2013年12月26日木曜日

【記憶固定理論のヒトでの証明】うつ患者において電気痙攣療法は悪い記憶を消滅させる

 欲しない記憶を消し去る、ショック療法の現実社会での適応で、PTSDや大うつで残された傷を回復する手段として利用できないか?

記 憶形成に関する、現在のセオリーは、記憶形成作業と、後の想起のためのストアリング(蓄積作業)とに、薄いwindowが存在し、このスペース内で電気痙攣療法(ECT)が、その再構成プロセスを中断させ、挿入された記憶を補填したり、緩和したりする

http://www.nature.com/news/zapping-the-brain-can-help-to-spot-clean-nasty-memories-1.14431

42名の被験者で、『エターナル・サンシャイン』(原題: Eternal Sunshine of the Spotless Mind)』を思い起こすこのセオリーの検証。不幸な恋人たちが互いの記憶を消し合う治療をうける。

ECTは、ネガティブな記憶を特異的に消し去るということを示した。

記憶固定理論:
 http://gcoe.tamagawa.ac.jp/jpn/report/systems_reconsolidation_and_the_active_nature_of_memory_maintenancekarim_nader_1.html

Reconsolidationは、一度は長期記憶として安定化した記憶が想起されることにより不安定な状態になり、そして再び安定な状態に戻る神経システムを意味する。心理学では長い間、記憶というのはEncodingされ、Short term memory(STM)として一時的に保持された後、それが固定化(Consolidation)され、一度Long term memory (LTM)として安定した後にはその情報は忘却されない限り安定した状態のままであると考えられてきた。しかしながら、・・・長期記憶化した情報は想起されることで再びモジュレーションを受け、想起したときに得られる新しい情報を古い記憶中に組み込む・・・ことが明らかとなった。・・長期記憶に関する他の脳領域でも起こりうると考え、Hippocampusで作られLTMとなるに従って情報が移行されると考えられているAnterior cingulate cortex (ACC)についても研究を行っている。・・・Dorsal Hippocampus (dHC)で作られた情報はconsolidationによってACCに移行するが、reactivationすることによって再びdHCに戻ってくるというシステムとしてのreconsolidationを仮説として提唱・・・reconsolidationのような記憶固定化後のモジュレーションがシナプスレベルだけでなく、各脳領域間のインタラクションとしても起こっている・・・
記憶固定化は、まず、メンタルストレージとして扱われ、時間と共に、脳の回路に“再書き込み”を行う。動物実験では、その機構は示されているが、人間では示されてなかった。

 Kroesらは、2つの不快にするようなスライドショー物語(一つは、自動車事故、もう一つは身体的暴力)を提示し、、その後1つの物語の回想に関する質問を行う


 チームは後に、スライドショーの最プレイを行いストーリーの一部を想起させ、その後速攻、記憶を再活性化し、vulnerableな状況となっていると想定し、そこで、ECTを行う。 1日後に、多選択記憶試験を行い、患者は、再活性化ストーリーの記憶された詳細は有意に悪化し、near chanceパフォーマンス悪化を示した。片方のストーリー記憶は、ほぼ無傷で温存。
 ECT治療90分後の記憶検証を行うと、2つのストーリー想起能力に差は認めなかった。

 これは、記憶再固定化の時間依存的プロセスを示し、突然の記憶喪失というわけではないことを意味する。ヒトの脳で再固定化がなされることの強い確固たるエビデンスとなり、『A Window of Oppotunity』が存在し、悪い記憶治療のチャンスとなる時間帯の存在を意味する。


 記憶再固定化がなされる時間依存的windowは、即時的想起では生じない。ECTは、記憶喪失を生じるのではなく、長期記憶をストップさせることに関与する。


An electroconvulsive therapy procedure impairs reconsolidation of episodic memories in humans
Marijn C W Kroes, et. al.
Nature Neuroscience (2013) doi:10.1038/nn.3609
Received 09 September 2013 Accepted 26 November 2013 
Published online 22 December 2013




グルタミン酸受容体とノルアドレナリン受容体の記憶再固定化での働き

Key molecular mechanisms of memory reconsolidation.



神経伝達物質としてβアドレナリン受容体  (beta-AR)70, 71, 87, 88, 89, 90とNMDARs9, 60, 91, 92, 93 (N-methyl-D-aspartate receptors)あたりがターゲット。分子的なシグナリング・カスケードはこれらの受容体の下流にて再固定化との関連性を示す。Ras、Raf、RapのようなGTPaseが、Ca2+流入にて活性化され、細胞外シグナル調整キナーゼ経路(ERK)8, 46, 47, 48, 94を活性化する。
Protein kinase A (PKA)6, 49, 50はcyclic AMP (cAMP) により活性化され、 直接、間接的に、ERKやリボソーム蛋白S6kinase(RSK)に働く、そして、cAMP反応エレメント結合蛋白(CREB)15, 37, 38, zinc finger 268 (ZIF268) (Refs 41–45, 51, 52) とELK1 (Ref. 38)を含むtranscription factor活性を、遺伝子翻訳開始時に生じる。c-FosおよびJunB37, 38, 53, 54, 55という即時早期遺伝子は、記憶想起中活性化し、CCAAT-enhancing binding protein-b (C/EBPbeta)30, 34が必要となる・・・
Figure modified, with permission, from Nature Reviews Neuroscience ref. 76 © (2001) Macmillan Publishers Ltd.

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