2012年11月29日木曜日

抗血小板治療:冠動脈ステント時、血小板モニタリングはアウトカムに影響与えない

冠動脈ステント植え込み時、血小板機能モニタリングは、その後のアウトカムに影響を与えない。

Bedside Monitoring to Adjust Antiplatelet Therapy for Coronary Stenting
Jean-Philippe Collet, et. al.
for the ARCTIC Investigators
N Engl J Med 2012; 367:2100-2109November 29, 2012DOI: 10.1056/NEJMoa1209979

38施設の予定冠動脈ステント施行 2440名

2群割り付け
・血小板機能モニタリング(抗血小板治療反応性不良患者での薬物補正)
・通常ケア(モニター・薬剤調整無し)

プライマリエンドポイントは、死亡、心筋梗塞、ステント血栓、卒中、ステント挿入後1年内の緊急血管再建の組み合わせ

ステント挿入前にカテーテルラボで、モニター群では、VerifyNow P2Y12とアスピリンPOC検査を行う、そして、外来クリニックで2-4週後再検査。

モニター群では、クロピドグレル服用(34.5%)、アスピリン服用(7.6%)患者で血小板反応性高度の場合は、glycoprotein IIb/IIIa inhibitorと共に、クロピドグレル、プラスグレル、アスピリンを追加。

プライマリエンドポイントは、モニター群 34.6%、通常ケア群 31.1%
(ハザード比, 1.13; 95% 信頼区間 [CI], 0.98 to 1.29; P=0.10)

主要セカンダリエンドポイントである、ステント血栓・緊急血管再建術は、モニター群 4.9%、通常ケア群 4.6%
(ハザード比, 1.06; 95% CI, 0.74 to 1.52; P=0.77)

重大出血イベント発生率は両群差認めず

FDA承認: 全く新しい薬理作用の新規抗結核薬:ベダキリン

bedaquiline (Sirturo)
http://en.wikipedia.org/wiki/Bedaquiline


他の抗抗酸菌薬には存在しないメカニズムである、マイコバクテリアのエネルギー産生阻害作用

FDA助言委員会は、有効性に関しては、全会一致、だが、安全性に関しては11/28(水)11-7で、この薬剤の安全性を支持した

New Type of TB Drug Deemed Safe by FDA
By David Pittman, Washington Correspondent, MedPage Today
Published: November 27, 2012
http://www.medpagetoday.com/InfectiousDisease/Tuberculosis/36127


New Type of TB Drug Wins FDA Panel Support
By David Pittman, Washington Correspondent, MedPage Today
Published: November 28, 2012
http://www.medpagetoday.com/InfectiousDisease/Tuberculosis/36153

脱落率が高い研究で、第1次が44%(プラシーボ54%)、第2次が32%(プラシーボ35%)のため、このような結果となったようだ。
薬剤のためというより、研究手法がお粗末ということのようだが、"十分に安全性"とは言えず、"実質的安全"を問う諮問となったようだ。

多剤耐性結核治療の出現により、期待される薬剤であっただけに、ちょっと残念。
1970年以降、新しい機序の抗結核薬承認されてない。

死亡例はいないが、60%に非重症副作用あり、神経系、胃腸障害が多かった。
有効率は8週間治療トライアルで、喀痰培養陰性は、21名中47%超、プラシーボは8%(p=0.004)。有効性2年間継続。
だが、24週後、bedaquline群 81%、プラシーボ 65%(p=0.293)
現在治験継続中とのこと
QT延長に関して、併用薬剤との関連が考えられている。

bedaquline は速放性錠剤で、400mg/日3週間、後、週3回200mgで22週まで投与

電子カルテ普及に伴い、”SOAP" から ”APSO”へ?

伝統的に、カルテのフォーマットとして、SOAP noteが勧められてきた。

http://en.wikipedia.org/wiki/SOAP_note

・ Subjective componet:はじめに主訴(Chief Complaint : CC)ありき、現病歴(History of Present Illness : HPI)、極力患者自身の言葉を用いた記録。特徴的症状および診断否定に役立つ徴候を含む。全身のレビューとなる所見。既往歴、手術歴、家族歴、社会歴、現行服薬内容、アレルゲンなど

・ Objective componet : バイタルサイン、身体所見、検査結果

・ Assessment : 診断、思考過程・意思決定を含む内容 
(鑑別診断を含む、徴候・診断の簡略的書き方が必要)
;POMR(Problem Oriented Medical Record)で記載する場合は、プロブレム番号やheading・subhedingをassesumentに記載

