2012年2月9日木曜日

平成22・23 年度 医療政策会議 報告書


平成22・23 年度 医療政策会議 報告書 医療を営利産業化していいのか

平成2 4年1月 日本医師会医療政策会議
http://dl.med.or.jp/dl-med/teireikaiken/20120208_1.pdf


気になったところの抜き書き


第1章 ポスト311 の社会保障と政治 執筆担当者 山口 二郎 委員

菅政権が提起した経済成長戦略には、次のような特徴があった。
第一に、「成長」という強迫観念にとらわれ、理念や構想を欠いた経済政策であるという点に本質がある。これは、民主党政権における自信の欠如の反映ということもできる。政治的な戦術としては、経済界に接近し、政権基盤を補強するという意図があった。また、民主党内における政策路線の対立との関連で見れば、増税に反対し、生活第一路線を守ろうとする鳩山元首相、小沢元幹事長を中心とするグループと、財源問題に取り組み、経済成長を進める野田佳彦首相、前原誠司政調会長を中心とするグループの対立の中で、菅、野田両政権は生活第一路線の修正を進めたと捉えることができる。
菅政権以降、医療もこのような経済成長戦略の中に位置づけられることとなった。ここでそうした政策をとりあえず「医療産業政策」と呼ぶなら、その柱は次のようなものである。
・医療の実用化促進のための医療機関選定制度
・国際医療交流を進めるための医療滞在ビザ、医療機関認証制度の創設
混合診療の解禁による高度医療の推進
ここでは医療分野のサービス提供、及びそれらを支える機器や薬剤の開発によってGDP の拡大を図るという発想が前提となっている。この点は、民主党の政策思想の根幹に関わる問題をはらんでいる。


・・・・

医療の産業化とTPP は連動した動きと捉えなければならない。アメリカ主導の自由化と市場化に向けた政策の標準化は、国家の主権を掘り崩し、アメリカ流の市場モデルが他国にも浸透することが起こり得ることに留意する必要がある。
ここで我々は、言葉の使い方に十分注意しなければならない。十年前に小泉政権が誕生したとき、日本の世論は「構造改革」一辺倒となった。小泉純一郎首相(当時)やその側近が唱える改革はすべて良いものであり、それに対する異論、反論は、すべて抵抗勢力のエゴイズムと退けられた。その結果実現した「社会保障制度改革」は、社会保障費の毎年2,200 億円ずつの抑制であり、改革は医療難民、介護難民を生み出した。労働市場改革は、派遣労働の製造業への全面解禁を意味し、この政策転換は派遣切りを正当化し、リーマンショック後大量の失業者を生み出した。地方分権は、地方交付税の削減を意味し、非大都市圏の多くの自治体では、公立医療施設の縮小、サービスの低下をもたらした。
同じことをTPP で繰り返してはならないのである。

・・・・



第2章 TPP と今後の日本医療 …………………………(二木 立 委員)

3.韓米・豪米FTA から学ぶことは何か?

2011 年11 月に韓国国会で強行採決され、2012 年1 月発効予定の韓米FTA の第5 章「医薬品・医療機器」の妥結内容は、米国が米国通商代表部の「外国貿易障壁報告書」等を通して日本に要求してきたことと酷似しており、これを初めて読んだとき「ホラーストーリー」と感じた。それもそのはずで、韓米FTA では、米国の強い要求により、従来知的財産権保護の国際基準とされていたWTO のTRIPS(知的財産権の貿易的側面に関する協定)を大きく超える保護水準(TRIPS プラス)が設定されている。

一番驚いたのは、米国の製薬企業が韓国政府の定めた医薬品・医療機器の償還価格に不満がある場合は、政府(本省=保健福祉部だけでなく、健康保険審査評価院、国民健康保険公団も含む)から独立した「医薬品・医療機器委員会」に異議申し立てできることになったことである。。上記「中立派」の研究者も、これは韓国政府の社会保険政策に対する外国企業の干渉の可能性を内包していると危惧している。しかも、内閣官房等が10 月に発表した「TPP 協定交渉の分野別状況」、および外務省が11 月に発表した「TPP 協定により我が国が確保したい主なルール」は、「医薬品分野に関する[同様の―二木]規定が置かれる可能性はある」と認めている(ISD条項と共に、この「医薬品・医療機器委員会」が重要で、”手軽な仕組みで、企業側からの異議申し立て乱発”の可能性がある)

