2013年9月7日土曜日

Obesity Paradox ・・・肥満症とは体重という一次元物差し判断できるほど単純なものではない

European Society of Cardiologyでのプレスカンファレンスで、Obesity Paradoxに関する4つの研究に注目が集まったそうだ。

http://www.medpagetoday.com/MeetingCoverage/ESC/41400

・腹部肥満
急性心筋梗塞後のフランス人生存者( French FAST-MI registry)で、ウェスト径を用いた腹部肥満指標がその予後推定として、BMIより優越
BMI 22未満では死亡リスク増加、 35以上でも増加。この中間群ではリスク関連性認めず
どのBMIカテゴリー群でもウェスト径は最大4分位は44%ほど5年死亡率増増加 (HR 1.44, 95% CI 1.16-1.79)
(Tabassome Simon, MD, of Hôpital Saint Antoine in Paris)

・ 高血圧・脂質異常・ブドウ糖代謝異常が若年女性・心発作/虚血性卒中ではBMIと関連せずリスク要素
BMIよりメタボリック疾患を有する若年女性(年齢中央値 30.5歳、妊娠可能女性 262,489名、心血管疾患既往無し)はその心発作・虚血性卒中に対して予後推定となりえると、デンマークの大規模研究結果。BMIで4グループ分けし、(高血圧、ブドウ糖代謝疾患、コレステロール異常を含む)メタボリック疾患有無でも群別する。 5.5年フォローアップ中央期間で、心筋梗塞・虚血性卒中は、正常体重・メタボリック疾患無しの女性でもっとも少ない。メタボリック疾患一つでも持つ場合、最小群と比較した結果、BMI値に関連せず、この場合がリスクが高い。
(Michelle Schmiegelow, MB, of Gentofte Hospital in Copenhagen)


・BMI低下は心疾患リスク増加と関連する
ノバルティス関連の一つ、Nagoya Heart Studyからも、高血圧・糖尿病患者で、body mass最小群で心血管イベント最大という報告。ディオバン/アムロジピンのランダム化トライアルで、BMIと心血管リスクを検討。BMIで、1,105名を、<23 1.5="" 2.3="" 2.8="" 4.6="" nbsp="" p="">(Takanori Nagahiro, MD, of Nagoya University Hospital in Japan)


・ 心疾患女性では体重減少が死亡リスク増加と関連する
血管造影確認心疾患女性1685名後顧的検討で、正常体重女性で、体重減少定義1年間に2kgで、リスク増加する。
( Aziza Azimi, MB, of Gentofte Hospital in Copenhagen.)



肥満症とは、多次元的疾患であり、体重などはその一つの指標にすぎない。一つの次元だけで予後推定できるほど単純なものではないということは確か。体組成、他のリスク要素が複雑に関与するものと思われる。

肥満をひとつの疾患として、米国では、定義してしまったが・・・それは軽薄だったのではないか


肥満は依存症という病気? 2013/07/17
【健康的肥満?】代謝的に健康な肥満者:それは炎症レベルに左右される  2013/08/28

急性腎障害(AKI)指標としての血中NGAL

急性腎障害(AKI : acute kidney injury)はAKINによる急性腎不全診断基準にもとづき、急性腎不全より、より早期の、より軽度の腎障害を検知することの努力に起因する。
GFRでの診断基準は「48時間以内での血清Cr値の変動0.3 mg/dL上昇、基礎値の1.5倍上昇」・尿流量基準では「減少が0.5ml/kg×6時間以下」というリアルタイム判断にはほど遠い基準であるため、迅速判断できる検査値が望まれている。


Plasma NGAL for the Diagnosis of AKI in Patients Admitted from the Emergency Department Setting
Karina Soto ,et. al.
Clinical Journal of the American Society of Nephrology (CJASN) 
Published online before print September 2013, doi: 10.2215/​CJN.12181212CJASN September 2013 CJN.12181212
前向きコホート研究、ED入室 616名を、AKI、一過性azotemia、安定CKD、性状機能として臨床分類
血中neutrophil gelatinase-associated lipocalin (NGAL)値を、重症度指標として評価

