2026年7月12日日曜日

成人不明熱に対する現代的な外来アプローチ:最新レビュー

 

State-of-the-Art Review: Contemporary Ambulatory Approach to Adult Fever of Unknown Origin 

https://academic.oup.com/cid/article/82/6/909/8726777

原因不明の発熱(FUO)を抱える免疫不全でない成人患者に対し、現代の通院診療における診断アプローチを詳細に解説したレビュー論文です。主な内容は、2024年のデルファイ・コンセンサスに基づいた新しい診断基準の定義や、感染症、自己炎症性疾患、腫瘍といった主要な原因疾患の分類に焦点を当てています。地域や経済状況による疾患傾向の違いを分析しつつ、病歴聴取や身体診察から得られる診断の手がかり(PDC)を体系化し、段階的な検査手順を提示しています。また、血液培養や核医学検査などの最新技術の役割にも触れ、多角的な視点から現代的な臨床指針を構築しています。最終的に、根拠のない経験的治療を避け、共通の定義に基づいた効率的な評価を行うための新たなパラダイムシフトを提唱しています。






不明熱(FUO)診断の羅針盤:系統的6ステップと潜在的診断手がかり(PDC)の活用
1. はじめに:不明熱(FUO)の再定義と現代的アプローチ

臨床医にとって、原因不明のまま続く発熱は最も知的好奇心と忍耐を要求される領域です。これを「不明熱(FUO: Fever of Unknown Origin)」と呼びますが、2024年のDelphiコンセンサスにより、その定義は現代の診療実態に即して厳密に再定義されました。

初学者が陥りやすい罠は、安易に「なかなか下がらない熱」をFUOと呼んでしまうことです。最新の基準では、単なる時間経過だけでなく「質の高い初期的評価」の完了が必須条件となっています。

不明熱定義の変遷:1961年から2024年へ

項目
Petersdorf & Beeson (1961年)
最新のDelphiコンセンサス (2024年)
温度閾値
38.3°C(101.0°F)以上
38.3°C(100.9°F)以上
発熱回数
数回
3回を超える(>3 occasions)
期間
3週間以上
3週間以上
診断の不確実性
入院精査で1週間経過しても不明
「最低限必要な検査項目」を完了しても不明
対象患者
特に限定なし
免疫能が正常な成人に限定


診断上の意義:なぜ「ただの熱」と区別するのか?

  • 診断的スチュワードシップの確立: 定義にある「最低限必要な検査項目(後述)」を確実に遂行することで、診断の質を平準化し、早期の専門医介入を促します。
  • 不必要な入院の回避: 現代の診断技術(PET/CT等)を駆使すれば、入院を待たずとも外来(Ambulatory)ベースで精緻な評価が可能です。
  • 「診断未確定」という予後情報の活用: 厳密な定義を満たした上で診断がつかない症例は、むしろ予後が良好(自然軽快の可能性が高い)という科学的事実を患者に提示できます。
不明熱を攻略する第一歩は、闇雲にレアケースを追うことではありません。まずは、原因の多くを占める「5つのカテゴリー」を俯瞰することから始めましょう。


2. 敵を知る:不明熱を構成する5つの疾患カテゴリー

不明熱の原因は多岐にわたりますが、論理的推論を維持するためには以下の5つの主要カテゴリーに分類して考えるのが定石です。

疾患カテゴリーの分布と特性

最新の国際共同研究(ID-IRI等)によると、疾患の内訳は以下の通りです。

  1. 感染症 (約52%): 依然として最大勢力です。結核(Mtb)、ブルセラ症、感染性心内膜炎、膿瘍などが代表的です。
  2. 非感染性炎症性疾患 (NIID) (9~26%): 高所得国で増加傾向にあります。成人スチル病、巨細胞性動脈炎(GCA)、自己炎症性疾患が含まれます。
  3. 腫瘍性疾患 (約11%): リンパ腫が圧倒的に多く、白血病や多発性骨髄腫、固形癌が続きます。
  4. その他 (約8%): 薬剤熱、甲状腺疾患(亜急性甲状腺炎など)、血栓塞栓症、詐熱。
  5. 診断未確定 (約20%): 質の高い検査を尽くしても到達できない層が存在します。

