2013年12月6日金曜日

ビタミンD轟沈:非骨格筋系疾患との関連性否定! バイスタンダーに過ぎないビタミンD低値

呼吸器系感染症との関わりの報告があったが、これも介入治験ではなかった
ビタミンD濃度低下は、手術後肺炎リスクである  2013/11/28

なかには、ビタミンD点滴を治療法として行い、「免疫力アップ、がん、糖尿病、自閉症にさえ有効」などと虚言(あえて書く!)を書き込んでるサイトがあるが、ビタミンDの非骨格筋系へのベネフィットは結論づけできない状態が続いている
メタアナリシス: ビタミンD±カルシウムサプリメント:癌・骨折予防 2011/12/26


血中 25-ヒドロキシコレカルシフェロール(別名25(OH)D3 、カルシジオール)の濃度低下は、非骨格筋系疾患の多くに関与するとされる。その原因・結果関連は不明。
前向き・介入研究のシステマティック研究で、18歳以上の非骨格筋健康状態と、25(OH0D3の関連性の検討

Vitamin D status and ill health: a systematic review
Prof Philippe Autier  et. al.
The Lancet Diabetes & Endocrinology, Early Online Publication, 6 December 2013doi:10.1016/S2213-8587(13)70165-7


前向きコホート 290(疾患発症・死亡率 279、 がん特性・生存 11)、ランダムトライアル 172(重大健康アウトカムや、疾患リスク関連や炎症状態生理学的パラメータ研究)

多くの前向き研究で、25(OH)D濃度と、心血管疾患、血中脂質濃度、炎症、糖代謝性疾患、体重増加、感染性疾患、多発性硬化症、気分障害、認知機能障害、身体機能障害、全原因死亡率に関して、強い逆相関を認めた。

高濃度25(OH0Dは癌のリスク低下と相関せず、ただ、例外は直腸結腸癌
ただ、介入治験では、ビタミンDサプリメント投与による、直腸結腸癌を含む効果認めず。

平均25(OH)D濃度 50 nmol/L未満の2805名に対する、34の介入研究で、それ以上の濃度の25(OH)D濃度被験者比較でも差を認めず。

高齢者(主に女性)でのサプリメント投与 ビタミンD 20 μg/日にて若干全死亡率減少が見られた。

観察研究と、介入研究での結果の乖離は、おそらく、健康状態マーカーとして、25(OH)D低濃度が働いただけと思われる。

炎症性プロセスには、疾患発症・臨床的経過が、25(OH)D3低濃度化に関与し、多種疾患でのビタミンD濃度との関連性が浮かび上がったと推定。

高齢者において、加齢・ライフスタイルによるビタミンD欠乏への改善は、その健康状態がよかったから低用量で服用できるという結果によるものであり、生存率のわずかな利益性があるかを説明できる。



環境ストレッサーのテロメア長への影響:飲料の種類で異なる コーヒー vs アルコール

最後まで読んでて、疑問となったのだが、そもそも、血中や細胞内濃度で、エスプレッソ濃度と同じ血中濃度のカフェインとか、エタノール5−7%ってあり得るのだろうか?


Rap 1、Rif1は環境ストレッサーとテロメア長との関連性で浮かび上がってきた遺伝子。400の遺伝子がテロメア長維持と関係しているそうだが、ゲノム安定性維持において遺伝子ネットワーク上重要な要素で、環境要素から遺伝子をまもるため重要な遺伝子と筆者等は主張


やっぱり、カフェインって寿命を短くするのだろうか?アルコールって長寿薬?

→ テロメア・寿命など簡単な説明: 細胞のがん化と密接な関係にあるテロメラーゼ活性


これがホントだと、コーヒーvsアルコールの問題というより、コーヒーなどはポリフェノールを豊富に含み相殺される部分もあるだろう。むしろ、カフェイン含量の多い、健康ドリンク(オロナインC、アリナミン、リゲイン・・・)やエナージードリンクは救われない飲料が問題だと思う。




アブダビ大学分子生物学バイオテクノロジー教授 Martin Kupiecらのチームの報告

ビールとコーヒーの飲料選択が、あなたの遺伝子に、寿命・長寿に関して、逆方向に向かうかもしれないという・・・ヒトと遺伝子相似性をもつイーストのストレスとテロメア長の研究で、カフェインはテロメアを短くし、アルコールはテロメアを長くする可能性

12の環境的ストレッサー暴露。カフェインは比較的低濃度で、エスプレッソの量程度のカフェインでテロメアを短くし、5−7%のエタノール濃度暴露でテロメアを長くする


Coffee or Beer? The Choice Could Affect Your Genome
Thursday, December 5, 2013
Tel Aviv University researchers: Coffee and beer may destabilize your genome http://www.aftau.org/site/News2?page=NewsArticle&id=19499





Environmental Stresses Disrupt Telomere Length Homeostasis.
Gal Hagit Romano, Yaniv Harari, Tal Yehuda, Ariel Podhorzer,
Linda Rubinstein, Ron Shamir, Assaf Gottlieb, Yael Silberberg, Dana Pe'er, Eytan Ruppin, Roded Sharan, Martin Kupiec.
PLoS Genetics, 2013; 9 (9): e1003721 DOI: 10.1371/journal.pgen.1003721


テロメアは、染色単末端で保護作用を有し、細胞加齢・疾患に重要な役割を果たすが、GWA研究により、Rap1/Rif1経路が環境シグナルに対するテロメア反応に中心的メディエータである


