2018年6月15日金曜日

E-LIFTトライアル:エンパグリフロジンの非アルコール性脂肪肝疾患改善効果

 2型糖尿病合併症としてNAFLDは存在するが、NAFLD(非アルコール性脂肪肝疾患)は線維化、肝硬変、肝臓癌への進行の可能性有り、肝外合併症として心血管疾患、2型糖尿病、慢性腎臓病(CKD)などの独立したリスク要素。

 動物モデルで認められたSGLT2阻害剤のNAFLDへの効果確認


Effect of Empagliflozin on Liver Fat in Patients With Type 2 Diabetes and Nonalcoholic Fatty Liver Disease: A Randomized Controlled Trial (E-LIFT Trial)
Diabetes Care 2018 Jun; dc180165. 
https://doi.org/10.2337/dc18-0165Abstract


目的 Sodium-glucose cotransporter 2 (SGLT-2) inhibitor:SGLT2阻害剤は齧歯類モデルで脂肪肝減少報告。ヒトの脂肪肝へのSGLT-2阻害剤の効果に関するデータは稀。2型糖尿病・非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)患者のエンパグリフロジン(SGLT2阻害剤)の脂肪肝への影響をMRI-derived proton density fat fraction (MRI-PDFF)で検討


研究デザイン・方法 2型糖尿病・NAFLD 50名、ランダム割り付け(エンパグリフロジン 10mg/日) or 対照(エンパグリフロジンなしの標準治療)20週間。
MRI-PDFFによる脂肪肝量の変化評価
セカンダリアウトカムはALT、AST、GGT値の変化量


結果 2型糖尿病患者標準治療を含めると、エンパグリフロジンは肝臓脂肪量減少効果有意 (エンパグリフロジン vs 対照群 -4.0% ; P< 0.0001)

ベースライン比較して、エンパグリフロジン群では、治療終了時点でのMRI-PDFFで有意差  (16.2–11.3%; P < 0.0001)あるも、対照群では有意差みとめず  (16.4–15.5%; P = 0.057)




 2群ではALT値有意差あり (P = 0.005)   AST (P = 0.212) と GGT (P = 0.057) 値では有意差無し


結論 2型糖尿病・NAFLD症例において、2型糖尿病患者標準治療を含めると、エンパグリフロジンは肝臓脂肪量を減少し、ALT値を改善する

2型糖尿病と息切れ・拘束性肺障害、線維化間質性肺病変の関連性

2型糖尿病患者において原因不明の息切れに多く遭遇するのは私だけ?・・・と思ってたが、どうも普遍的な現象が存在するのかもしれない




Breathlessness and Restrictive Lung Disease: An Important Diabetes-Related Feature in Patients with Type 2 Diabetes
Respiration https://doi.org/10.1159/000488909
https://www.karger.com/Article/Abstract/488909

糖尿病前症・2型糖尿病(T2D)患者において、拘束性肺障害(RLD)および間質性肺疾患(ILD)の発生率解析し、T2Dでは息切れ、RLD有病率高いことが示され、糖尿病と線維性ILDとの関連性示唆


糖尿病でない対照 48名、糖尿病前症 68名、心筋診断T2D 29名、長期T2D 110名比較
代謝コントロール、糖尿病県連合併症、息切れ、肺機能比較
MDCT、6分間歩行距離(6MWT)を各々5名ずつ検討

糖尿病前症・T2Dでは有意にRLD併存下時、息切れ増加
RLD有病率、糖尿病前症患者 9%、新規診断T2D 20%、長期T2D 27%で存在
RLDのリスク増加は長期T2Dで多く観察  (OR 5.82 [95% CI 1.71–20.5], p < 0.01)

RLDと糖代謝・アルブミン尿との相関性が示された p < 0.01
さらに、腎症の存在がRLDリスク増加と関連 (OR 8.57 [95% CI 3.4–21.9], p < 0.01) vs 非糖尿病

MDCTにおいて、ILDは4名の患者に存在し、6MwTはILDの広がりと相関し、T2D患者では線維化ILDの存在と相関する







米国では息切れの訴えは一般診療において25%程度、冠動脈性心疾患や心不全など心疾患由来は11%程度、他、急性慢性肺疾患が主な息切れの理由となる。主に喫煙原因のCOPDに加え、拘束性肺障害(restrictive lung disease : RLD)、例えば線維化間質性肺炎:fibrosing ILDがその原因として10万人年あたり19.36−34.34とされ比較的稀ははず。
デンマークでは非特異的線維性病変は 一般住民で7.5%も存在するとされ、定義や検査法などばらつきがあり、頻度報告もバラバラというのが実態だろう。
結合織疾患や過敏性肺臓炎、特発性間質性肺炎など原因がある。特発性肺線維症などは線維化を導く炎症性プロセス活性化を伴う持続性の上皮微小障害が病態の一つで、糖尿病関連プロセスでも存在する変化で、実際、T2Dにおける特発性肺線維症の予後悪化が報告されている。

参考:Front Med (Lausanne). 2017; 4: 123.
Case–control analyses performed in Japan, Mexico, and the U.K. estimated the prevalence of DM type 2 to be 10–33%, among individuals with IPF, which was significantly higher than that of matched control populations (18, 93, 113). These findings persisted after exclusion of individuals treated with systemic corticosteroid therapy, which is known to alter glucose levels (18, 93). Outcome data were not reported in these studies, so it remains unclear whether the presence of DM influences survival in patients with IPF.