地理的要因がもたらすバイアス

患者の居住地や旅行歴は、推論の優先順位を劇的に変えます。

  • 東南アジア・南アジア: 結核が圧倒的(34.3%)であり、腸チフスや内臓リーシュマニア症も視野に入ります。
  • 地中海沿岸・中東: ブルセラ症や家族性地中海熱(FMF)の頻度が極めて高い地域です。
  • 高所得国(欧州など): 感染症の割合が低下し、GCAなどのNIIDの比率が上昇します。
【学習の洞察:専門医の視点】 不明熱診断の鉄則は、**「稀な疾患を探すのではなく、一般的な疾患の非典型的なプレゼンテーション(Atypical presentation)を疑う」**ことです。リンパ腫がリンパ節腫脹を伴わず発熱のみで現れる、といった事象こそが不明熱の正体です。


次に、これらの疾患を絞り込むための「羅針盤」となるPDCについて深掘りします。


3. 論理的推論の中核:潜在的な診断の手がかり(PDC)の活用術

不明熱の診断戦略とは、すなわち**PDC(Potential Diagnostic Clues)**の発見と検証の連続です。PDCとは、病歴、身体診察、初期検査から得られる、特定の疾患を想起させるあらゆる「小さなヒント」を指します。

PDCの具体例(Source Table 2より抜粋)

1. 病歴のPDC:背景に潜むリスク

  • 未殺菌乳の摂取: Q熱やブルセラ症を強く示唆します。
  • アンデス山脈への旅行歴: バルトネラ症(オロヤ熱)の重要な手がかりです。
  • 拍動性の頭痛・顎跛行: 50歳以上の患者では巨細胞性動脈炎(GCA)を疑うべきサインです。
2. 身体診察のPDC:専門医が見逃さない徴候

  • 相対的徐脈(Relative bradycardia): 発熱の割に脈拍が上がらない現象は、チフス、ブルセラ症、レプトスピラ症、あるいはオウム病などで見られます。
  • キャメルバック熱(Camel-back fever): 週に2回の発熱ピーク。ブルセラ症やレプトスピラ症で見られる古典的な発熱パターンです。
  • サーモンピンク疹: 成人スチル病の特異的な皮疹ですが、発熱時に一過性に出現するため、反復した診察が不可欠です。
3. 検査データのPDC:病態を反映する数値

  • PTH抑制を伴う高カルシウム血症: サルコイドーシスや結核などの肉芽腫性疾患において、肉芽腫組織がビタミンDを活性化(1,25-ジヒドロキシビタミンD産生)していることを示唆します。
  • 極めて高いフェリチン値(>2000 ng/mL): 成人スチル病やマクロファージ活性化症候群(MAS)の強力な指標です。
  • ALPの著明な上昇(>2100 U/L): 肝浸潤を伴う播種性結核や転移性肝癌を疑わせます。
【学習の洞察:PDCの罠】 過去の研究では、PDCの48%から最大81%が「誤導的(Misleading)」、つまり診断に結びつかなかったと報告されています。しかし、それでもPDCを追い続けなければなりません。なぜなら、PDCこそが、広大な鑑別診断という海を渡るための唯一の航路だからです。


