2018年11月13日火曜日

CARMELINA研究:トラゼンタ心血管疾患への悪影響ないが、腎機能への効果もない?

この治験は、心血管イベント複合アウトカムとしてはDPP-4阻害剤はプラシーボ非劣性は認められていたが、さらに心血管疾患への有効性が示されればラッキーだし、シタグリプチン(ジャヌビア)の影響無し から サキサグリプチン(オングリザ)のリスク増加まで心不全入院リスクのクラス内heterogeneityが問題で、個別的検証が必要ということだと思う。





リナグリプチン:トラゼンタとプラシーボの重大心血管イベントの効果比較

ランダム化非劣性6979名、中央値2.2年間フォロ−アップ

通常ケアと比較にてプライマリ構成アウトカム(CV死亡、非致死性心筋梗塞、非致死性卒中) 12.4% vs 12.1%
ハザード比 1-片側 97.5% 信頼境界限界 1.17で、非劣性クライテリア (upper confidence limit <1 .3="" p="">
意義:2型糖尿病・CV高リスク患者において、中央値 2.2年間に於ける、リナグリプチンはプラシーボと比較し、重大心血管イベントリスクに関して非劣性


Effect of Linagliptin vs Placebo on Major Cardiovascular Events in Adults With Type 2 Diabetes and High Cardiovascular and Renal Risk
The CARMELINA Randomized Clinical Trial
Julio Rosenstock, et al. ; for the CARMELINA Investigators
Author Affiliations Article Information
JAMA. Published online November 9, 2018. doi:10.1001/jama.2018.18269
https://jamanetwork.com/journals/jama/fullarticle/2714646



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この微妙な結果、MRさんたちはどう説明に走るんだろう

米国HHS:生涯スポーツガイドライン

US Department of Health and Human Services (HHS) は、生涯にわたる健康増進のためのガイドライン・プログラム・政策作成をリードし、11月12日PAGをリリース

Physical Activity Guidelines for Americans, 2nd edition (PAG)
https://health.gov/paguidelines/second-edition/report/pdf/PAG_Advisory_Committee_Report.pdf


JAMA要約
https://jamanetwork.com/journals/jama/fullarticle/2712935

PAGは多数の住民グループに対して健康アウトカム改善のための身体活動の種類と量についての情報とガイダンス提供

  • 就学前児童(3-5歳)では、成長・発達促進のため1日を通して身体活動あるべき
  • 小児・青年期(6-17歳)では、中強度・高強度身体活動60分以上行うべき
  • 成人では、中強度週150−300分以上、もしくは高強度好気的運動 週75-150分、あるいは等価組み合わせ中強度・高強度好気的運動組み合わせ行うべき。筋肉増強活動(筋トレ)は週2回以上行うべき
  • 高齢者、バランストレーニングや好気的運動・筋肉増強活動を含む多要素身体活動すべき
  • 妊娠・分娩後女性は中強度好気的運動を週150分以上行うべき
  • 慢性疾患や機能障害を有する成人では可能なら成人のキーガイドラインに従うべきで、好気的・筋肉増強ともに行うべき

動く時間を増加し、座る時間を減らすことはほぼ全員にベネフィットをもたらすだろうと推奨では強調

最小限の身体活動の状況では少しでも中等度から高強度身体活動増加でベネフィット大きくもたらす。身体活動増加するほどベネフィット付加される。好気的・筋トレともにベネフィットある


比較的到達容易な基準にかかわらず、上記ガイドライン推奨に合致している米国民比率は、男性 26%、女性 20%

身体活動は、肥満、2型糖尿病、心血管疾患、認知症、膀胱癌・乳癌・大腸癌・子宮内膜癌・食道癌・腎癌・肺癌・胃癌の8つのリスク減少に役立ち、睡眠、認知機能改善、転倒外傷予防に役立ち、骨関節炎やリウマチ性疾患などの疼痛管理の補助的に役立つ

PAGガイドラインでは、早期死亡リスクを33%減少する包括的効果

”このガイドライン遵守させれば、billionドルの金をセーブでき、millionの米国人QOL改善を経験させることができる”
”兵役1/3が肥満により欠格となり安全保障面でも問題”


だが、なぜ行動困難か?

実際にはベネフィットはすぐに出現するのだが、疾患リスク軽減利益は時間経過と身体活動維持が必要で、直ちに明確な結果が現れない。時間必要で、疲労や障害、楽しくなくなるなど、身体活動を日常生活で続けるには個別問題克服が必要。
家族、有人、同僚がライフスタイル選択に影響を与え、季候・天候・個別安全性、公園・歩道・プレイグラウンド・組織スポーツへのアクセス性など環境面もある


エビデンスに基づく戦略として、強化観点を
(1) 医療システム内の身体活動促進
(2)ウエアラブルデバイスやソーシャルメディアのような新しいテクノロジーをてこ入れのため機会積極利用
(3) 職場での身体活動促進
(4) スポーツへの青少年参加促進




Fitbitだけで2500万人のactive userがいるらしいが、Apple、Googleなおテクノロジー・リーダーがフィットネスアプリを作成。身体活動の開始、維持、増加を目的としている。

apple watchは、運動量が通常より減ると、通知してくる
深呼吸を無理強いする、立てない状況なのに立て・・・と通知してくる

設定で外せば良いだけだけど・・・


高齢者老人入院急性期:機能障害回避のため、個別化多要素運動介入有効

老人にとって「入院」というイベントはとてもharmful。心身とも多大なる影響を与える。その有害性を最小化するためには・・・リハビリテーション以外の個別化多要素運動介入が重要


