2012年4月4日水曜日

9つの米国専門学会による“べからず集”


37万4千名の9専門医グループが、医師患者が疑問とすべき、それぞれ 5つのリストを作った

http://choosingwisely.org/?page_id=13

 AAAAI
1)アレルギー評価のためのIgGやIgE個別などの診断検査はするな
2)単純な急性鼻副鼻腔炎へのCTオーダー、抗生剤は使用するな
3)慢性じんましん患者へのルーチンの診断検査するな
4)ワクチンへの抗体反応異常が無い場合、再発感染への免疫グロブリン治療するな
5)スパイロメトリーなしの喘息の診断・管理をするな

AAFP
1)腰痛6週間以内の、レッドフラグの無い患者での画像診断はするな
2)7日以上継続の無い場合の、臨床症状改善後増悪時、急性軽症・中等症副鼻腔炎抗生剤ルーチン治療するな
3)リスク要素の無い、女性65歳未満、男性70歳未満のDEXAスクリーニングするな
4)症状無いのに、毎年心電図・他の心臓スクリーニングするな
5)21歳未満・子宮摘出後症例での非がん疾患のためのPapスメア試験するな

ACC
1)高リスクマーカーが存在しない場合の、無心症状への初期評価としての負荷心臓画像検査・最新非侵襲的画像検査するな
2)無症状患者へのルーチンフォローアップのための、負荷心臓画像検査・最新非侵襲的画像検査するな
3)低リスク非心手術施行予定時、術前評価としての、負荷心臓画像検査・最新非侵襲的画像検査するな
4)徴候・症状変化無し成人患者での、軽症・無症状naive弁膜症ルーチンフォローアップのエコー検査するな
5)非合併症血行動態安定ST上昇型心筋梗塞のためのPCI施行中、非責任病巣へのステント術施行するな

ACP
1)無症状および冠動脈疾患低リスク患者での運動心電図試験スクリーニングするな
2)非特異的腰痛患者での画像診断はするな
3)単純失神、正常神経所見評価での、脳画像検査(CT or MRI)をするな
4)静脈血栓塞栓に対する検査前確率低い場合に、初期診断検査としての高感度Dーダイマー検査、初期診断検査としての画像検査をするな
5)胸腔内の病変が臨床的に疑うものがない時の術前胸部レントゲン写真検査するな

ACR
1)単純な頭痛時の画像診断しない
2) 中等度・高度検査前確率でないときに、肺塞栓疑いのための画像検査するな
3)明らかでない病歴・身体所見での通常患者への入院時・術前胸部レントゲン写真検査するな
4)小児において、超音波での所見確立前に、虫垂炎疑いに対しCT検査するな
5)臨床的意味少ない子宮付属器嚢胞の画像フォローアップするな

AGA
1)GERD薬物療法のための、長期制酸治療(PPIあるいはH2RA)は、目標治療ゴール達成に関して最小有効量に補正すべき
2)平均リスク対象者での高品質コロノスコピー陰性後、10年間再度直腸結腸癌検診するな
3)1-2個の小型(<1cm)腺腫性ポリープ患者に、高度異型なし、高品質コロノスコピ完全切除後は5年間はコロノスコピーするな
4)Barrett食道診断患者に対し、生検で異型なしと確認出来た2度目の内視鏡をうけた患者は、3年以内にフォローアップサーベイランス検査 するな
5)機能的腹痛(ROME IIIクライテリア)患者で、臨床的所見・症状変化がさほど無い限り、CTスキャンは繰り返すべきでない。

ASCO
1)パフォーマンス・ステータス3、4の固形がん患者、以前のエビデンスに基づく介入でベネフィット認めず、臨床トライアルで明らかで無い、抗がん剤治療臨床的評価を支持する強いエビデンスが無い場合、がんに対する直接治療を使用すべきで無い。
2)転移リスクの少ない早期前立腺癌患者の病期分類のためのPET、CT、RI骨スキャンするな
3)転移リスクの少ない早期乳がん患者の病期分類のためのPET、CT、RI骨スキャンするな
4)治癒的意図による乳がん治療達成無症状患者でのバイオマーカー、PET・CT・RI骨スキャンのサーベイランス検査はするな
5)合併症20%未満患者での有熱性好中球減少症への一次予防のための顆粒球刺激因子投与はするな。

