2013年1月31日木曜日

NEJM:肥満に関する都市伝説 7つ ・・・性交渉のエネルギーは14kcal程度

どれもこれもテレビ・ラジオ、週刊誌、新聞、ウェブあたりで、科学的証拠の前提としてしたり顔で語られている。実際、栄養士たちのテキストにもかかれてるものもあるそうだ。
残念ながら、プレスレポートだけじゃなく、科学的記載物にも、根拠なき都市伝説が広がり、嘘や根拠なき事象が多く見受けられるということが、文献レビューから明らかになった。

たとえば、ダイエット番組では「停滞期」とか「リバウンド期」などと解説しながら番組を進めることが多く、また、「ご飯一杯"235kcal"だから脂肪"26g"に相当し、1週間で"180g"、1ヶ月で"780g"、1ヶ月で"4.7kg"」なども根拠のない解説だそうだ。「急激なダイエットはリバウンドを生みやすい」とか、「セックスでダイエット」とかも同様に根拠がない。

肥満に関する多くの矛盾する神話、都市伝説、迷信が、科学的エビデンスと無縁にひろがり続けている。証拠のない信念が流布していること で、同意に基づく意思決定も曖昧になり、臨床的・公衆衛生的推奨も不正確なものとなり、非生産的な社会資源の不適切使用にもつながる。有益な、エビデンス ベースの情報から人々がはなれることにもなる。

以下の赤文字は、すべて間違いとされてる都市伝説

1.エネルギー(カロリー)摂取と消費は小さな変化でも長期的には大きな体重変化となる

(国際的ガイドラインや信頼性の高いWebサイトが大きく宣伝する内容として、日々のライフスタイル変容を小規模ながら続けることによる体重蓄積の大きな変化はあいまいである(e.g. 2つのポテトチップスが20分歩行に相当するなど)


2.肥満治療において現実的目標を設定することが重要、さもなければ、患者はフラストレーションを生じ、体重減少を目指さなくなる。

(目標設定理論 goal-setting theoryよると、達成不能な目標はパフォーマンスを低下する。肥満治療において、希望と実際の体重減少との不適合が患者の目標到達認知能力を障害し、体重減少に必要な行動をとりやめることになる)



3.急激、大幅な体重減少は、体重の長期的動きからすれば不良な状況になることが多く、ゆっくりとした確実な体重減少が望ましい

(この概念は、1960年代の極超低カロリーダイエット(< 800kcal)の副作用への答え落として、テキストに繰り返し記載され、医療権威者からも推奨され、栄養士から提示され続けている)



4.”ダイエットステージ”の評価、ダイエットの受け入れが減量治療を求める上で重要

(減量準備の患者がよりライフスタイル変容をもたらすという考え)



5.現行のフォーマット上での医師教育クラスは、小児肥満の予防、減少に重要な役割を果たす。

(医師の活動的な健康信念が十分な期間、頻回、強固なほど、肥満減少と直結し、結果をもたらすという観念)



6.母乳は肥満予防となる

(母乳は肥満になりにくいという100年以上前から続く信念、情緒的に発生したものでは?)



7.性行為のカロリー量は100−300kcal
(エネルギー(カロリー)消費量は標準の性的活動性で、3.5METsで、体重70kgの人は時間あたり 245kcalという計算、だが性行為は約6分程度であり、平均的には21kcal-14kcal)



Myths, Presumptions, and Facts about Obesity
Krista Casazza, et. al
N 、Engl J Med 2013; 368:446-454January 31, 2013DOI: 10.1056/NEJMsa1208051




No1迷信が一番気にかかる。この部分の解説を訳してみた。

3500kcal累積不足・増加あたり体重変化0.45kgに相当するという、"the half-century-old 3500-kcal rule"に由来しており、小さなライフスタイルの変化が累積的に反応し体重として多大な変化をもたらすことと予測している。
 しかし、この3500-kcal ruleは、極超低カロリーダイエット(<800 br="" kcal="">
 最近の研究では、エネルギー摂取・消費の変化からの体組成の変化は、個別的で、3500ーkcalルールより体重変化は少ないとされる。
 たとえば、3500-kcalだと、カロリー摂取増加なしのままで、1マイル(1.6km)ウォーキングごとに100kcal消費増加する人では、5年間で 22.7kg(50 lb)減少することとなる。しかし、実際にはー4.5kgであり、体の大きさに付随してエネルギー要求量もまた変化する。


要するに、カロリー計算に直結するモデルより累積的変化は少ないということ。良くも悪くもだろうが・・・

逆に、9つの事実事項を記載もしている。
  • 肥満寄与要素として遺伝は大きいが、十分な環境的影響克服できないようなものではない
  • 体重管理上食事摂取、カロリー摂取制限を伴う重要性
  • 運動の健康への正の要素
  • 十分量の運動 ー そして、カロリー消費を伴う ー ルーチンとして減量維持の方法とする
  • 体重増加の子供への減量プログラムを両親を参加させたり、自宅で行ったりする
  • 食事構成、食事置換法を減量の手助けとする
  • 薬物の使用は減量に有効(日本では限られてるが・・・ 新薬登場の噂は聞く)
  • 長期減量のため、糖尿病発症・合併症減少のための減量手術