・ Plan : 患者の問題点へ治療予定を記載(検査オーダー予定、レントゲン検査予定、紹介、施行済み医療行為・薬物投与・教育など



米国の情報をみると、ITと医療に関しては、 EMR(Electronic medical record)あるいはEHR(Electronic health record)、PHR(Personal health record)といった、いわゆる電子カルテに関して、現場のニーズを踏まえた著作物・主張が目立ちはじめている。

 日本の行政施策は、“e-Japan”と称し、医療業界からのニーズを無視して、産業界の飯の種となるべく、無理矢理かつ非効率的に進められている。ソフ トバンク、NECや富士通などの言い分だけで動くのではなく、データマイニング・トランスレーショナルリサーチの将来性を見越し、統一化したフォーマット 作成が必要。電子カルテ導入しても他の業者への変更困難で、移行のため、多額の資金が必要という不可解な状況があり、それが一定以上の規模の医療機関への EMRの普及を妨げている実態がある。

EMRの将来性を期待するなら、各医療機関への導入は、国が負担し、そのサービス構築には現場のニーズが最優先されるべきなのである。


現場ニーズを優先する米国のEMRsでも、それほど満足度は高くないようだ。
多忙な現場で、SOAPのようなシステムは冗長で、速読性に乏しく、評判が悪い。

カルテの3つの要素は
1:患者病歴・検査身体所見・評価・ケアプランの文書化
2:公文書的側面
3:診療報酬請求の原本
である。

現場では、この要素をすべて満たし、速読性に優れたシステムが望まれる。


“SOAP”noteは、ロジック作成上自然だが、他者がみるには、速読性に欠ける。


“APSO”noteに置き換えることで、効率よく、記録をレビューできるという話が広がっているという話。


APSO notes: Improving the Readability of EHRs
 http://www.ucdenver.edu/academics/colleges/medicalschool/departments/medicine/GIM/education/ContinuingEducation/Documents/TMC%202010-2011/12-7-2010_LinCT.pdf

APSO needs to replace SOAP in EMRs
http://thehealthcareblog.com/blog/2010/04/11/apso-needs-to-replace-soap-in-emrs/

SOAP vs. APSO
http://cmiowiki.wikispaces.com/SOAP-APSO

Benefits and risks of SOAP

Benefits: SOAP は従来やりかたで、馴染まれている。このフォーマットの文書化は患者評価の従来の流れである 
Risks: 臨床医が求める情報は、AssessmentとPlanであり、それが文書の最後となっているため、クリックやスクロールを文章最後の行まで行わないとならないため、臨床に遅れと小さなフラストレーションをもたらす。

Benefits and risks of APSO

Benefits: APSO は、もっとも関連性のある情報を、迅速に見いだせ、時間短縮を医療者にもたらす 。このフォーマットにより、“A/P”部分に文書作成の重点化をもたらされるかもしれないのもう一つのベネフィット。“A/P”から開始することで重要点が強調される。これにより、医師は、明瞭な、簡明な思考となるよう努力する。
Risks: APSOは、新しいためなじみが無く、改良が必要。
 


 電子カルテならではのフォーマットの話・・・表示順番が簡単に変えられるということで・・・と、最初思ったのだが、どうも、思考過程までAPSOと考えてるようだ・・・

 他者の速読性・読みやすさのための記録形式である。記録としてはAPSOが優れていると思うのだが、思考過程としては、やはり、患者主訴orientedでなければならないと私は思うのだが・・・

2012年11月28日水曜日

脂質異常症中高年:運動+スタチンは、それぞれ単独より、死亡リスク減少効果有り

運動、スタチン治療ともに、脂質異常症を有する中年・高齢者の死亡リスクを減らすわけだが、スタチン治療と運動量増加は、それぞれ単独より、さらなる死亡リスク減少をもたらす。


Interactive effects of fitness and statin treatment on mortality risk in veterans with dyslipidaemia: a cohort study
The Lancet, Early Online Publication, 28 November 2012

10,043名の登録者(平均年齢 58.8歳、SD 10.9歳)
フォローアップ中央値10.0年(IQR 6.0-14.2)年間で、2318名死亡、平均年間死亡率は1千あたり22

死亡リスクは、スタチン服用群 18.5%(935/5046) vs 非服用群 27.7(1386/4997)(p<0.0001)
スタチン服用者のうち、死亡率はフィットネスにより減少
9MET超(n=694)の高運動量の場合は、5MET以下の低運動量(HR 1; n=1060)に比べ、ハザード比は、0.30(95%CI 0.21-0.41 ;p<0.001)
スタチン非服用の場合は、最小運動量(n=1024)HRは 1.35 (95% CI 1.17—1.54;p<0.001)

ジゴキシン:心房細動に於ける死亡リスク増加をもたらす!