ASN
1)無徴候・無症状での生命予後限定された透析患者では、がん検診するな
2)貧血症状なし、Hb 10g/dL以上のCKD患者では、EPA製剤(ESAs)投与するな
3) 高血圧、心不全、それと糖尿病を含むあらゆる原因によるCKDではNSAID投与するな
4)腎臓専門医相談無しにStage III-IV CKD患者にperipherally inserted central catheters (PICC) を挿入するな
5)患者、家族、医師の間で、shareされた意思決定なしに、慢性透析を開始するな

ASNC
1)高リスクマーカー存在しない、心臓症状なしの患者に、負荷心臓画像検査・冠血管造影を施行するな
2) 低リスク患者心臓画像検査はするな
3)無症状患者で、ルーチンフォローアップのためのRI画像検査するな
4) 低・中間リスク非心臓計画手術での術前評価のため心臓画像検査施行するな
5)可能ならいつでも、心臓画像検査放射線被曝減少するための方法を用いるべきで、ベネフィットが限定している場合の検査を行わないこともそれに含む

米国メディアではおおくとりあげられているようだ。内容に関して勘違いが見られるが、“検査しすぎ”という報道は共通。
e.g.) Doctors call for end to 45 common medical tests
http://video.msnbc.msn.com/nightly-news/46958205/



“?”と思うのは、術前・入院時の胸部レントゲン写真・・・放射線被曝量も少ないのに、なぜ行ってはいけない?

後は、当然と思うことが多い。スパイロメトリしないで行う喘息診療だけでなく、COPD診断も問題だと思う。


日本では、“割り箸訴訟”のごとく、“検査しすぎ”より“検査しない”方が一方的に患者サイドから批難され、民事どころか、刑事訴訟にまでいたることが多い。これは各分野オーソリティー自身が“検査しすぎ”に寛容すぎることも一因と思う。高額・先進医療機器の方が生命予後や生命の質改善につながるという低脳ぶりが国民に染み渡ってるのも一因だと思う。

“頭痛 即、MRI/CT”という医療機関がそこらに見られ、患者も家族もそれを当然だと感じており、MRI/CT検査しなければ悲しみ、怒る、そういう現象が日常的。
胸が痛いということもなく単なる心電図異常だけで、負荷心電図どころか、冠動脈造影→ステントとなる医療機関が優れていると勘違いしている国民性。

高尿酸血症の新たな病型: ABCG2機能低下型:尿酸腎・腎外排泄低下型・過剰産生型


Decreased extra-renal urate excretion is a common cause of hyperuricemia
Nature Communications 3,Article number:764doi:10.1038/ncomms1756

 高尿酸血症は、腎臓からの尿酸排泄だけを問題にして、一般的に、“過剰産生型” and/or “排泄低下型”に分類。腎外経路は考慮稀であった。

ABCG2機能障害はコモンな高尿酸血症機序



644名の高尿酸血症外来患者での検討

 

  奇異的だが、ABCG2排泄機能障害は尿中の尿酸排泄を促進し、尿酸過剰産生リスク比を増加させる。abcg2 KOマウスは尿酸値増加、腎尿酸排泄増加、腸管尿酸排出減少。

腎外組織高ABCG2過剰発現という存在と共に、現行概念の“過剰産生型”は、“腎過剰負荷型”と改名した方が良いと主張。

“腎過剰負荷型”は、“腎外尿酸排泄低下型”と、純粋な“尿酸過剰産生型”の2つの型からなり、尿酸治療・痛風治療の新しい概念として有用。


ということは・・・
・ 腎排泄低下型 → 腎排泄低下型

・ 尿酸過剰産生型 → “腎外尿酸排泄低下型”+本来の純粋“尿酸過剰産生型”

ということかしら?