セレニウムは心血管疾患への有益性なし

いんちき健康相談の常套句

”微量ミネラルが不足してますから・・・ ***が生じやすい”



セレニウムに関しては効果どころか・・・
セレニウムU字減少:とりすぎると2型糖尿病リスク 2012/03/01
 という有害性事象の可能性があげられていた。



"Selenium supplementation for the primary prevention of cardiovascular disease"
Rees K, et al
Cochrane Database of Systematic Reviews 2013; DOI: 10.1002/14651858.CD009671.pub2.
http://summaries.cochrane.org/CD009671/selenium-supplements-for-the-prevention-of-cardiovascular-disease
心血管疾患や慢性疾患予防ということで、セレニウム使用が近年多くの国で広まってる。
レビューにて健常者へ心血管系疾患発生予防のためのサプリメント使用の効果評価。
12トライアル、19715名の健常成人をランダムにセレニウムとプラシーボ割り付け
大多数が米国男性で、栄養状態良好である。
全体的にバイアス低リスク
セレニウムサプリメント投与は健常成人に対して、重大心血管疾患予防的作用はない
2型糖尿病発症リスク増加が認められるという報告があったが、今回はその除外はできなかった。

要約すれば、今回のレビューでは、セレニウム服用は心血管疾患へのベネフィットも有害性も認めないが、十分な栄養状態では不要。

出版バイアス除外十分なのだろうか?

”グレーブス眼症”への臨床応用に関しては上記範疇外と思われる・・・

SFTS 日本へ

中国におけるSFTS(血小板減少を伴う重度発熱疾患)の原因:ブニヤウイルス属のフレボウィルス 2011年 03月 21日

 ↑
これがついに日本に波及してきたってことらしい

日本語正式名称がまだなかったので、血小板減少を伴う重度発熱疾患と訳しているが、今は、重症熱性血小板減少症候群(severe fever with thrombocytopenia syndrome,SFTS)が正しい呼称ということになる。


NIID国立感染症研究所
<速報> 国内で初めて診断された重症熱性血小板減少症候群患者 (掲載日 2013/1/30)
http://www.nih.go.jp/niid/ja/sfts/sfts-iasrs/3142-pr3963.html

重症熱性血小板減少症候群(severe fever with thrombocytopenia syndrome,SFTS)はブニヤウイルス科フレボウイルス属に分類される新規ウイルス、SFTSウイルス(SFTSV)、によるダニ媒介性感染症である。2011年に中国でSFTSと命名された新規感染性疾患が報告されて以来1) 、中国国内の調査から現在7つの省(遼寧省、山東省、江蘇省、安徽省、河南省、河北省、浙江省)で患者発生が確認されている1, 2) 。国内で初めて、発熱や血小板減少等の症状を呈し亡くなられた患者が、ウイルス学的にSFTSVによる感染症と診断されたので報告する。
・・・・
確定診断には、血液などからのSFTSVの分離・同定、RT-PCRによるSFTSV遺伝子検出、急性期及び回復期におけるSFTSVに対する血清 IgG抗体価、中和抗体価の有意な上昇の確認が必要であり、現在国立感染症研究所ウイルス第一部で検査が可能である。治療に関しては、リバビリン使用の報 告があるが2) 、その有効性は確認されていない。基本的に対症療法となる。有効なワクチンはない。
医療機関における院内感染予防には、ヒトからヒトに感染する接触感染経路があることから4) 、標準予防策の遵守が重要である。また、臨床症状が似た患者を診た場合にはSFTSを鑑別診断に挙げることが重要である。
SFTSVに感染しないようにするには、ダニに咬まれないようにすることが重要である。草むらや藪など、ダニの生息する場所に入る場合には、長袖の服、長ズボン、足を完全に覆う靴を着用し、肌の露出を少なくすることが重要である。
SFTSが疑われる患者を診た場合には、最寄りの保健所、または、国立感染症研究所問い合わせ窓口(info[アットマーク]nih.go.jp)に連絡していただきたい。
 臨床症状とは・・・
SFTSVに感染すると6日~2週間の潜伏期を経て、発熱、消化器症状(食欲低下、嘔気、嘔吐、下痢、腹痛)、頭痛、筋肉痛、神経症状(意識障害、けいれん、昏睡)、リンパ節腫脹、呼吸器症状(咳、咽頭痛)、出血症状(紫斑、下血)等の症状が出現

新聞情報
ダニ媒介 新感染症で死者 国内初 山口の成人女性 2013年1月31日 朝刊http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2013013102000103.html





CDC ;Emerging Infectious Disease
Severe Fever with Thrombocytopenia Syndrome Virus, Shandong Province, China
Vol. 18, Num. 6 June 2012
http://wwwnc.cdc.gov/eid/article/18/6/11-1345_article.htm



