2014年2月5日水曜日

善玉はいつも善玉ではない: PGC-1αは筋内では善行を、糖尿病血管内では悪行を・・・

なぜ、糖尿病は微小血管合併症を発症するのか、結果、眼や腎臓、神経系だけで無く、潰瘍や、慢性炎症を生じ、下肢切断などもきたし、透析・失明などの状況を生み出す。


一つの機序が明らかに
Endothelial PGC-1α Mediates Vascular Dysfunction in Diabetes
Cell Metabolism, Volume 19, Issue 2, 246-258, 4 February 2014



解説:
Research reveals why diabetes patients are at risk for microvascular complicationsA metabolic molecule is found to inhibit blood vessel growth in patients with diabetes, leading to impaired wound healinghttp://www.eurekalert.org/pub_releases/2014-02/bidm-rrw013114.php
以下、意訳・略訳
PGC-1αを10年来研究し、多機能的役割が見られ、特に、循環量少ない危機的体内で、PGC-1αは筋肉内での酸素低下、栄養低下を感知し、新しい血管増殖を阻害、すなわち血管新生プロセスを促進(spur)する。筋内において、PGC-1αは、pro-metabolicで、血管新生の重大な調整要素。だが、血管新生に反応する鍵となる細胞は、血管内に存在する血管内皮細胞である。糖尿病での血管内皮細胞内のPGC-1αの役割を検討。

一連の細胞培養実験で、血管内皮特異的遺伝マウスモデルも用い、PGC-1αの血管内皮での役割は糖尿病で誘導され、血管内皮migration・血管新生を強く阻害し、結果、血管機能障害を生じる。

これらの発見は驚くべきもので、PGC-1αの血管内皮での役割は筋細胞内のそれと真逆ということ。 
筋肉内ではpro-metabolic的働きを示し、より血管を増加させ、血管不足のため飢餓状態に陥った損傷・乏血管状況の回復もたらす役割をしている。しかし、血管内皮では、糖尿病状況において血管造生を阻害し、治癒抑制する働き。

同じ分子が、働く組織・細胞において異なる働きをするということで、興味深いという側面もある。薬物治療に関しても、やはり、単一の実験系で、都合の良い効果があるとしても、別の臓器ではとんでもない方向へ機能が働くことさえ有るわけで、そういう面でも教訓的研究結果となる。

[善玉]というラベリングは科学・医学の世界ではとくにリスキー

PGC-1αは善玉という認識が一般的に有るようだが、重篤な血管新生へ悪影響をもたらす状況も存在する。逆手をとって治療に結びつくかもしれない。





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