2012年4月16日月曜日

てんかんと交通死亡事故

警察組織ってのは、疫学を全く理解しておらず、インチキ統計学・疑似科学を垂れ流すことを生業とする組織である(e.g. 血液型と交通事故星座と交通事故・・・)。その組織が 生命に関わる予防介入措置の意思決定を牛耳っている。特定の身体・心身特性と運転免許資格の関係である。


  京都軽ワゴン車突入人身事故に関してだが・・・この問題に触れたことがある。

参考: てんかんと運転免許について思う・・・  2011年 04月 20日


昨夜、フジテレビの報道ワイドショーで、女医さんが「突然意識障害を来すばかりがてんかんじゃない。意図的運転操作があったとしてもてんかん発作を否定出来ない」・「お薬をのんでても100%発作をおさえられるケースだけではない」と述べていた。
「てんかんとは急に意識がなくなって、泡を吹いて倒れるもの、くすりをのんどけはすべて解決する」という誤認識に基づく他報道やコメントの嵐の中、まともなコメントはこれだけだった。aura/prodomal、心因性非てんかん性発作 (Psychogenic. Non-Epileptic Seizure: PNES) A、てんかんの病型の多様性から考えて、症候だけで、果たして、てんかんだったかどうか判断は今後も困難。
この事件・事故は、純粋な医学的推測でなく、その他の要素で司法判断がなされ、所属記者クラブが、それを支持するような情報を拡散し、推移していくような気がする。


ところで、日本における重大事故比率は米国より多いのだろうか?

“てんかん発作が原因とみられる死亡事故は、ここ5年間で18件起きた”(愛媛新聞 社説2012年04月16日(月)
“ 車運転時のてんかん発作による人身事故が、中国地方で昨年までの5年間に22件発生したことが分かった”(中国新聞 2012年4月15日 、信濃新聞Web 4月14日


“米国では、1995-97年44027名のドライバーが死亡し、うち、てんかんと関連した事故は86名(0.2%、82-97)が死亡事故と関連”と米国事例での論文掲載がなされている。
Mortality in epilepsy
Driving fatalities vs other causes of death in patients with epilepsy  
Soham G. Sheth, et. al.
Neurology September 28, 2004 vol. 63 no. 6 1002-1007

てんかん発作関連死亡事故数が日本の方が多いというわけではなさそうだ。
ただ、日本のように1回で多数の被害者を起こす事故の比率はどうかは、上記論文ではわからなかった。


論文解説・・・
てんかんと関連した事故は86名(0.2%、82-97)が死亡事故と関連。アルコールによる事故は、156倍以上。
若年者の事故はてんかん者の123倍以上。てんかんによる死亡事故は一般の2.6倍。
てんかん理由の事故は稀だが、アルコール、運転ミス、道路状況による事故は 稀でない。
てんかん患者の運転制限にはジレンマがつきもの。就業上・行動範囲制限を与えることと、患者自身の安全・公的安全性の問題があり、てんかん発作後の運転制限について、3ヶ月間運転制限と6-12ヶ月間運転制限比較では同様の安全性、より短期制限の可能性も

Patient Page The risk of fatal car crashes in people with epilepsy
Karen C. Richards, MD
http://www.neurology.org/content/63/6/E12.full

日本では、免許申請・更新時のてんかん申告の厳正化と、科学的根拠に基づく発作後の運転制限期間設定に関する議論が必要。


ドイツのレビュー:
てんかんがある場合、運転を許可するかどうかは医師にとっても試練。法医学的不確実性の問題は専門医や産業医にとっても課題。
Review Article:Medicolegal Assessment of The Ability to Drive a Motor Vehicle in Persons With Epilepsy
Dtsch Arztebl Int. 2010 April; 107(13): 217–223.
外傷リスクによる産業医学上の痙攣性疾患分類

Classification of convulsive disorders in occupational medicine by the risk of injury
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2855176/table/T1/


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