追記
ダニ媒介の感染症 新たに2人死亡
2月13日 10時9分
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20130213/t10015476891000.html
去年秋、ダニが媒介するウイルスによる新たな感染症で、山口県内の女性1人が死亡したことが国内で初めて確認されたことを受けて、厚生労働省が調べたところ、愛媛県と宮崎県でも去年秋に成人の男性1人ずつが同じ感染症で死亡していたことが分かりました。
男性2人は、いずれも最近、海外に行ったことはなかったということで、厚生労働省は国内でダニにかまれて感染したとみて詳しく調べています。



日本で発症のSFTSの医学情報かなり乏しい、米国CDCがからまないと、感染症に関する対策や情報進まない、日本の現状はなさけない。確かに、Uukunlemi virusも含め、ブニヤウィルスに関する知見が少なく、分類さえ曖昧だったこともその原因だろうが、日本でのワクチン開発や薬剤開発の声を聞かないのはさすがに心許ない。                             。

主に、N Engl J Med 2011; 364:1523-1532 April 21, 2011 からの情報


【病原】SFTS bunyavirus (SFTSV):ブニヤウイルス科。そのビリオンは92~105nmであり、エンベロープを有する。ゲノムは3分節のマイナス鎖RNA。フレボウイルス属およびトスポウイルス属のRNAの一部はプラス鎖で機能する。


3つの遺伝子セグメント末端は、他のphlebovirusと類似、L segmentは、6368の核酸で2084のアミノ酸をencode する、ひとつのopen reading frame。M segmentは2268の核酸で、1073のアミノ酸をencodeし、糖タンパク(Gn とGc)のprecursorである。
S segmentは1744の核酸からなるambisense RNAで、NとNSs proteinという2つの蛋白をencodeし、62-bp intergenic regionで反対側で分離する。

phylogenetic analysisで、Sandfly fever group (Rift Valley fever virus, Punta Toro virus, Toscana virus, Massila virus, and Sandfly fever Sicilian virus) とUukuniemi groupとほぼequidistant。

phlebovirusuの3番目のprototypeであることが示唆される。
SFTSVは、他のphrebovirusとは類似アミノ酸配列があるが、異なる部分が有り、区別される。
SFTSVのRNA依存RNA polymeraseとglycoproteinは
Both RNA-dependent RNA polymerase and glycoproteins of SFTSV are slightly more closely related to counterparts in Uukuniemi virus.

SFTSVのN protineは、Rift Valley fever virusと41.1%の類似性
S segmentをencodeするNSs protinのアミノ酸は、他のpholevirusと11.2から16.0%の類似性を示す。



リフトバレー熱:自然界では、主にヤブカ属の蚊と牛や羊の間で感染環が維持されている。
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou11/01-04-37.html

ワクチン開発 → Building a better Rift Valley fever vaccine
University of Texas Medical Branch researchers have significantly improved an existing experimental vaccine for Rift Valley fever virus, making possible the development of a more effective defense against the dangerous mosquito-borne pathogen.

Uukuniemi:ウークニエミウィルス

急性重度栄養障害(SEM)への抗生剤投与 死亡率・回復率改善

世界的にみれば、小児の合併症・死亡率に広く寄与しているSevere Acute Malnutrition(SAM)

正式日本語名があるのかもしれないが、急性重度栄養障害とした。
Management of severe acute malnutrition in children. Lancet. 2006 Dec 2;368(9551):1992-2000.
 体重/身長比中央値 あるいは National Centre for Health Statistics 平均参照値 SD以下 70%以下、栄養障害由来両側瘢痕性浮腫、または、上腕中間径 1−5歳で110mmと定義
 世界で毎年100−200万人罹患。
SAM症例は偏在的で、入院収容不能で、治療の限界あり、致死率20−30% 、医療カバー10%未満。
新鮮・既成・治療的食品およびサービスへのアクセスの量的増加プログラムによりコストを適切に軽減できる。合併症なきSAMは外来治療可能。
多くの報告で重症栄養障害による入院の子供の場合重大な感染症頻度が高い。この観察結果にて、外来治療ルーチン抗生剤使用が推奨されている。
この方針に対して、不要かつ、有害であるという指摘もあった。



マラウイ国 6−59ヶ月齢ランダム化二重盲験トライアルで、このSAMへの抗生剤投与は、回復率改善し、死亡率改善に役立つことが判明した

Antibiotics as Part of the Management of Severe Acute Malnutrition
Indi Trehan,  et. al.
N Engl J Med 2013; 368:425-435January 31, 2013DOI: 10.1056/NEJMoa1202851

治療的規制食品投与とともに、SAM症例に対し
・アモキシシリン
・セフジニル(セフゾン)
・プラシーボ
の7日間
プライマリアウトカムは:栄養回復率と死亡率

SAM症例2767名登録

回復率 アモキシシリン群 88.7%、 セフジニル群 90.9%、 プラシーボ 85.1%
プラシーボ比較の治療失敗相対リスクは、アモキシシリン群に対し 1.31、95%信頼区間 1.04−1.68、 セフジニル群に対し 1.64、95%信頼区間 1.27−2.11

死亡率に関して、それぞれ、4.8%、4.1%、7.4%

死亡相対リスクは、
プラシーボ vs アモキシシリン 1.55、95%信頼区間 1.07−2.24
プラシーボ vs セフジニル 1.80、95%信頼区間 1.22ー2.64

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