それでは、これらの手がかりをどのように系統的なステップに組み込むべきかを見ていきましょう。


4. 実践ガイド:不明熱診断の系統的6ステップ

初学者は以下のアルゴリズムに従い、論理の迷子にならないように努めてください。

  1. ステップ1:包括的な病歴聴取と身体診察(リ・インベント) 「Step 1は一度で終わらない」ことを肝に銘じてください。新たな検査結果が出るたびに、もう一度家族歴や旅行歴、微細な身体徴候を再評価します。
  2. ステップ2:PDCに基づく検査 or 最低限必要な標準検査 PDCがあれば標的を絞った検査を行い、なければ以下の**「最低限必要な検査項目(Delphi 2024)」**を完遂します。
    • 血液: CBC, LFT, Ca, ESR, CRP, フェリチン, TSH, RF, ANCA, ANA
    • 微生物: 血液培養(3セット、5日間以上保持)、尿培養、HIV、IGRA(結核菌特異的インターフェロンγ遊離試験)
    • 画像: 胸部X線および腹部エコー、または胸腹骨盤CT
  3. ステップ3:発熱の客観的確認と詐熱の除外 全身状態が良好な場合、患者自身に温度記録をつけさせ、日内変動(早朝のnadirと夕方のpeak)の消失や、頻脈を伴わない高熱がないか(詐熱の疑い)を確認します。
  4. ステップ4:FUO基準の確定と18FDG-PET/CTの早期検討 標準検査で診断がつかない場合、18FDG-PET/CTを検討します。これは炎症や腫瘍の部位を一度に可視化できる強力なツールです。
  5. ステップ5:PET/CT陽性箇所への標的検査と身体診察の再開 PET/CTの結果に基づき、特定の部位を狙い撃ちした生検を行います。PET/CTが陰性の場合は、「重大な疾患の可能性が低い」という予後予測に基づき、再びステップ1(病歴の取り直し)へループします。
  6. ステップ6:専門センターへの紹介と経験的治療の検討 依然として診断がつかず、かつ病状が進行している場合にのみ、専門医と相談の上で経験的治療を考慮します。


5. 診断を確定させる高度なツール:画像診断と侵襲的検査

画像診断の特性と戦略的価値

  • 18FDG-PET/CT: 感度84~98%と極めて高く、特に感染症と腫瘍の検出においてNIIDを上回る有用性を示します。
  • MRI: 脳神経系、あるいはGCA(大血管炎)における血管壁の炎症評価(Halo signの確認など)に優れます。
  • PET/CT陰性の予後価値: PET/CTが陰性であった場合、陽性例と比較して自然軽快する確率が約6倍高いというデータがあります。これは「焦って侵襲的な検査を上乗せしない」ための安全弁となります。

類似症候群:炎症反応のみが高い場合(IUO)

臨床現場では、発熱の定義(38.3°C)は満たさないものの、CRP(>30 mg/L)やESRが持続的に高い症例に遭遇します。
これを「原因不明の炎症(IUO: Inflammation of Unknown Origin)」と呼びます。
IUOもFUOと同様の疾患スペクトラム(特にNIIDやリンパ腫)を持つため、FUOと同様の6ステップでアプローチすることが推奨されます。

侵襲的検査(生検)のロジック

闇雲な骨髄生検や肝生検は推奨されません。

  • 骨髄生検の適応: 血球減少(Hb <11 g/dL, Plt <15万)や、PET/CTでの集積がある場合に、血液腫瘍を狙って行います。
  • 肝生検の適応: 肝酵素異常がある場合にのみ検討します。


6. 臨床の落とし穴:経験的治療の原則と予後

不明熱管理において、最も避けるべきは「焦り」です。

[!CAUTION] 原則として、診断が確定する前に抗菌薬やステロイドを投与(経験的治療)することは控えてください。 一時的な解熱は「診断を隠蔽」し、リンパ腫や結核の確定診断を絶望的に遅らせる結果を招きます。

治療を待つべきではない「緊急事態」

以下の例外に該当する場合は、診断確定前でも直ちに治療を開始します。

  • 巨細胞性動脈炎 (GCA): 失明や脳梗塞という不可逆的合併症を防ぐため、強く疑えばステロイドを開始します。
  • 血行動態が不安定な症例: ショック状態にある場合。
  • 結核の高蔓延地域で強く疑われる重症例。
カウンセリングの極意

徹底的な検査をしても診断がつかない症例の最大75%は、時間の経過とともに自然に軽快します。医師が「わからない」と伝えることは敗北ではありません。「現時点で生命を脅かす重篤な疾患(癌や深刻な感染症)は否定されており、時間とともに良くなる可能性が高い」という積極的な見通しを共有することが、患者の不安を解消する鍵となります。



