2020年8月21日金曜日

気管支拡張でも血中好酸球増加群では吸入ステロイド効果有り?


主な所見は

1)気管支拡張症のうち、好酸球数 3%以上 or 150 細胞数以上/μLの成人例サブグループにおいて6ヶ月FP(フルチカゾン・プロピオン酸)吸入治療によりQOL有意に改善

2)アウトカム改善は、好酸球増加(好酸球 3%以上 or 150 細胞数以上/μL)でFP投与されてない症例でも、好酸球増加してない(好酸球 3%未満 or 150 細胞数未満/μL)もしくはFP投与されてない症例でも、観察されなかった

3) 好酸球数 3%以上 or 150 細胞数以上/μLで、FP治療された患者のQoL統計学的有意改善は、非喘息・非COPDのいわばpureな気管支拡張症でも確認された

4) 比率差において好酸球数が3%以上または150個/uL以上でFPを投与した患者では、統計学的には有意ではないが、FPを投与しなかった患者と比較して増悪率の低下という点で差が観られた。


Blood eosinophils predict inhaled fluticasone response in bronchiectasis

Stefano Aliberti,  et al.

European Respiratory Journal 2020 56: 2000453; 

DOI: 10.1183/13993003.00453-2020

https://erj.ersjournals.com/content/56/2/2000453


血中好酸球数が高い気管支拡張症患者には、臨床的に意義のある QoL の改善という点で ICS の効果があるのではないかと仮説を立て、気管支拡張症患者における ICS の QoL への影響を評価することを目的とした無作為化二重盲検対照試験の無計画な事後分析を実施


臨床的にも放射線学的にも有意な気管支拡張症の成人がスペインの単一施設に登録

嚢胞性線維症を有する患者、喘息やABPAを併発している患者は除外した。安定した臨床状態の患者(増悪から4週間後)を対象に,250μg×2回/日または500μg×2回/日の吸入型フルチカゾンプロピオン酸塩(FP)を6ヵ月間投与する群と,無投与群に無作為に割り付け

主要評価項目は,6ヵ月間の治療後のSt. George's Respiratory Questionnaire(SGRQ)スコアの臨床的に有意な変化(4点以上)

ベースライン時の血中好酸球の割合(3%未満:低血中好酸球-低Eos群vs.≧3%:高血中好酸球)を基準に4群を検討

気管支拡張症研究における好酸球のカットオフ値の科学的根拠が乏しいことから、コホートでは好酸球数の3%を任意のパーセンテージの中央値とした

好酸球数の絶対値のカットオフ値150 cells/uLを用いて同様の解析を行った(<150 cells/uL:低Eos群 vs.≧150 cells/uL:高Eos群)

COPDと診断された患者を除外して感度解析を行ったところ、当初登録された86名のうち、High Eos群42名(48.8%)、Low Eos群44名(51.2%)であった。High Eos群では13例(31.0%)が治療を受けなかったが、29例(69.1%)がFPを投与された。

低Eos群では16人(36.4%)が治療を受けていないのに対し、FPは28人(63.6%)が治療を受けていた。ベースライン時の4群間では,年齢,性別,FP投与,SGRQ値に統計学的に有意な差は認められなかった


試験集団全体のうち、高Eos群では、FP投与6ヶ月後のSGRQの統計学的に有意な低下(4ポイント以上)が認められた[15(51.7%)VS. 高Eos群では,SGRQ総変化量の中央値(IQR)は,FP投与群で-4.1(-9.7;0.4),非投与群で-1.6(0.7;3.1)であった(p値:0.002)

高Eos群では、フォローアップ3ヵ月後の時点でmMRC尺度が3-4の人の割合がFP非投与群で有意に高く(23.1% vs. 0.0%;p値:0.03)、増悪率はFP非投与群の方が高いことが示された。

6ヵ月後の平均FEV1はHighE群では統計学的に有意な差は認められなかった。

LowE群では,FP投与群とプラセボ群を比較しても,QoLの統計学的に有意な改善は認められなかった[10例(37.0%)vs. 1例(6.7%),p値=0.06]。

LowE群における増悪率、6ヵ月後の平均FEV1、MRC3~4の割合には統計学的に有意な差は認められなかった。

また,COPDを併発している患者を除外して感度解析を行った結果,上記所見を確認した(High Eos群でSGRQ≧4点の変化。高エオス群におけるSGRQ≧4点の変化率:FP投与群47.4% vs.プラセボ投与群0.0%)を確認した。対プラセボ投与群では0.0%、p値0.03)。)

COPD患者を除外したHigh Eos群では,SGRQの総変化量中央値は,FP投与群vs.非投与群で-3.7(-8.5; +5.0)vs.1(+0.4; +2.7)であった(p値=0.02).

好酸球絶対数の150cells/uLカットオフを用いて,高Eos群(≧150cells/uL,n=63名)では,FP投与6ヶ月後のSGRQの統計学的に有意な低下(≧4点)が認められた[21名(47.7%)vs. 0名(0.0%),p値=0.0001]。

 高Eos群では、SGRQ総変化の中央値(IQR)は、FP投与群では-3.1(-8.9;2.8)、FP非投与群では-1.6(0.4;4.2)であった(p値=0.003)。

低Eos群(<150 cells/uL; n=23人)では,SGRQの低下(≧4点)またはSGRQの総変化量の中央値(IQR)の有意差は,対Eos群とFP非投与群との間には認められなかった.

COPD併存の患者除外ベースの感度分析では、上記所見(High Eos群:sGRQ 4点以上の変化: FP群 47.4% vs プラシーボ 0.0% p-値 0.03)

COPD患者除外後、SGRQ中央値total changeは FP治療群 vs 無治療群  -3.7(-8.5; +5.0) vs +1(+0.4; +2.7) (p-value=0.02)

好酸球絶対数の150cells/uLカットオフを用いて,高Eos群(≧150cells/uL,n=63名)では,FP投与6ヶ月後のSGRQの統計学的に有意な低下(≧4点)が認められた[21名(47.7%)vs. 0名(0.0%),p値=0.0001]。

 高Eos群では、SGRQ総変化の中央値(IQR)は、FP投与群では-3.1(-8.9;2.8)、FP非投与群では-1.6(0.4;4.2)であった(p値=0.003)。

低Eos群(<150 cells/uL; n=23人)では,SGRQの低下(≧4点)またはSGRQの総変化量の中央値(IQR)の有意差は,対Eos群とFP非投与群との間には認められなかった.

また,COPDを併発している患者を除外して感度解析を行った結果,高Eos群(≧150 cells/uL)のSGRQ≧4点の変化率は,FP投与群では43.3%,プラセボ投与群では0.0%であった。プラセボ投与群では0.0%、(p値=0.002)

 COPD患者を除外した高Eos群(150cells/uL以上)では,SGRQ総変化量中央値は-1.1(-8.5;+3.5)vs.プラセボ群では+1(+0.1;+3.5) FP投与群vs.非投与群では+1(+0.1; +4.2)(p値=0.03)。




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