酸素の吸入:低酸素血症は、不整脈を誘発したり心筋虚血を増悪させ、梗塞巣の拡大や病態の悪化につながるので、呼吸困難やチアノーゼの有無にかかわらず、十分な酸素を投与する。通常鼻腔カニューレで2~3 /分。以下の見解にも批判的吟味があるようだが・・・ 「十分な酸素を投与」というのは明らかに間違い
Chest Pain and Supplemental Oxygen Too Much of a Good Thing?
Maxime Cormier, et. al.
https://jamanetwork.com/journals/jamainternalmedicine/article-abstract/2592700
仮想的症例だと思うが、「60歳代、高血圧、脂質異常、冠動脈疾患による治まらない胸骨後部痛症例、バイタルサインは正常、酸素飽和度95%」に対しパラメディックが非再呼吸顔マスクによる酸素投与開始し、EDへtransfer、その後酸素投与継続。心臓カテーテルとdrug-eluting stentを前下行枝へ。その後2日間酸素投与。その後非持続性心室頻拍、心房細動発症。左室駆出率は機能は6週間後も悪化持続。
こういった症例なのだが・・・
急性冠症候群への酸素投与は世紀を超えて施行されてきたが、1960年代に高酸素血症による悪影響、即ち、虚血悪化、心拍出量増加、全身血管抵抗増加が血行動態研究から示唆された。メカニズムは未だ明確ではないが、ROSによる冠動脈血管痙攣、oxygen free radicalによる過剰発現性再潅流障害など関与しているのだろう。
2015年までに、わずか4つのトライアルだが急性心筋梗塞での酸素投与影響検討。これらのメタアナリシスでは急性心筋梗塞確定症例で死亡リスク統計学的非有意ながら2倍増加。
CabelloJB,BurlsA,EmparanzaJI,BaylissS, QuinnT.Oxygentherapyforacutemyocardial infarction. Cochrane Database Syst Rev. 2013;(8): CD007160.doi:10.1002/14651858.cd007160.pub3
最近の638名のST上昇急性心筋梗塞での非酸素vs酸素投与比較では血中心筋とトロポニン・血中CK値のプライマリアウトカムで、酸素投与群の再発性心筋梗塞 (5.5% vs 0.9%, P = .006) 、重大心臓不整脈増加有意 (40.4% vs 31.4%, P = .05)。MRIによる6ヶ月後梗塞巣増大 (20.3 g vs 13.1 g, P = .04)。これら知見によれば、院内心筋梗塞事案NNH 22、重大心臓不整脈 11となる
StubD,SmithK,BernardS,etal;
AVOID Investigators. Air versus oxygen in ST-segment-elevation myocardial infarction. Circulation.2015;131(24):2143-2150. doi:10.1161/circulationaha.114.014494
COPDでは、酸素投与、特に、高炭酸ガス血症の危険性が広く認識され、2010年405名の高濃度酸素療法 vs 補正酸素療法のランダム化研究、COPD確認サブグループのみで有意に高濃度酸素療法より補正酸素投与の方の死亡率低下効果認めた。
AustinM,WillsK,BlizzardL,WaltersE, Wood-Baker R. Effect of high flow oxygen on mortality in chronic obstructive pulmonary disease
patientsinprehospitalsetting:randomised controlled trial. BMJ. 2010;341:c5462. doi:10.1136 /bmj.c5462
他、高酸素投与の有害性示唆は、脳卒中、心肺蘇生、未熟児など
ST上昇心筋梗塞管理のためのAHAガイドラインでは、酸素投与は低酸素患者にのみ推奨されているが、正常酸素飽和度症例に対し"for comfort"や呼吸困難対応のため用いられる場合も残存している。
非常識的酸素投与により多くの患者に害をあたえている事態が状態化しているところもある。
以前も書いたと思うが・・・
最近は、医師・看護師だけでなく、患者本人・家族、救急搬送職員や介護施設、老人住居施設職員まで酸素飽和度が周知されてるらしく、酸素飽和度を「サーチ」と誇らしげに示されることが多い・・・(こういう経験を多数しているのは私だけなのだろうか?)
98%から92%に酸素飽和度が下がる?・・・とかなり心配するようで・・・どうにかならないものか?
虚血性心疾患には酸素投与ルーチンに・・・と、私が研修医の頃は習ったものだが、その後、血管再建術が盛んになり(私の頃はウロキナーゼによる冠動脈内薬剤投与:PTCRやっと導入され担当医にされたばかりだったが)、そのとき、虚血再灌流障害も話題になったが、酸素投与については思いがいたらなかったなぁ・・・と独り言 年取った証拠かな?
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