7. まとめ:初学者のためのFUO診断チェックリスト

明日の回診から、このチェックリストをポケットに入れておいてください。

  • [ ] **最新のFUO定義(Delphi 2024)**を満たしているか?(38.3°C超が4回以上、3週間以上)
  • [ ] 標準検査セット(CBC, CMP, ESR, CRP, フェリチン, TSH, RF, ANCA, ANA, 血液培養, UA, HIV, IGRA, CT)をすべて完了したか?
  • [ ] **IUO(原因不明の炎症)**の基準(CRP >30 mg/L等)に当てはまっていないか?
  • [ ] 相対的徐脈PTH抑制を伴う高Caなど、特定の疾患を指し示すPDCを見落としていないか?
  • [ ] 身体診察を**「繰り返し」**行い、熱が出た瞬間の皮疹や血管の圧痛を確認したか?
  • [ ] 安易なステロイド投与で、リンパ腫や結核の姿を消してしまっていないか?
  • [ ] PET/CTが陰性の場合、**「自然軽快の可能性が高い」**と患者に説明できているか?

ある速度から歩くより走る方が効率的になる

 

なぜランニングはウォーキングよりカロリー消費量が多いのか?

https://theconversation.com/walking-or-running-for-the-same-distance-which-consumes-more-energy-233943




このグラフがまさに記事の核心です。

横軸:移動速度(km/h) 縦軸:体重1kgあたり、1km進むのに必要なエネルギー(kcal/kg/km) → この値が低いほど効率的(同じ距離で消費カロリーが少ない)

青いカーブが歩行、オレンジが走行で、紫の丸のあたり(約8km/h前後)で交差しています。

この交差点が意味すること

  • 交差点より左(遅い速度):青(歩行)が下にある → 歩く方が効率的
  • 交差点より右(速い速度):オレンジ(走行)が下にある → 走る方が効率的

つまり「同じ距離を移動するのに、どちらの移動様式がカロリーを少なく済ませられるか」が、速度によって逆転するポイントがここにあるのです。

なぜ8km/h前後で逆転するのか?(直感的な理由)

1. 低速域で歩行が有利な理由

  • 極端にゆっくり歩くと、1km進むのに時間がかかりすぎる
  • その間、基礎代謝(安静にしていても消費されるエネルギー)がずっとかかり続ける。
  • 歩行は本来「振り子運動」(体を少し前傾させて重力で前に進む)を活かした効率の良い動きですが、遅すぎるとこの利点が薄れ、結果として1kmあたりの消費が増える

2. 高速域で走行が有利になる理由(これが一番のポイント)

8km/hを超えるような速さで無理に歩き続けようとすると、以下のような「無駄」が急激に増えます:

  • 歩行本来の効率的なメカニズム(重力を使った振り子運動 + 交互の支持脚)が崩れる。
  • 毎回、筋肉で強く押し出さないと前に進めなくなる → 余計な筋力を使う
  • 速筋線維が急に動員され、エネルギー消費が指数関数的に上昇する。
  • 腱の「バネ効果」(特にアキレス腱)がほとんど使えない。着地時のエネルギーを次の蹴り出しに再利用できない。

一方、走る場合は:

  • 空中期があり、体が上下に動く分「無駄」があるように見えますが、腱の弾性エネルギーが働きます。
  • 着地した瞬間に腱にエネルギーを蓄え、蹴り出すときにそのエネルギーを返してもらう(バネのように) → 筋肉の仕事量が大幅に節約される。
  • そのため、速度が上がっても消費の増加が緩やかで、8km/hを超えると歩くより1kmあたりの消費が少なくなる

これが「走った方が効率的になる」理由です。体はこれを無意識に感じ取っていて、トレッドミルで速度を上げていくと、自然に歩きから走りに切り替わるタイミングがちょうどこの交差点付近になるのです。

記事のシナリオで考えると

  • 普通に歩く(約4km/h):グラフの青い谷底あたり → 非常に効率的。
  • 走る(約9km/h):グラフの右側 → 走行カーブの方が低いので、もし同じ9km/hで歩き続けようとした場合よりはマシ
  • ただし、全体の消費カロリーでは走る方が多くなる(記事の結論通り)。理由は:
    • 上下動が大きい
    • 運動後の余剰消費(体温上昇やエネルギー回復)が走る方が2倍以上大きい

まとめ(腹落ちポイント)

このグラフの交差点(約8km/h)が「歩行と走行のエネルギー効率が等しくなる速度」です。 それより遅い通常の速度では歩く方が得ですが、それより速く移動したい場面では、走った方が実は1kmあたりの消費が少なくなるという、ちょっと意外な逆転現象が起きているのです。

体が「この速さなら走った方が楽」と判断して自然に走り出したくなるのも、この生理学的メカニズムが働いているからです。

2026年7月5日日曜日

アルツハイマー病を克服するヒントは「脳の自己再生力」にあった?