医療施策として日本でも試みるべき知見と思われる


以下は、スペインの3次公的病院での単一施設単盲検ランダム化臨床トライアル
急性ケア入院した高齢者75歳以上370名をランダムに、運動と対照(通常ケア)群
Intention-to-treat analysis



Effect of Exercise Intervention on Functional Decline in Very Elderly Patients During Acute Hospitalization
A Randomized Clinical Trial
Nicolás Martínez-Velilla,  et al.
JAMA Intern Med. Published online November 12, 2018. doi:10.1001/jamainternmed.2018.4869

対照群:通常入院ケア(身体リハビリテーションを必要なら含む)
介入群:個別化した中等強度レジスタンス、バランス、ウォーキング運動(2日セッション)

プライマリエンドポイントは:ベースラインから退院時の機能能力(functional capacity):自立性評価のBarthel1Index、 Short Physical Performance Battery (SPPB)
セカンダリエンドポイントは、認知・気分状態、QOL、握力、せん妄発生率、入院期間、退院後転院、再入院率・死亡率


結果:
解析登録370名のうち、女性 209(56.5%);平均(SD)年齢 87.3(4.9)歳
入院期間両群とも8日(IQR 4 vs 4)
介入期間中央値 (IQR 0)、患者毎平均(SD) 朝 5(1) 、夕 4(1)セッション
介入中副作用なし

運動介入プログラムにて通常ケアを上回る有意なベネフィット

退院時 SPPBスケール 平均増加 2.2   points (95% CI, 1.7-2.6 points) 、 Barthel Index 6.9 points (95% CI, 4.4-9.5 points)

入院は機能障害をもたらす(Barthel Index -5.0 points (95% CI, -6.8 to -3.1 points))が、介入群はこの傾向を改善した  (1.9 points; 95% CI, 0.2-3.7 points)

介入はまた、SPPBスコアを改善  (2.4 points; 95% CI, 2.1-2.7 points) vs 0.2 points; 95% CI, −0.1 to 0.5 points in controls)


有意な介入ベネフィットが、通常ケア群に比べ 認知機能 1.8points (95% CI, 1.3-2.3 points)








ところで・・・


入浴習慣で介護リスク減少https://www3.nhk.or.jp/lnews/chiba/20181112/1080004272.html
調査では、ふだん、どれくらいの頻度で風呂につかっているかなどを事前に調べたうえで3年後の状態を確認し、そのデータを統計的な手法を使って分析しました。
その結果、冬場に週7回以上、風呂につかっている高齢者は、週2回以下の高齢者より介護が必要な状態になるリスクが29%低くなったということです。
研究グループは、高齢者の入浴は事故や病気などに十分注意することを前提に介護予防対策としてより活用すべきだとしています。
メディア報道なのでいかなる交絡要素補正がなされたのか分からないが、コホート研究なので様々な因子(例えば、入浴意欲低下にかかわるうつや不安など心理状態、入浴障壁となる身体機能障害など)がからむわけで、coclusiveな物言いはできないはずだが・・・とにかく、「活用すべき」と断定的表現が気になる。
介護関係の本邦研究は当初から「パワーリハビリ」問題など、根拠薄弱なのに暴走する介護システム施策とともにあいかわらず問題が多い。


SGLT-1機能喪失遺伝子変異により心血管疾患アウトカム効果あり・・・糖質制限食優位性根拠としてよいのだろうか?

sodium/glucose co-transporter (SGLT)-1 蛋白は、 小腸からのぶどう糖・ガラクトース吸収の rate-limiting factor で、膜貫通ナトリウム勾配でこれらの細胞取り込みを生じる
機能喪失ミスセンス変異で、このぶどう糖取り込みが障害され、glucose-galactose malabsorption (GGM):ぶどう糖・ガラクトース吸収不良を生じるケースが稀ながら存在。

この変異を検討することで、ぶどう糖吸収抑制による、耐糖能、心血管疾患リスクへの影響が推定できる・・・ということで、誇大妄想的に糖質制限食優位性根拠と解説する無機があるようだが・・・果たして?


Genetic Variants in SGLT1, Glucose Tolerance, and Cardiometabolic Risk
Journal of the American College of Cardiology
Volume 72, Issue 15, October 2018
DOI: 10.1016/j.jacc.2018.07.061
http://www.onlinejacc.org/content/72/15/1763


5,687名の欧州系アメリカ人、3つのミスセンス遺伝子変異(Asn51Ser, Ala411Thr, and His615Gln)ハロタイプ確率 5.7%、非キャリアより 食後2時間血糖低く、IGTオッズ低い
(β-coefficient: −8.0; 95% 信頼区間 [CI]: −12.7 to −3.3; OR: 0.71; 95% CI: 0.59 to 0.86)

経口耐糖能試験とhalotypeの関連性は、再現性サンプル(アフリカ系アメリカ人 、外部ヨーロッパ・フィンランド)で一致 ( (β = −16.3; 95% CI: −36.6 to 4.1; OR: 0.39; 95% CI: 0.17 to 0.91)、β = −3.2; 95% CI: −6.4 to −0.02; OR: 0.81; 95% CI: 0.68 to 0.98)

指標コホートのMendelian randomization approachを用い、SGLT1阻害による2時間糖負荷の血糖 20mg/dL減少効果と推定
さらには、肥満、糖尿病、心不全、死亡率低下 (OR: 0.43; 95% CI: 0.23 to 0.63 0.58; 95% CI: 0.35 to 0.81 0.53; 95% CI: 0.24 to 0.83) 0.66; 95% CI: 0.42 to 0.90)






糖質制限食とSGLT-1機能喪失はequalなのだろうか?  糖質制限マニアは大喜びのようだが・・・

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