2018年4月18日水曜日

LDL-コレステロール降下療法:超強化療法のベネフィットは ベースライン100mg/dL超過症例

どう解釈したら良いのか、正直分からない

ベースラインLDL−C 低値症例、特に、< 100 mg/dL症例は、最近のトライアル多く、エゼチミブやevolocumab付加治療トライアル比率が大きく、筆者等の結論をそのまま鵜呑みにできるのかさえ分からない

どなたか懸命な方の解釈を待つことにしたい





スタチンによる心血管イベント低下作用、さらにスタチン強化治療、エゼチミブ付加治療、PCSK9-阻害モノクローナル抗体によるLDL-コレステロール低下療法の効果も確固たるエビデンスが示されている。しかし、個別トライアルにおいて死亡率、心血管エンドポイント減少程度結果は一定していない。総死亡・心血管死亡ベネフィットはいくつかのプラシーボ対照スタチン心血管疾患アウトカム、スタチントライアルメタアナリシスにおいて認められるが、エゼチミブやevolocumabのスタチン付加治療において中等度 vs 強化治療比較で5年間トライアルで心血管死亡率の減少効果差を認めなかった。臨床トライアル毎の治療効果の差をいかに解釈するかで治療ベネフィットの推定に影響を与えることとなる。
これが臨床ガイドラインや、臨床トライアルデザイン、個別臨床意志決定にも影響を与えることとなる。ベースラインの平均、中央値LDL-C値は 最初のトライアルでは188 mg/dLから、バックグラウンドスタチン治療付加evolocumabトライアルでは 92 mg/dLまで減少している
LDL-C降下療法有効性の差は、LDL-C減少程度に影響されるだけでなく、ベースラインLDL-C値に影響される。故に、今回ベースラインLDL-C値、LDL-C低下程度が致死性・非致死性心血管イベント減少にいかに関連するか検討



Key Points

  • Question  LDL-C低下後の総・心血管疾患死亡減少程度はベースラインLDL-C値に影響されるか? 

  • Findings  34のRCT、270,288被検者のメタアナリシスにおいて、さらなるLDL-C効果強化療法は、ベースラインLDL-C高値ほど総死亡率をより減少させる  (発生率比,ベースライン値 40-mg/dL増加毎 0.91 ); しかし、ベースラインLDL-C値 < 100 mg/dLではその減少関連性はみられない。心血管死亡率との関連性も同様。

  • Meaning  LDL-C降下療法最大ベネフィットは、ベースラインLDL-C 100 mg/dL以上で観察される




Association Between Baseline LDL-C Level and Total and Cardiovascular Mortality After LDL-C Lowering A Systematic Review and Meta-analysis
Eliano P. Navarese,et al.
JAMA. 2018;319(15):1566-1579. doi:10.1001/jama.2018.2525



【論文意義】LDL-コレステロール低下薬剤トライアルによる致死性・非致死性エンドポイントへの特異的な効果は様々のよう

【目的】ベースラインLDL-C値が、全死亡・心血管死亡率リスク減少に関わるか検証


【データ・ソース、研究選択】 Electronic databases (Cochrane, MEDLINE, EMBASE, TCTMD, ClinicalTrials.gov, major congress proceedings) were searched through February 2, 2018, to identify randomized clinical trials of statins, ezetimibe, and PCSK9-inhibiting monoclonal antibodies.

【データ抽出・合成】 Two investigators abstracted data and appraised risks of bias. Intervention groups were categorized as “more intensive” (more potent pharmacologic intervention) or “less intensive” (less potent, placebo, or control group).


【メイン・アウトカムと測定】
共同プライマリエンドポイント: 総死亡率・心血管死亡率
Random-effects meta-regression and meta-analysis評価:ベースラインLDL-C値と死亡率エンドポイントとセカンダリエンドポイント(重大心血管イベント:MACEを含む)の関連性評価


【結果】 34トライアルにおいて、 136,299名intensive(強化)治療、 133,989名less intensive(非強化) LDL低下療法

全原因死亡率は強化療法( vs 非強化療法)で低下 (7.08% vs 7.70%; rate ratio [RR], 0.92 [95% CI, 0.88 to 0.96])するも、ベースラインLDL-C値によりその影響ばらつきあり


Meta-regressionにて強化LDL-C効果療法はベースラインLDL-C値高値で全原因死亡率低下効果大( ベースラインLDL-C 40-mg/dL増加毎のリスク比変化 , 0.91 [95% CI, 0.86 to 0.96]; P = .001; 絶対的リスク差 [ARD], インシデント −1.05 症例/1千人年 [95% CI, −1.59 to −0.51])が、メタ解析においてベースラインLDL-C値が 100 mg/dL以上の時のみ認める


心血管疾患死亡率は、強化療法 (vs 非強化療法)において減少  (3.48% vs 4.07%; RR, 0.84 [95% CI, 0.79 to 0.89]) するも、ベースラインLDL-C値により変動


