2012年4月4日水曜日

米国の“肺炎入院率減少”・“死亡率減少”は誤り

米国の“肺炎入院率減少”・“死亡率減少”は、診断コーディング変化によるもので誤り

Association of Diagnostic Coding With Trends in Hospitalizations and Mortality of Patients With Pneumonia, 2003-2009
JAMA. 2012;307(13):1405-1413. doi: 10.1001/jama.2012.384 


 Trends study using data from the 2003-2009 releases of the Nationwide Inpatient Sample.

2003年から2009年まで、肺炎を主診断とする年間入院率は、1000あたり 5.5から4.0と、27.4%減少。年齢、性別補正死亡率は5.8%から4.2%と減少   (absolute risk reduction [ARR], 1.6%; 95% CI, 1.4%-1.9%; relative risk reduction [RRR], 28.2%; 95% CI, 25.2%-31.2%)

同期間で、敗血症・肺炎二次診断入院率は、1000あたり、0.4から1.1と177.6%増加

入院死亡率は25.1%から22.2%と減少   (ARR, 3.0%; 95% CI, 1.6%-4.4%; RRR, 12%; 95% CI, 7.5%-16.1%)
呼吸不全主診断・肺炎二次診断による入院率は、1000あたり、0.44から0.48と9.3%増加し、死亡率は 25.1%から19.2%と減少  (ARR, 6.0%; 95% CI, 4.6%-7.3%; RRR, 23.7%; 95% CI, 19.7%-27.8%)

しかし3群複合したとき、入院率は、6.3%から5.6%とわずか12.5%と減少のみで、1000あたり6.3から5.6で、年齢・性別補正入院死亡率は8.3%から8.8%と増加(AR increase, 0.5%; 95% CI, 0.1%-0.9%; RR increase, 6.0%; 95% CI, 3.3%-8.8%)

同時相フレームにおいて、年齢、性別、合併症補正死亡率は8.3%から7.8%へ減少 (ARR, 0.5%; 95% CI, 0.2%-0.9%; RRR, 6.3%; 95% CI, 3.8%-8.8%)

結論:肺炎主診断患者の入院率や入院死亡率は減少、しかし、肺炎二次診断となる敗血症や呼吸不全での入院率は増加しているが、死亡率は減少。
しかし、3つの肺炎診断を複合すると、入院率減少は軽度で、入院死亡率のみほぼ不変。このことは診断コーディングの一次的影響ではないかと考えられる。


診断コーディングの変化が、表面的“肺炎入院率減少”をもたらしたという結論だが、米国でも日本でも、下気道感染に関するガイドラインは、発症状況で分類、市中肺炎、施設内肺炎での分類に懸命で、基礎疾患有無はその次の分類となっている。 慢性呼吸不全状態や気道系・免疫系基礎疾患合併患者では別分類が必要と思う。COPD急増に伴い、これらの症例が肺炎の疫学に影響をもたらしていると思う。

高齢者の下気道感染に出会ったとき、COPDの二次感染ではないかという疑いを、一般医家のみならず、救急医療の専門家たちにもそういう認識を持って欲しいという思いを切に感じている。救急専門に運ばれたとき、敗血症・肺炎ですまされているCOPD症例にかなり多く遭遇している。
そういう症例が、管理されるべき慢性疾患管理なされずに、市中や施設に、帰って行くのである。

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