 で 0.07 mm (P= 0.001)
minor homozygousの場合 0.08 mm (P= 0.007)

CYP1A2では、 rs2472304 minor homozygousなら、TMHが最増加がmajor homozygousより大きく、差は0.06mm(P=0.039)



アデノシンA2a受容体 - ADORA2AとCYP1A1と涙腺機能の関係 、カフェインによる影響を説明可能かもしれない。この3つは、パーキンソン病、カフェイン誘発性不安障害などでも考察されている。
CYP1A1は喫煙、基質として、 Ethoxyresorufin Caffeine Theophylline APAP 6-beta-testosterone hydroxylation 2-hydroxylation of 17-beta-estradiol Prostaglandin and arachidonic acid hydroxylation。


米国:ヘリコプター搬送は地上搬送に比べ、生存率、退院予後良好

救急搬送のベネフィットの議論、国によって事情が異なるので・・・難しいなぁと思う


level I、level II 外傷センター受診、重大外傷 223475名の成人データ

ヘリコプター搬送 vs 地上輸送  メディカルサービスチーム比較

後顧的コホート 15歳超223475名、 重症度スコア15以上、 鈍的外傷、せん通性外傷で、US level I もしくは II 外傷センター搬送必要な患者対象


Association Between Helicopter vs Ground Emergency Medical Services and Survival for Adults With Major Trauma
JAMA. 2012;307(15):1602-1610. doi: 10.1001/jama.2012.467

    ヘリコプター搬送 61909、地上搬送161566

    全体で、死亡、ヘリ搬送 7813(12.6%) vs 地上搬送 17775(11%)

    propensity score(傾向スコア) matching前、ヘリコプター搬送患者は外傷重症度高い。

    propensity score-matched 多変量回帰モデルにて、level I trauma centerへの、ヘリコプター搬送は、地上搬送比較に対し、生存率改善 (odds ratio [OR], 1.16; 95% CI, 1.14-1.17; P  < .001; absolute risk reduction [ARR], 1.5%)

    level II trauma centaerへの搬送患者に対して、ヘリコプター搬送は生存率オッズ改善と関連 (OR, 1.15; 95% CI, 1.13-1.17; P  < .001; ARR, 1.4%).

    level I trauma centerへの搬送に関してリハビリテーション退院率は、地上搬送で12.7%、 ヘリコプター搬送で18.2%(P < 0.001)

    中間施設への退院比率は、地上搬送で6.5% ヘリコプター搬送で 9.3%、(P  < .001)

    medical adviceに反するlevel II trauma centerへのヘリコプター搬送患者は少ない  (0.5% vs 1.0%, P  < .001)

進行期肺非小細胞癌:標準併用化学療法に、アバスチン追加による生存率優位性認めず ・・・ 適応再考必要

アバスチンという薬剤は、昨年、有害性( 重度高血圧、出血・易出血、心発作、心不全、鼻腔・胃・消化管の穿孔など.)が有益性を上回ることが理由で、米国FDA 転移性乳がん(mBC)承認取り消しとなっている。
http://www.fda.gov/NewsEvents/Newsroom/PressAnnouncements/ucm280536.htm




肺がんに於ける承認においても再検討がなされるのは当然。

ベバシズマブ(bevacizumab):アバスチンは日本でも2009年11月、に「扁平上皮がんを除く切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん」への適応追加の承認が得られている。

 ピボット第Ⅲ相トライアル (ECOG Study E4599) (N Engl J Med 2006; 355:2542-2550 Dec, 14, 2006)で、アバスチンをPC(パクリタキセル+カルボプラチン:CBDCA)に追加により、1年生率 51% vs 44% 2年生存率 23% vs 15%、生存率比較では12.3ヶ月 vs 10.3ヶ月という報告
 http://www.avastin.com/avastin/hcp/lung/efficacy/overview/index.html

これに対して、効果に疑問を呈する後顧的解析の報告。

Carboplatin and Paclitaxel With vs Without Bevacizumab in Older Patients With Advanced Non–Small Cell Lung Cancer
JAMA. 2012;307(15):1593-1601. doi: 10.1001/jama.2012.454


CBDCA-paclitaxel ± bevacizumabと全生存率比較


生存率中央値
bevacizumab-CBDCA-paclitaxel 9.7(中間四分位  [IQR], 4.4-18.6)ヶ月
CBDCA-paclitaxel 8.9 (IQR, 3.5-19.3)ヶ月(2006年-2007年)、 8.0 (IQR, 3.7-17.2)ヶ月(2002年-2005年)

1年生存確率
bevacizumab-CBDCA-paclitaxel 39.6 % (95% CI, 34.6%-45.4%) vs CBDCA-paclitaxel 40.1% (95% CI, 37.4%-43.0%) (2006年-2007年) 、 35.6% (95% CI, 33.8%-37.5%)(2002年-2005年)






