2012年5月18日金曜日

メタアナリシス: 低リスク スタチンLDL低下治療効果

5年間LDL 40mg/dL下げて、イベント減少1割効果が100名に1人程度 


私はこの論文見て、ますます、スタチン一次予防に疑問を持った。・・・皆さんはいかがだろう?


※ あくまでも低リスク(一次予防)対象者の話だってことは留意して欲しい。


スタチンはLDLコレステロールを減少させ、心血管イベントを予防することはエビデンスとして確定しているが、より低リスク対象者に対するネット・ベネフィット効果は不明であった。
 日本でも、スタチン利用、特に、一次予防に関して 、有害性への危惧も生まれ、一般医家に疑心暗鬼がうまれている。

臨床的アウトカムに関してNNT3ケタなのに平然とスタチンの有効性だけをしゃべり続ける専門家達への疑念も生まれるのも当然。

低リスク患者でのスタチン治療のベネフィット・リスク似関して客観的エビデンスは必然であった。

まちにまったメタアナリシス...

論文の序文

Cholesterol Treatment Trialists' (CTT) Collaborationで、 17万人登録21トライアルのメタアナリシスで、LDL 減少 1mmol/L(39 mg/dL程度)あたり、重大血管イベント(非致死的心筋梗塞・冠動脈死、卒中、冠動脈再建)を1/5減少し、さらなる強化治療でリスク減少をもたらすことがしられている。しかし、非致死的血管死やがん増加リスクエビデンスは知られてない。2mmol/L以上の低下を示す対象者でも増加が見られてない。
一方、一次予防に関して、やはり重大血管イベントのリスク減少は1/5であるが、包括的に、ベネフィットがあるかは不明であった

低リスク対象者でのスタチン治療の効果に関して、有害性も含め検討した報告。


結論
・ 重大血管イベント5年リスクが10%を越える対象者は、LDL 1mmol/L減少毎1000人対11程度
・ このベネフィットは未知のものを含め有害性を凌駕する
・ 現行のガイドラインでは、上記対象者を治療対象としていない、故に、ガイドライン変更が必要

The effects of lowering LDL cholesterol with statin therapy in people at low risk of vascular disease: meta-analysis of individual data from 27 randomised trials
The Lancet, Early Online Publication, 17 May 2012
doi:10.1016/S0140-6736(12)60367-5Cite or Link Using DOI
スタチンvs対照の22トライアル(n=134537;平均LDLコレステロール差 1.08 mmol/L、フォローアップ中央値4.8年)と5つの高投与vs低投与トライアル(n=39612;差 0.51mmol/L;5.1年)

主要血管イベントは冠動脈重大イベント(すなわち、非致死性心筋梗塞 or 冠動脈死)、卒中、冠動脈再建

5年重大血管イベントリスクを5つのカテゴリーに分ける
(<5%, ≥5% ~ <10%, ≥10% ~ <20%, ≥20% ~ <30%, ≥30%)

スタチンのLDLコレステロール減少は重大血管イベントリスク減少 (1.0 mmol/L減少あたり、RR 0.79, 95% CI 0.77—0.81)し、年齢、性別、ベースラインLDLコレステロール、血管疾患既往、血管死及び全死亡とほぼ関連しない影響。

重大血管イベント比例減少率は、最小vs最大リスクカテゴリー比較で最大 (1.0 mmol/L減少あたり、最小から最大へ RR : 0.62 [99% CI 0.47—0.81], 0.69 [99% CI 0.60—0.79], 0.79 [99% CI 0.74—0.85], 0.81 [99% CI 0.77—0.86], 0.79 [99% CI 0.74—0.84]; trend p=0.04)、重大冠動脈イベントや冠血管再建の2つの最小リスクカテゴリーでの有意な減少も反映 (RR 0.57, 99% CI 0.36—0.89, p=0.0012, 0.61, 99% CI 0.50—0.74, p<0.0001、 RR 0.52, 99% CI 0.35—0.75、0.63, 99% CI 0.51—0.79; both p<0.0001)

卒中に対して、重大血管イベント5年リスクは登録者でリスクは10%を越える減少(LDLコレステロール 1.0 mmol/L減少あたりRR 0.76, 99% CI 0.61—0.95, p=0.0012) あり、最大リスクカテゴリーでも同様 (trend p=0.3)。

無心血管既往登録者では、スタチンは血管死亡率、全死亡率減少 (1.0 mmol/LあたりRR 0.85, 95% CI 0.77—0.95)、RR 0.91, 95% CI 0.85—0.97)、比例減少率はベースラインリスクと同様。

スタチンによるLDLコレステロール減少とがん発症に関しエビデンスなし (LDLコレステロール 1.0 mmol/L減少あたり 1.00, 95% CI 0.96—1.04)、がん死亡率 (RR 0.99, 95% CI 0.93—1.06)、他の血管死亡率も同様。







mmol/L表示に関して・・・(再掲:http://intmed.exblog.jp/6679378/)
HDL・LDL   mmol/L → mg/dL 39で掛ける
トリグリセリド mmol/L → mg/dL 89で掛ける
血糖 mmol/L → mg/dL 18で掛ける
クレアチニン μmol/L → mg/dL 88で割る
http://www.faqs.org/faqs/diabetes/faq/part1/section-9.html

遺伝的なHDL増加は、心筋梗塞リスク減少と直結しない!

疫学的研究にてHDLコレステロール増加と冠動脈性疾患リスク減少の関連性に関して注目が集まってきた。

しかし、Voigtらの報告では、遺伝的にHDL高値な人たちにそれは当てはまらないようだという、これまでの常識を覆すような報告がなされた。

遺伝的なHDL増加は、心筋梗塞リスク減少と直結しない!

Plasma HDL cholesterol and risk of myocardial infarction: a mendelian randomisation study
The Lancet, Early Online Publication, 17 May 2012
doi:10.1016/S0140-6736(12)60312-2

2-6%に存在するLIPG 396Ser alleleキャリアでは、HDLコレステロール高値をしめす (0.14 mmol/L ほど高い, p=8×10−13)が、非キャリアと比べ、他の脂質状況と心筋梗塞の非脂質要素は同様。

 LDLコレステロールの差で、心筋梗塞リスク13%減少と推定される   (オッズ比 [OR] 0.87, 95% CI 0.84—0.91)

しかし、396Ser alleleは心筋梗塞のリスクと相関認めず   (OR 0.99, 95% CI 0.88—1.11, p=0.85)

観察疫学から、HDLコレステロール 1SD増加は心筋梗塞リスク減少と相関するとされる   (OR 0.62, 95% CI 0.58—0.66)

しかし、遺伝的スコアによるHDLコレステロール 1SD増加は心筋梗塞リスクと相関せず   (OR 0.93, 95% CI 0.68—1.26, p=0.63)

LDLコレステロールに対して、LDLコレステロール 1SD増加 毎 OR 1.54, 95% CI 1.45—1.63の相関性は、遺伝的スコアからの相関性と一致(OR 2.13, 95% CI 1.69—2.69, p=2×10−10).


HDL高値を根拠としている長寿症候群の立場は?


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