“安易に一次予防のためのアスピリンを断念したり、有害性を考慮しないで使用したりすべきではない”
Clinicians should neither abandon aspirin for primary prevention nor use it without full consideration of harms. Selective prescribing of aspirin combined with other medications and the promotion of health behavior change form a comprehensive approach to prevention.
ってのはわかるが、現実ではどう判断するか? 判断の上で最低限動脈硬化リスク客観化数値化が一つの判断材料というお話
A Practical Approach to Low-Dose Aspirin for Primary Prevention
Kim F. Chiang, et al.
JAMA. Published online June 28, 2019. doi:10.1001/jama.2019.8388
アセチルサリチル酸(即ち、アスピリン)には、抗炎症作用や血小板活性化の低下など、数多くの生物学的作用がある。これらのメカニズムは、アテローム性動脈硬化症性心血管疾患(CVD)の予防に対するアスピリンの利点と、それが望ましくない出血を引き起こす傾向の説明となる。以前の研究でアスピリンが最初の心血管イベントの最大20%までの相対的減少の関連性示唆があったが、2018年に発表された3つの臨床試験では臨床的に重大な出血のリスクと匹敵するほどの大きさの心血管アウトカム減効果は軽度であることが示唆された。
これらトライアルでは、以前からの疑念を明確にすることを目的としていたが、一方で論争の継続する結果となった。これらの研究による推奨は、一次予防のために、継続的警戒を続けながらの使用からアスピリンの放棄までのレンジとなった。
最近のAmerican Heart Association / American College of Cardiologyの予防ガイドラインでは、CVDの「定期的な一次予防としてアスピリンを使用する頻度は低い」( “aspirin should be used infrequently in the routine primary prevention” )とし、“出血リスクの低い高リスク”患者に限定して推奨されている。
これらの新たな知見は、基礎的集団健康原則の文脈において、一次予防のためのアスピリンの使用を再検討するための推進力を提供する。
- 潜在的な利益が害を上回るような治療法を選択する
- 患者の観点から利益と害の程度の理解を行う
- NNTsのより小さい治療オプションを選択する(例えばスタチン対アスピリン)
- より小さなNNTを持つ患者の部分母集団における任意の治療の開始を支持
- 特に潜在的な害と利益のバランスに関する曖昧さがある場合は、患者共有意思決定(shared decision-making:SDM)を使用する
- 薬物および非薬物戦略を含む包括的な予防アプローチを追求
新しい研究
ASPREE試験は健康高齢被験者(n = 19114;年齢中央値、74歳)を登録し、フォローアップ4.7年間。アスピリンはプラシーボ比較で心血管疾患イベント有意減少認めず (アスピリンあり 千人年あたり 10.7 vs 非アスピリン 千人年あたり11.3;ハザード比[HR]、0.95 [95%CI、0.83-1.08])
一方出血リスク増加 (アスピリン有り 千人年あたり 8.6 vs 無し 6.2 ; HR、1.38 [95%CI、1.18-1.62])
全死因死亡率(アスピリン有り 5.9% vs 無し 5.2%; HR、1.14 [95%CI、1.01-1.29])で之は主にがんによる増加、この知見は以前のトライアルや2つの2018年のトライアルと異なっており、注意深い解釈が行わなければならない
McNeil JJ, Nelson MR, Woods RL, et al; ASPREE Investigator Group. Effect of aspirin on all-cause mortality in the healthy elderly. N Engl J Med. 2018;379(16):1519-1528.
ASCEND試験では、糖尿病患者(n = 15480;平均年齢63歳)を登録し、7.4年間追跡。プラセボと比較したアスピリンは重篤な血管イベントの減少をもたらした(アスピリンがない場合は9.6%;アスピリンがない場合は9.6%;速度比は0.88 [95%CI、0.79-0.97])。しかしながら、この利点は大出血の増加により相殺された(アスピリンで4.1%対アスピリンなしで3.2%;速度比、1.29 [95%CI、1.09-1.52])。
Bowman L, Mafham M, Wallendszus K, et al; ASCEND Study Collaborative Group. Effects of aspirin for primary prevention in persons with diabetes mellitus. N Engl J Med. 2018;379(16):1529-1539.
ARRIVE試験では、非糖尿病心血管リスク中等度増加被験者 (n = 12546、平均年齢64歳)登録、5年間追跡調査。アスピリンは、最初の心血管イベントの予防に関してプラセボと有意差無し(アスピリンで4.29%、アスピリンなしで4.48%、HR、0.96 [95%CI、0.81-1.13])。中リスクの患者をターゲットにしているにもかかわらず、ARRIVEは予想より少ないCVDイベントを経験した。
Gaziano JM, Brotons C, Coppolecchia R, et al; ARRIVE Executive Committee. Use of aspirin to reduce risk of initial vascular events in patients at moderate risk of cardiovascular disease (ARRIVE): a randomised, double-blind, placebo-controlled trial. Lancet. 2018;392(10152):1036-1046.
最近のメタアナリシスでは、これらの研究に以前の10件のトライアルを組み合わせ、CVD転帰について、プラセボと比較してアスピリンに関連した総合的な利益を見出した(アスピリンでは10万人年当たり60.2、アスピリンなしでは10万人年当たり65.2、 NNT 241; ハザード比: HR, 0.89 ; 95% CI, 0.84-0.94
有意な出血性harm増加示唆'は10万人年当たり23.1、アスピリンなしでは10万人年当たり 16.4 、HR, 1.43 [05% CI, 1.30-1.56)
結腸直腸癌の予防は観察されなかったが、過去試験長期追跡調査で効果実証
Zheng SL, Roddick AJ. Association of aspirin use for primary prevention with cardiovascular events and bleeding events. JAMA. 2019;321(3):277-287.
実用的な段階的アプローチ
一次予防のためにアスピリンを開始、継続、または中止するかどうかの決定は、以下の枠組みを使用した、個人レベルの害および利益に関する患者臨床医の議論にかかっている(図)。このフレームワークは実用的なアプローチを提示するが、それは臨床研究で厳密に評価されていない。SDMを含む:
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