2013年2月26日火曜日

患者不安払拭のための検査は、結局、不安解消につながらない

「安心のため、検査、一応やっときましょう」・・・という医師サイドの言葉が今日も日本全国各地で発せられてることだろう。

この安心効果は、医師たちの過剰評価であった。

重篤な疾患といえば、がんとか、脳動脈瘤・動脈解離とか・・・数限りない疾患がある。
「頭痛、即、頭部CT・MRI」 、「体重減少、即、全身のがん検査」、「背部痛、即、腹部CT検査」など、医療コスト増大に直結している、検査前確率低いのに行われる、患者を安心させるためだけの検査

はたして、そういう検査は、患者自身の安心につながるのだろうか?

検査前確率の低い検査は患者の恐怖感・不安感除去につながらず、検査直結兆候は持続するという報告

"Reassurance after diagnostic testing with a low pretest probability of serious disease: systematic review and meta-analysis"
Alexandra Rolfe, et. al.
JAMA Intern Med 2013; DOI: 10.1001/jamainternmed.2013.2762.

【序文】  診断除外や患者の安心のために、事前確率が低い状況なのに、診断検査のオーダーがなされる

【目的】 重大疾患事前確率の低い患者において、疾患への恐れ、不安、兆候持続、医療リソース継続使用についての診断検査の与える影響について調査

【エビデンス取得】 システマティック・レビューとメタアナリシス
MEDLINE、 Cochrane Central Register of Controlled Trials、 EMBASE、 PsychINFO、 CINAHL、 ProQuest Dissertations electronic database (2011年12月31まで)
heterogeneity I2 <50 p="">
【結果】 14のRCT(登録クライテリア合致 3828名)、短期(3ヶ月以下)もしくは長期(3ヶ月超)にカテゴライズし解析

3つのトライアルで、診断検査施行の包括的影響は、疾患への恐れに関して影響を与えない( 0.87 [95% 信頼区間[CI], 0.55-1.39)
2つのトライアルでは、非特異的不安に対して影響を与えない (標準化差平均  0.06 [−0.16 〜 0.28])

10のトライアルで、兆候持続への長期的影響に関しても存在認めず   (オッズ比, 0.99 [95% CI, 0.85-1.15])

11トライアル では、プライマリケア受診継続具合を評価。トライアルにおけるheterogeneityレベル高い状況であった(I2=80%)

outlier除外後のメタアナリシスでは、検査後軽度受診減少が見られた (オッズ比, 0.77 [95% CI, 0.62-0.96]).

【結論・新知見】 重篤疾患リスクの少ない状況での兆候のための診断検査は、患者に安心感を与える程度は少なく、不安減少効果も乏しく、書状改善にもつながらない。
だが、ひょっとしたら、プライマリケア受診数を減少させているのかもしれない。

医学的に必要な検査で最大の安心感を得るための研究が必要で、検査異常ありそうもない場合に検査せずにすむ安全性戦略開発が必要 


解説記事
・Measuring Diagnostic Errors in Primary Care
Comment on “Types and Origins of Diagnostic Errors in Primary Care Settings”
JAMA Intern Med. 2013;():1-2. doi:10.1001/jamainternmed.2013.225.

。"Diagnostic testing and the illusory reassurance of normal results"
Kurt Kroenke 
JAMA Intern Med 2013; DOI: 10.1001/jamainternmed.2013.11.


プライマリケア受診回数を減らすかもしれないというプラスの効果の可能性は評価しなければならないのかもしれない。
「検査所見陰性」という除外所見を提示すると、 患者さんが納得するのかもしれない(LR- という認識がないため・・・検査陰性=疾患の否定という勘違い故かもしれない)

がん関連兆候がないのに、「がんが心配だから検査をしてくれ 」というのは、過剰検査で保険適応外。
ところが、「隣のおじさんが膵臓がんで亡くなった。糖尿病が急激に悪化し、体重減少し、背部痛を常に訴えた」という心配の上 に、本人も体重減少・糖尿病、深刻でない程度の背部痛であれば、微妙。 言下に否定すれば、誤診につながることもある。 どの程度で折り合いをつけるかが、臨床上の実力とも関連するのだろう。
世の中には、セカンドオピニオンなる言葉を誤解・曲解し、 他の医療機関受診を隠し多くの医療機関受診を繰り返し、各種検査・重複検査を繰り返す場合もある。そういう検査では、自己満足はいつまでも得られない・・・上記知見からもそれが支持される。

0 件のコメント:

コメントを投稿

noteへ実験的移行

禁煙はお早めに! 米国における人種・民族・性別による喫煙・禁煙での死亡率相違|Makisey|note 日常生活内の小さな身体活動の積み重ねが健康ベネフィットをもたらす:VILPA|Makisey|note