Strain BY4741を 100 generations 世代 YEPD
軽度環境下と適度環境下の対照比較 





臨床トライアルの詐欺要素巣窟 → 複合アウトカム設定(検出パワー操作) KYOTO・JIKEIなどの潜在的問題

 悪名高き、KYOTOやJIKEIの問題の本質は、PROBE法というQualityの低い方法論以外に「アウトカムの組み合わせ」・複合アウトカムの問題がある。ハードなアウトカムではなく、よりソフトな入院というアウトカムがそのプライマリ・エンドポイントに影響をあたえてことは、ノバルティス関連のトライアルでは当初から指摘されていた。その批判を見聞きしていた臨床家は多かったが、一般には問題にされることがなかった。このことが日本の臨床家の根本的問題と思う。臨床トライアルが、今、臨床上大きな比重を占めてきたのは健全なことだが、あまりに情報利用法が稚拙で、お人好し・・・一言で言えば馬鹿な臨床家が多すぎる・・・

以下の論文のサマリーポイントを先に提示する

サマリーポイント
・非特異的・複合アウトカムの使用は、介入に関する原因的でないイベントの比率を増加させることになる(原因と関係ないイベント比率が増大) 
・原因と関連しないイベントを含めることで、帰無推定の方へ効果を希釈することとなり、正確な推定ができず、トライアルの検出力低下につながる 
・複合アウトカムは、その影響として、個別患者のケアに関する情報に役立たない。 
・複合アウトカムの影響に基づく結論は、対象が違えば、違うわけで、一般化できない、役立たずの情報である。

 ノバルティスだけに限らない、臨床トライアルに基づく薬剤宣伝に対し、一般医家たちは、そのトライアル対象やアウトカム設定を吟味することなく、「なんとなく、臨床トライアルで証明された」から・・・などと、あいまいにその情報をうのみにしていたのではないか!
 言葉は悪いが、今更、特定の製薬会社に怒って、血圧安定しているのにその薬剤を変更するって行為は実に見苦しい。製薬会社が臨床家をだまそうとやってくるのに、それをそのまんま鵜呑みにする・・・そういう態度にも問題がある・・・と偉そうに書いてみた。



Dangers of non-specific composite outcome measures in clinical trials
BMJ 2013; 347
doi: http://dx.doi.org/10.1136/bmj.f6782 (Published 22 November 2013)


 臨床トライアル上のアウトカムとして、プライマリ、セカンダリ共に、composite outcome(組み合わせ/複合アウトカム)が設定されることが多くなっている。
 国際的ガイドライン(e.g. ICH)では、2つのアウトカム測定項目は、患者に対するリスク・ベネフィット共に明らかにすることを主目的としなければならないとされ、不幸号アウトカムとして、「全死亡率」、「全原因入院」、他の副作用イベントを選択項目とする。「全死亡率」が最頻回項目であるが、これは、原因特異的死亡率より発生率が高く、検出パワー増加をもたらすからと想像できる。他の頻用アプローチは、広汎な症例定義や感度試験などでパワー増加をもたらすよう選別されてしまう。

 臨床的トライアルにおける複合アウトカムは利用が多くなっている理由は、予備調査研究により、アウトカム上、検出パワー増大するよう設定されており、真の患者ベネフィット・リスク検出に直結しない項目の検出となる設計がなされている。

 たとえとして、β遮断剤は、気道狭窄を特定の患者に生じさせる危険性はあるが、肺機能の改善・入院率を減少させる可能性がある。プラシーボ対照ランダム化研究を予定するときに、あなたは、どれをプライマリアウトカムの構成とするか。COPD中等症では年次入院リスク40%というあなたの臨床データがあり、入院率20%減少効果(40%→32%)をを示すためには1510名の被験者数が必要と統計学者が主張するだろう。あなたの注目点が喘鳴や息切れなら、記録に喘鳴、息切れ、他の重度臨床症状についての記載を求めるだろう。原文に仮想結果が示されている


Outcomeβ blocker (n=775)*Control (n=775)*Relative risk/rate† (95% CI)P value
No of patients/eventsRisk/rate†No of patients/eventsRisk/rate†
Hospital admission






Any cause
272
0.35
302
0.4
0.90 (0.79 to 1.02)<0 .12="" font="">
COPD related
121
0.16
151
0.2
0.80 (0.65 to 0.99)<0 .045="" font="">
Adverse events






Any shortness of breath
39746
0.1442
39444
0.1431
1.01 (0.99 to 1.02)<0 .29="" font="">
Severe bronchospasm
378
0.0014
76
0.0003
4.96 (3.91 to 6.40)


 真の臨床効果は非特異的アウトカム測定により希釈されてしまう。この例では入院理由はCOPD外の理由が半数を超えてしまう。β遮断剤による重度気道痙攣の発生率は極めて稀なため、そのリスク増大させるが、検出パワー能力がないため、その機会を失っている。効果を帰無仮説否定できずに、多原因の息切れという副事象の中に埋没することになってしまう。


ちなみに、m3では以下の記事の紹介がなされているが・・・どうなんだろ・・・解説に偏りあると思うのだが・・・
正解はβ遮断薬の選択性によって転帰に差が生じることはない。最近の研究によれば、心不全(HF)と慢性閉塞性肺疾患(COPD)の合併患者へのβ遮断薬 については懸念が存在するものの、β遮断薬の選択性がHFとCOPDの合併患者と非合併患者の転帰の差と関連するというエビデンスは得られなかったと報告 されている。
Mentz RJ, et al. Am J Cardiol. 2013;111(4):582-587.
「SmartestDoc米国版」より出題


(後略)


Causal mechanism modelでの治療効果説明

複合アウトカム

アウトカムの誤分類

現実のトライアルによる説明

考察



noteへ実験的移行

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