2012年3月13日火曜日

患者満足度至上主義 → 救急受診減少 しかし、死亡率増加、医療費増大、処方薬剤増大

医師への患者満足度を最も高めるのを目標とすると、救急医療利用を減らすことができるが、一方では、入院数を増やし、総医療費・処方医療費増大をもたらし、死亡率を増加させることになる

社会住民統計・アクセス・疾患背景・補正後の検討で、患者満足度が最小限の場合に比較しての結果で、死亡率増加は健康状態が比較的良好・疾患背景が比較的重篤でないにかかわらず、副作用的影響の方が大きく出るため、こういう結果になる。


患者満足度に関わる要素をよく理解する必要があり、患者満足度をあまりに重視することは、医療の過剰利用そして、コスト増大、アウトカムへの悪影響をもたらす。



The Cost of Satisfaction
A National Study of Patient Satisfaction, Health Care Utilization, Expenditures, and Mortality
Joshua J. Fenton, MD, MPH; Anthony F. Jerant, MD; Klea D. Bertakis, MD, MPH; Peter Franks, MD
Arch Intern Med. 2012;172(5):405-411. doi:10.1001/archinternmed.2011.1662


2000年から2007年にかけての、成人 51 946名の前向きコホート  national Medical Expenditure Panel Survey

1年時患者満足度 、 2年時医療利用(救急医療、入院)、2年時医療消費量(総医療費、処方薬剤費)、3.9年平均フォローアップ中の死亡率



社会住民統計、保険状態、通常の医療資源利用度、慢性疾患状況、健康状況、1年時医療費用補正後、最小四分位に対する最大四分位患者満足度では、

・救急医療利用受診オッズ比減少 (補正オッズ比[aOR], 0.92; 95% CI, 0.84-1.00)

・入院  (aOR, 1.12; 95% CI, 1.02-1.23)、 総医療費 8.8% (95% CI, 1.6%-16.6%) 、 処方箋薬剤費 9.1% (95% CI, 2.3%-16.4%) 、 死亡率 (補正ハザード比, 1.26; 95% CI, 1.05-1.53)増加




「患者中心の医療」という言葉は正しいのだけど、ある時点だけの「患者満足度」だけが真の患者のニーズをみたすことになるのだろうか?

患者満足度がすべてということで、顧客サービスを前面にして、ホテル並みのサービスをするのが当然という風潮が広まった。しかしながら、ネットでみるとそれは結果的に入院・入院に伴うリスクの増加を伴う。特に生命予後の比較的少ない状況ではリスクの方が上回る可能性が高くなる。
顧客満足度最重視医療への導入が入院や処方数増大に伴う死亡リスク増大そして医療費高騰に直結する現実を無視してきた。

“日本医療機能評価機構”ってところはまさにそういう馬鹿な評価のてんこ盛り、患者の真のニーズや医療費増大を無視した暴走を続けている。

国会での議論をみてると、表層的な一時点だけの“満足度”を最終目標としているかの議員や大臣の厚生行政の話し合いがなされている。あの人たちの頭の中のプライマリアウトカムは表層的な庶民への人気とりだけ・・・ 
脱線するが、“○○がんゼロ”を目標とする医療施策にともなう有害性に全く気付かない愚かさ・・・

そんなスタンスでこの国の医療行政が決められているのである。

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