2021年2月9日火曜日

心房細動高齢者:抗凝固薬の長期有効性と安全性 Frail指標を含め検討

心房細動(AF)を患う入院中の虚弱高齢者の大規模コホートにおいて,研究者らは,経口抗凝固療法(OAC)が長期の全生存期間と臨床的に関連する出血にどのような影響を与えるかを評価するために,この前向き観察的コホート研究を実施した。

参加者は心房細動と洞調律の2群に分けられた。

専門家は、人口統計学的特徴と臨床病歴を評価するだけでなく、包括的老年評価(comprehensive geriatric assessment (CGA))も取得した。

その結果、抗凝固療法は臨床的に関連する出血のリスクを増加させることなく、長期の全生存期間を有意に延長することが明らかになった。

また、CGAはOAC治療の意思決定に有益な手段であることが明らかになった。

抗凝固療法を受けた心房細動患者と抗凝固療法を受けていない心房細動患者では、潜在的な交絡因子を調整した後、洞調律の患者に匹敵する3倍の長期全生存期間の延長が認められた。

 

 

Long-term effectiveness and safety of anticoagulation therapy in oldest old, frail people with atrial fibrillation
Valeria Calsolaro , et al. European Journal of Internal Medicine Published:February 04, 2021DOI:https://doi.org/10.1016/j.ejim.2021.01.020
https://www.ejinme.com/article/S0953-6205(21)00020-0/fulltext

 
ハイライト

  • 心房細動は高齢者の死亡の主な原因
  • 衰弱している患者や高齢者の患者が臨床試験に参加することはほとんどない
  • 脆弱な抗凝固患者は、抗凝固していない患者よりも長く生き残った
  • 臨床的に関連する出血のリスクは有意に増加しなかった
  • 老年期の包括的な評価は抗凝固療法の意思決定に役立つ可能性がある


抄録
背景

心房細動(AF)は高齢者の死亡率と罹患率の主要な原因であるが、高齢の虚弱な患者は通常臨床試験から除外されている。本研究の目的は、心房細動を有する虚弱高齢者入院患者の大規模コホートにおいて、経口抗凝固療法(OAC)が長期の全生存期間と臨床的に関連する出血に与える影響を評価することである。

患者と方法

当院老年病棟に急性疾患で連続入院した患者を評価した前向き観察的コホート研究(2013年1月~2017年7月)。参加者は心房細動と洞調律(SR)の2群に分けた。人口統計学的特徴と臨床病歴の記録に加えて,包括的な老年医学的評価(CGA)を行った.

結果

心房細動患者[1808/5093(35.5%)、女性58.5%]はSR患者に比べて高齢で、併存疾患の負担が高かった。

退院時、HAS-BLED[OR 0.77(95%CI 0.67-0.90)]、認知障害[OR 0.92(95%CI 0.90-0.95)]、栄養失調[OR 0.74(95%CI 0.57-0.97)]、CHA2DS2VASc[OR 1.33(95%CI 1.20-1.47)]が抗凝固薬処方の有意な独立した予測因子として浮上した。

心房細動患者はSR群に比べて全生存期間(OS)が有意に減少した(11.4ヵ月 vs 19.4ヵ月、p<.001)。しかし、抗凝固薬を処方された心房細動患者(75.2%)は、抗凝固薬を処方されていない患者(15.0 vs 5.6ヵ月、p<.001)に比べてOSが3倍長く、潜在的交絡因子を調整した後の心房細動患者はSR患者に匹敵した[HR 1.04(95%CI 0.99-1.10)]。

臨床関連出血に対するED再送リスクは、抗凝固療法を受けている心房細動患者と受けていない心房細動患者では差がなかった[HR 1.04(95%CI 0.76-1.14)]。

結論

抗凝固療法は臨床関連出血のリスクを増加させることなく、長期のOSを有意に増加させることができた。CGAはOAC治療の意思決定に有用なツールとなった。


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超高齢者やfrail状態の高齢者に対してホントに抗凝固療法継続して良いのだろうかと日常診療の中で疑問をもつことがある

それに対する一部ヒントにはなりそう

 

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