2020年3月30日月曜日

PCSK9阻害剤:Lp(a)を介した静脈血栓塞栓症治療効果

PCSK9阻害剤はLp(a)低下作用の可能性有り

PCSK9 inhibitors and cardiovascular disease: heralding a new therapeutic era.
Curr Opin Lipidol. 2015 Dec;26(6):511-20. 
doi: 10.1097/MOL.0000000000000239. 


さらに、下肢静脈血栓に関してLp(a)が重要な役割をはたす


序文:

コレステロール値と静脈血栓塞栓症(VTE)のリスクとの関係は不明である。観察研究では、LDL-C値と静脈血栓塞栓症(VTE)リスクの増加との関連性が認められたものもあれば、関連性が認められなかったものもあり、さまざまな研究が行われてきた。
しかし、最近の遺伝学的研究では、潜在的な関連性が示唆されている。メンデル無作為化研究では、個人のコレステロール値が高くなる素因と低くなる素因を持つ遺伝的変異体が自然界に無作為に配置されていることを利用して、LDL-C値が高くなる遺伝的素因を持つ人は、VTEの発症リスクが有意に高いことが明らかになった。 JUPITER無作為化臨床試験では、高コレステロール血症ではないがhs-CRP値が上昇している患者を対象とした高強度スタチン療法により、VTEの発生率が43%減少するという一見一貫した結果が得られた。
しかし、著者らは、これらの結果はLDL-Cの低下ではなく、抗血栓作用や抗炎症作用を含むスタチンの多面的な作用によるものであるとしている。
他の研究では、リポ蛋白(a)(Lp(a))という動脈原性および血栓性の粒子に焦点を当てており、これがVTEリスクの潜在的なメディエーターである可能性が示唆されている研究もあるが、すべてではない。 本研究では、PCSK9阻害薬がVTEのリスクを低下させるかどうかを明らかにし、そのメカニズムを探り、臨床的にも遺伝的にも定義されたリスクサブグループにおける有効性を検討した。

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The Effect of PCSK9 Inhibition on the Risk of Venous Thromboembolism
Nicholas A. Marston , et al.
Originally published29 Mar 2020
https://doi.org/10.1161/CIRCULATIONAHA.120.046397
https://www.ahajournals.org/doi/abs/10.1161/CIRCULATIONAHA.120.046397


背景
コレステロール値と静脈血栓塞栓症(VTE)のリスクとの関係は不明である。我々は、PCSK9阻害が静脈血栓塞栓症のリスクに及ぼす影響を明らかにし、潜在的なメカニズムを探り、臨床的および遺伝的に定義されたリスクサブグループにおける有効性を検討することを目的とした。



方法
FOURIER試験のポストホック解析を行い、evolocumabがVTEイベント(深部静脈血栓症または肺塞栓症)のリスクを低下させるかどうかを検証した。その後、FOURIER試験とODYSSEY OUTCOMES試験のデータを組み合わせてメタ解析を行い、VTEのリスクに対するPCSK9阻害のクラス効果を評価した。また、fourierのベースライン脂質を解析し、evolocumab投与によるVTEの減少を説明する潜在的なメカニズムを検討した。最後に、探索的遺伝子解析をFOURIERで実施し、VTEポリジェニックリスクスコアにより、evolocumabによるVTEの最大の減少が得られる高リスク患者を特定できるかどうかを検討した。



結果
FOURIER試験では、evolocumabによるVTEのHRは0.71(95%CI 0.50-1.00、p=0.05)であり、1年目には効果はなかったが(HR 0.96、[0.57-1.62])、1年目以降は46%の減少(HR 0.54、[0.33-0.88]、p=0.014)が認められた。FOURIERとODYSSEY OUTCOMESのメタ解析では、PCSK9阻害によりVTEの相対リスクが31%減少した(HR 0.69 [0.53-0.90], p=0.007)。 


ベースラインのLDL-C値とVTEリスクの低下の程度には関係はなかった。 
一方、ベースラインのLp(a)レベルが高い患者では、エボロクマブはLp(a)を33nmol/L減少させ、VTEリスクを48%減少させた(HR 0.52 [0.30-0.89], p=0.017)が、ベースラインのLp(a)レベルが低い患者では、エボロクマブはLp(a)を7nmol/L減少させただけで、VTEリスクには影響を与えなかった(HR 0.087の相互作用、ARR 0.037の不均一性)。 
連続変数としてモデル化した場合、ベースラインのLp(a)濃度とVTEリスクの減少の程度には有意な相互作用が認められた(P=0.04)。多遺伝子リスクスコアは、VTEのリスクが2倍以上増加した患者を同定し、遺伝的リスクが高くない患者と比較して、相対的(相互作用=0.04)および絶対的なVTEリスクの減少(不均一性=0.009)が大きいことを示した。



結論
PCSK9阻害はVTEのリスクを有意に減少させる。Lp(a)の減少がこの効果の重要なメディエーターである可能性があり、強力なLp(a)阻害薬が現在開発されていることを考えると、特に関心の高い所見である。


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