米国ではマスメディアでも騒がれた・・・今年話題の報告
騒動がおちついたこの時期、NEJMでの解説記事
題目が“カロリー制限・寿命延長”じゃなく、“食事と健康加齢”となってることに注目されたい。すなわち、 “カロリー制限・寿命延長”はクリアに実証されてない事象だから・・・
日本のいんちき専門家達(e.g. 加齢なんたら学会のみならず、糖尿病学系・循環器系・内科系学会までも・・・)ならそんな慎重な言い回しはしないだろう。詐欺もどきの確定事象としてNHKや民放などにでしゃばり うそをひけらかす・・・そんなことが今年も多くなされている。
解説記事に話は戻るが、予想通りの結果にならなかったのは実験対照の処理により説明されている。騒がれた当時、実験動物への疑念が問題視されたと思うのだが、その記載がない。動物実験といえど、疑念提示されない完璧な実験系は存在しないと思う。“食事制限・健康加齢”というのは理にかなっていると思うが、その説明が欲しかったなぁと・・・
Diet and Healthy Aging
Linda Partridge, Ph.D.
N Engl J Med 2012; 367:2550-2551December 27, 2012DOI: 10.1056/NEJMcibr1210447
1930年代から齧歯類の実験で食事摂取量をへらすことで、加齢を軽減するという報告が有り、寿命延長だけで無く、機能障害改善・加齢関連の疾患(がん、神経障害、骨格筋減少、代謝疾患、神経変性)予防的に働くことが示された。これは、亀、魚、イヌなど様々な生物で示され、さらには、かび、原生的虫、ショウジョウバエ、マウスに及ぶ。メカニズムは動物種横断的と想定された。 インスリン、インスリン様成長因子、rapamycinターゲットに基づくnutrient-sensing signaling networkが関与しているという想定がなされた。
Fontana L, Partridge L, Longo VD. Extending healthy life span -- from yeast to humans. Science 2010;328:321-326
2009年以降、カロリー制限加齢減弱が急激にブームとなり、これはアカゲザルの研究出版がその契機であった。
対照ではアドリブ的食事摂取、実験系ではその70%の摂取。結果、加齢関連死減少、糖尿病、がん、心血管疾患、脳萎縮の減少を示した。
Colman RJ, Anderson RM, Johnson SC, et al. Caloric restriction delays disease onset and mortality in rhesus monkeys. Science 2009;325:201-204
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2812811/
もう一つの研究、“National Institute on Aging”では、同様のカロリー制限で、特定の代謝的健康指標改善、糖尿病頻度減少、がんの発症著明減少だったが、心血管疾患や加齢関連死率に差は認めなかった。
Mattison JA, Roth GS, Beasley TM, et al. Impact of caloric restriction on health and survival in rhesus monkeys from the NIA study. Nature 2012;489:318-321
http://www.nature.com/nature/journal/v489/n7415/full/nature11432.html
この結果は相反するところがあるが、実験デザインで説明できるとされ、食事が健康かれにとってのヒントをもたらすものと思われる。
2つの実験対照群の処置は異なるモノで、摂取に関して制限無く、アドリブ摂取であったが、後の研究では、食事の固定摂取(アドリブ摂取より少ない、肥満防止のための設定)であった。故に、対照群にもカロリー制限のベネフィットがもたらされた可能性がある。
さらに、食事の内容に関しても、2つの実験は異なっていた。最初の実験の蔗糖含有は40%、後の実験では約4%のみで、最初の実験で糖尿病発症頻度の多さはこれで説明出来るのでは無かろうかと解説。
齧歯類を含む実験での対照群では、特定種アミノ酸の摂取不足があり、カロリー制限以上にその影響が加味され、カロリー制限のベネフィット検知パワー低下となってる可能性がある。
ヒトでは、加齢下の健康に関して、カロリー制限意味があるのだろうか?
ヒトでは、低コンプライアンスのため、食事制限が寿命延長へ効果有るか知ることははなはだ難しい。 より短い中程度期間の研究では食事制限が代謝的・心血管健康を改善し、炎症減少をもたらすという報告。疫学的研究で、BMIと18歳以降の体重増加程度が、心血管疾患、糖尿病、がん、全体的死亡リスクと相関することが示されている。
食事制限の健康ベネフィットは現行のBMIに依存してるようだ。動物、アカゲザルを含め、アドリブ食事の時はヒトと結果と類似している。故に、ヒトでは定量的情報は存在しないが、適切な食事構成のメッセージが重要。
動物実験では、食事蛋白比率・成分が重要であることが判明し、成分補正による動物実験研究により、過体重・肥満に限定されない、ヒトでの影響が判明するかもしれない。
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