2012年6月7日木曜日

深部静脈血栓:Dダイマーは年齢考慮カットオフ値判断で・・・




深部静脈血栓除外のためのDダイマーは極めて有用だが、健保適応かどうか曖昧。
相変わらず、深部静脈血栓症を見殺しにする厚労省・・・

・・・ぐちはともかく・・・


プライマリケアレベルで、年齢考慮Dーダイマーカットオフ値を使用することで、深部静脈血栓疑いと見なすことが出来るか?

50歳超では、10×(年齢)μg/L、もしくは、60歳以上:750μg/Lとする


Validation of two age dependent D-dimer cut-off values for exclusion of deep vein thrombosis in suspected elderly patients in primary care: retrospective, cross sectional, diagnostic analysis
BMJ 2012; 344 doi: 10.1136/bmj.e2985 (Published 6 June 2012) Cite this as: BMJ 2012;344:e2985


Wells scoreを用い、657名で臨床的DVT疑いはほぼ認めない

DVT全年齢患者で、DVTを年齢考慮カットオフ値で309名(47.8%)を除外、500μg/Lをカットオフ値として272(42.0%を除外  (increase 5.7%, 95% 信頼区間 4.1% ~ 7.8%).

上記による除外の結果、偽陰性0.3% (increase 0.2%, 0.004% ~ 8.6%)

当然ながら、年齢考慮カットオフ値による除外増加は、高齢者で多い。

80歳超の場合、深部静脈血栓を、年齢考慮カットオフ値判断では、22名(35.5%)で安全に除外、対し、固定カットオフ値は13(21.0%(increase 14.5%, 6.8% to 25.8%)

年齢考慮型カットオフ値に比較し、750μg/L固定判断も同様の除外(307(47.4)効果と、偽陰性率(0.3%)であった。



年齢考慮カットオフ値作用で、除外安全にできる。

うつに対する運動推進:通常ケアにプラスしても付加効果認めず

結果は残念ながら、プライマリケアにおいて、うつ成人治療として付加的に運動のすすめを行っても、その効果は無い・・・というもの

英国では、一般開業医に相談する理由としても最も多い理由の一つが“うつ病”とのこと。社会的問題となっている。

運動推進で改善さればという期待。

Cochraneレビューで経、身体運動介入とうつは23トライアル、907名ベースで平均的に0.82(95%信頼区間 0.51-1.12)で、身体運動を勧めることで、有効性示される可能性があると判断。ただ、方法論的な問題があり、一致したエビデンスとは言えない状況である。



 積極的運動の促進介入として
  • 運動長期アドヒアランス改善のためのデザイン
  • 動機づけインタービューテクニックを用いる
  • 参加者のニーズ、好みを反映した個別テーラーメード
  • autonomyを勧め、運動選択を勧める
  • アドバイス、サポート、励まし提供
  • 全運動強度での運動を勧める
  • 標準化・分散助言のためのマニュアル記録
  • 身体運動ファシリテーターによる伝達
  • 対面3回セッションと、10回の電話コール
  • 6-8ヶ月継続、ファシリテーター月は初回から4ヶ月


Facilitated physical activity as a treatment for depressed adults: randomised controlled trial
BMJ 2012; 344 doi: 10.1136/bmj.e2758 (Published 6 June 2012) Cite this as: BMJ 2012;344:e2758





InterActなんたら: 2型糖尿病発症リスク:ウェスト径の意義

 ウェスト径は、特に女性において、2型糖尿病のリスク要素で、リスク層別化の意味で測定一般化されるべきという主張の報告。

 メタボリックシンドロームという概念に否定的なヨーロッパ大陸での検討故、興味深い。
  参考: ヨーロッパ糖尿病学会 「メタボは・・・・死んだ」 2010年 07月 28日


心血管に関わる死亡とか心筋梗塞などのシビアなアウトカム比較で無く、2型糖尿病という動脈硬化疾患舞台のシナリオ中盤に関わる予測である。 早期介入が必要とするなら、BMI・ウェスト径二段構えのスクリーニングは意味があるのかもしれない。

だが、それは、“メタボリックシンドローム”という概念を肯定している話ではない。行政、特に、厚労省はインチキだらけなので、この主の論文でごまかすことが多いのでご注意を!


The InterAct Consortium (2012) Long-Term Risk of Incident Type 2 Diabetes and Measures of Overall and Regional Obesity:
The EPIC-InterAct Case-Cohort Study.
PLoS Med 9(6): e1001230. doi:10.1371/journal.pmed.1001230

前向きInterAct症例コホート研究(ヨーロッパ8ヶ国、26センター、12403のインシデント)

399万人年・340234名総登録数コホートから16154名の2型糖尿病、層別化サブコホート

パーセンタイル荷重Cox回帰 random effects meta-analysisで2型糖尿病ハザード比推定

BMIとウェスト径それぞれ2型糖尿病と独立して相関。女性の方が男性よりウェスト径に関し強いリスク要素。

正常体重(BMI 18.5-22.4)・ウェスト正常(<男性 94/女性 80cm)群に比べ、BMI、ウェスト径による判断グループでリスク増加

grade 2肥満(BMI≧ 35)・ウェスト径高値(>102/88)において、男性では2型糖尿病ハザード22.0(95%信頼区間 14.3;33.8)、女性 31.8(25.2;40.2)

過体重大グループで、ウェスト径は特に情報に富み、ウェスト径大の過体重群では10年2型糖尿病累積頻度は男性で1000人年あたり70、女性で1000人年あたり44で、肥満群(男性 1000人年 50-103、女性 1000人年 28-74)に匹敵