Meta-regressionにて、強化LDL-C低下療法は、ベースラインLDL-C値より高値ほど心血管死亡率減少作用大きい(ベースラインLDL-C 40-mg/dL増加毎のリスク比変化, 0.86 [95% CI, 0.80 to 0.94]; P < .001; ARD, インシデント−1.0 症例/1千人年 [95% CI, −1.51 to −0.45])するが、メタ解析ではベースラインLDL-C 100 mg/dL以上の時のみ効果が大きい  (P < 0.001 for interaction)

ベースライン LDL-C値 160 mg/dL以上症例のトライアルでは、メタアナリシスで 全原因死亡率リスク減少最大 (RR, 0.72 [95% CI, 0.62 to 0.84]; P < .001; 1千人年あたり4.3減少 ) となる

LDL-C降下療法より強化するほど、ベースラインLDL-C値高い場合、心筋梗塞、血管再建術、MACEに対して、より大きなリスク減少がみられる










【結論・レビュー】 このメタアナリシス・メタ回帰解析において、ベースラインLDL-C値高患者において、より強化治療ではそうでない治療に比べ、全原因・心血管死亡率リスクを大きく低下させること判明
この関連性は、ベースラインLDL 100 mg/dL未満症例においては認めず、ベースラインLDL-C高値患者にのみLDL-C低下治療の最大ベネフィットがもたらされる





登録クライテリア
The main inclusion criteria were (1) randomized trials in- cluding at least 1000 patients receiving the allocated pharmacologic LDL-C–lowering strategy for a minimum of 48 weeks; (2) use of statin, nonstatin, or statin in combination with non- statin therapies (either ezetimibe or a PCSK9-inhibiting mono- clonal antibody); and (3) reported cardiovascular and mortality outcomes of interest. Trials performed in populations with heart failure or end-stage renal disease requiring hemodialysis were excluded; additional exclusion criteria are listed in eTable 1 in the Supplement. 


SGLT-2阻害剤、GLP-1アゴニスト、DPP-4阻害剤の臨床的有効性比較:DPP-4阻害剤の効果疑問

SGLT-2阻害剤、GLP-1アゴニスト、DPP-4阻害剤の臨床的有効性比較

ネットワーク・メタアナリシスを用いた比較


DPP-4阻害剤は、他の2種の抗糖尿病薬剤や対照薬剤に比べて、死亡率低下有効性認められず、有益性に疑問が残る
GLP-1アゴニストは他2剤に比べ安全性懸念が残る


キーポイント:Meaning Inpatientswithtype2diabetes,theuseofSGLT-2 inhibitors or GLP-1 agonists was associated with better mortality outcomes than DPP-4 inhibitors.




Association Between Use of Sodium-Glucose Cotransporter 2 Inhibitors, Glucagon-like Peptide 1 Agonists, and Dipeptidyl Peptidase 4 Inhibitors With All-Cause Mortality in Patients With Type 2 Diabetes
A Systematic Review and Meta-analysis
Sean L. Zheng,  et al.
JAMA. 2018;319(15):1580-1591. doi:10.1001/jama.2018.3024

236トライアル、 176,310名被検者


対照群との全原因死亡率低下有意相関あり

  • SGLT-2 阻害剤 (絶対的 リスク差 [RD], −1.0%; ハザード比 [HR], 0.80 [95% 信頼区間 {CrI}, 0.71 to 0.89]) 
  • GLP-1 アゴニスト (絶対的 RD, −0.6%; HR, 0.88 [95% CrI, 0.81 to 0.94]) 


DPP-4阻害剤との死亡率低下有意相関あり

  • SGLT-2 阻害剤 (絶対的 RD, −0.9%; HR, 0.78 [95% CrI, 0.68 to 0.90]) 
  • GLP-1 アゴニスト (絶対的 RD, −0.5%; HR, 0.86 [95% CrI, 0.77 to 0.96])


対照群との全原因死亡率有意相関みとめず

  • DPP-4 阻害剤 (絶対的 RD, 0.1%; HR, 1.02 [95% CrI, 0.94 to 1.11])


対照群との心血管死亡率低下有意相関

  • SGLT-2 阻害剤 (絶対的 RD, −0.8%; HR, 0.79 [95% CrI, 0.69 to 0.91]) 
  •  GLP-1 アゴニスト (絶対的 RD, −0.5%; HR, 0.85 [95% CrI, 0.77 to 0.94])


SGLT-2 阻害剤 は、対照群と比較して、心不全 (絶対的 RD, −1.1%; HR, 0.62 [95% CrI, 0.54 to 0.72]) 、心筋梗塞(絶対的 RD, −0.6%; HR, 0.86 [95% CrI, 0.77 to 0.97])イベント発生率低下


GLP-1 アゴニスト は、トライアル中断につながる副作用リスクが、以下薬剤より高い

  • SGLT-2 阻害剤 (絶対的 RD, 5.8%; HR, 1.80 [95% CrI, 1.44 to 2.25])
  • DPP-4 阻害剤 (絶対的 RD, 3.1%; HR, 1.93 [95% CrI, 1.59 to 2.35])








メトホルミンベースのトライアルが多いので注意必要


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