2012年6月28日木曜日

コロイド・クリスタル論争:重度敗血症 HES製剤はリンゲルに比べ死亡・腎置換療法リスク増加

コロイド(HES) かクリスタル(リンゲル・アセテート) か?

この議論も長い・・・昨年こんな話題があった。
Boldtスキャンダル:コロイド・”コロイド v クリスタロイド論 2011年 03月 05日


重症敗血症患者において、コロイド(スターチ群)では、クリスタル(リンゲル・アセテート)90日死亡リスク増加、腎置換治療使用増加となった。


Hydroxyethyl Starch 130/0.4 versus Ringer's Acetate in Severe Sepsis

Anders Perner, et.al.
for the 6S Trial Group and the Scandinavian Critical Care Trials Group
June 27, 2012 (10.1056/NEJMoa1204242)
http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa1204242?query=featured_home


Hydroxyethyl starch (HES) 130/0.4 はICUの輸液蘇生剤として広く使用されている。しかし、その安全性・有効性は重度敗血症患者では確立していない。
多施設平行群盲検化トライアルにおいて、重度敗血症患者をランダムに、 6% HES 130/0.4 or Ringer's acetateで、33mL/kg/理想体重で投与

プライマリアウトカム測定は、ランダム化後90日目の死亡/終末期腎不全(透析依存)

ランダム化された804名の内、798名で修正ITT。2つの介入群は同等のベースライン特性。

ランダム化後90日死亡
HES 130/0.4群: 201/398(51%)
Ringer's acetate群:172/400(43%)
(相対リスク, 1.17; 95% 信頼区間l [CI], 1.01 to 1.36; P=0.03); 終末期腎不全は各群1名)

90日間で腎置換療法
HES 130/0.4群: 87 名(22%)
Ringer's acetate群:65 名 (16%)
(相対リスク, 1.35; 95% CI, 1.01 to 1.80; P=0.04)

重度出血
HES 130/0.4群: 38 名(10%)
Ringer's acetate群:25 名 (6%)
(相対リスク, 1.52; 95% CI, 0.94 to 2.48; P=0.09)

この結果は、ベースライン死亡・急性腎障害既知リスク要素補正後、多変量解析でサポートされている。







HES代用血漿剤は、高度に分祀したとうもろこしデンプン成分のアミロペクチンから、加水分解とそれに続くヒドロキシエチル化によって得られる高重合体の糖化合物。グルコース単位(glucose ring)のC4とC1でグリコシド結合(α-1,4グリコシド結合)、主鎖を形成する一方、C6とC1でもグリコシド結合し(α-1,6グリコシド結合)、枝分かれする。
代用血漿剤は、晶質液と異なり、HESに代表されるコロイド成分を含む。このコロイド成分による膠質浸透圧効果によって血管内に水分を引き寄せ、循環血漿量を維持する。
・・・・
分子量が大きいほど毛細血管から漏出しにくいため、循環血液量を長時間維持できる。一方、分子量が小さいと、血管外への漏出や腎臓からの排泄により、投与しても短時間で効果を失う。そのため、分子量は重量平均分子量(Mw)で表す方がより臨床的である。・・・日本では70kDの低分子量のHES製剤が市販されている
(引用:http://www.maruishi-pharm.co.jp/med/libraries_ane/anesthesia/pdf/33/33feature12.pdf)

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