2013年3月18日月曜日

QT/QTc間隔延長薬剤:投与前・投与後心電図検査

薬剤と、QT/QTc延長は定期的に問題となる。心電図判定のタイミングと、その具体的指標について自分なりに調べてみた。
米国FDA警告:ジスロマック・致死的不整脈リスク 2013/03/13
抗うつ薬とQTc延長 2013/02/01
参照値内であってもQT間隔は死亡率と関連する  2011年 10月 25日

QT延長可能性薬剤
http://www.nms.ac.jp/QTdrugs/qtdrug1.htm

https://square.umin.ac.jp/saspe/news/15.pdf
抗不整脈薬 キニジン, ジソピラミド, プロカインアミド, アミオダロン, ニフェカラント, ソタロール, ベプリジル
抗生物質・抗真菌薬 エリスロマイシン, クラリスロマイシン, スパルフロキサシン
向精神薬 アミトリプチリン, ハロペリドール, クロルプロマジン, ピモジド, チオリダジン
抗アレルギー薬 テルフェナジン, アステミゾール
その他 シサプリド, 三酸化ヒ素
N Engl J Med 2004; 350:1013-1022
主たる問題薬剤:ジソピラミド・Dofetilide・Ibutilide・プロカインアミド・キニジン・ソタロール・ベプリジル
他薬剤:アミオダロン・シサプリド・CCB(リドフラジン;米国未市販)・抗菌剤(クラリスロマイシン、エリスロマイシン、halofantrine、ペンタミジン、スパルフロキサシン)、制吐剤(ドンペリドン、ドロペリドール)、抗精神薬(クロルプロマジン、ハロペリドール、メソリダジン、チオリダジン、ピモジド)、メサドン
Torsades List: http://www.azcert.org/medical-pros/drug-lists/list-01.cfm?sort=Brand_name
可能性薬剤リスト:http://www.azcert.org/medical-pros/drug-lists/list-02.cfm?sort=Brand_name
条件付き可能性薬剤リスト:http://www.azcert.org/medical-pros/drug-lists/list-04.cfm?sort=Brand_name
 添付文書で、”QT”と検索すると929件、”QT間隔”と検索すると152件、うち、「警告、禁忌/原則禁忌」は88件ある


まず基礎的知識として・・・
医薬品による重篤な循環器系副作用として「QT延長症候群」(LQTS)があり、Torsades de pointes(TdP)と呼ばれる致死的な心室頻拍のリスクファクターで薬淵治療上で重要な問題となっている。・・・抗不整脈薬だけでなく、向精神薬、 抗菌薬、分子標的薬などの非循環器系医薬品も含まれる。多くの場合、これらの医薬品による心筋Kチャン ネル遮断作用により、外向きK電流が減少することでLQTSが行き起こされると考えられている。
札幌医学雑誌 79(1-6)13 ~ 19(2010)
http://ir.cc.sapmed.ac.jp/dspace/bitstream/123456789/5270/1/n0036472X79113.pdf


「非抗不整脈薬におけるQT/QTc間隔の延長と催不整脈作用の潜在的可能性に関する臨床的評価」(薬食審査 発1023 第1号 平成21年10月23日 各都道府県衛生主管部(局)長 殿 厚生労働省医薬食品局審査管理課長)
http://www.pmda.go.jp/ich/e/e14_09_10_23.pdf
承認審査資料の国際的ハーモナイゼーション推進の必要性が指摘されています。このような要請に応えるため、日米EU医薬品規制調和国際会議(以下 「ICH」という。)が組織され、品質、有効性及び安全性を含む各分野で、ハーモナイゼーションの促進を図るための活動が行われているところです。今般、 ICHの合意に基づき、新たに「非抗不整脈薬におけるQT/QTc間隔の延長と催不整脈作用の潜在的可能性に関する臨床的評価」(以下「本ガイドライン」 という。)を別添のとおり定めました 
抗不整脈外薬剤でのQT/QTc延長に関し、日米間でネゴシエーションしておこうというお話のようだ。


ただ、”QT/QTc間隔の絶対的上限及びベースラインからの変化の上限値選択に関し一致した見解はない”
http://www.pmda.go.jp/ich/e/e14_09_10_23.pdf

具体的な上限値例として

QTC間隔絶対値の延長
・QTc間隔 > 450
・QTc間隔 > 480
・QTc間隔 > 500

QTc間隔ベースラインからの変化
・ベースラインからのQTc間隔増加 > 30
・ベースラインからのQTc間隔増加 > 60

治験除外として、QTc> 450msが繰り返し有る場合、TdP危険因子(心不全、低カリウム血症、QT延長症候群家族歴)、QT/QTc延長薬剤併用中である。このような事例では、臨床治験されてないため、リスク可能性があるということになる。

 補正式に関して、Friedericia補正法(QTC=QT/RR0.33、 Bazett補正法(QTc=QT/RR0.5があるが、Bazett補正では、 60/分以下では過小、高心拍では過大補正となる。線型回帰式補正:Framingham補正(QTc=QT+0.154(1-RR))、非線形補正がある。


ちょっと古く、そして、抗不整脈投与という限定的条件だが、中止基準のQT間隔の具体的記載がある。
http://www.mhlw.go.jp/topics/2006/11/dl/tp1122-1k03.pdf
早期発見のポイントは症状と投薬後の心電図検査である。症状としては、頻脈に基づく動悸・めまい・失神がある。ただし、症状が出現してからでは手遅れとなる可能性もあるため、VT やTdP が発生する前に対応すべきである。このためには心電図検査が有用で、とくに抗不整脈薬を投与した場合は 4 日~1 週間後に心電図を記録し、QRS 幅の拡大と QT 延長の有無を確認する薬物によっては 3 週~4 週後に QT 延長が現れることもあるので注意する。具体的には QRS 幅が投薬前に比して 25%以上拡大した場合(たとえば 0.12 秒以上となった場合)や QT 間隔が 0.5 秒以上に延長した場合は投薬量を減量するか、中止する
すなわち、QT延長薬剤に関して、具体的には、
投与前心電図チェック、4日から7日後3−4週間後チェックが義務づけられていると判断すべき
そして、心不全評価、カリウムチェック、QT延長症候群などの家族歴・既往歴チェックが義務づけられていると考えて良いはず


ジスロマックに関しては、米国FDAは、マグネシウム濃度測定を推奨


薬剤投与前心電図チェックすら、公的医療保険審査で認められないことがある。QT延長可能性薬剤の場合は、一律に、投与前、4−7日後、3−4週間後心電図チェックは許可されるべきはず・・・

1 件のコメント:

  1. この件に関して、薬局にもできることがあると考えています。家庭用の携帯心電計を使って、QT延長薬のリスク管理を行い、微力ながらも副作用の未然防止に努めています。ご参考までに。
    ・薬学雑誌2012,132(2),237-241.
    ・薬学雑誌2010,130(11),1597-1601.

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