2012年9月12日水曜日

軽症・中等症喘息の吸入ステロイド量補正:医師主導 vs 自覚症状ベース 、NO濃度ベース比較

シムビコートのSMART療法認可のため、にわかに騒がしくなっている自覚症状に基づく患者主導型の吸入ステロイド量補正。患者自身がこの治療法の本質を理解せず、自己評価のゆがみが存在するとしたらかなり危険な治療方法となる可能性があると思う。


軽症・中等症喘息患者において吸入ステロイドの補正をいかにして行うかがテーマの論文


医師評価の基づく方法、自覚書状に基づく方法、バイオマーカーに基づく方法の比較

自覚症状に基づく補正法(SBA)は、アルブテロール2吸入使用毎に低用量ベクロメサゾン(ベクロメサゾンHFA40μg/パフ)を2回吸入服用する指導である。

結論は、何れの方法でも、治療失敗比率で比較すると、医師主導的用量設定治療法を上回ることはなかったというもの

Comparison of Physician-, Biomarker-, and Symptom-Based Strategies for Adjustment of Inhaled Corticosteroid Therapy in Adults With Asthma:  The BASALT Randomized Controlled Trial  
William J. Calhoun, et. al.; for the Asthma Clinical Research Network of the National Heart, Lung, and Blood Institute
JAMA. 2012;308(10):987 doi:10.1001/2012.jama.10893

【序文】喘息患者の吸入ステロイド治療補正のためのコンセンサスは存在せず。アプローチは、医師の喘息コントロール評価ガイドに基づく外来受診補正か、呼気NOに基づくか、日々の症状ガイドベースに基づくかである。

【目的】成人軽症・中等症喘息成人の治療失敗防止のため、呼気NOベース、あるいは日々症状にもとづくかで吸入ステロイド補正を決定することがガイドラインのインフォームドコンセント、医師評価ベース補正より勝るかどうかを決定すること
【デザイン・設定・被験者】ランダム化平行3群プラシーボ対照化multiply-blinded trial、342名の軽症・中等症喘息、低用量吸入ステロイドコントロール患者

・医師評価に基づくベース補正 (n = 114  [101 completed])
・バイオマーカーに基づく補正(n = 115  [92 completed])
・症状に基づく補正(n = 113  [97 completed])

Best Adjustment Strategy for Asthma in the Long Term (BASALT) トライアルは、10の米国内の学術医療センターからなるAsthma Clinical Research Networkで、2007年6月から2010年7月の間の9ヶ月間行われた。

【介入】医師評価ベース、バイオマーカーベース補正に関しては吸入ステロイド量を6週間毎補正
症状に基づく補正では、吸入ステロイドを各アルブテロールrescue使用実態により補正

【主要アウトカム測定】プライマリアウトカムは治療失敗までの期間

【結果】治療失敗までの期間に有意差無し
9ヶ月Kaplan-Meier治療失敗率は、医師評価補正 22% (97.5% CI, 14%-33%; 24 events)、バイオマーカーに基づく補正 20% (97.5% CI, 13%-30%; 21 events)、 症状に基づく補正 15% (97.5% CI, 9%-25%; 16 events)
医師評価に基づく補正 vs バイオマーカーに基づく補正比較ハザード比は 1.2 (97.5% CI, 0.6-2.3)
医師評価に基づく補正 vs 症状に基づく補正は 1.6 (97.5% CI, 0.8-3.3)


【結論】 治療失敗までの期間を評価指標とした場合、低用量吸入ステロイド治療コントロール状態の、軽症から中等症持続喘息成人において、バイオマーカーや症状に基づく吸入ステロイド使用量の補正は、医師評価に基づく使用量補正に比べ優越性は認めない。


治療失敗までの期間



処方吸入量 



シーズン毎治療失敗
 医師評価補正 (PABA)、症状ベース補正(SBA)、バイオマーカー補正 (BBA)





(コメントを一部訳)

喘 息の状況に応じてコントローラー量を補正するわけだが、その補正方法として、医師がそれまでのコントロール状況を判断して医師主導で行う方法、バイオマー カー(呼気NOベース濃度、それ以外に、喀痰好酸球数、メサコリン過敏性なども存在するが非現実的)に基づく補正法、そして、自覚症状に基づく補正戦略。

自覚症状に基づく方法は単純であり、患者の権限にゆだねる方法である。しかしながら、この方法での治療adherence改善に関して厳格なモニター化トライアルでは検証されてないことが問題点である。

今 回の報告であるBASALT被験者より軽症の喘息を相手にした、Improving Asthma Control Trial (IMPACT)( N Engl J Med. 2005;352(15):1519-1528)では、症状ベース治療ガイド下の短期間欠的吸入ステロイド治療の有効性が示された。

Beclomethasone plus Salbutamol Treatment (BEST)研究(N Engl J Med. 2007;356(20):2040-2052)は、ベクロメサゾン+アルブテロール併用によるas-needed併用療法が、アル ブテロール単独as-neededより、また、ベクロメサゾン+アルブテロールas-neededより優れていることが示された。

O'Byrne らは、このJAMAの報告より重症例での検討だが、計画化治療単独より自覚症状ベースにフォルメテロール・ブデソニド合剤使用の方が維持・自覚症状軽減に 効果があることを示している(Am J Respir Crit Care Med. 2005;171(2):129-136)。



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