新聞表題、内容と違う感じがする。 

東京薬科大など、痛風の仕組み解明-高尿酸血症の“犯人”は腸管
http://www.nikkan.co.jp/news/nkx0720120404aabg.html


非プリン型選択的キサンチンオキシダーゼ阻害剤 フェブリク との関連はどうなのだろう?
この薬剤無効例にこういう病型が存在するのか、あるいは、逆に、この新たな病型にも効果があるのだろうか?

米国の“肺炎入院率減少”・“死亡率減少”は誤り

米国の“肺炎入院率減少”・“死亡率減少”は、診断コーディング変化によるもので誤り

Association of Diagnostic Coding With Trends in Hospitalizations and Mortality of Patients With Pneumonia, 2003-2009
JAMA. 2012;307(13):1405-1413. doi: 10.1001/jama.2012.384 


 Trends study using data from the 2003-2009 releases of the Nationwide Inpatient Sample.

2003年から2009年まで、肺炎を主診断とする年間入院率は、1000あたり 5.5から4.0と、27.4%減少。年齢、性別補正死亡率は5.8%から4.2%と減少   (absolute risk reduction [ARR], 1.6%; 95% CI, 1.4%-1.9%; relative risk reduction [RRR], 28.2%; 95% CI, 25.2%-31.2%)

同期間で、敗血症・肺炎二次診断入院率は、1000あたり、0.4から1.1と177.6%増加

入院死亡率は25.1%から22.2%と減少   (ARR, 3.0%; 95% CI, 1.6%-4.4%; RRR, 12%; 95% CI, 7.5%-16.1%)
呼吸不全主診断・肺炎二次診断による入院率は、1000あたり、0.44から0.48と9.3%増加し、死亡率は 25.1%から19.2%と減少  (ARR, 6.0%; 95% CI, 4.6%-7.3%; RRR, 23.7%; 95% CI, 19.7%-27.8%)

しかし3群複合したとき、入院率は、6.3%から5.6%とわずか12.5%と減少のみで、1000あたり6.3から5.6で、年齢・性別補正入院死亡率は8.3%から8.8%と増加(AR increase, 0.5%; 95% CI, 0.1%-0.9%; RR increase, 6.0%; 95% CI, 3.3%-8.8%)

同時相フレームにおいて、年齢、性別、合併症補正死亡率は8.3%から7.8%へ減少 (ARR, 0.5%; 95% CI, 0.2%-0.9%; RRR, 6.3%; 95% CI, 3.8%-8.8%)

結論:肺炎主診断患者の入院率や入院死亡率は減少、しかし、肺炎二次診断となる敗血症や呼吸不全での入院率は増加しているが、死亡率は減少。
しかし、3つの肺炎診断を複合すると、入院率減少は軽度で、入院死亡率のみほぼ不変。このことは診断コーディングの一次的影響ではないかと考えられる。


診断コーディングの変化が、表面的“肺炎入院率減少”をもたらしたという結論だが、米国でも日本でも、下気道感染に関するガイドラインは、発症状況で分類、市中肺炎、施設内肺炎での分類に懸命で、基礎疾患有無はその次の分類となっている。 慢性呼吸不全状態や気道系・免疫系基礎疾患合併患者では別分類が必要と思う。COPD急増に伴い、これらの症例が肺炎の疫学に影響をもたらしていると思う。

高齢者の下気道感染に出会ったとき、COPDの二次感染ではないかという疑いを、一般医家のみならず、救急医療の専門家たちにもそういう認識を持って欲しいという思いを切に感じている。救急専門に運ばれたとき、敗血症・肺炎ですまされているCOPD症例にかなり多く遭遇している。
そういう症例が、管理されるべき慢性疾患管理なされずに、市中や施設に、帰って行くのである。

経口キノロンと網膜剥離リスク



フルオロキノロンの副作用について
・末梢神経障害(senosory or sensor motor axonal polyneuropaty or large axons damage?)  (The Annals of Pharmacotherapy . Vol. 35, No. 12, pp. 1540-1547.,Fluoroquinoloneの神経障害  2007年 12月 17日)
・腱障害(関節?):肩・手、アキレス腱断裂(Clinical infectious diseases 2003, vol. 36, no11, pp. 1404-1410 )
・心拍(QT延長:TdP)( Drugs. 2004;64(10):1091-124.)