(二木氏は、TPP反対運動の効用が続けば、少なくとも医療・医薬品分野に関しては、米国が求める水準より相当抑制的なものになる可能性がある。”と楽観視)

豪米FTA”では、“米国政府は米国の製薬団体(PhRMA12)の要求に基づいて、オーストラリア独自の「医薬品給付制度」(PBS、その核心は費用対効果の評価に基づいた医薬品価格の抑制)の廃止を執拗に求めたが、オーストラリア政府が最終的に拒否したため、PBS の根幹は守られた”
(TPPでこれがそのままという保証はない。)
・・・・
“PBS リストに掲載される医薬品に2 つの類型(F1(ブランド薬)とF2(ジェネリック薬))が設けられ、政府はF1 医薬品に対して「不相応に高額の支払いをしてきている」とされている。”

”医療の営利産業化は日米大企業の合作”
医療特区(総合特区)での株式会社の病院経営と混合診療原則解禁が認められた場合、米国資本単独ではなく、日米合作で進められるのは確実である。



はじめに ……………………………………………………………………… 1
第1章 ポスト311 の社会保障と政治 ……………(山口 二郎 委員) 4
1.3.11 の衝撃と社会保障 ………………………………………………… 4
2.政権交代以後の政治と社会保障………………………………………… 5
3.社会保障・税一体改革、TPP と今後の社会保障 ………………………… 8
第2章 TPP と今後の日本医療 …………………………(二木 立 委員) 14
1.TPP に参加したらアメリカは日本医療に何を要求してくるか?
………………………………… 15
2.アメリカの第1 段階の要求が実現したら何が生じるか?……………… 17
3.韓米・豪米FTA から学ぶことは何か? …………………………………… 19
4.TPP について検討する際見落としてならない2 つのこととは?……… 23
第3章 医療の営利産業化より医療関連産業の強化を
……………………(桐野 髙明 委員) 25
1.医療そのものの営利産業化 ……………………………………………… 26
2.製薬産業や医療機器産業を活性化する ………………………………… 28
3.皆保険制度のもとの医療関連産業の活性化 …………………………… 29
4.まとめ …………………………………………………………………… 32
第4章 医療保障政策と医療団体の政治経済学的位置
………………………(権丈 善一委員) 33
1.合成の誤謬と自由放任の終焉 ……………………………………………… 33
2.合成の誤謬に基づく政策に抗う経済界 …………………………………… 41
3.資本主義的民主主義の中での医療政策 …………………………………… 44
4.経済界のプロパガンダと規制緩和圧力 …………………………………… 45
5.資本主義的民主主義と対日圧力 …………………………………………… 48
6.成長政策と戦略的貿易論 …………………………………………………… 49
7.イノベーションと経済政策 ………………………………………………… 52
8.付加価値生産性と物的生産性 ……………………………………………… 56
9.福祉国家を支える集団としての医療界に求められるもの ……………… 57
おわりに ……………………………………………………………………… 60
付録(講演録)
1.「産業化」の意味を考える
-会長諮問を討議するにあたっての共通基盤を築くために- ……… 67
2.医療を営利産業化させていいのか………………………………………… 83
3.医療を営利産業化させていいのか-4 つの話題提供- ………………… 91
4.ポスト大震災の社会保障 ………………………………………………… 105
5.無政府状態下の日本の財政・社会保障
-2015 年を目標とした一体改革成案「一里塚」の意味- …………… 123
6.医療保険財政と医療の産業化…………………………………………… 155
7.公的医療保障制度と民間医療保険に関する国際比較
-公私財源の役割分担とその機能- …………………………………… 175



今の政権は、あの小泉時代を再現し、さらに、悪化させようとしている。


企業収益は増加したが、勤労者へ配分しなかった小泉政権時代 (2001年から2006年)




20歳前後から上、35歳から55歳までの世代でこの間の貧困率増加が目立つ。










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