複数のガイドラインで多くの基準が存在する状況と、医療訴訟リスクとの狭間
医師はガイドライン毎に矛盾する内容 により、医療訴訟上脆弱な状況となっている。USPSTFのようなより積極的に疫学上の根拠に基づくガイドラインほどその採用に消極的になってしまう矛盾の存在に気づくべきである。
乳がんリスクを持ってない、健康な52歳女性に対し、どのような管理をするか?
・2008年ACR、2003年ACSガイドラインは40歳以上での無症状平均リスク女性 に対し、年次スクリーニングマンモグラフィーを推奨していた
・ATSも、CBE(臨床的乳房検査)毎年を推奨
しかし
・2009年、USPSTFガイドラインでは60-74歳女性に隔年マンモグラフィーを推奨、CBEに関してはエビデンス不十分とした
・ACOGガイドラインでは、CBEは年次施行されるべき、マンモグラフィーは年次必要で、隔年マンモグラフィーは適切・許容範囲とされた。
結果、USPSTFガイドラインに従うことで、漏れ落ちたがん発症による医療訴訟問題が生じるのではないかという危惧が発生している。
そもそも、診療ガイドラインが医療過誤訴訟に果たす役割はいかなるものか?
臨床ガイドラインは医学専門家の合意であり、治療標準化であり、主に有意差が出やすいように 設計された治験結果に基づく”エビデンス”から合成されたものであり、最近は臨床実践しやすいように配慮されたものである。ガイドラインが、医療慣行とともに、医療過誤事件に関して合理性判断に利用される。診療ではガイドライン以外の慣行部分も大きなウェイトを占めるはずだが、検診では、この慣例の部分の判断はより厳しく判断されるべきものである。
頻回検診、マンモグラフィー・CBEは早期乳がん診断を増やす面で魅力的。だが、偽陽性検出で、本来受ける必要の無かった、より侵襲的な検査治療に関わる負担の問題。そして、本来侵襲性の少ないがんを見つけたために、続発する、生命に関わる侵襲的検査・治療が行われる有害性の存在は無視できない。ガイドラインは、検出のgainとかかるコスト、さらに放射線被曝などのリスクも加味されるわけだが、これら疫学的にのみ検証しうる有害性に関して、司法判断がまともに配慮してくれるかどうか、司法不信背景に多くの専門家たちが危惧をもつ。
ガイドラインにも利益相反の問題があり、複数の答えがある場合、その判断は被検診者側にゆだねるよう、複数ガイドライン提示すべきである。
Breast Cancer Screening: Conflicting Guidelines and Medicolegal Risk
Allen Kachalia, MD, JD, Michelle M. Mello, JD, PhD.
JAMA. Published online May 30, 2013. doi:10.1001/jama.2013.7100
Sorting Through the Arguments on Breast Screening
Michael G. Marmot, MBBS, MPH, PhD, FRCP, FFPHM.
JAMA. Published online May 30, 2013. doi:10.1001/jama.2013.6822
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