“ジゴキシン”は、ほんとうは“ヂゴキシン”が正しい訳か・・・ それと、ジゴキシンは、周期的に悪者になるなぁ わたしが医者になって3周期眼くらいでは?

ジゴキシンは、心房細動の“心拍コントロール”治療として用いられているが、心房細動患者での死亡率を増加するという報告。

全死亡率で41%増加と関連するという報告


ジゴキシン自体が死亡率増加に関与するか、合併症故に死亡率が高い状況でのより重症例処方だからか不明で、心房細動患者のジゴキシンと死亡率の関連検討目的が必要であったと序文。

Increased mortality among patients taking digoxin-analysis from the AFFIRM studyEur Heart J (2012) doi: 10.1093/eurheartj/ehs348 First published online: November 27, 2012

ジゴキシンと死亡率の相関をAF Follow-Up Investigation of Rhythm Management (AFFIRM) trial登録患者で、多変量Cox比例ハザードモデル評価。

検討は、全患者と、心不全(HF)の有無(駆出率<40 br="br">
ジゴキシンは全原因死亡率増加と相関 [estimated hazard ratio (EHR) 1.41, 95% 信頼区間 (CI) 1.19–1.67, P < 0.001]、同様に、心血管死亡率増加と相関  (EHR 1.35, 95% CI 1.06–1.71, P = 0.016)、不整脈による死亡率増加とも相関(EHR 1.61, 95% CI 1.12–2.30, P = 0.009)

全死亡率は、心不全の有無にかかわらず、ジゴキシンにより増加 (心不全無し EHR 1.37, 95% CI 1.05–1.79, P = 0.019 、 心不全有りEHR 1.41, 95% CI 1.09–1.84, P = 0.010)

全死亡、心血管死亡に関しジゴキシン-年齢有意相関なし (P = 0.70、P = 0.95)


血中濃度評価での検討となるランダム化トライアル( DIG study [N Engl J Med 1997; 336: 525–533],)では、negative effenct認めてない。
上記報告との整合性に関して、まだ議論が必要だろう。

神経ホルモン・inotropicな異常はジゴキシンで改善する部分はあるだろうが、それ以上に、安全閾値が狭いことで、心室性不整脈・重度徐脈性不整脈をもたらす危険性があると筆者らは述べている。
未検討共役要素による過剰推定の可能性もある。 感度分析でも一定程度以上の大きな影響が見られたため、やはり、重く受け止めるべきであろうとのこと。


虚血証拠のない心原因死亡は最終受診日のジゴキシン使用の56%と多い  (37% versus ジゴキシン無し27% , P=0.007)。がん、肺、非心原性原因死に関してはジゴキシン使用とは関連せず。


標準臨床ケア、正確なジゴキシン利用アドヒアランス期間がルーチンに記録されてない研究のため正確なメカニズム推定困難。

あくまでも可能性であるが、ジゴキシン濃度の厳格な検査が必要。

参考:http://www.medpagetoday.com/Cardiology/Arrhythmias/36135

“ジゴキシンは最小量にしてるので血中濃度測定を怠り気味”の場合は、あらためて注意が必要だろう。公的医療保険監視側にも、この情報は重要だろう。悪徳査定は患者にリスクを与える。

左室駆出率温存型心不全:RAS拮抗治療の根拠は不充分

駆出率温存型心不全(Heart failure with preserved ejection fraction (HFPEF))
駆出率低下型心不全(heart failure with reduced ejection fraction (HFREF))



駆出率がさほど落ちてない心不全に対する治療戦略はまだ確定的ではない


以下の報告の結論は、心不全(駆出率温存型)の治療検討において、ACE阻害剤、ARB(RAS拮抗剤)の3つのランダム化トライアルの検討によれば、いづれも、プライマリエンドポイントに達せず、選択バイアスがあり、検知パワー不足と判断された。

 Association Between Use of Renin-Angiotensin System Antagonists and Mortality in Patients With Heart Failure and Preserved Ejection Fraction
Lars H. Lund, et. al.
JAMA. 2012;308(20):2108-2117. doi:10.1001/jama.2012.14785.
2000-2011年のSwedish Heart Failure Registry(64病院・84外来クリニック 41 791 登録患者)の前向き検討

