私自身、“Swimming-induced pulmonary edema”という病名をしらなかった。スウェーデンの特殊事情もあるようだがpre-hospital careとしてのNPPV投与の適合性・妥当性を検討とのこと。
Swimming-induced pulmonary edema – evaluation of prehospital treatment with continuous positive airway pressure or positive expiratory pressure device
Claudia Seiler, et al.
Open AccessPublished:March 11, 2022DOI:https://doi.org/10.1016/j.chest.2022.02.054
https://journal.chestnet.org/action/showPdf?pii=S0012-3692%2822%2900425-1
【背景】
水泳誘発性肺水腫(SIPE)は、冷たい外水域での水泳中に時折発生する。SIPEの最適な治療法は不明であるが、非侵襲的陽圧換気(NPPV)は病院前の治療の選択肢の一つである。
【研究課題】NPPVはSIPEの病院前治療として実行可能かつ安全か、また治療後の回復を反映するのはどのようなアウトカム指標か。
【研究デザインおよび方法2017年から2019年にかけて、スウェーデン最大のオープンウォータースイミングイベントであるVansbrosimningenにて、前向き観察研究を実施した。SIPEと診断され、末梢酸素飽和度(SpO2)≦95%および/または持続的な呼吸器症状を有するスイマーを研究の対象とした。NPPVは、顔面マスクによる持続気道陽圧(CPAP)または呼気陽圧装置(PEP-device)として現場で実施された。退院基準はSpO2が95%以上であり、臨床的に回復していることであった。4つの評価指標を設定した。SpO2、肺の聴診によるクラックル、肺の超音波検査(LUS)による肺水腫、および患者が報告する呼吸器症状である。
【結果】119名の治療患者のうち、94名がCPAPを受け、24名がPEP-デバイスを受け、1名が気管挿管を必要とした。合計108名(91%)が中央値10-20分のNPPV後に退院し、11名(9%)が転院を余儀なくされた。NPPVによりSpO2が中央値91%から97%に上昇し(p<0.0001)、患者が報告した6つの呼吸器症状が改善した(数値評価スケール中央値1-7から0-1、p<0.0001)。NPPV治療中、聴診によるcrackle(93% vs 87%、p=0.508)、LUSでの肺水腫(100% vs 97%、p=0.500)の有意な減少は見られなかった。
【解釈】NPPVをCPAPまたはPEP装置として投与することにより、SIPEの病院前治療として実行可能かつ安全であり、大多数の患者がその場で退院できることが証明された。また、SpO2や患者が訴える呼吸器症状は治療後の回復を反映していたが、肺の聴診やLUSでは回復しなかった。
序文
水泳誘発性肺水腫(SIPE)は、主に健康な人が冷たい外水域での水泳中に発生 。症状は、呼吸困難、咳、喀血に加え、低酸素血症、肺の聴診でのcrackle所見からなる。SIPE患者の肺水腫は、X線やCTで確認されるが、病院前の肺超音波検査(LUS)でも確認される。Journal Pre-proof の病態生理は完全には解明されていないが、SIPE は肺毛細血管経皮圧が高い静水性浮腫と考えられている 。そのメカニズムは、冷水への浸漬による中心部の血液プールと左心室後負荷の増加、 運動時の肺毛細管圧の上昇、感受性が高い人の頭から水に浸かった時の胸腔内負圧の組み合わせと提唱されている 。その結果、SIPE は通常、患者を水から出して安静にした後、24-48時間以内に自然に治るが、時には生命を脅かすこともある。SIPE の最適な治療法は不明である。病態生理に基づけば、非侵襲的陽圧換気(NPPV)は好ましい治療法となりうる。興味深いことに、2016年に私たちの研究グループが発表したパイロットスタディ以外に、文献上ではSIPEに対してNPPVで治療した患者の7例しか見つけることができなかった。SIPEに対する病院前ケアの重要な側面は、周囲の医療機関に挑戦するオープンウォータースイミング競技の人気の高まりである 。Vansbrosimningenは、スウェーデン最大のオープンウォータースイミングイベントで、年間約11,000人の参加者がある。毎年、水泳大会中に医療を求めるSIPE 患者がかなり多く、最寄りの病院まで78キロメートルもあるため、現場の病院前医療サービスに負担がかかっている。 現場での効率的な治療を提供し、救急車や病院のリソースを節約する目的で、2013年のVansbrosimningenでは、SIPEの治療のための病院前連続気道陽圧(CPAP)が実施された 。2019 年には、重症度の低い SIPE の患者に対して 呼気陽圧装置(PEP-device)による治療が追加された。この研究の目的は、顔面マスクによるCPAPまたはPEP-deviceとして投与されるNPPVによるSIPEの病院前治療の実行可能性と結果を評価することであった。さらに、治療の成功を反映しうるアウトカム指標が以下のどれにあたるかを評価した。 末梢酸素飽和度、肺聴診でのクラックル、LUS での肺水腫の所見、患者報告による呼吸器症状などである。末梢酸素飽和度に基づく SIPE の重症度が低いサブグループでは、CPAP による治療と PEP 装置による 治療が比較された。
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