 

この研究は、ヒト成人の海馬における未成熟ニューロンの存在とその役割を最新の解析技術で解明したものです。科学者たちは、健康な高齢者、アルツハイマー病患者、および病理がありながら認知機能を維持している**「レジリエンス」**群の脳を比較しました。その結果、成人脳の未成熟ニューロンは胎児期とは異なる独自の転写プロファイルを持ち、若々しい生物学的年齢の指標を示すことが判明しました。アルツハイマー病ではこれらの細胞のプログラムや相互作用が阻害されますが、レジリエンス群では維持されており、脳の健康維持に寄与している可能性が示唆されました。この知見は、加齢に伴う認知機能の低下を防ぐための新たな治療戦略に光を当てています。



Tosoni, Giorgia, Dilara Ayyildiz, Sarah Snoeck, ほか. 「Transcriptional profiles of immature neurons in aged human hippocampus track Alzheimer’s pathology and cognitive resilience」. Cell Stem Cell 33, 号 5 (2026年): 763-783.e9. https://doi.org/10.1016/j.stem.2026.04.002.

成人ヒト脳における未成熟ニューロンの存在と機能的意義、とくに神経変性疾患の文脈における意義については、なお未解決の問題である。げっ歯類を用いた研究では、健康な状態およびアルツハイマー病(AD)の双方において、海馬で新たに産生される成人期由来の未成熟ニューロンが能動的な役割を果たすことが示されてきた。しかし、ヒト脳に関する証拠は限られており、詳細な分子レベルでの特徴づけも十分ではない。

この知識の空白を埋めるため、我々は高齢の健常者、AD患者、ならびに認知症に対してレジリエンスを示すヒト海馬サンプルを対象に、単一核RNAシーケンシングを実施した。これにより、未成熟ニューロンの特徴的なシグネチャーと、AD病理および認知的レジリエンスに関連する遺伝子発現変化を検討した。

統合的な実験・計算解析パイプラインを適用することで、すべてのドナー群において持続的に存在する未成熟ニューロン集団を同定した。これらの細胞は、「若年性」の細胞機能を反映する転写プロファイルを示していたが、その機能はADでは障害されていた。

本研究の結果は、これらの未成熟ニューロン集団が単に存在しているだけでなく、高齢ヒト海馬内の恒常性維持、およびADにおける認知的レジリエンスに能動的に寄与している可能性を示唆している。


2022年12月21日水曜日

RCT:2型糖尿病・NAFLDへの介入:カロリー無制限・低炭水化物ダイエット vs 高炭水化物・低脂肪食

6か月のカロリー制限のないLCHFダイエットをしている2型糖尿病の人は、HCLFダイエットをしている人と比較して、血糖コントロールと体重の臨床的に意味のある改善が大きかったが、介入後3か月は変化が持続しなかった。言い換えれば、低炭水化物ダイエットからの長期的な利益を見るためには、変化はライフスタイルで持続する必要がある。

もっと言い換えれば、「初期強化として低炭水化物ダイエット→その後、ライフスタイル改善維持」が理想的といえるのでは?


Effect of Calorie-Unrestricted Low-Carbohydrate, High-Fat Diet Versus High-Carbohydrate, Low-Fat Diet on Type 2 Diabetes and Nonalcoholic Fatty Liver Disease

A Randomized Controlled Trial

Camilla Dalby Hansen, et al.

