2021年10月7日木曜日

COPD:ACE阻害剤・ARBはCOPD画像的気腫化悪化、FEV1減少を防ぐ

この研究の限界は、生存者バイアスがかかる可能性があることとACE阻害剤・ARBの用量情報なく、用量反応関係が分からないこと

ただ、ACE阻害剤・ARBの画像気腫化定量的評価による悪化とFEV1減少速度鈍化効果を示した本格的研究であり、臨床上のトライアル参考になるだろう

 

 

肺機能低下の促進と肺気腫の進行は、COPDの疾患活動性を示す重要なマーカー。肺機能低下の促進が及ぼす影響は、COPD発症、 増悪 そして死亡につながります肺気腫の進行は、FEV1減少の加速、機能的能力の低下、低BMI、肺および肺外組織の消失、そして死亡につながります。 したがって、COPDの治療においては、疾患活動性を低下させることが極めて重要です。今のところ、肺機能低下の修飾因子として知られているのは、禁煙、身体活動、呼吸器系薬剤の使用吸入コルチコステロイドや気管支拡張剤などの呼吸器系薬剤。しかし、FEV1の低下に対する呼吸器系薬剤の全体的な効果は小さく また、α1アンチトリプシン欠損症が原因ではない患者の肺気腫の進行に影響を与える治療法は知られていません。 そのため、新しい治療法の開発が急務となっています。このような医療ニーズに応えるためには、ボトムアップ型の医薬品開発と並行して、医薬品の再利用の可能性を研究することが必要です。
  一般住民を対象とした研究では、アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACEi)およびアンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)の使用が、元喫煙者の肺気腫の進行を抑制することが示されている。また、ACEiは現在の喫煙者のFEV1の進行を抑制することに関連。

 



Figure 1

Possible pleiotropic effects of angiotensin-converting enzyme inhibitors and angiotensin-receptor blockers on fibroproliferative responses. ACEi = angiotensin-converting enzyme inhibitors; ARB = angiotensin-receptor blocker; AT = angiotensin; CTGF = connective tissue growth factor; ECM = extracellular matrix; NF-κB = nuclear factor kappa-light-chain-enhancer of activated B cells; ROS = reactive oxygen species; TGF-β = transforming growth factor β; VSMC = vascular smooth muscle cell. This illustration was created with Biorender.

 


Emphysema progression and lung function decline among angiotensin converting enzyme inhibitors and angiotensin-receptor blockade users in the COPDGene Cohort.
Tejwani V. et al.
Chest. 2021; 160: 1245-1254
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S00123692210088

 
ClinicalTrials.gov; No.: NCT00608764; URL: www.clinicaltrials.gov

 

【背景】 アンジオテンシンIIを阻害してトランスフォーミング成長因子βを減少させると、マウスモデルで肺気腫が減少することが示されている。一般住民を対象とした研究では、アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACEis)およびアンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)の使用が、元喫煙者の肺気腫の進行を抑制すること、また、ACEisの使用が現在の喫煙者のFEV1の進行を抑制することが示されている。


【研究課題】 ACEiおよびARBの使用は、COPDまたはベースラインに肺気腫を有する人の肺気腫の進行およびFEV1の低下の抑制と関連するか?


【研究方法】 Genetic Epidemiology of COPD Study(COPDの遺伝的疫学研究)の元喫煙者および現喫煙者で、ベースラインおよび5年間の追跡調査に参加し、喫煙状況に変化がなく、胸部CT画像診断を受けた人を対象とした。調整線形混合モデルを用いて、スパイロメトリーでCOPDが確認された人、全参加者およびベースラインで肺気腫が確認された人を対象に、ACEiおよびARBの使用者と非使用者の間で、調整肺密度(ALD)、肺気腫率(%total lung volume <-950 Hounsfield units [HU])、減衰ヒストグラムの15パーセンタイル(ボクセルの15%が位置する減衰量[HU]に1,000HUを加えた値)、および5年間の肺機能低下の進行を評価した。また、喫煙状況による効果の変化についても検討した。


【結果】 5年間の追跡調査の結果、ACEiおよびARBの使用者は、非使用者と比較して、COPDのALDの進行が遅かった(調整平均差[aMD]、1.6、95%CI、0.34-2.9)。

肺機能の低下の遅さは、第1相の投薬では観察されなかったが(FEV1%予測値のaMD、0.83;95%CI、-0.62~2.3)、ACEiおよびARBの一貫した使用者に限定した解析では観察された(FEV1%予測値のaMD、1.9;95%CI、0.14~3.6)。

X線写真の結果については、喫煙の有無による効果の修飾は認められず、肺機能の効果は元喫煙者でより顕著であった。結果は、ベースラインで肺気腫を有する参加者においても同様であった。

 



【解釈】 スパイロメトリーでCOPDが確認された患者、またはベースラインで肺気腫を有する患者において、ACEiおよびARBの使用は肺気腫の進行および肺機能の低下を遅らせることと関連していた。

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