2017年12月13日水曜日

強抗コリン作用薬剤と認知症リスク

抗コリン作用薬剤の認知機能、せん妄、身体機能、死亡率への影響は以前から報告されている。全てが悪ではない。
Effect of medications with anti-cholinergic properties on cognitive function, delirium, physical function and mortality: a systematic review
Chris Fox   et al.
Age and Ageing, Volume 43, Issue 5, 1 September 2014, Pages 604–615, https://doi.org/10.1093/ageing/afu096

だが、一部強力な抗コリン作用薬剤ではやはり長期累積的に認知機能への悪影響はありそう


Cumulative Use of Strong Anticholinergics and Incident Dementia
A Prospective Cohort Study
Shelly L. Gray, P et al.
JAMA Intern Med. 2015;175(3):401-407. doi:10.1001/jamainternmed.2014.7663

序文 多くの薬剤に抗コリン作用あり、一般的に、抗コリン性認知機能障害はその薬剤中止により回復するとは考えられては居るが、抗コリン作用が認知症リスク増加と関連するという報告も少なからずある

目的 抗コリン作用薬累積使用は認知症発症リスク増加と関連するか検証

デザイン、セッティング、被検者 前向き住民ベースコホート研究(集約的医療提供システム(シアトル、ワシントン)のAdult Changes in Thought study in Group Health)のデータ使用3434名(登録時 65歳以上、認知症無し)
初期登録は1994−1996年、2000-2003年
2004年から開始、死亡補充、全被検者は2年毎フォローアップ、データは2012年9月30日のデータで解析

暴露 コンピュータ化薬剤dispensing dataを用い累積的抗コリン暴露を確認、 total standardized daily doses (TSDDs)定義:直近10年間使用
直近12ヶ月使用はprodromal symptomに関連する故除外
累積暴露は経時的フォローアップによりアップデート

主要アウトカム測定 認知症、アルツハイマー病発症(標準クライテリア使用)
統計解析はCox比例ハザード回帰モデル(補正:住民統計特性、健康行動、健康状態(併発症含む))

結果  最大使用抗コリン性薬剤クラスは、三環系抗うつ薬、第一世代抗ヒスタミン、膀胱高ムスカリン剤。平均フォローアップ7.3年間で、認知症発症 797名(23.2%)、うち、アルツハイマー病は 647名(79.9%)。
累積10年間量反応関連性が認知症・アルツハイマー病で観察 (傾向検証 p < 0.001)

認知症に対し、抗コリン剤累積使用補正ハザード比は未使用比較で

  • TSDDs 1-90 0.92 (95% CI, 0.74-1.16)
  • TSDDs 91-365 1.19 (95% CI, 0.94-1.51) 
  • TSDDs 366-1095 1.23 (95% CI, 0.94-1.62) 
  • TSDDs 1095超 1.54 (95% CI, 1.21-1.96) 


同様の結果が、アルツハイマー病でも見られる
セカンダリ分析、感度分析、post hoc解析でも同様


結論・知見 抗コリン使用蓄積は、認知症リスクを増加させる
医療従事者専門家と高齢者自身にも、この医薬品関連リスクの認識を強化し、経時的にもその使用量を最小化するよう努力すべき




抗ヒスタミン剤、抗うつ薬、めまい・制吐剤、パーキンソン病関連薬、向精神薬、膀胱抗ムスカリン、骨格筋弛緩薬、胃腸抗痙攣薬、抗不整脈を対象としている




吸入LAMAなどが検討されてない・・・大丈夫だろうか?


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