Ann. Int. Med.  

https://doi.org/10.7326/M22-1787

https://www.acpjournals.org/doi/10.7326/M22-1787

【背景】低炭水化物・高脂肪(LCHF)食が2型糖尿病(T2DM)の治療戦略として可能かどうかはまだ不明であり、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)への影響も検討されていない。

【目的】体重減少を意図しないカロリー制限のないLCHF食が、高炭水化物・低脂肪(HCLF)食と比較して、T2DMおよびNAFLDに及ぼす影響を検討すること。

【デザイン】6ヶ月間の無作為化比較試験,3ヶ月間のフォローアップ。(ClinicalTrials.gov: NCT03068078)

【設定】2016年11月から2020年6月まで、デンマークのオーデンセ大学病院。

【被験者】T2DMの参加者165名。

【介入】2種類のカロリー制限のない食事。脂肪50~60エネルギー%(E%)、炭水化物20E%未満、タンパク質25E%~30E%のLCHF食と、炭水化物50E%~60E%、脂肪20E%~30E%、タンパク質20E%~25E%のHCLF食を設定。

【測定項目】血糖コントロール,血清脂質レベル,代謝マーカー,NAFLDを評価するための肝生検。

【結果】平均年齢は56歳(SD, 10)、58%が女性であった。

HCLF食と比較して、LCHF食の参加者はヘモグロビンA1cの改善が大きく(変化の平均差、-6.1 mmol/mol [95% CI, -9.2 to -3.0 mmol/mol] または -0.59% [CI, -0.87% to -0.30%] )、体重がより減少(変化の平均差、 -3.8 kg [CI, -6.2 to -1.4 kg] )。

両群とも6ヵ月後の時点で高密度リポ蛋白コレステロールはより高く、トリグリセリドはより低値。

低密度リポ蛋白コレステロールの変化は、LCHF食群の方がHCLF食群よりも好ましくない(変化の平均差、0.37 mmol/L [CI, 0.17 to 0.58 mmol/L] または 14.3 mg/dL [CI, 6.6 to 22.4 mg/dL]).

NAFLDの評価では、統計的に有意な群間変化は検出されなかった。9ヵ月後のフォローアップでは、変化は持続しなかった。

【研究限界】非盲検試験、自己申告によるアドヒアランス、意図しない体重減少、多重比較の調整不足。

【結論】T2DM患者において、6ヵ月間のカロリー制限のないLCHF食は、HCLF食と比較して血糖コントロールおよび体重において臨床的に意味のある大きな改善を示したが、その変化は介入後3ヵ月間は維持されなかった。

2022年12月20日火曜日

身体不活発とCOVID-19アウトカムの関連性明確に


Associations of Physical Inactivity and COVID-19 Outcomes Among Subgroups

Deborah Rohm Young, et al.

AJPM

Open Access Published:December 14, 2022

DOI:https://doi.org/10.1016/j.amepre.2022.10.007

https://www.ajpmonline.org/article/S0749-3797(22)00526-8/fulltext


はじめに

COVID-19感染前の身体活動は、より重篤な転帰と関連している。本研究では、用量反応関係が観察されるかどうか、またその関係が人口統計学的サブグループや慢性疾患間で一貫しているかどうかを検討した。

方法

2020年1月1日から2021年5月31日の間にCOVID-19陽性と診断されたKaiser Permanente Southern California成人患者のレトロスペクティブコホート研究が作成された。曝露は、診断前の少なくとも3つの身体活動自己報告の中央値とした。患者は、常に不活発、すべての評価が10分/週以下、ほとんど不活発、中央値0~60分/週、何らかの活動、中央値60~150分/週、常に活動、すべての評価>150分/週に分類された。アウトカムはCOVID-19の診断から90日後の入院、悪化イベント、死亡とした。データは2022年に解析された。

結果

COVID-19に感染した成人194,191人のうち、6.3%が入院し、3.1%が悪化イベントを経験し、2.8%が90日以内に死亡した。 

量反応効果は強く、例えば、何らかの活動カテゴリーに属する患者は、常に活動カテゴリーに属する患者よりも入院(OR=1.43、95% CI=1.26, 1.63)、悪化(OR=1.83、95% CI=1.49, 2.25)、死亡(OR=1.92、95% CI=1.48, 2.49)する確率が高いことが明らかになった。                                                                                                                                                                                                                                 

図1身体活動カテゴリーと(A)入院および(B)死亡との関連性のOR、年齢カテゴリー、性別、人種、民族、BMI、喫煙歴、病院利用、HbA1c、併存疾患、メディケイド状況、COVID-19診断前のワクチン接種状況を調整した。