肺機能上の拘束性障害だけでなく、息切れにまで検討拡大したことが意義深い報告だと思う

2018年6月14日木曜日

アルツハイマー病:エクソームの役割 治療可能性

exosomeは単なる老廃物のゴミ袋と思われていたが、情報伝達を行う仕組みがあり蛋白や遺伝子産物を他の細胞が吸収することができる。
アミロイドβ蛋白の毒性凝集体 toxic oligomerを運搬し、新しいニューロンへばらまく、そういう仕組みがある可能性を報告
さらには、exosome形成、放出、他の細胞への取りこみのそれぞれの阻害物質を検討した

Alzheimer’s disease pathology propagation by exosomes containing toxic amyloid-beta oligomers. Acta Neuropathologica, 2018; DOI: 10.1007/s00401-018-1868-1
https://link.springer.com/article/10.1007%2Fs00401-018-1868-1

ニコチンパッチ事前使用によるバレニクリニン禁煙効果上乗せ明確にならず

"ニコチンpreloading"とは、長期禁煙率向上のため禁煙前に4週間ニコチンパッチを使用 狙いとしてはタバコ希求強度を低めて、バレニクリニンの効果を増加しようというもの


craving instensity(タバコ希求強度)を減少させ、禁煙の潤滑化するように思えるが、バレニクリニンの効果によりマスクされたとの筆者等の分析


The Preloading Investigators. Effects on abstinence of nicotine patch treatment before quitting smoking: parallel, two arm, pragmatic randomised trial.
BMJ, 2018 DOI: 10.1136/bmj.k2164





研究デザインがまずかったのか?

バレニクリン使用率がニコチンパッチ事前使用群より通常治療群で高率という状況




mMRC1-2程度の軽症COPD患者自己管理システムは一部有効らしい

mMRC1-2程度の軽症COPD患者自己管理システムは一部有効らしい

自己管理を勧める電話コールシステムは通常ケアを補完してくれるらしい



イギリス4地域 多センターRCT、71GP、577名MRCスケール 1-2の軽度症状COPD症例
Social Cognitive Theoryを根拠とする電話健康コーチング介入(看護師);内容としては禁煙サービスアクセス化、身体活動性促進、薬物管理、action planning(11週間4セッション、16週・24週めに郵送)
主要アウトカムは12ヶ月時点健康関連QOL(SGRQ-C評価) 
予定電話コール 86%、全電話呼応比率 75% 
  • 主要アウトカムである12ヶ月時点AGRQ-Cトータルスコアに差を認めず (平均差 −1.3,95% 信頼区間 -3.6 - 0.9, p=0.23)
  • 通常ケアに比べ6ヶ月フォローアップ時点で、介入群での身体活動増加、ケアプラン遂行率高く(44% v 30%) 、抗生剤レスキューパック(37% v 29%)、吸入使用テクニックチェック(68% v 55%)高かった

Self management of patients with mild COPD in primary care: randomised controlled trial
BMJ 2018; 361 doi: https://doi.org/10.1136/bmj.k2241 (Published 13 June 2018)


2018年6月13日水曜日

USPSTFステートメント:心電図による心血管疾患スクリーニング

2つの推奨
  • The USPSTF recommends against screening with resting or exercise ECG to prevent CVD events in asymptomatic adults at low risk of CVD events. (D recommendation) 
  • The USPSTF concludes that the current evidence is insufficient to assess the balance of benefits and harms of screening with resting or exercise ECG to prevent CVD events in asymptomatic adults at intermediate or high risk of CVD events. (I statement)

心血管疾患低リスク成人において、心血管疾患イベント予防のため、安静時心電図・運動負荷心電図によるスクリーニング施行を推奨しない
また、中等度・高リスク対象者に、心血管疾患イベント予防のため、安静時あるいは運動負荷心電図によるスクリーニングするこのとのベネフィット・有害性バランス評価不十分





低リスク無症候対象者に対して標準リスク評価として心電図のスクリーニング施行に反対する(recommend against)と表現しているわけだが、 さらにエビデンス・レポート、システマティック・レビューに記載
糖尿病を除く無症候性の場合、例え高リスクであっても、運動負荷心電図スクリーニングによる健康アウトカム改善効果は望めない