多変量解析、propensity score補正Cox modelでもbevacizumab-CBDCA-paclitaxel vs CBDCA-paclitaxel cohort比較で生存率advantage認めず


propensity score-層別化モデルで、包括生存率ハザード比(bevacizumab-CBDCA-paclitaxel vs CBDCA-paclitaxel)(2006-2007年)比較では、1.01 (95% CI, 0.89-1.16; P = .85) で、 carboplatin-paclitaxel (2002-2005年)比較では 0.93 (95% CI, 0.83-1.06; P = .28)

propensity score荷重モデル、propensity scoreマッチモデルでも同様に統計学的なbevacizumab-CBDCA-paclitaxelの優越性認めず

鍵となる変数のサブグループ・感度解析では所見変化せず

日本の新薬承認早期化は悪いとは言えないが、副事象対応やコスト・ベネフィット情報などは迅速に行政が指導すべきだろう。

前向きコホート:麻薬による死亡率増加あきらか 13年間で約2倍

非合法 故に、麻薬の死亡率との関連性報告に関して、データ不充分であった。
 
イラン北東部5万以上の住民で、麻薬(lachryma papaveris)使用が流布されているところでの、5万人の前向きコホート研究




 "Opium use and mortality in Golestan Cohort Study: prospective cohort study of 50,000 adults in Iran"
Khademi H, et al BMJ 2012; DOI: 10.1136/bmj.e2502.                          
麻薬使用 17%(n=8487)、平均12.7年間。フォローアップ中、2145名死亡。

麻薬使用経験に於ける補正全死亡率86%(補正ハザード比 1.68-2.06)増加。

麻薬使用は有意にいくつかの死亡リスク増加と関連
ハザード比: 循環器系 1.81、 癌 1.61

最も強い相関は、ぜんそく 11.0、結核 6.22 、COPD 5.44

慢性疾患発症後自己使用報告除外でも同様の両依存関係が認められた。


小規模研究で、麻薬と食道癌・膀胱癌の関連性が認められていたが、疫学的には死亡率評価としては十分と言えなかった。

上記報告では、平均使用量 0.6gで比較的少ない量であった。

女性を除いた死亡率高リスク要素は
・都市部 HR 2.32(95%CI 1.85-2.92,P=0.008)
・肥満 HR 2.25(95%CI 1.72-2.93,P=0.02)
・喫煙経験無し HR 2.07(95%CI 1.83-2.35 P=0.001)

主要死亡原因は、感染症 HR 5.47(95%CI 2.87-10.4)、 呼吸器疾患 HR 3.78(95%CI 2.36-6.04)、 消化器疾患 HR 3.12(95%CI 1.82-5.37)


呼吸器系疾患は特異的で、呼吸数・一回換気量、上気道狭窄、マスト細胞からのヒスタミン遊離の減少を伴う呼吸器系への負の影響が関与しているようだ。
特に、喘息において、死亡ハザード比は11(95%CI 3.97-30.5)で、COPDでは5.44(95%CI 2.03-14.5)
結核ハザード比は6.22(95%CI 2.36-16.4)

心筋酸素化低下・免疫機能障害の長期化からだ思うが、虚血性心疾患(HR 1.90、95%CI 1.57-2.29)、肺がん増加(HR 2.27、95%CI 1.07-4.80)

量依存関係があり、 麻薬の死亡原因への寄与率は14.9%(95%CI 2.3-17.5)

解説:http://www.medpagetoday.com/PublicHealthPolicy/PublicHealth/32224


心不全:テストステロンサプリメント投与で歩行距離・酸素摂取量増加 ;臨床的イベントやQOLへの影響は不明

心不全患者において、運動能力・代謝的状況改善のための、テストステロンサプリメント
テストステロンにより、歩行距離、酸素消費量を16%-23%改善。

ただ、これが、真にQOLや臨床的イベントに好影響を与えているかは慎重に考慮する必要がある。


 "Testosterone supplementation in heart failure: a meta-analysis"
Toma M, et al
 Circ Heart Fail 2012; DOI: CIRCHF/2011/965632. 
心不全患者において、テストステロンの運動能力に関する影響を報告したランダム化トライアルの研究

4つのトライアル(n=198、男性84%、平均年齢 67歳)

52週までの6分間歩行距離(6MWT:2つのRCT)、ISWT(2つのRCT)、ピークVO2

テストステロン治療は、プラシーボに比べ、有意に運動能力改善

6MWT、ISWT、peak VO2は、プラシーボ比較で、それぞれ 54.0 m (95% CI 43.0-65.0m)、46.7m (95% CI 12.6-80.9m)、 2.70 ml/kg/min (95% CI 2.68-2.72 ml/kg/min)増加

テストステロン治療は有意に運動能力増加と相関した。
 (net effect 0.52 SD, 95% CI 0.10-0.94)

有意な副事象心血管イベントは報告されてない。

結論の中に、高リスク対象者へのテストステロンベネフィットをQOL、臨床的イベント、安全性を評価するための、適切なパワーをもつRCTが必要とあえて付記されている。

noteへ実験的移行

禁煙はお早めに! 米国における人種・民族・性別による喫煙・禁煙での死亡率相違|Makisey|note 日常生活内の小さな身体活動の積み重ねが健康ベネフィットをもたらす:VILPA|Makisey|note