 慢性下気道感染二次感染において不可欠薬剤のため、低血糖、痙攣/てんかん、関節性障害が他薬剤共通の各アレルギー反応、偽膜性大腸炎などと共に注意が必要となる。



Oral Fluoroquinolones and the Risk of Retinal Detachment
JAMA. 2012;307(13):1414-1419. doi: 10.1001/jama.2012.383 


Nested case-control study of a cohort of patients in British Columbia, Canada

989591名のコホート、網膜剥離 4384例、対照 43840

フルオロキノロン現行使用は網膜剥離リスク増加と関連
 (症例 3.3%  vs 対照 0.6% 、補正rate ratio [ARR], 4.50 [95% CI, 3.56-5.70])

現行使用なし(症例 0.3% vs 対照 0.2% ; ARR, 0.92 [95% CI, 0.45-1.87])
使用経験無し(症例 6.6% vs 対照 6.1% ; ARR, 1.03 [95% CI, 0.89-1.19])


網膜剥離リスク絶対的増加としては、1万人年で4  (number needed to harm = 2500 computed for any use of fluoroquinolones)

網膜剥離とβラクタム系抗生剤・短時間作動βアゴニストとの相関エビデンス認めず  (ARR, 0.74 [95% CI, 0.35-1.57]、ARR, 0.95 [95% CI, 0.68-1.33]).

症例対照報告であり、かつ、1万人年で4という絶対的リスク・・・さて どう考えるか?

合併症や基礎疾患の無い急性上気道炎での使用差し控えるのは当然だろうが・・・

FDA:過活動性治療薬ベタニス ベネフィット・リスク議論 ・・・血圧・心拍増加・肝障害・・・

"Reproductive Health Drugs Advisory Committee"会合にて、過活動性膀胱(OAB)治療薬としての、mirabegronのベネフィットがリスクを上回るかという議論がなされた。

Overactive Bladder Drug Risks Highlighted

By Emily P. Walker, Washington Correspondent, MedPage Today
Published: April 03, 2012
http://www.medpagetoday.com/OBGYN/UrinaryIncontinence/32002


アステラスのmirabegron(ミラベグロン;商品名 ベタニス)は、選択性が高く、β3アドレナリン受容体に作用する薬剤で、膀胱のdetrusor muscleに作用し、膀胱充満蓄積を促進する薬剤。

12週間ランダム化プラシーボ化対照化トライアルで、50mg治療にて、尿失禁エピソード・排尿減少(P<0.001)
患者関連アウトカム(治療満足度、bothersome symptome、OAB特異的健康関連QOL)は有意に改善

FDAレビューアーたちは、重大リスクを示唆するものはないようだと述べている。

しかし、血圧増加、心拍増加、肝機能異常、尿路感染、新生物、過敏性反応などさらなる考慮が必要。

mirabegrom 1日1回 50mg投与で、約1mmHgの収縮期血圧、拡張期血圧増加をもたらし、心拍も1回/分増加する。

重篤な肝毒性3例の報告、過敏症(Stevens Johnson症候群)、尿路感染、緑内障・眼圧増加、新生物報告もなされている。




TRABSCENDトライアルなど、ミカルディス(テルミサルタン)治験では、2mmHg程度の差で、重大臨床アウトカムを議論していることと矛盾する話にも思える

さぁ、医療情報担当者たちはどう現場で説明する?

日常臨床において、過活動性膀胱は、愁訴だけを頼りに薬剤処方意思決定がなされることの多い薬剤である。その分、利用者である患者に対する副事象への十分な説明が必要だろう。



過活動性膀胱と生命予後の相関性を示す報告を利用して、まるでOAB治療が生命予後改善効果があるようなミスリード資料を見たが、“男性更年期”診断・治療に対する批判をものともしない泌尿器系学会の先生たちらしいアホな主張であった。

noteへ実験的移行

禁煙はお早めに! 米国における人種・民族・性別による喫煙・禁煙での死亡率相違|Makisey|note 日常生活内の小さな身体活動の積み重ねが健康ベネフィットをもたらす:VILPA|Makisey|note