臨床上も研究上も、より客観的に、より正確に病態を反映する指標があれば・・・と。
そして、簡易であればより良いのだろうが・・・
慢性閉塞性肺疾患(COPD)は慢性気管支要素と気腫性要素により特徴付けられる。生物生理学モデルとして、気道上皮ムチン濃度により、健康成人とmuco-obstructive lung diseaseとムチン輸送障害の違いが明確になり、鍵となる変数になるという仮説検証。
気道ムチン濃度は喀痰産生および疾患重症度に関与する慢性気管支炎病態生理カスケードの定量的な鍵要素であろう。
診断的バイオマーカーや治療ターゲットとしてこの検査指標が重要となるかも
Airway Mucin Concentration as a Marker of Chronic Bronchitis
Mehmet Kesimer, et al.
N Engl J Med. September 7, 2017 vol. 377 no. 10
http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa1701632
Subpopulations and Inter- mediate Outcome Measures in COPD Study (SPIROMICS) COPD 917名
アンケート、CT、スパイロメトリ、誘発喀痰検査
size-exclusion chromatography、refractometry(屈折計)
慢性気管支炎アンケートと喀痰ムチン濃度データを94名の独立したコホートも解析
総ムチン濃度 平均(±SE)
重症COPD > 重度喫煙対照群 : 3166±402 vs 1516±152 μg/mL
急性増悪2度以上 > 急性増悪経験無し : 4194±878 vs 2468±113 μg/mL
MUC5B、MUC5AC濃度絶対値は非喫煙対照群と比較し、COPD重症の現行喫煙・既往喫煙では、3倍、5倍
総ムチン濃度と慢性気管支炎診断のROC/AUC解析にて
SPIROMICSコホートでは 0.72 (95% 信頼区間 [CI], 0.65 - 0.79)
別個コホートでは 0.82 (95% CI, 0.73 - 0.92)
two-gel hypothesis
呼吸器系ムチン濃度がムチン輸送率と関連し、閾値を超えると気道表面に粘着性のムチン・プラークを形成、結果的に喀痰排出となる
MUC5B、MUC5ACが粘液輸送と、ゲル層産生を導く
正常肺から喫煙による慢性気管支炎への進展モデル。
健康者では、能動的イオン吸収(Na+)と分泌(Cl-)、受動的浸透圧による水輸送のバランス、そして、ムチン産生(線毛周囲層:pericilliary layer:PCL)のムチンや他の糖結合物濃度より濃度の薄いムチン層となるようムチン産生されている。水豊富なPCLと有効なムコ線毛クリアランス(MCC)を形成。
喫煙による慢性気管支炎患者では、ムチン産生過剰を伴い、イオン輸送のバランス異常にて、粘液層のムチン濃度増加を生じ、PCLの浸透圧compressionを呈し、濃度濃縮した粘液の気道表面へ接着、MCCを阻害することとなる。
凝集した粘液は、痰として、咳嗽による喀痰として排泄される。
咳嗽により排泄できなかった粘液は集積・濃縮し、気道障害の元になり、繰り返し感染、急性増悪の巣:nidusとなる。
.CFTR denotes cystic fibrosis transmembrane regulator, and ENaC epithelial sodium channel.・・・最近は便秘の薬の説明でよく聞くが・・・
size-exclusion chromatograhpy
http://www.an.shimadzu.co.jp/hplc/support/lib/lctalk/55/55intro.htm
利用するカラム内の充てん剤には,細孔(ポア)が数多く存在します。 大小の溶質分子がカラム内を流れていく際に,小さい溶質分子は充てん剤細孔(ポア)の奥まで浸透しながらゆっくり流れ,大きい溶質分子は細孔に入らないでさっさと流れていきます。 その結果,カラムからの溶出は大きな分子が速く小さな分子は遅くなり,分子の大きさによるふるい分けが行われます。 これがサイズ排除クロマトグラフィーの分離原理です。
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