HFPEF 16216名(駆出率 40%以上、平均[SD]年齢 75[11]歳、女性 46%)のうち、RAS拮抗剤治療(n=12,543)、非治療(3,573)

RAS拮抗剤使用Propensity scoreは43変数を導びいた。

RAS拮抗剤と全死亡率の相関を、1:1の年齢・propensity scoreマッチ化コホートと、連続共変数としてのpropensity scoreで補正した全体コホートで評価

一致性評価のため、HFPEF患者をRAS拮抗剤投与量に従い、年齢・propensity scoreマッチ化解析し、HFREF(EF<40 br="br">
主要アウトカムは、全死亡率


マッチ化HFPEFコホートで、1年生存率は、治療群 77%(95%CI、75-78%)、 非治療群 72%(95%CI 70-73%)
ハザード比  0.91 (95% CI, 0.85-0.98; P = .008)

全HFPEFコホートでは、1年間粗生存率は、治療群 86% (95% CI, 86%-87%)、 非治療群  69% (95% CI, 68%-71%)
propensity score–補正 HR  0.90 (95% CI, 0.85-0.96; P = .001)


HFPEF投与量解析
目標投与量50%以上の場合の、対無治療比較HRは、 0.85 (95% CI, 0.78-0.83) (P < .001)
目標投与量50%未満の場合の、対無治療比較HRは、 0.94 (95% CI, 0.87-1.02) (P = .14)

年齢・propensity scoreマッチ化HFREF解析で、HRは 0.80 (95% CI, 0.74-0.86; P < .001)

アルドステロン拮抗剤:拍出量低下心不全患者への退院時処方は必ずしも死亡率低下せず 

退院時アルドステロン拮抗剤処方の適応は慎重に
とくに、駆出率低下心不全高齢者は良い適応だが、退院後カリウム値チェックを!

・・・ということか!

時にみられる、退院時30日処方どころか、60日処方というぶったげた退院処方は、一般論としても批難されるべきだろう!


以下の論文の結論は・・・

アルドステロン拮抗剤退院時開始は、死亡率・心血管疾患原因再入院改善効果と関連せず。 だが、心不全・駆出率低下高齢者においては心不全再入院改善効果を示す。 高カリウム血症による再入院リスク増加が有意である。”

駆出率正常型では無く、低下した心不全患者へのアルドステロン拮抗剤の臨床的エビデンスの問題


Associations Between Aldosterone Antagonist Therapy and Risks of Mortality and Readmission Among Patients With Heart Failure and Reduced Ejection Fraction
Adrian F. Hernandez, et. al.
JAMA. 2012;308(20):2097-2107. doi:10.1001/jama.2012.14795.

登録クライテリア合致5887名で、平均年齢 77.6歳、退院時アルドステロン拮抗剤使用者は18.2%、1070名

累積発生頻度 3年後
死亡 治療群 49.95 vs 51.2% (P=.62)
心血管再入院 63.8% vs 63.9% (P=.65)
心不全再入院 38.7% vs 44.9% (P< .001)

30日時点高カリウム血症再入院 2.9% vs 1.2%(P<.001)
1年内再入院  8.9% vs 6.3% (P = .002)

治療確率の逆加重法後、死亡率は有意差認めず (hazard ratio [HR], 1.04; 95% CI, 0.96-1.14; P = .32)、同様に、心血管再入院 (HR, 1.00; 95% CI, 0.91-1.09; P = .94)にも有意差認めず


心不全再入院は、3年後治療患者において低率 (HR, 0.87; 95% CI, 0.77-0.98; P = .02)
高カリウム血症関連再入院は、アルドステロン拮抗剤により、30日後 (HR, 2.54; 95% CI, 1.51-4.29; P < .001)、1年後 (HR, 1.50; 95% CI, 1.23-1.84; P< .001)と高率



"inverse weighting"とは、IDW(Inverse Distance Weighting):逆距離加重法のことだろうか?



スピロノラクトンだけじゃなく、“ACE阻害薬・ARB投与で、血中AII濃度は抑制できていても、血中アルドステロン濃度が減少しないというエスケープ現象が知られているが、エプレレノンの併用でこの問題が回避できる可能性がある”ということでセララが宣伝されているがやはり注意が必要だろう。

現に、ベネフィットリスクバランスがとれているか、今一つ、臨床で、吟味が必要と思う。

noteへ実験的移行

禁煙はお早めに! 米国における人種・民族・性別による喫煙・禁煙での死亡率相違|Makisey|note 日常生活内の小さな身体活動の積み重ねが健康ベネフィットをもたらす:VILPA|Makisey|note