ウェスト径の男女差・・・日本の異常なウェスト基準の非常識さをあらためて思う・・・

小児:医療用放射線で白血病・脳腫瘍リスク増加:10年・1万対1人の脳腫瘍、白血病


NCI(NIH部門)主導研究で、初回CTスキャン後10年で、やはり白血病や脳腫瘍リスク増加が示された。

リスクとしては、絶対的影響は小さい。しかし、リスクの存在は明らかとなった。


Radiation exposure from CT scans in childhood and subsequent risk of leukaemia and brain tumours: a retrospective cohort study
Mark S Pearce et. al.
The Lancet, Early Online Publication, 7 June 2012

後顧的研究、22歳未満の、1985-2002年のイングランド、ウェールズ、スコットランド(Great Britain)のNHSセンターでのCT検査された事前がん診断無しの患者を含む検討
フォローアップ中、白血病 74/178604、脳腫瘍診断 135/176587

CTスキャン放射線量と白血病に正の相関(超過リスク比[ERR]/mGy 0.036, 95%CI 0.005-0.120; p=0.0097)
脳腫瘍(0.023, 0.010-0.049;p<0.0001)

5mGy未満の患者比較で、累積放射線放射線量 30 mGy(平均暴露量 51.13 mGy)白血病相対リスクは 3.18(95%CI 1.46-6.94)、脳腫瘍は 累積放射線被曝量 50-74 mGy(平均暴露量 60.42 mGy)は 2.82


結論:
子供でのCTスキャンの利用、50mGy程度の累積暴露量で、白血病リスク3倍、60 mGy程度で脳腫瘍3倍程度。これらのがんは比較的稀なので、累積的絶対リスクは小さい
10歳未満患者の初回CTスキャン検査10年後、超過リスクで言えば、頭部CT1万あたりで、脳腫瘍1人、白血病1人。

絶対的臨床的ベネフィットは小さな絶対的リスクより荷重が大きい
だが、電離放射線に関わらない代替的方法を常に考慮することも大事




CT至上主義が跋扈する日本。 医療側もそのニーズに呼応する。いびつな医療需給関係が日本に存在する。

また、原発事故で放射線による健康被害に過敏になってるはずなのに、利用者からは医療用放射線の被曝リスクを心配する声が聞こえず、CT検診などで放射線被曝に関するインフォームド・コンセントがなされているという話は聞かない。


救急医療:頭部CT施行率は施設内でも医者毎にばらつきが大きい 2012年3月12日月曜日

state of the art: 心臓放射線関連検査による放射線被曝の害 2012年2月1日水曜日

CT使用頻度増大と放射線被曝の影響 2007年 11月 29日

心臓CT冠動脈造影による放射線被曝ガンリスク 2007年 07月 18日

多剤耐性結核菌治療:従来薬剤にDelamanid付加により培養陰性化迅速化をもたらす

多剤耐性結核治療において、新しい抗結核薬をバックグラウンド治療にadd-onした場合、喀痰培養の陰性化 迅速という報告。


多剤耐性結核菌は、世界的にはコストとして結核治療の約5%で、治癒率が低く、死亡関連する。そして、感染流布に関連する。早急な治療対応が求められている。

多剤耐性結核治療法開発は逼迫した状況なのである。

Delamanid for Multidrug-Resistant Pulmonary Tuberculosis
Maria Tarcela Gler, et. al.
N Engl J Med 2012; 366:2151-2160June 7, 2012

Delamanid (OPC-67683)は、ニトロ−ジヒドロ−iイミダゾオキサゾール誘導物質で、in vitroやin vivoで、結核菌薬剤耐性に対するpotentialが示されていた。

ランダム化プラシーボ対照多国的臨床トライアル

多剤耐性結核菌を有する481名(ほぼ全員HIV認めず)
・Delamanid 100mg×2: 161名
・Delamanid 200mg×2: 160名
・プラシーボ: 160名

プライマリ有効性エンドポイントは、2ヶ月時点でのliquid broth medium喀痰培養陰転比率
delamanid 100mg+バックグラウンド薬物レジメンのうち、45.4%が2ヶ月時点で、liquid broth陰転化、プラシーボでは29.6% (P=0.008).

同様に、delamanid 200mg+バックグラウンド薬物治療群では、2倍ほど喀痰培養陰転 (41.9%, P=0.04)

固相培養での各他院培養陰転化も同様


多くの副作用は重症度として、軽度から中等で、群横断的に生じている。

心電図QT延長による臨床イベントは観察されてないが、QT延長がdelamanid投与で有意に多く認められる。




(関連論文)中国でのMDR、XDRの実態報告


National Survey of Drug-Resistant Tuberculosis in China
Yanlin Zhao, et .al..
N Engl J Med 2012; 366:2161-2170 June 7, 2012

 新規発症3037名・治療既往ありの892名の結核中、多剤耐性結核(MDR)(定義:少なくともINH、RFP耐性)はそれぞれ5.7%(95%信頼区間[CI]、4.5-7.0)、25.6%(95%CI, 21.5-29.8)

結核患者において、INH、RFP、両者耐性菌を有する場合が、約1/4 、多剤耐性が1/10

 MDR結核の約8%で extensively drug-resistant(XDR)結核(定義:少なくとも、INF,RFP、オフロキサシン、カナマイシン耐性)

2007年、MDR結核11万発症例(95%CI、97000-13000)、XDR結核8100(95%CI、7200-9700)
 
MDR・XDR結核の多くは、プライマリな感染から生じている。

 結核病院での最終治療で多数の事前治療がMDR結核最高リスク (adjusted odds ratio, 13.3; 95% CI, 3.9 to 46.0)

MDR結核治療既往患者226名のうち、43.8%が最終治療完遂せず。多くは、病院システムでの治療。 
治療完遂患者の内、結核発症は公衆衛生システム治療後が多い。

 病院システム内での加療の方が確実・・・

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