また、
安静心電図に、従来のリスク要素を追加した再分類はできるが、その判別効果の意義は限定的な可能性があり、エビデンスが不十分。スクリーニング有害性頻度は未だ不明。
との結論




無症状成人からの心血管疾患リスクをスクリーニングすることのエビデンス・レビュー

Screening for Cardiovascular Disease Risk With Resting or Exercise Electrocardiography
Evidence Report and Systematic Review for the US Preventive Services Task Force
JAMA. 2018;319(22):2315-2328. doi:10.1001/jama.2018.6897
US Preventive Services Task Force Evidence Report June 12, 2018

16研究, n=77,140

糖尿病患者、50-75歳対象の心血管組み合わせプライマリ・アウトカムに対する2つのRCT, n=1151で、運動負荷心電図 (vs no screen)でのスクリーニング有意改善認めず(各々のハザード比, 1.00 [95% CI, 0.59-1.71] 、0.85 [95% CI, 0.39-1.84] )


安静時心電図でのスクリーニング評価RCT無し


5つのコホート研究,n=9582にて、 通常のリスク要素、例えば、年齢・性差・現行喫煙・糖尿病・総コレステロール・HDL値で、判別性に改善効果は少ないが存在  (3研究報告; 曲線下面積、C統計値の絶対的改善 , 0.02-0.03)
キャリブレーション、適正リスク分類で改善するかは不明


9つのコホート研究, n=66,407にて、多くの心血管アウトカム予測に関する、安静時心電図に追加的に従来のリスク要素や適正リスク分類付加することでは判別性改善効果少ないが存在 (曲線下面積、C統計値の絶対的改善 , 0.001-0.05) 、しかしエビデンスとしては正確性、研究の質、考慮すべきheterogeneityにより不十分で、臨床的意志決定に使う上ではリスク閾値として一致していない


Total net reclassificationとしては Framingham Risk Score or Pooled Cohort Equations base modelにより、3.6%から30%へ改善する


無症候の対象者において、血管造影・血管再建術などによる寄与有害性のエビデンスは 限定的



日本の検診でも少しずつ科学的エビデンスとやらが導入されつつあるが、住民・職域検診などはまだまだ非科学性の集大成。
→ e.g. http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12401000-Hokenkyoku-Soumuka/0000129998.pdf

功利性がわかってないやつらが行政を主導しているもんだから、無駄・無益、有害性を具有する施策がまかり通る日本の行政


日本では、住民検診・職域検診や臨床の場で、虚血性心疾患発見目的でなのか、意義の分からない安静時心電図がなされる場面があるが、心血管疾患リスクスクリーニングとしてのエビデンス不十分ということを周知する必要がある・・・私個人は日本の行政に嫌気しか覚えない


ところで、不整脈など他の疾患発見の意義に関してはこの報告は触れられてないことも注意が必要。


2018年6月12日火曜日

安定期心不全でのビタミンB12値の意味I

安定期心不全患者において、ビタミンB12高値の評価は、直接ビリルビン値とともに解釈しましょう
ひょっとしたら、cardiohepatic syndromeを示唆しているに過ぎない可能性があるから・・・


Elevated levels of vitamin B12 in chronic stable heart failure: a marker for subclinical liver damage and impaired prognosis
Therapeutics and Clinical Risk Management  2018:14 Pages 1067—1073
DOI https://doi.org/10.2147/TCRM.S164200

心不全129名連続患者と対照 50名比較

ベースラインビタミンB12値は右心不全有無にかかわらず有意に対照より高値
(心不全有り・右心不全無し 311 vs 心不全有り・右心不全無し 235 vs 対照 198 pg/mL)

葉酸は両群同様

単変量解析にて、年齢、駆出率、左房サイズ、推定GFR、直接・関節ビリルビン濃度は有意にビタミンB12濃度と相関

多変量解析にて、ビタミンB12値と独立相関因子は直接ビリルビン (R 0.51 , p < 0.01、年齢 R 0.19 P < 0.028)

ビタミンB12中央値はその後生存比較で死亡者では高値
葉酸では差を認めない




ROC解析にて ビタミンB12値 270 pg/mL以上で全死亡率推定感度 80%、特異度 58% (曲線下面積 0.67, 95% CI 0.562-0.781 p=0.003)

しかし、Cox回帰分析にて、左房径、直接ビリルビン、abdominaojugular reflexの存在のみが死亡予測要素



結論:ビタミンB12増加は心不全安定期患者において、右心不全に基づく直接ビリルビン増加と相関し、cardiohepatic syndromeを示唆する。しかし、ビタミンB12値も葉酸値も死亡と関連せず




noteへ実験的移行

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