                                                               
図2身体活動カテゴリーと入院の関連性のOR((A)性別、(B)人種・民族、(C)年齢層、(D)BMIカテゴリー、(E)心血管系疾患の診断の有無、(F)高血圧の診断の有無別 ORは,年齢,性別,人種,民族,BMI,喫煙歴,救急部訪問,入院,併存疾患,心血管疾患,高血圧,メディケイドの状況,COVID-19診断前のワクチン接種で調整した。

                                                                                              

結果は、性別、人種・民族、年齢、BMIのカテゴリー、および心血管疾患や高血圧を有する患者において、概ね一貫していた。

結論

身体活動は、人口統計学的および臨床的特性にわたって、COVID-19の有害な転帰に対して保護的な関連を示した。公衆衛生指導者は、パンデミック対策戦略に身体活動を追加すべきである。


Dapagliflozin 駆出率改善後の心不全へのSGLT2i :DELIVERトライアル

最初、HFpEFへのエンパグリフロジン:Empagliflozin in Heart Failure with a Preserved Ejection Fraction - PubMed (nih.gov)あるのに意味あるのだろうかと思ったが・・・


駆出率改善後の心不全へのSGLT2iの効果

駆出率改善型心不全(HFimpEF)は、以前は駆出率回復型心不全と呼ばれ、以前に左室駆出率(LVEF)が40%以下に低下した後に、ガイドラインに沿った内科的治療(GDMT)の結果としてLVEFが40%超に増加したHFと定義  


2022年米国心臓協会、米国心臓病学会、米国心不全学会(AHA/ACC/HFSA)心不全管理ガイドラインは、この集団に対する適切な薬物療法に関する指針をほとんど示してないが、HFimpEF患者は再発と左室機能の悪化を避けるためにガイドラインに沿った内科的治療(GDMT)による治療を継続すべきと勧告しているとのこと

          

Dapagliflozin in heart failure with improved ejection fraction: a prespecified analysis of the DELIVER trial

Orly Vardeny, et al.

https://www.nature.com/articles/s41591-022-02102-9

心臓の収縮機能が低下していることを示す駆出率(EF)が低下した心不全に対する最新の治療により、患者はEFの上昇を示すことがある。EFが改善した心不全(HFimpEF)として分類されるこの増加する患者集団の臨床管理に関するデータは限られており、イベント発生率が高いため、これまでのほぼすべての心不全アウトカム試験から除外されてきた。DELIVER試験(NCT03619213)の事前特定解析では、症候性心不全で左室EFが40%超の患者6,263人のうち、1,151人(18%)がHFimpEFであり、EFが40%以下から40%超に改善した患者として定義されている。参加者は、1日10mgのダパグリフロジンまたはプラセボに無作為に割り付けられ、試験の主要アウトカムは、心血管死または心不全悪化(心不全入院または緊急心不全受診)の複合とされた。HFimpEFの参加者は、EFが常に40%以上である参加者と同様のイベント発生率だった。 
HFimpEFの参加者において、ダパグリフロジンは主要複合転帰(ハザード比(HR)=0.74、95%信頼区間(CI)=0.56-0.97)、最初の心不全悪化イベント(HR=0.78、95%CI=0.61-1.14)を減少させた。 61-1.14)、心血管死(HR = 0.62, 95% CI = 0.41-0.96) および総心不全悪化イベント(率比 = 0.68, 95% CI = 0.50-0.94) を、EFが常に40%以上の人と同程度に減少させることができた。これらのデータは、症状があるHFimpEFの患者には、ガイドラインに従った内科的治療にナトリウム/グルコースコトランスポーター2阻害剤を追加することで、さらに罹患率と心不全を減らすことができる可能性を示唆している。


www.DeepL.com/Translator(無料版)で翻訳しました。


HPVワクチンをめぐる日本の"失われた8年"と、私たちが検証すべきこと

「子宮頸がんワクチン」という呼び方に、以前から違和感があります。 HPVワクチンが子宮頸がん予防に重要であることは間違いありません。日本では女子への定期接種として導入され、子宮頸がん予防を中心に説明されてきたため、この名称が広まった経緯も理解できます。 しかし、このワクチンが...