パフォーマンス評価をHosmer–Lemeshow goodness-of-fit test、 area under the receiver operating characteristic curve、net reclassification improvement、integrated discrimination improvement、 predictiveness curveで検討。

AKI分類 21%

AKI群は、 血中NGAL中央値高い(種々時点 146-174 ng/ml)

AKI重症度進むにつれ増加 (Acute Kidney Injury Network 分類 2超 207–244 ng/ml for Acute Kidney Injury Network classification stage>2)

AKI診断のための血中NGAL判別能は、重症度進むにつれ改善 (area under the curve, 0.77–0.82 at various time points、area under the curve, 0.85–0.89 for AKIN>2)

正常機能・一過性azotemiaとAKI判別  (area under the curve, 0.85 and 0.73, respectively)

血中NGALに応じて、AKIリスクを3つの群に分類 (low, moderate [i.e., the gray zone], and high)

高リスク血中NGAL値はAKIリスク10倍  I (odds ratio, 9.8; 95% 信頼区間, 5.6 to 16.9)

血中NGALを臨床モデルに加えることで、ネットの再分類能力改善 94.3%、集約的判別性0.122となる








参考
http://www.city.fukuoka.med.or.jp/kensa/ensinbunri/enshin_71_x.pdf
〔Neutrophil gelatinase-associated lipocalin(NgalまたはLCN2)〕
Ngalはヒト好中球分泌顆粒から分泌された25kDaの蛋白で、AKIでは、血清クレアチニン濃度の上昇に伴って血中・ 尿中Ngal濃度が上昇する。開心術後の小児や大人でAKIが起こる場合、術後2~4時間後に尿中Ngal濃度の一過 性上昇を認め、1~3日後に血清クレアチニンが術前の1.5倍以上増加することから、腎障害を早期の段階かつ高い確 率で予測できる優れたマーカーである。また、血中・尿中Ngalの増加は、腎移植後のdelayed graft function、造影剤 腎症、救急外来やICUでの各種AKIなどの早期診断にも有用である。血中・尿中Ngalが増加する病態はAKIに限られ ないが、AKIにおいて超早期に大きく濃度が増加することが特徴で、新規バイオマーカーのなかでも特に世界的に研究 が進んでいる。


GSKからの新しいLABA/LAMA1日1回投与製剤 ・・・ FDA reviewにて安全性懸念払拭できず

FDA reviewでは、COPD1日1回治療薬(Anoro Ellipta: LABAとしてのvilanterol 25 mcg/LAMAとしてのumeclidinium 62.5 mcg)の安全性結論は困難、特に、心血管系への影響は払拭できないという。一方、有効性に関しては、さほど疑問が呈されていない。
プラシーボ対象比較で、169日後、

PULMONARY ALLERGY DRUGS ADVISORY COMMITTEE MEETING
FDA Briefing Document September 10, 2013
NDA 203-975: umeclidinium and vilanterol inhalation powder for the long-term, once-daily maintenance treatment of airflow obstruction in patients with chronic obstructive pulmonary disease (COPD)
 http://www.fda.gov/downloads/AdvisoryCommittees/CommitteesMeetingMaterials/Drugs/Pulmonary-AllergyDrugsAdvisoryCommittee/UCM367411.pdf



umeclidinium/vilanterol (Anoro Ellipta)
GSK日本でも承認申請:http://glaxosmithkline.co.jp/press/press/2013_01/P1000781.html 

LAMAである、Umeclidiniumは、5月に吸入ステロイドであるfluticasone furoate(Bero Elipta)との合剤としてのみ認可され、単一薬剤としては承認されてなかった。

GSKが、急性増悪病歴のあるCOPD患者の急性増悪軽減適応として、マーケット準備された薬剤。

12ヶ月安全性トライアルでみられなかった非致死性心筋梗塞に関するイベント・バランスに疑念が呈された。心電図、Holterでも異常発生率ばらつきがあった。
GSKに問い合わせしているところだそうだ。


LAMA全般へも安全性疑念を感じざる得ない。スピリーバ・レスピマットの安全性に関して一定の見解がだされる頃・・・

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